「逮捕されたら会社に連絡が行ってしまうのだろうか…」
事件を起こしてしまい、このようにお考えの方もいることでしょう。
勤務先に知れたら解雇されるのではという不安からこのように思われるのも当然です。
結論から言いますと、逮捕されても原則として会社に連絡はいくことはありません。ただし、場合によっては会社に連絡が行ってしまうこともあります。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 逮捕された場合に警察が会社に連絡するケース
- 逮捕されたら会社を解雇されるのか
- 逮捕されたことを会社に知られないためにすべきこと
について解説していきます。
この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。
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目次
逮捕されても原則として会社に連絡はされない
まず、警察に逮捕されたからといって、必ず警察が会社に連絡するわけではありません。
どんな罪を犯し、どんな罪で逮捕されたのかなどの情報は極めて秘匿性が高い情報です。逮捕されたとはいえ、プライバシーを保護される権利は被疑者にも保障されているわけですから、仮に警察が必要性も合理性もなく会社に連絡し、秘匿性が高い情報を会社に漏らしたとなれば、プライバシー権を侵害されたとして警察が被疑者から訴えられかねません。
警察がそうしたリスクを承知の上で、むやみやたらに会社に連絡することは考えられません。
警察が会社に連絡するケースは?
もっとも、次のようなケースでは、例外的に、警察が会社に連絡することがあります。
会社関連の事件を起こした場合
まず、会社関連の事件を起こした場合です。
会社関連の事件とは、たとえば、
- 会社のお金を横領した
- 会社の物品を勝手に持ち帰った
- 会社内で窃盗、暴行、盗撮などの事件を起こした
など、会社が被害者となる事件や会社内が犯行場所となるような事件のことです。
こうした事件では、事件の被害者・目撃者である経営者・社長、上司、同僚に対する事情聴取、会社内での実況見分などを行わざるを得ず、その前提として警察が会社に連絡することは避けられません。なお、警察が会社の捜索を行う場合は連絡せずにいきなり実行されるでしょう。
被疑者が突然いなくなると周囲が困る人の場合
次に、被害者が突然いなくなると周囲が困る人の場合です。
たとえば、
- 会社の経営者、社長
- 会社の取締役
- 医師
- 学校の教員
などです。
こうした人を逮捕する場合は、警察があらかじめ関係者に逮捕の情報を伝えることがあります。なぜなら、突然、逮捕すると会社等の経営に大きな損害が生じ、事件に関係ない人にまで悪影響を及ぼしてしまう可能性があるからです。
もちろん、逮捕前に情報が外部に漏れると大変なことになりますから、警察は逮捕の秘密を守ってくれる相手だけを選び、内密に行動するよう誓約をとりつけた上で、逮捕の情報を伝えるようにしています。
被疑者の責任能力が疑われる場合
次に、被疑者の責任能力が疑われる場合です。
事件の内容、犯行動機、被疑者の言動などから、捜査機関(警察・検察)が被疑者の責任能力があることに疑いを抱く場合は、捜査機関から会社に連絡がいくことが多いです。関係者から事情聴取するなどして被疑者の普段の勤務態度等を捜査し、特段問題がなければ責任能力があり、罪に問えるとの判断につなげることができるからです。なお、不起訴や無罪獲得、刑の軽減のために弁護士から会社に連絡をすることもあります。
重大事件で逮捕された場合
次に、被疑者が、
- 殺人
- 放火
- 強盗殺人
などの重大事件で逮捕された場合です。
重大事件では、被疑者の責任能力の有無が疑われることが比較的多く、捜査機関が被疑者の普段の勤務態度等を捜査するため、会社に連絡することがあります。
被疑者が公務員の場合
最後に、被疑者が公務員の場合です。
必ず連絡されるわけではありませんが、逮捕された場合、再犯の場合、重大事件を起こした場合などは職場に連絡されます。
微罪処分で会社に連絡されることはある?
微罪処分とは、ある一定の罪のうち特に軽微な在宅の事件について、警察官が検察官に事件を送致せずに、警察官の厳重注意や訓戒等で事件を終わらせてしまう処分のことです。
微罪処分となれば検察官に事件が送致されませんから、まず起訴されることはありません。起訴されないということは刑事裁判や懲役、罰金などの刑罰を受けることはありません。
警察官が微罪処分とする際に、被疑者の生活を監督する身元引受人を立てるよう求められることがあります。通常、親や子供などの身内を立てることが多いですが、本人が希望する場合は会社の上司にお願いすることも可能です。ただ、警察から会社の上司にお願いすることはありません。本人が希望する場合も、本人が会社の上司に連絡してお願いするしかありません。
逮捕されたら会社を解雇される?
