執行猶予付き判決を受けると刑務所に収監されることもなく社会生活を送ることができます。執行猶予中でも結婚や引っ越しは自由に行えます。また、就職して仕事をしたり、パスポートの発行申請や海外旅行をすることも可能です。
もっとも、執行猶予中に罪を犯して起訴され裁判で有罪の認定を受けてしまうと、執行猶予が取り消され、新たに犯した罪も実刑となる可能性も十分にあります。その場合、猶予されていた懲役・禁錮の刑期に今回新たに起こした犯罪の刑期を足した期間、刑務所で服役しなくてはなりません。
また、執行猶予付き判決は有罪であることに変わりはないため、有罪判決を受けた経歴である「前科」がつくことになります。執行猶予中に通常の社会生活が送れるとはいえ、前科がついていることで生活に全く影響がないわけではありません。
そこでこの記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 執行猶予中に再び犯罪を犯さないために注意すべきこと
- 前科があることで執行猶予中に注意しなくてはならないこと
について、以下でまとめて解説していきます。
なお、執行猶予中に罪を犯すとどうなるのか、詳しく知りたい方は、執行猶予中に再び罪を犯すとどうなる?逮捕されたらすべきことも合わせて読んでみてください。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|
目次
執行猶予中の生活で注意すべきこと
交通事故、交通違反に注意
免許が有効である限り、執行猶予中でも車を運転することはできます。
しかし、仮に交通事故、スピード違反、信号無視、飲酒運転などの交通違反を起こして懲役刑に処された場合は必ず執行猶予が取り消される上に、今回の懲役刑と併せて服役しなければいけません。また、罰金刑の場合でも執行猶予が取り消されることがあります。
日常生活に車が欠かせないという方もおられるとは思いますが、執行猶予中の場合は今まで以上に注意して運転する必要があります。
過度の飲酒に注意
お酒を飲んで気持ちが大きくなって痴漢、強制わいせつ、強制性交(旧強姦)、暴行、傷害などの罪を犯すケースは非常に多いです。また、飲酒運転やお酒が絡む交通事故の原因にもなりがちです。
アルコール依存症の方、ストレスのはけ口としてお酒に頼りがちの方、外でお酒を飲む機会が多い方などは、執行猶予中はお酒との関わり合いを今一度考え、くれぐれも飲みすぎないよう注意が必要です。
覚醒剤・万引き等の依存症に注意
特に、薬物、飲酒、万引き(窃盗症・クレプトマニア)、性に関して依存症を持つ方は要注意です。自分では自覚がなくても知らず知らずのうちに依存症に陥っており、再び同種の犯罪に手を染めてしまうケースも少なくありません。今回の事件を通じて医者、裁判官、弁護士などから依存症を指摘された場合は素直に認め、専門の治療期間に継続して通院する、自助グループに参加するなどして依存症の克服に努めましょう。
依存症を克服するのは簡単なことではありません。また、一人で依存症を克服するのは困難です。必ず周囲に助けを求め、協力を得ながら克服していくことが大切です。
自己判断で治療を中断しないこと
依存症で執行猶予中の方の中には、判決前から専門機関での治療を継続している方もおられると思います。
そもそも治療はご自分の身体や健康はもとより、再犯防止のために必要不可欠なものです。判決で執行猶予付きの判決を受けても、医師などに治療を終えてよいとの判断をもらうまでは継続して治療を受けてください。
執行猶予付きの判決を受けた途端、気が緩んで治療を中断する方がおられますが、決して自己判断で治療を中断してはいけません。
パスポート申請や海外渡航に注意
執行猶予中に海外旅行に行くこともできますが、パスポートをお持ちでない方は発行の申請手続きが必要です。
パスポートの申請書の欄には「執行猶予の処分を受けていますか □はい□いいえ」という欄が設けられています。執行猶予中にパスポート申請する場合は「□はい」の欄にチェックしてください。「□はい」の欄にチェックすると渡航事情説明書や判決謄本の提出が必要となり、場合によってはパスポートが発行されなかったり、発行されても渡航先や期間が限定されることがあります。ここで「□いいえ」の欄にチェックすると虚偽の申請をしたとして旅券法違反に問われる可能性がありますので注意が必要です。
また、首尾よくパスポートを取得できたとしても、犯罪歴があることで渡航予定の国からビザの発行を受けられなかったり、ビザの発行がなされても、渡航先の入国審査で入国を拒否される可能性もあります。詳しくは、前科があっても海外旅行に行ける?パスポートは取得できる?を読んでみてください。
保護観察のルール違反に注意
執行猶予中は保護観察に就くことがあります(執行猶予中に執行猶予となった場合は必ず保護観察が付きます)。保護観察は保護観察所(保護観察官、保護司)の監督・指導の下、社会内更生を図っていくものです。
保護観察にあたっては様々なルールが設けられますので、必ず守りましょう。ルールを守らなかった場合は執行猶予が取り消され、刑務所に服役しなければならなくなる可能性がありますので十分注意してください。
就職や資格の取得に注意
これから就職しようとする職業や取得を希望する資格によっては、法律で欠格事由が定められていて、この欠格事由をクリアしなければ就職や資格取得ができない可能性があります。執行猶予中であることが欠格事由に含まれていることがあるため、自分の就こうとしている職業、あるいは、取得しようとしている資格の欠格事由について確認する必要があります。前科で資格制限を受ける対象資格の一覧表を参考にしてみてください。
また、就職面接の際に、賞罰欄のある履歴書の提出を求められた場合や口頭で聞かれた場合には執行猶予中であることを正直に伝える必要があります。事実を偽って就職してから執行猶予中であることが会社に発覚すると、経歴詐称として懲戒解雇されることもあります。詳しくは、前科があると就職できない?を読んでみてください。
なお、執行猶予期間中に執行猶予を取り消されることなく猶予期間を経過すれば、刑の言い渡しの効力が失われます。それにより法律上は前科がないものとして扱われるため、資格制限は解除されますし、就職の際に前科があることを伝える必要もなくなります。
執行猶予中に罪を犯したら弁護士に相談
冒頭でお伝えしたように、執行猶予期間中に罪を犯すと、執行猶予を取り消されたうえに新たに犯した罪で実刑となり、長期間刑務所に服役しなくてはならないこともあります。
もっとも、新たに犯した罪が不起訴になった場合や再度の執行猶予が付いた場合には執行猶予が取り消されることがなくなります。
そのため、執行猶予中に罪を犯した場合は弁護士に相談し、不起訴や再度の執行猶予獲得のための弁護活動を開始してもらうようにしましょう。
弊所では、執行猶予の取り消しを回避するための弁護活動を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、執行猶予中に犯罪を犯してしまった方や、逮捕された方のご家族の方は、弊所の弁護士までご相談ください。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|