無期懲役とは?仮釈放は平均何年?出所率や終身刑との違いを解説

無期懲役(むきちょうえき)とは、刑期の定めがない刑罰です。日本の刑罰の中では死刑に次いで重く、仮釈放が認められれば刑務所から出所できます。ただし令和6年に仮釈放された人の平均在所期間は38年1月、仮釈放される割合は1%未満というのが実際の運用です。

「無期懲役でも10年ほどで出られるのではないか」「終身刑とは何が違うのか」。ニュースで判決を見て、そう感じた方もいるのではないでしょうか。法律上は服役10年で仮釈放が可能ですが、運用の実態は大きく異なります。

この記事では、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、法務省の最新統計(令和8年1月更新)をもとに次の点をわかりやすく解説します。

  • 無期懲役は実際に何年で出られるのか
  • 仮釈放で出所できる確率と出所した人のその後
  • 終身刑・死刑との違いと死刑になる分かれ目
  • 法定刑に無期懲役が定められている罪

お読みいただくことで、報道で見た「無期懲役」の重さをご自身で判断できるようになります。

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無期懲役とは?

無期懲役は、「何年で終わり」という期間の区切りがない刑罰です。刑罰としての中身と、2025年の法改正による呼び名の変更を確認します。

無期懲役とは刑期の定めがない刑罰

刑罰には、「懲役◯年」と終わりの年数が決まっているものと、決まっていないものがあります。無期懲役は後者にあたり、日本の刑罰の中では死刑に次いで重いものとされています。

これに対して有期懲役は、下限が1か月、上限が20年です。加重される場合でも30年までとされています(改正後の刑法12条1項、14条2項。改正の内容は次項で説明します)。年数で区切られた刑のうち最も長いものが30年であるのに対し、無期懲役にはその区切り自体がありません

受刑者は刑事施設に拘置されます。そのうえで、改善更生を図るために必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができると定められています(刑法12条2項・3項)。

無期懲役は「無期拘禁刑」に変わった?

2025年6月1日、改正刑法の施行によって懲役と禁錮は廃止され、両者をまとめた「拘禁刑」が新たに設けられました(刑法9条・12条)。これに伴い、同日以後の犯罪について言い渡される場合は「無期拘禁刑」となります

ただし、施行日より前の犯罪については、これまでどおり「無期懲役」が言い渡されます。施行日より前に確定した刑も無期懲役のまま執行されるため、当面はどちらの呼び名も使われ続けます。ニュースで今も「無期懲役」と報じられるのはこのためです。

刑の重さや仮釈放の仕組みは変わりません。刑期の定めがないことも、刑事施設に収容されることも、10年を経過すれば仮釈放の対象になり得ることも同じです。刑罰全体の種類や内容の違いについては「日本の刑罰は6種類|死刑・拘禁刑・罰金など内容と違いを解説」をご参照ください。

本記事では、広く知られている「無期懲役」の表記を用いて解説し、条文の引用と法定刑については現行の「拘禁刑」の表記を用います。

終身刑と無期懲役はどう違う?

終身刑は、日本の法律には存在しない刑罰です。「仮釈放があるのが無期懲役、ないのが終身刑」と説明されることもありますが、これは正確ではありません。終身刑の2つの種類と、日本での無期懲役の位置づけを順に見ていきます。

終身刑には絶対的終身刑と相対的終身刑がある

終身刑とは、受刑者が死亡するまで刑事施設に収容し続けることを予定した刑罰です。

終身刑は大きく2種類に分かれます。仮釈放の余地を一切認めないものが絶対的終身刑、一定の条件のもとで仮釈放を認めるものが相対的終身刑です。

諸外国に目を向けると、絶対的終身刑を置く国も一部にありますが、終身刑を設けている国の多くは相対的終身刑の仕組みを採っています。

したがって、仮釈放の可能性があるのが無期懲役、ないのが終身刑、といった分け方は誤りです。日本の無期懲役と諸外国の相対的終身刑との間に、制度としての大きな差はありません。

