起訴猶予とは不起訴処分の理由の一つ|前科はつく?処分までの期間は?弁護士が解説
  • 起訴猶予とはどういう意味だろう…
  • 起訴猶予処分になれば前科・前歴はつく?
  • 起訴猶予になるまではどれくらいの期間がかかるのだろう…

この記事では、刑事事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。

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起訴猶予とは

起訴猶予は不起訴理由の一つです

そもそも不起訴とはどういう意味?起訴とはどう違うの?という方はこちら

起訴か不起訴かは検察官が独断で決めることができます。そして、検察官が、集めた証拠から「犯罪が成立することは明白」と判断したものの起訴を見送る、すなわち不起訴とするのが起訴猶予です。

本来、犯罪が成立することが明白な場合は起訴され、刑事裁判にかけられてもおかしくはありません。しかし、犯人や事件の属性によっては、起訴して刑事裁判にかけるよりも、それを避けることの方が犯人の更生にとってはよいケースもあります。

検察官は事件の全体像をもっとも把握しうる立場であるため、検察官には起訴するか不起訴にするかの広い裁量権が与えられています。これを起訴裁量(便宜)主義といいます(刑事訴訟法247条、248条)。そして、検察官は起訴か不起訴かを判断するにあたって主に次の事情を考慮します。

犯罪自体に関する情状(犯情)
  • 犯行態様
  • 犯行動機
  • 犯行の結果 など
犯情以外の情状(一般情状)
  • 被疑者の年齢、性格、境遇
  • 被疑者の反省の有無及びその程度
  • 被害弁償・示談の有無
  • 前科・前歴の有無
  • 被疑者の更生意欲
  • 周囲(家族など)の援助の有無 など

起訴猶予以外の不起訴理由

不起訴理由は起訴猶予以外にも様々な理由があります。以下では、その一部をご紹介します。

嫌疑不十分

被疑事実について、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分な場合の不起訴理由です。

嫌疑なし

被疑事実について、被疑者が犯人でないことが明白なとき、または、犯罪の成否を認定すべき証拠がないことが明白な場合の不起訴理由です。真犯人が現れるなど人違いと判明した場合も嫌疑なしにあたります。

刑事未成年

被害者が犯罪を犯した当時14歳未満の場合は犯罪が成立しません。この場合の不起訴理由が刑事未成年です。

心神喪失

被疑者が犯行時に心神喪失であったことが判明した場合の不起訴理由です。

罪とならず

刑事未成年及び心神喪失として不起訴にする場合を除き、被疑者の行為が犯罪の構成要件に該当しないとき、または正当防衛、緊急避難など犯罪の成立を阻却する事由が存在することが証拠上明白な場合の不起訴理由です。

親告罪の告訴の取消し

親告罪の告訴の取消しは、被害者などの告訴権者に告訴されたものの、その後の、告訴が取り消された場合の不起訴理由です。器物損壊罪(刑法261条)などの親告罪は、起訴時に告訴権者の告訴がなければ自動的に不起訴となります。

不起訴の7割以上が起訴猶予

令和2年度版犯罪白書「第4節 被疑事件の処理」によれば、令和元年に不起訴処分を受けた人の理由別の人員は次のとおりとなっています。

総数起訴猶予嫌疑不十分告訴の取消し等心神喪失その他
153,759108,30831,8696,2314276,924

※嫌疑不十分は嫌疑なしを含む。
※告訴の取消し等は、親告罪の告訴・告発・請求の欠如・無効・取消しを含む。

この表からすると、不起訴処分を受けた人の総数のうち、7割以上の人が起訴猶予で不起訴となっていることがおわかりいただけると思います。嫌疑不十分は嫌疑なしを含むとされていますが、実務上は起訴猶予が圧倒的に多く、次に嫌疑不十分が多いという印象です。

起訴猶予では前科はつかないが前歴はつく

前科は、起訴され刑事裁判で懲役・罰金などの刑罰を受け、その裁判が確定してはじめてつくものです。しかし、起訴猶予となるということは刑事処分としては不起訴ということですから、起訴猶予の場合、前科はつきません

ただし、前歴はつきます。前歴とは、言い換えると検挙歴のようなもので、逮捕されたかどうか、起訴か不起訴かにかかわらず事件の被疑者として検挙されただけでつきます。

前歴も前科と同様、犯行の常習性などを立証するために使用される証拠ではありますが、刑事裁判を経てついたものではないため前科ほど重要視されるわけではありません。

前科は検察庁で、前歴は警察で厳重に管理され、一般の方に情報が漏れることはありません。

前科がつくことで生活にどのような影響を与えるのか知りたい方は、「前科とはどういう意味?前歴との違いや前科がつく5つのデメリット」も合わせて読んでみて下さい。

起訴猶予と起訴との違い

起訴猶予には「起訴」という言葉が使われているため、起訴猶予は起訴の一部では?と誤解される方もおられます。しかし、起訴猶予と起訴は明確に異なります

前述のとおり、起訴猶予とは刑事処分の一種である不起訴の理由の一つです。したがって、起訴猶予となったということは不起訴になったということと同じ意味です。そして、不起訴になったということは、今後、刑事裁判を受ける必要はなく刑事裁判を受ける必要がないということは懲役、罰金などの刑罰を受けることも、前科がつくこともありません

他方で、起訴は不起訴とは正反対の意味で、検察官が裁判所に対して「被疑者を刑事裁判にかけてください」と意思表示することです。具体的には、起訴状という書面を裁判所に提出し、受理されると刑事裁判が開かれます。そして、裁判で有罪認定され、懲役、罰金などの刑罰を受け、不服申し立て期間(14日間)が経過して裁判が確定すると前科がつきます。

