勾留されると長期間身柄拘束されてしまう可能性があります。加えて、勾留中、接見禁止によって接見、手紙のやり取りを禁止されてしまうと精神的にも疲弊してしまうことでしょう。そんなとき、家族、恋人、友人・知人、職場の同僚・上司など特定の人との面会、手紙のやり取りを可能とするのが接見禁止一部解除です。
この記事では
- 接見禁止一部解除
- 接見禁止一部解除の方法
- 接見禁止一部解除の流れ
などついて弁護士が詳しく解説してまいります。
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目次
1.接見禁止一部解除とは
接見禁止とは、裁判官(あるいは裁判所)が、勾留された被疑者・被告人に逃亡・罪証隠滅のおそれがあると認められるため、刑事施設における被疑者・被告人と弁護人以外の方(ご家族等)との接見(面会)を禁止することをいいます。また、同時に手紙などのやり取りが禁止されることもあり、その場合は接見等禁止といいます(以下、接見禁止という場合、接見禁止に加えて手紙のやり取り禁止も含まれます)。
接見禁止一部解除となった場合は、ご家族、知人・友人など、特定の方との接見、手紙などのやり取りの禁止が解かれ、接見、手紙のやり取りが可能となります。弁護人から申し立てを受けた裁判所が「〇〇との接見禁止を解除する」などという決定を出します。なお、接見禁止の解除には一部解除のほか全部解除もあります。
2.接見禁止一部解除する方法
接見禁止一部解除の方法は、①裁判所に不服を申し立てる方法と②裁判所に接見禁止一部解除を申し立てる方法があります。①は法律に規定された方法で、準抗告(第1回公判前まで)と抗告(第1回公判後)の2種類があります。準抗告、抗告が認容されれば接見禁止が一部(あるいは全部)解除されることがあります。
他方、②の方法は法律に規定されていません。しかし、裁判所も職権で接見禁止を解除できると解されており、その職権発動を促すのが②です。弁護人から申し立てを受けた裁判所が接見禁止一部解除の決定を出すと接見禁止が一部解除されます。
実務では①よりも②の方法が多く活用されます。
3.接見禁止一部解除の2つの種類
前記1のとおり、接見禁止には「接見の禁止」と「手紙のやり取りの禁止」の2種類があります。そのため、接見禁止一部解除となった場合は、特定の方との接見、特定の方との手紙のやり取りが可能となります。
なお、実務では「接見の禁止」は解除されやすいですが、手紙のやり取りの禁止は解除されにくい傾向があります。手紙については刑事施設職員によって内容の確認が行われるものの、結局のところ誰が書いたのかまでは分からないため、手紙のやり取りの禁止を解除してしまうと無制限に接見を認めたことと変わりない結果となることを裁判所がおそれているためだと考えられます。
4.接見禁止一部解除の申し立て(前記2②の)方法
裁判所に接見禁止一部解除を申し立てるには申立書を作成し、提出する必要があります。申立書には解除の対象となる方の運転免許証などの身分証明書を添付します。
また、申立書のほか必要書類(監督者の上申書、被疑者・被告人の逃亡しない旨の誓約書など)も作成し、同時に提出します。
5.接見禁止一部解除の流れ
接見禁止一部解除の申立てから一部解除までの流れは以下のとおりです。
- 弁護人に接見禁止一部解除の希望を伝える
- 接見禁止一部解除の申立て(裁判所に申立書等を提出)
- 裁判官が検察官に意見を求める
- 検察官が裁判官に意見を述べる
- 裁判官が接見禁止一部解除
- 「一部解除の決定書」が検察庁から刑事施設(留置施設、拘置所など)へ
- 被疑者・被告人に「一部解除の決定書」呈示
- 接見OR手紙のやり取り可能
接見禁止一部解除の申し立ては誰でも可能ですが、やはり、法律の専門家である弁護士に任せた方が無難です。
その上で、まず①担当の(私選、国選)弁護人に接見禁止一部解除の希望があることを伝えましょう。被疑者・被告人からでもそのご家族等からでも構いません。希望を伝えておくと弁護人が状況をみて接見禁止一部解除に向けて動き出してくれます。そして、準備が整い次第、②裁判所に申立書等を提出します。裁判所が申立書等を受理すると、③検察官に接見禁止一部解除に関する意見を求めます。その後、裁判所は④検察官からの意見と弁護人からの意見を加味し、⑤接見禁止の一部解除の決定を出すかどうか判断します。裁判所が一部解除を認めた場合は決定書を作成し、その謄本を⑥検察庁を通じて刑事施設内にいる被疑者・被告人に送付、⑦職員をして呈示します。以上より、裁判所の決定によって認められた方との⑧接見、手紙のやり取りが可能となります。
6.接見禁止一部解除と再逮捕
接見禁止一部解除で注意しなければならないのが再逮捕です。
接見禁止を含め刑事手続の身柄拘束に関する処分(逮捕、勾留など)は「人」単位ではなく「事件」単位で進められていきます。たとえば、Aさんが覚せい剤の使用罪と所持罪の疑いをかけられたとします。この場合、使用罪と所持罪は全く別の事件として扱われるのです。そのため、使用罪で逮捕・勾留された後、今度は使用罪の余罪である所持罪で逮捕(再逮捕)されるということも十分あり得ます。また、使用罪で接見禁止決定が出た後一部解除されたとしても、今度は余罪の所持罪で逮捕・勾留された場合には接見禁止決定が出ることもまた十分あり得ることなのです。その場合、結局は、接見や手紙のやり取りができなくなってしまいます。
そのため、接見禁止一部解除の申し立てをする場合は、余罪があるかどうか、余罪で逮捕・勾留される可能性があるかどうか、余罪で勾留された場合に接見禁止決定が出る可能性があるかどうかも含めて検討しなければなりません。もっとも、仮に余罪で接見禁止決定が出たとしても、一部解除の申し立てがとおる可能性が高いです。また、裁判官によっては予め一部解除された方を除外して接見禁止決定を出す方もおられます。
7.薬物事件と接見禁止一部解除の難易度
薬物犯罪は使用、所持、譲渡、譲受、輸入、輸出、栽培・製造などが主な態様かと思います。これらはもともと一人で完結できる犯罪ではなく、たとえば使用罪についていえば使用者に薬物を譲渡する者がいる、というように共犯者の関与があってはじめて成立する犯罪といえます。そこで、証拠関係からそうした事情が疑われる場合は接見禁止決定が出る可能性が高いといえます。共犯者との接見等を通じて罪証隠滅行為を働くおそれが高いと考えられるからです。もっとも、主に以下の場合は、比較的接見禁止一部解除されやすいといえます。
⑴ 被疑者・被告人と近い関係にあり、事件に関与していない
対象者が「配偶者、親、子、兄弟姉妹」などの場合です。
⑵ 起訴前よりも起訴後
起訴前よりも起訴後の方が接見禁止一部解除されやすいです。起訴後は罪証隠滅の可能性が低いと考えられるからです。
⑶ 否認よりも自白
被疑者・被告人が否認している場合よりも自白している場合の方が接見禁止一部解除されやすいです。
8.まとめ
接見禁止一部解除するには、弁護人が裁判所に対して接見禁止一部解除の申し立てを行うことが多いです。もっとも、事件によっては解除されない場合もあります。詳細は担当の弁護人に確認するとよいでしょう。
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