日本に終身刑はなく無期懲役が最も重い自由刑

日本の刑法に終身刑の規定はありません。生命を奪う死刑(生命刑)を除けば、身体の自由を奪う刑(自由刑)の中で最も重いのが無期懲役です。

もっとも、運用の実態を見ると、無期懲役は相対的終身刑に近い運びになっています。後述するとおり、仮釈放が認められるのは多くても年に十数人で、認められた人の在所期間も、直近の令和6年では38年を超えているためです。

無期懲役と終身刑の違いを整理すると、次のとおりです。

刑罰 刑罰の内容 仮釈放の可能性
無期懲役(日本) 刑期の定めがない刑罰 あり
絶対的終身刑 死亡するまで刑事施設に収容される刑罰 なし
相対的終身刑 死亡するまでの収容を予定するが、仮釈放の余地がある刑罰 あり

無期懲役は何年で出られる?仮釈放の実態

無期懲役でいちばん知りたいのは、「結局、何年で出られるのか」という点でしょう。法律上の入口から実際の運用まで、法務省の統計をもとに順に確認します。

法律上は服役10年で仮釈放が可能

無期懲役であっても、最低10年の服役を経れば、刑の途中で刑務所を出られる可能性はあります。それを可能にするのが仮釈放という制度で、法律上の条件は次の2つです(刑法28条)。

  • 改悛の状(罪を悔い改めている状態)が認められること
  • 刑の執行開始から10年を経過したこと

ただし、あくまでも「仮」の釈放です。出所後は保護観察(国の監督のもとで社会内で生活させる処遇)に付され、遵守事項(守るべき約束事)に違反すれば仮釈放が取り消され、刑務所への収容が再開されることもあります。

無期懲役の仮釈放が許されるのは、次の3つをいずれも満たすと認められる場合です(犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則28条)。

  • 悔悟の情及び改善更生の意欲があること
  • 再び犯罪をするおそれがないこと
  • 保護観察に付することが改善更生のために相当であること

そのうえで、社会の感情が仮釈放を是認すると認められないときは、許されません(同条ただし書)。3つを満たしていても、この点で認められなければ仮釈放されないということです。

仮釈放を許すかどうかを決めるのは刑務所ではなく、地方更生保護委員会(法務省が全国8か所に置く機関)です(刑務所長は仮釈放の申出を行います)。申請の流れや身元引受人の準備は「仮釈放とは|認められる条件と申請の流れ、身元引受人の準備」で解説しています。

仮釈放の審理が始まるのは原則、服役30年経過後

10年という数字だけを見ると、「無期懲役でも最短10年で出られるのか」と受け取られがちです。インターネット上には「十数年で社会に戻れる」といった書き込みも見受けられます。

しかし運用は異なります。法務省の通達では、刑の執行開始から30年が経過した無期刑受刑者について、1年以内に仮釈放の審理を開始することとされています。許す決定がされなかった場合も、最後の審理の終結から10年が経過すれば、1年以内に改めて審理が始まります。

この30年という期間は、有期の刑の上限が30年であることとの均衡によるものと説明されています。

実際の数字も同じ方向を示しています。過去10年間の実績では、在所期間が25年に満たない段階で仮釈放を許された例はありません。過去10年間に審理された412件を見ても、審理時点の在所期間は30年以上35年未満が67.0%と最も多くなっています。

無期懲役の仮釈放は平均何年?実際は38年1月

では、無期懲役で仮釈放された人はどれくらいの期間を刑務所で過ごしたのでしょうか。法務省が公表する「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」(令和8年1月更新)によると、直近6年間は次のとおりです。

年末の無期刑受刑者数 仮釈放者数 新たに仮釈放された人の平均受刑在所期間 仮釈放率
令和元年 1,765人 17人 36年 約0.96%
令和2年 1,744人 14人 37年6月 約0.8%
令和3年 1,725人 9人 32年10月 約0.5%
令和4年 1,688人 6人 45年3月 約0.4%
令和5年 1,669人 8人 37年4月 約0.5%
令和6年 1,650人 1人 38年1月 約0.06%

※平均受刑在所期間は、その年に新たに仮釈放された人の平均です。仮釈放率は、年末の無期刑受刑者数に対するその年の仮釈放者数の割合です。

令和6年に新たに仮釈放された人の平均受刑在所期間は38年1月です。仮釈放される人数がごく限られているため平均値は年ごとに上下しますが、平成27年の31年6月と比べると長期化の傾向がはっきり見て取れます。令和4年には45年3月と、この10年で最も長くなりました