起訴猶予となるまでの期間

起訴猶予となるまでの期間は、あなたが身柄不拘束のまま捜査を受けているのか、逮捕・勾留され身柄拘束のまま捜査を受けているのかで異なります。

身柄不拘束のまま捜査を受けている場合

身柄不拘束ということは、あなたが在宅事件の在宅被疑者として扱われているということです。

在宅事件とは|身柄事件との違い、種類・メリット・注意点を解説

ただ、在宅事件の在宅被疑者として扱われている場合、起訴猶予となるまでの期間は、正直、わかりません。なぜなら、在宅事件の場合、後記の身柄事件と異なり時間的な制約がないからです。

また、検察官は複数の身柄事件、在宅事件を抱えており、一つの事件について集中的に捜査を進めていくことが難しいのが現状です。さらに、在宅事件は身柄事件と異なり時間的な制約がないことから、身柄事件に比べるとどうしても処理を後回しにされ、起訴猶予となるまでにある程度の時間がかかってしまう場合もあります。

もっとも、在宅事件の中には、検察が事件を受理された段階で起訴猶予となることがほぼ決まっている事件も存在します。そうした事件は、検察に事件が受理されてから1週間~2週間程度で起訴猶予となる場合もあります。

身柄拘束のまま捜査を受けている場合

逮捕・勾留されている「身柄事件」の身柄被疑者の場合は、まず逮捕から刑事処分(起訴・不起訴)までの流れを確認しましょう。逮捕から刑事処分までの流れは以下の図のとおりです。

逮捕から刑事処分までの流れ

まず、逮捕されても刑事処分までの間に釈放される可能性があることがおわかりいただけるかと思います。

途中で釈放された場合は、在宅事件、在宅被疑者扱いとなります。そして、逮捕から間もなくして釈放された場合は、まだ捜査がそれほど進んでいませんから起訴猶予となるまでの期間はまだわからないということになります。

他方で、勾留期間の終わりに近づいたころなど捜査がある程度進んだ段階で、起訴猶予の予定で釈放された場合は釈放から1週間~2週間程度で起訴猶予となる場合が多いです。

一方、釈放されずに身柄拘束が継続した場合は、時間的な制約のもと捜査が進められます。すなわち、逮捕から勾留決定までは約3日間、勾留期間は最大で20日ですから、基本的には逮捕から最大約23日以内には起訴・不起訴の判断がなされる、ということになります。

起訴猶予を得るためにやるべきこと

起訴猶予を得るためにやるべきことは、冒頭の「起訴猶予とは」でご紹介した、検察官が起訴・不起訴を判断するにあたって考慮する「一般情状」に関する有利な事実を作ることです。

ここでもう一度、関連する一般情状をおさらいしましょう。

  • 被疑者の反省の有無及びその程度
  • 被害弁償・示談の有無
  • 被疑者の更生意欲
  • 周囲(家族など)の援助の有無

    以下、項目別に具体的にやるべきことをご紹介します。

    反省の態度を示す

    起訴猶予を得るには罪を認めていることが大前提となります。その上で、あなたが今回犯した罪と向き合い、深く反省しているかを第三者にわかる形で示すことが大切です。

    まず、取調べにおいて、警察官や検察官に反省の態度を示し、その旨の供述調書を作ってもらうことが必要でしょう。また、それに加えて被害者が存在する事件では、反省文・謝罪文を作成して弁護士を通じて被害者に渡し、その写しを検察官に提出することも必要です。

    被害弁償・示談交渉する

    被害者が存在する事件では謝罪に加えて被害弁償、示談交渉することが必要です。

    なお、被害弁償と示談交渉は明確に異なります。被害弁償は犯行によって生じた損害をお金で埋め合わせることだけを意味しますが、示談交渉は弁償のこと以外にも取り決めることが多岐にわたります。

    その中でも、起訴猶予を得る上で重要なのが「宥恕条項」です。すなわち、示談交渉において、被害者から「被疑者を処罰しないで欲しい」という積極的な意思表示を得ることができれば、起訴猶予となる可能性は飛躍的に高まります。

    もっとも、被害弁償や示談交渉は弁護士に任せましょう。加害者との接触を嫌う被害者が多いですし、仮に接触できたとしても感情のぶつかり合いから話がうまく進展しない可能性が高いです。また、そもそも被害者と面識がない場合は、捜査機関から被害者の個人情報を得ることからはじめなければなりませんが、捜査機関が加害者であるあなたに被害者の個人情報を教えることはありません。

    更生に向けて活動する

    更生に向けた活動の内容は、犯した罪の内容、犯行動機、犯行に至って経緯・背景などによって異なります。

    たとえば、万引きの前科・前歴を多数持つ主婦が再び万引きしたという場合は窃盗症を疑う必要があり、窃盗症の治療を専門に取り扱う病院に入院あるいは定期的に通院することなどが求められます。そして、本当に入通院したことを検察官にわかってもらうため、病院から発行された診療明細書などを検察官に提出するのです。

    どんな活動をすればよいのかわからない場合は、弁護士に助言を求めましょう

    周囲に援助を求める

    自力で更生の道を歩むことは不可能といっても過言ではありません。いくらご自身に更生の意欲があったとしても、時の経過とともにその意欲は薄れていきますし、検察官からもそうした目で見られていることを自覚する必要があります。

    しかし、周囲の支えがあれば更生の意欲を持ち続けることが可能で、更生可能性もあると判断されやすいです。一番身近なのはご家族でしょうが、ご家族に頼れない場合はNPO団体の職員や職場の上司などに相談してみるのも一つの方法です。

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