
執行猶予中に再び罪を犯してしまい、「このまま刑務所に行くことになるのか」と、夜も眠れないほどの不安を抱えていないでしょうか。あるいは、ご家族が執行猶予中に逮捕され、「今すぐ何をすればいいのか分からない」と気が動転している方もいるかもしれません。
結論から言うと、執行猶予中に再犯しても、必ず刑務所に行くことになるわけではありません。新たな事件で確定した刑の種類によって取り消されるかどうかが決まり、不起訴の獲得や再度の執行猶予という、取り消しを免れる道も残されています。
この記事では、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- 執行猶予中の再犯で刑務所に行くケース・行かないケース
- 再犯の発覚から逮捕・判決までの流れ
- 不起訴・再度の執行猶予で取り消しを防ぐ方法
- 薬物・窃盗・性犯罪など類型別の再犯対策
なお、執行猶予中の再犯は時間との勝負であり、逮捕直後から動き始めるほど取り消しを回避できる可能性が高まります。この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。
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執行猶予中に再犯するとどうなる?
執行猶予とは、有罪判決で言い渡された刑の執行を、一定の期間だけ先延ばしにする制度です。猶予期間中に再犯がなければ、刑の言渡しはその効力を失います(刑法第27条)。なお、執行猶予には刑の全部の執行を猶予する「全部執行猶予」と、一部のみを猶予する「一部執行猶予」があり、本記事では主に全部執行猶予を前提に解説します。
※2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。本記事では改正後の「拘禁刑」の表記で解説しています。
なお、ある年に刑法犯で検挙された人員に占める、過去にも検挙歴のある「再犯者」の割合(再犯者率)は46.2%(令和7年版犯罪白書)と、高い水準で推移しています。執行猶予中の再犯は、決して珍しいケースではありません。
執行猶予中に再犯したからといって、その時点で身柄を刑務所に移されるわけではありません。執行猶予が取り消されるかどうかは、新たな事件で確定した刑の種類と内容によって決まります。取り消しには「必ず取り消される場合(必要的取消)」と「裁判官の判断で取り消される可能性がある場合(裁量的取消)」の2種類があります。
必ず取り消される場合(必要的取消)
刑法第26条は、以下のいずれかに該当するとき、執行猶予を必ず取り消すよう定めています。
- 執行猶予期間中にさらに罪を犯し、拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき(つまり実刑の場合)
- 執行猶予の判決が確定する前に犯していた別の事件(余罪)について、拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき(つまり実刑の場合)
- 執行猶予の判決が確定する前に、他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられていたことが事後的に発覚したとき(ただし、発覚した前刑が執行猶予付きだった場合や、刑の執行終了から5年以上経過している場合は必要的取消の対象外)
①のケースが典型ですが、②③の「余罪」「前歴の発覚」でも必要的取消の対象になる点は見落とされがちです。執行猶予を受ける時点で自分でも把握していない前件があとから発覚するケースでも、取り消しを免れないことがあります。
執行猶予中に再犯をして取り消しが確定すると、前刑で猶予されていた刑期と今回の罪の刑期が合算され、その合計期間を服役することになります。例えば、窃盗罪で拘禁刑1年執行猶予3年の判決を受けた後、執行猶予期間中の傷害事件で拘禁刑2年の実刑判決を受けた場合は、合計3年間、刑務所に収容されることになります。なお、前科がある状態で再度罪を犯した場合の量刑上の扱いについては、累犯・累犯加重とは?再犯との違いや執行猶予との関係を解説でも詳しく解説しています。
取り消される可能性がある場合(裁量的取消)
刑法第26条の2は、以下のいずれかに該当するとき、裁判所の裁量で執行猶予を取り消すことができると定めています。
- 執行猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金刑に処せられたとき
- 保護観察付き執行猶予中に、遵守すべき事項に違反し、その情状が重いとき
- 執行猶予の判決が確定する前に、他の罪について執行猶予付きの拘禁刑に処せられていたことが発覚したとき
裁量的取消の場合、必ず取り消されるわけではなく、被害弁償の状況・反省の深さ・再犯のおそれ・前回判決との関係性など複合的な事情を踏まえて裁判官が判断します。実務上、罰金刑にとどまった場合に執行猶予まで取り消される例はそれほど多くありませんが、「罰金なら絶対に大丈夫」と断言できるものでもなく、検察官が取消請求を行い認められた事案もあります。