収容が長期に及ぶ結果、令和6年末の時点で収容期間が40年以上の無期刑受刑者は97人おり、うち50年以上の人が12人います。仮釈放までたどり着いた場合でも、実際に刑務所で過ごす期間は近年では30年代半ばを超えるのが通常で、45年を超えた年もあります。

仮釈放率(出所率)は1%未満

出られる確率という観点で見ると、数字はさらに厳しくなります。令和6年は、年末時点で1,650人の無期刑受刑者がいる中で、新たに仮釈放されたのは1人でした。

無期懲役で仮釈放されて出所できる割合は、この10年間どの年も1%に達していません。令和6年の1人という人数は、過去10年間で最低の水準です。

審理そのものも狭き門です。令和6年に終結した仮釈放の審理は52件で、仮釈放を許す決定が出たのは2件(3.8%)にとどまりました。許す決定が出ても、実際に釈放されるまでに時間差があったり、釈放前に審理が再開されて決定が効力を失ったりするため、その年に実際に釈放された人数(1人)とは一致しません。出所率(仮釈放率)という言葉で語られる確率は、年1%未満というのが実態です。

懲罰の有無や検察官の意見で結論が変わる

では、無期懲役で何が仮釈放の可否を分けているのでしょうか。過去10年分の審理をまとめた法務省の資料からは、刑務所での生活態度と検察官の意見が結論を大きく左右していることが読み取れます。

過去10年間に審理を受けた人のうち、刑務所で懲罰(施設内の規律違反に対する処分)を受けたことがない人は42.1%が許可されている一方、懲罰が21回以上に及ぶ人で許可された例はありません。いわゆる模範囚かどうかが、数字にはっきり表れています

検察官の意見も同様です。検察官が仮釈放に反対しなかった事件では61.0%が許可されたのに対し、反対した事件で許可されたのは13.4%でした。

無期懲役で出所した人はその後どうなる?

無期懲役から仮釈放で出所した人も、刑がそこで終わるわけではありません。期間の定めがない刑である以上、社会に戻った後も国の監督のもとで生活することになります。ここでは、出所した人を待つ現実を3つの側面から見ていきます。

保護観察を受け続ける必要がある

仮釈放が認められた場合、仮釈放中の人は必ず保護観察に付されます(更生保護法40条)。保護観察とは、保護観察官や保護司による指導監督と補導援護を受けながら、定められた遵守事項を守って社会の中で生活し、更生を図る制度です。

有期の刑であれば、残りの刑期が満了すれば保護観察も終わります。しかし、無期懲役には刑期の満了がありません。そのため、恩赦によって刑の執行を免除されない限り、保護観察は生涯にわたって続くことになります。刑の執行の免除は無期刑の仮釈放者の保護観察を終了させる措置として運用されていますが、認められる例はごくわずかです。

社会復帰がうまくいかないことも

無期懲役で長期間の収容を経て社会に戻るため、生活の立て直しは容易ではありません。

帰る場所がない人の受け皿の一つが更生保護施設です。法務省によると、更生保護施設は全国に102施設あり、そのほとんどは法務大臣の認可を受けた更生保護法人によって運営されています。

更生保護施設は、刑事施設を仮釈放された人や満期釈放になった人などに宿泊場所や食事を提供し、社会復帰や自立に向けた指導や援助を行う民間の施設です。滞在できるのは原則として半年ほどで、その間に新しい仕事と住まいを探す必要があります。

ところが、無期懲役の在所期間は仮釈放に至るまで30年を大きく超えます。令和6年末の時点で、無期刑受刑者の23.0%が70歳代、9.2%が80歳代以上です。高齢であることを理由に就職を断られることも少なくありません

住まいの確保も簡単ではありません。賃貸住宅を借りようとしても、現在の住所として更生保護施設の住所を記載することになるため、事情を察した貸主から契約を断られるケースもあります。

