- 「刑事告訴」「刑事告発」という言葉をよく聞くけど、そもそもどういう意味だろう…
- 告訴、告発、被害届、起訴との違いがいまいちわからない…
こういった疑問を、刑事事件に強い弁護士が解消します。
この記事を読むことで、告訴や告発の意味、被害届や起訴とどう違うのかなど、告訴・告発についての網羅的な知識を身に着けることができますので最後まで読んでみて下さい。
告訴とは
告訴とは、犯罪の被害者や法律で告訴できると規定されている人(以下、告訴権者といいます)が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことをいいます。
告訴権者が告訴状という書面に必要事項を記入して捜査機関に提出し、受理されれば告訴したことになります。
告訴・告発の方法|告訴状を受理してもらうための5つの注意点とは
告訴権者
主な告訴権者は以下の方です。
- 犯罪により罪を被った方(=被害者)
- 被害者の法定代理人
- 被害者が死亡した場合の配偶者、直系親族又は兄弟姉妹
- 被害者の親族(被害者の法定代理人が被疑者の場合など)
被害者
「犯罪により罪を被った方」とは直接の被害を被った方、という意味です。したがって、ネット上で誹謗中傷を受けた妻(名誉毀損罪の被害者)の夫は被害者にはあたりません。
被害者は人に限らず、法人、国、地方公共団体や法人格のない社団。財団も被害者に含まれます。
被害者が人である場合は、年齢に制限はありませんが、告訴することがどのような意味をもつのかを理解する能力を有することが必要とされています。おおむね15歳前後が一応の基準ですが、告訴能力を13歳11か月で認めた判例(最高裁昭和32年9月26日)、12歳3か月で認めた判例(東京地裁平成15年6月20日)があります。
なお、被害者の告訴能力が問題となりそうな場合は、後述する法定代理人の告訴とあわせて行うのが通例です。
被害者の法定代理人
法定代理人とは親権者(両親、親が離婚した場合の親権をもつ親)及び後見人(親がいない場合の子どもの預け先の施設長など)のことです。
法定代理人は被害者から独立して告訴できます。
「独立して」とは、被害者本人に告訴の意思があるかどうかに関係なく、また、被害者本人の告訴権が消滅(※)しても独立の立場で告訴できるという意味です。
ただ、一度した告訴を取り消す場合は、被害者本人の同意が必要です。
※告訴権が消滅するのは告訴期間が経過した場合です。
被害者が死亡した場合の配偶者、直系親族又は兄弟姉妹
被害者が死亡した場合は被害者の配偶者、直系親族(被害者の親、祖父母など)、兄弟姉妹も告訴できます。
ただし、被害者が「告訴しないで欲しい」など言って死亡した場合など、生前、被害者が告訴して欲しくないことを明らかにしていた場合は告訴できません。
被害者の親族
被害者の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)が告訴できるのは次の場合です。
被害者の法定代理人が、
- 被疑者であるとき
- 被疑者の配偶者であるとき
- 被疑者の四親等内の血族若しくは三親等内の姻族であるとき
被害者の親族は独立して告訴できます。
告訴期間
告訴期間は、一部の罪を除き、告訴権者が犯人を知った日から6か月です。
「犯人を知った日」とは、告訴権者が、犯人が何人であるかを知った日という意味です。
犯人の氏名、住所までを知る必要はありませんが、少なくとも他人と区別できていなければなりません。
犯人を知った日の起算点は「犯罪が終了した日」です。
誰でも閲覧可能な掲示板に被害者を誹謗中傷する内容の書き込みをした名誉毀損の事案では、内容が削除されない限り犯罪が終了したとはいえず、告訴期間は進行しません。
このケースの場合、書き込みが削除されてはじめて「犯罪が終了した」といえ、その時点から告訴期間が進行します。
告訴と親告罪
事件を起訴するか否かは検察官の合理的な判断に基づき、検察官が自由に決めることができるようになっています。しかし、一定の罪については、検察官が起訴するにあたって告訴権者の告訴ができければ検察官が起訴することができないようになっています。
この罪のことを親告罪といいます。
一定の罪が親告罪とされているのは以下の観点から分類されます。
- ①裁判でプライベートなことが公になることで、被害者らのプライバシー権が侵害されることを防止する
- ②犯罪自体が比較的軽微であることから、社会の利益よりも被害者らの意思を尊重した方がよい
- ③身内の揉め事は、国家権力よりも身内の力で解決した方がよい
そして、①~③の観点から親告罪とされた主な罪を分類すると以下のとおりとなります。
①の観点から親告罪とされた主な罪 |
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②の観点から親告罪とされた主な罪 |
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③の観点から親告罪とされた主な罪 |
※親族の意味 |
【一覧表付き】親告罪・非親告罪とは?時効や法改正も弁護士が解説
告発とは
告発とは、犯人又は告訴権者以外の第三者(以下、告発権者といいます)から捜査機関に対し、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことです。
告発権者が告発状という書面に必要事項を記入して提出し、受理されれば告発したことになります。
告訴と異なり、告訴権者に制限はありません。犯罪があると思った人は誰でも告発できます(ただし、告発状が受理されるかどうかは別問題です)。
なお、公務員がその職務を行うことにより犯罪があることを知った時は、告発しなければならないとされています(刑事訴訟法239条2項)。
告訴と同様、告発権者は人に限らず、法人、国、地方公共団体、法人格のない社団・財団も含まれます。
告訴と被害届、告訴と告発の違い
被害届は被害者が捜査機関に対して犯罪の被害に遭ったことを申告するための書類です。
以下では、よく混合して理解されがちな告訴と被害届、告訴と告発の違いについて解説します。
告訴と被害届の違い
告訴と被害届の違いは4点あります。
一つ目の違いは、告訴が犯罪事実の申告に加えて犯人の処罰を求めるものであるのに対し、被害届は犯人の処罰を求めることまでは必要とされていないという点です。非親告罪であっても、犯人の処罰を求めたい場合は被害届ではなく告訴状を提出する場合もあります。
二つ目の違いは、告訴を受理した捜査機関は事件を捜査し、捜査によって集めた証拠を検察官に送付する法律上の義務があるのに対して、被害届の場合はそうした義務がないという点です。ただ、捜査機関の信用問題にもかかわるため、捜査機関が被害届を受理したほとんどの事件では捜査が開始されます。
三つ目の違いは、告訴は被害者以外の人も告訴できることがありますが、被害届は被害者のみ届出を行います。
四つ目の違いは、告訴は「犯人を知った日から6か月」という期間制限があるのに対して、被害届にはそうした期間制限はありません。時効が完成するまで届出を行うことが可能です。
被害届とは?|出し方、書き方から出した後の流れまで詳しく解説
告訴と告発の違い
告訴と告発の違いは2 点あります。
一つ目の違いは、告訴は告訴できる人が告訴権者と決められているのに対して、告発は誰でもできます。
二つ目の違いは、告訴は「犯人を知った日から6か月」という期間制限があるのに対して、被害届にはそうした期間制限はありません。
告訴と起訴の違い
告訴は、被害届や自首、職務質問、おとり捜査などと同様に捜査機関が犯罪事実を把握するための一手段です。
これに対して、起訴は犯罪事実を把握した検察官が、捜査で集めた証拠を基に、被疑者を裁判にかける刑事処分の一種です。
捜査の前に行われるのが告訴、捜査の後に行われるのが起訴です。
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