特に注意が必要なのが交通事故です。スピード違反や信号無視のような反則金で処理される違反は刑事手続きの対象外ですが、飲酒運転・無免許運転・ひき逃げ・重大な人身事故は刑事事件として起訴される可能性があります。過失運転致傷や危険運転致傷に問われると拘禁刑が科される場合があり、必要的取消のリスクが生じます。「これくらいなら大丈夫」という油断が命取りになりかねないため、執行猶予期間中は運転自体を極力控えることが賢明です。
また、保護観察付き執行猶予を受けている場合は特別なルールがあります。保護観察官や保護司との定期面談・転居の届出・就労への努力などの遵守事項が課されており、これを守らず、警告を受けても態度を改めない悪質なケースでは、保護観察所長が検察官に取り消しを申し出て、検察官が裁判所へ取消しを請求し、裁判所が取り消しを判断する流れとなります。取り消しを防ぐための具体的な対策については、執行猶予の取り消しとは?具体例と取り消しを防ぐ3つの対策で解説しています。
執行猶予中に再犯した場合の手続きの流れ
執行猶予中に再犯しても、その時点で即座に刑務所へ連行されるわけではありません。必要的取消の場合でも、新たな事件で実刑判決(執行猶予の付かない拘禁刑以上の判決)が確定した時点で前の執行猶予が取り消されます。それまでの間、通常の刑事手続きが進行します。
逮捕・取り調べ
再犯が発覚すると、逮捕または任意での出頭・取り調べを受けることになります。執行猶予中という事情は、逃亡や証拠隠滅のリスクが高いとみなされやすく、通常の初犯のケースよりも逮捕・勾留される可能性が高まります。
在宅事件として扱われた場合でも、取り調べへの対応や供述の内容が後の起訴判断に影響するため、早い段階で弁護士に相談しておくことが重要です。逮捕直後の弁護士への連絡手段やタイミングについては「逮捕後すぐ弁護士を呼ぶには?呼び方・費用・連絡方法を解説」で詳しく解説しています。
勾留・起訴の判断
身柄を拘束された場合、逮捕から48時間以内に検察へ送致(事件の身柄や書類を検察官へ引き継ぐこと)され、検察は24時間以内に勾留請求の要否を判断します。勾留が決まると身柄拘束は原則10日間に及び、延長された場合は最長20日間に達します。
この勾留期間中に、検察官が起訴するか否かを決定します。執行猶予中であるという事実は、起訴判断において不利な事情として働きます。不起訴を獲得できれば執行猶予は取り消されませんが、略式起訴(正式な裁判を開かず、書面審理で罰金などを科す簡易な手続き)で罰金刑が確定した場合は裁量的取消の対象となるため、弁護士と十分に方針を検討する必要があります。不起訴処分の意味や前歴への影響については、不起訴とは|無罪との違いと不起訴になる理由・前科前歴の有無をご参照ください。
刑事裁判と執行猶予取り消し審理
執行猶予中の再犯で正式起訴され有罪判決を受けると、実刑となる可能性が高く、前の執行猶予も取り消されるのが原則です。起訴後は保釈請求が可能ですが、執行猶予中の再犯では逃亡・証拠隠滅のおそれが高いと判断されやすく、保釈が認められないケースも少なくありません。執行猶予中の再犯は「裁判所から与えられた猶予の機会を活かせなかった」と評価されるため、量刑判断において不利に働き、特に前回と同じ種類の罪を再び犯した場合は、更生の可能性が乏しいと評価され、実刑となる可能性が高くなります。実際、令和7年版犯罪白書によると、前科のある成人のうち同一罪名の前科を持つ人は50.3%を占めており、同じ種類の犯罪が繰り返されやすい実態がうかがえます。
裁判所は新たな事件の審理と並行して、元の執行猶予付き判決をどう扱うかを判断します。拘禁刑以上の実刑判決が確定すれば必要的取消として前の刑期と合算して執行され、罰金刑にとどまった場合は裁量的取消の判断に委ねられます。
なお、執行猶予が取り消されて実刑が確定するのは「判決が確定した時点」であるため、控訴・上告中は執行猶予の状態が継続します。ただし、2025年6月施行の改正刑法により、執行猶予期間中の再犯(罰金以上の刑に当たるもの)で公訴提起された場合は、猶予期間が満了しても刑の言渡しの効力が継続するものとみなされるようになりました(刑法第27条第2項)。従来は判決確定前に猶予期間が満了すれば取り消しを免れる場合がありましたが、改正後はこの方法は通用しなくなっています。いずれにせよ、最終的な確定まで弁護士を通じて粘り強く対応することが重要です。
執行猶予中に再犯してしまった場合にすべきこと
執行猶予の取り消しを避ける方法は、大きく分けて2つあります。1つは不起訴・無罪を獲得すること、もう1つは再度の執行猶予を認めてもらうことです。どちらを目指すかは事件の内容によりますが、早期の弁護士相談がいずれの場合も前提となります。
不起訴・無罪獲得を目指す
執行猶予中に再犯して執行猶予が取り消されるのは、「有罪判決」を受けることが前提ですので、裏を返せば、不起訴処分を得るか、起訴されても無罪となれば、執行猶予は取り消されません。