こうして行き場を失った結果、再び罪を犯してしまう人もいます。

再犯で仮釈放が取り消されて再び刑務所に収監されることも

一度仮釈放が認められても、再び罪を犯して罰金以上の刑に処せられると、仮釈放が取り消されることがあります。取り消されれば、刑務所に戻って服役することになります。

無期懲役の仮釈放の取消事由となるのは、次のような場合です(刑法29条1項)。

  • 仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき
  • 仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき
  • 仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき
  • 仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき

たとえば、仮釈放中に道路交通法に違反したり、他人の住居に侵入して盗みをはたらいたりした場合には、罰金以上の刑に処せられることがあり、その場合には仮釈放が取り消されるおそれがあります。

死刑ではなく無期懲役になる分かれ目

死刑と無期懲役を分ける明確な基準は、法律に定められていません。まず両者がどう違うのかを確認したうえで、裁判所が重視している事情を見ていきます。

無期懲役と死刑の違い

死刑と無期懲役では、どちらが重い刑罰なのでしょうか。日本の刑罰の中では死刑が最も重く、無期懲役はその次に重い刑罰です。死刑が生命を奪う刑(生命刑)であるのに対し、無期懲役は身体の自由を奪う刑(自由刑)で、両者は次の点で異なります。

比較の項目 無期懲役 死刑
刑罰の内容 身体の自由を奪う 生命を奪う
作業の義務 課されることがある 課されない
収容施設 刑務所 拘置所
仮釈放の可能性 あり なし

死刑は刑事施設内において絞首して執行され、言渡しを受けた者は執行に至るまで刑事施設に拘置されます(刑法11条)。

また、無期懲役の受刑者には仮釈放の可能性がありますが、死刑に仮釈放は認められていません。仮釈放は「拘禁刑に処せられた者」に改悛の状があるときに認められる制度であり(刑法28条)、死刑はその対象に含まれていないからです。

裁判所が死刑と無期懲役を分けるにあたって重視しているのは、次のような事情です。

殺害された被害者の数と犯人の年齢

大きな比重を占めるのが、殺害された被害者の人数です。被害者が1人の事件では死刑が選択されることは多くなく、無期懲役にとどまる傾向にあります。2人以上が殺害された事件では死刑が選択される例が現れ、被害者が4人以上の事件ではほとんどが死刑判決となっています。被告人が成人で3人以上を殺害した事件では、死刑が選択される可能性は高いといえるでしょう。

一方、犯行時18歳未満の者に死刑を科すことはできません(少年法51条1項)。18歳・19歳の少年についても適用は極めて慎重で、死刑が確定した事例は被害者4人の事件に限られていましたが、犯行当時18歳と30日の少年が被害者2人の事件で死刑判決を受け、後に確定した例(光市母子殺害事件)もあります。

犯行の動機や態様の悪質さ

被害者が1人であっても、死刑が選択された事件はあります。どれほど身勝手な動機によるものか、どれほど残虐な方法で殺害したかが判断に大きく影響するためです。

計画性の有無も分かれ目になります。はじめから殺害して金品を奪う計画で犯行に及んだ場合は死刑に傾き、金品を奪う目的で出向いた先で結果として殺害した場合は無期懲役に傾きます。反省の態度がまったく見られない場合も、死刑に傾きやすいといえるでしょう。

更生の可能性

死刑は生命を奪う極刑であるため、被告人に更生の可能性がない、あるいは著しく低いといえることが求められます。

社会に復帰すれば再び同じような事件を起こすおそれがあると判断される場合は、死刑判決を受ける可能性が高まります。更生の余地が残されていると評価される場合には、無期懲役に傾きます。更生の可能性は、事件後の言動だけでなく、犯行内容の残虐さなどからも推し量られます。

法定刑に無期懲役が定められている罪

法定刑とは、法律にあらかじめ定められた、その罪の刑の範囲です。有罪と認定された場合は、原則としてこの範囲内で刑が決まります。

※以下の法定刑は2025年6月の改正後の条文表記です。条文中の「拘禁刑」は、改正前の「懲役」または「禁錮」にあたります。

死刑や無期懲役が定められた罪を重い順に確認したい方は「日本で重い罪ランキング|死刑になる罪19種類を法定刑順に解説」をご覧ください。

殺人罪

殺意をもって人を殺した場合に問われる罪で、法定刑は「死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑」です(刑法199条)。