会社員の方が逮捕された場合、気になることが「会社に解雇されてしまうのではないか?」ということではないでしょうか?では、逮捕されただけで会社に解雇されてしまうのでしょうか?
解雇するには就業規則に定めが必要
まず、そもそも会社員を解雇するには、会社の就業規則に「~の場合は解雇する」というように、解雇の条件と解雇する旨がはっきりと定められていなければなりません。
解雇されると収入を失い、生活に困る人が出てきます。そのような重大な処分である解雇について何の定めも設けなかったとすれば、会社経営者の都合で自由に会社員を解雇できることになってしまいます。しかし、これでは会社員は安心してその会社で働くことができません。そのため、解雇の定めは会社員が誰でも見ることができる就業規則にきちんと設けておかなければならないとされているのです。
解雇の条件
また、就業規則に解雇の条件と解雇する旨の定めが設けられているからといって、必ず解雇されるわけでもありません。
会社と会社員との間の労働契約について定める労働契約法の第15条には、解雇の理由に合理性がなく、解雇が社会通念上相当と認められない場合は、解雇は無効である旨の定めが設けられています。
つまり、会社が会社員を解雇するには、解雇が客観的にみて合理的な理由に基づくものであることと社会通念に照らして相当と認められることが必要というわけです。
逮捕を理由とした解雇は無効
では、逮捕を理由とした解雇は有効でしょうか?
この点、逮捕の段階では、その罪の犯人である「疑い」が生じただけで犯人であることが確定したわけではありません。つまり、逮捕後の捜査の結果、もしかしたら犯人ではないことが判明するかもしれないのです。
それにもかかわらず、逮捕されたことをもって会社員を解雇することはあまりにも合理性を欠く無効な解雇と言わざるをえません。
仮に、就業規則に「逮捕されたか解雇できる」旨の定めが設けられており、会社がその定めを根拠に解雇したとしても、そもそもその定め自体が無効であることから会社の解雇も無効ということになります。
なお、通常、会社は就業規則に「禁錮(あるいは罰金)以上の刑に処せられたとき(に解雇することができる)」などの定めを設けていることが多いですが、仮に禁錮以上の刑に処せられた場合でも、その解雇が社会通念に照らして相当といえなければ解雇は無効です。
解雇が社会通念に照らして相当か否かは、犯罪事実の内容、情状、会社の種類・規模、会社内での地位・役割、影響力、会社員の前科・前歴、会社内での処分歴、会社内での地位・役割、影響力、職種などの諸要素を総合的に勘案して判断されることになります。
逮捕されたことを会社に知られないためには?
逮捕されたことを会社に知られないようにするためには、次の対応をとることが考えられます。
逮捕前に示談する
まず、被害者と示談できる事件であれば、逮捕される前に被害者と示談することです。
会社に事件のことがバレてしまう可能性が高いのは、逮捕されたときでしょう。報道はもちろん、会社を突然休むことによってものちのちバレてしまうことがあります。そのため、今の段階で逮捕されていないのであれば、逮捕される前に手を打っておくことが大切で、そのための手段の一つが被害者との示談交渉です。
被害者との示談交渉では、被害者に捜査機関へ被害届や告訴状を提出しないことに合意してもらうことが可能です。被害者と示談できれば、被害者が捜査機関に被害申告や告訴をせず、捜査機関に事件が発覚することを防ぐことができます。捜査機関に事件が発覚しなければ捜査機関に逮捕されず、よって、会社にバレることを防ぐことができます。
出頭する
次に、逮捕前にとれる対応として、捜査機関に出頭することが考えられます。
逮捕されるのは罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがあると判断されるからですが、出頭することで罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないと判断され、逮捕の回避につなげることができます。
弁護士に相談する
次に、弁護士に相談することです。
逮捕前に示談交渉、出頭するといっても個人の力ではやれることに限界があります。
事件の内容によっては、そもそも被害者が示談交渉に応じてくれない可能性もあります。仮に応じてくれたとしてもなかなか話がまとまらず、交渉は破談となることも考えられます。
また、出頭するといっても単に捜査機関に出向くだけでは不十分です。準備不足のまま出向くと反対に逮捕されてしまうことも考えられます。出頭前に十分な準備が必要です。
個人の力をカバーするには弁護士の力が必要不可欠です。弁護士であれば交渉に応じてもいいという被害者も多くいます。また、個人で交渉を行うよりかは示談できる可能性ははるかに大きいです。出頭するにしても、弁護士のアドバイスを受けながら準備を進めることが効果的です。
逮捕はいつかわかりませんから、相談ははやめに行いましょう。
当事務所では、被害者との示談交渉、自首や出頭への付き添いなど逮捕の回避に向けての弁護活動を得意としております。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、会社に逮捕された事実が発覚する前に対処したい方は当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。お力になれると思います。
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