不起訴を獲得するには、被害者との示談、再犯可能性を否定する証拠の提出、贖罪寄付(反省の意思を示すために慈善団体などへ寄付を行うこと)が重要となります。特に、被害者がいる犯罪では示談が成立したかどうかが、起訴猶予(不起訴)となるかどうかの分かれ目となりますが、被害者が被疑者との直接のやり取りを避ける傾向があるため、弁護士への依頼による交渉が必要な場合が多いでしょう。示談の具体的な流れやメリットについては「刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説」で詳しく解説しています。
再度の執行猶予の獲得を目指す
再度の執行猶予とは、判決時に執行猶予中の方が、判決で再び執行猶予を受けることをいいます。
執行猶予期間中の再犯は、反省の態度が見られない、あるいは、社会で更生させることが困難であるとして、執行猶予が取り消されて実刑となるのが一般的です。しかし、以下の4つの要件を全て満たすことで、再度の執行猶予が得られる可能性があります。
- ①前に拘禁刑以上の刑に処せられたが、その刑の全部の執行を猶予されたこと(本記事の文脈では「現在執行猶予中」に該当)
- ②今回の罪の判決で2年以下の拘禁刑の言い渡しを受けること
- ③情状に特に酌量すべきものがあること
- ④再度の執行猶予に保護観察が付されている期間内の再犯でないこと(改正前は初度の保護観察付き執行猶予中の再犯でも再度の執行猶予は不可でしたが、2025年6月施行の改正刑法により、初度の保護観察付き執行猶予中の再犯でも再度の執行猶予が可能になりました。ただし、再度の執行猶予に保護観察が付された期間中にさらに罪を犯した場合は不可です)
しかし、本来であれば執行猶予を取り消すのが相当であるところを再び執行猶予を付けるわけですから、その要件もかなり厳しく、再度の執行猶予の獲得率は約4%程度に留まります(参考:2024年 検察統計(e-Stat))。
この厳しい獲得率において再度の執行猶予を受けるためには、要件③の「情状に特に酌量すべきものがある」と裁判官に認めてもらわなくてはなりません。具体的には、被害弁償・被害者との示談による謝罪、家族による監督・身元引受、犯行グループからの絶縁など、更生可能性と再犯防止の環境が整っていることを示す必要があります。「刑務所ではなく社会内で更生させることが被告人にとって適切だ」と裁判官を説得できるかどうかが、判断の分かれ目です。
再度の執行猶予の要件や獲得確率についてさらに詳しくは「再度の執行猶予とは?条文や要件、獲得確率を解説」をご参照ください。
再犯防止への取り組みを示す
不起訴や再度の執行猶予を目指す上で、示談や反省の意思表示と並んで重要なのが、「二度と同じことをしない」という実績と環境を具体的に整えることです。口頭での謝罪・反省だけでは検察官や裁判官を説得できず、行動で示す必要があります。
特に以下のような犯罪では、依存傾向や衝動制御の問題が再犯の背景にあることが多く、専門的な対応が欠かせません。実際、覚醒剤取締法違反では同一罪名による再犯者率が67.6%(令和7年版犯罪白書)に上るなど、依存性の高い犯罪ほど再犯リスクが高い傾向にあります。
- 薬物犯罪(覚醒剤・大麻等):依存症専門医療機関への通院・入院、自助グループ(NA等)への参加
- 窃盗・万引き(クレプトマニア):精神科・心療内科での治療継続、家族による監督体制の構築
- 性犯罪(痴漢・盗撮等):性依存専門のカウンセリング、再犯防止プログラムへの参加
こうした取り組みを弁護士を通じて裁判所に示すことで、「社会内での更生が可能である」という主張に説得力が生まれます。治療や支援機関への繋ぎも含め、弁護士に早期に相談することが重要です。
執行猶予中の再犯は、一刻も早く弁護士に相談してください
再び罪を犯してしまっても、諦めるのはまだ早いです。不起訴を獲得できれば執行猶予は取り消されませんし、起訴された場合も再度の執行猶予という可能性が残されています。ただし、そのどちらを実現できるかは、逮捕後どれだけ早く動けるかにかかっています。
被害者との示談交渉には時間がかかります。検察官が起訴・不起訴を判断するまでの限られた期間に示談を成立させるには、逮捕直後から弁護士が動き始めなければ間に合いません。再犯防止に向けた治療や環境整備も、着手が早いほど裁判官への説得力が増します。「相談はもう少し状況が落ち着いてから」という判断が、取り返しのつかない結果を招くこともあります。すでに警察から連絡が来ている、あるいはご家族が逮捕されたという場合は、一刻も早くご相談ください。
当事務所は刑事事件に注力しており、執行猶予中の再犯案件を含む示談交渉・不起訴処分の獲得について豊富な実績があります。ご依頼者やご家族の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動き全力でサポートいたします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお早めにご連絡ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