実務では殺意の有無が争われることが多く、殺意がなかったと認定されれば傷害致死罪となります。その法定刑は「三年以上の有期拘禁刑」で無期懲役はありません(刑法205条)。殺人罪の構成要件や関連する罪については「刑法199条の殺人罪とは?構成要件・刑罰・関連する罪の種類」で詳しく解説しています。

強盗致死傷罪・強盗殺人罪

強盗の機会に人を負傷させた場合は強盗致傷罪で「無期又は六年以上の拘禁刑」、死亡させた場合は強盗致死罪で「死刑又は無期拘禁刑」です(刑法240条)。殺意をもって強盗を行う強盗殺人罪も同じで、死刑か無期懲役かが問われます。強盗致死罪と強盗殺人罪の違いや未遂の処罰については「強盗致死罪・強盗殺人罪とは?その違いと未遂の処罰について解説」もあわせてご確認ください。

強盗の罪と不同意性交等の罪をあわせて犯した場合は「無期又は七年以上の拘禁刑」、その行為により人を死亡させたときは「死刑又は無期拘禁刑」です(刑法241条1項・3項)。

不同意性交等致死傷罪

不同意性交等罪は、同意しない意思を形成し、表明し、又は全うすることが困難な状態にさせ、あるいはその状態に乗じて性交等をした場合に成立します(刑法177条1項)。この罪や未遂罪を犯して人を死傷させたときは「無期又は六年以上の拘禁刑」に処せられます(刑法181条2項)。

不同意わいせつ致死傷罪

不同意わいせつ罪は、上記のような状態にさせ、又はその状態に乗じてわいせつな行為をした場合に成立します(刑法176条1項)。この罪や未遂罪を犯して人を死傷させたときは「無期又は三年以上の拘禁刑」が科されます(刑法181条1項)。不同意わいせつ等致死傷罪の詳しい内容については「不同意わいせつ等致死傷罪(旧強制わいせつ等致死傷罪)とは?」で詳しく紹介しています。

現住建造物等放火罪

現に人が住居として使用している建造物や、現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑に放火して焼損させた罪で、法定刑は「死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑」です(刑法108条)。

「現に人が住居として使用している」建造物とは、犯人以外の人が起臥寝食する場所をいい、放火の時点で人がいたかどうかは問いません。火が媒介物を離れて建物に燃え移り、独立して燃え続ける状態になれば、その物の効用が失われていなくても既遂になるのが判例(大判大正7年3月15日)の立場です。

現住建造物等浸害罪

出水させて、人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、鉱坑を浸害した罪で、法定刑は「死刑又は無期若しくは三年以上の拘禁刑」です(刑法119条)。出水とは水門の破壊や堤防の決壊などをいいます。

汽車転覆等及び同致死罪

現に人がいる汽車や電車を転覆・破壊した罪、現に人がいる艦船を転覆・沈没・破壊した罪で、法定刑は「無期又は三年以上の拘禁刑」です(刑法126条1項・2項)。これらの罪により人を死亡させたときは「死刑又は無期拘禁刑」です(同条3項)。鉄道や標識を壊して往来の危険を生じさせ、汽車や電車を転覆させて人を死亡させた場合も同じ刑です(刑法127条、126条3項)。

水道毒物等混入致死罪

水道により公衆に供給する飲料の浄水やその水源に毒物などを混入した罪で、法定刑は「二年以上の有期拘禁刑」です(刑法146条前段)。これにより人を死亡させたときは「死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑」です(同条後段)。

このほか、身代金目的略取等罪・通貨偽造罪・外患援助罪にも無期懲役が定められています。身代金を目的に人を略取・誘拐する身代金目的略取等罪は「無期又は三年以上の拘禁刑」(刑法225条の2)、偽札を作る通貨偽造罪は「無期又は三年以上の拘禁刑」(刑法148条)、外国からの武力の行使に加担する外患援助罪は「死刑又は無期若しくは二年以上の拘禁刑」(刑法82条)です。成立要件や適用例は「外患援助罪とは?適用された事例・判例は?成立要件や罰則を解説」で解説しています。

無期懲役の判決が出た主な事件

ここでは、実際に無期懲役の判決が出た事件を5件紹介します。いずれも大きく報道され、社会的にも関心を集めた事件です。

北九州元漁協組合長射殺事件

1998年、北九州市内の路上で、元漁業協同組合長が何者かに至近距離から拳銃で射殺された事件です。この事件では暴力団の組長ら3人が殺人罪などに問われ、2008年に最高裁でうち2人の刑(無期懲役と懲役20年)が確定しました(北九州元漁協組合長射殺事件)。

その後、同じ組織の総裁らも別の殺人事件などで起訴され、一審は総裁に死刑を言い渡しました。しかし控訴審は1998年の事件については総裁を無罪と判断し、他の事件で有罪としたうえで、総裁の刑を死刑から無期懲役に変更しています。この判決に対しては検察側・弁護側の双方が上告し、2026年8月時点では最高裁で審理が続いています

広島小1女児殺害事件

2005年11月、広島市内で、ペルー国籍の男性が、当時7歳の女児にわいせつな行為をした上、発覚を免れるため女児の頸部を締め付けて殺害した事件です(広島小1女児殺害事件)。男性は殺人罪、死体遺棄罪などに問われました。

2006年7月の第一審判決では、検察側の死刑求刑に対して無期懲役が言い渡されました。その後、審理が二度差し戻される異例の経過をたどり、差戻し後の控訴審で無期懲役が確定しています(広島高等裁判所平成22年7月28日)。

甲府信金OL誘拐殺人事件

1993年8月、山梨県甲府市で、事件当時38歳の男性が身代金を手に入れる目的で、当時甲府信用金庫の女性職員(当時19歳)を誘拐したうえで殺害し、その死体を川に遺棄した事件です(甲府信金OL誘拐殺人事件)。

第一審で検察側は死刑を求刑しましたが、裁判所は無期懲役を言い渡しました。死刑を求める検察側と有期懲役を求める弁護側の双方が控訴したものの、東京高等裁判所はいずれの主張も退けて第一審を維持し、1996年5月に無期懲役が確定しています(東京高等裁判所平成8年4月16日判決)。

司ちゃん誘拐殺人事件

1980年8月、山梨県で、当時5歳の保育園児が、事件当時36歳の電気工事業の男性によって身代金目的で誘拐されて殺害され、死体が山林に遺棄された事件です(司ちゃん誘拐殺人事件)。

1982年3月、第一審は、弁護側の心神喪失・心神耗弱の主張を退けて、検察官の求刑どおり死刑判決を言い渡しました。ところが1985年3月の第二審は、「原審の量刑は重きに失し、維持しがたい」として無期懲役に変更しました。双方が上告しなかったため、この無期懲役が確定しています(東京高等裁判所昭和60年3月20日判決)。

安倍元首相銃撃事件

2022年7月、奈良市で街頭演説中だった安倍晋三元首相が、事件当時41歳の男性に手製の銃で撃たれて死亡した事件です(安倍晋三銃撃事件)。男性は殺人罪や銃刀法違反の罪に問われました。

2026年1月、奈良地方裁判所は「卑劣で極めて悪質な犯行」であり、安倍元首相に落ち度は何ら見当たらないとして、検察官の求刑どおり無期懲役の判決を言い渡しました。母親が宗教団体に多額の献金をして家庭が困窮したという生い立ちについては、不遇な面は大きいとしながらも、殺人の意思決定に大きく影響したとは認められないとしています。この判決に対しては弁護側が控訴し、2026年9月時点では大阪高等裁判所で審理が続いています。

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無期懲役は刑期の定めがない刑罰で、仮釈放が認められれば出所できます。ただし、実際に仮釈放されるまでには30年を大きく超える期間がかかり(令和6年の実績では38年1月)、出所できる割合は1%にも届きません。仮釈放が認められても、無期懲役の受刑者は生涯にわたって保護観察のもとに置かれます。

死刑との分かれ目は、殺害された人数や犯行の計画性・残虐さ、更生の可能性などの総合判断です。法定刑に無期の刑が定められた罪では、弁護活動の内容が結論に影響し得ます。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

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