
略式起訴は、検察官が簡易裁判所に対して書面審理だけで罰金または科料を求める手続きです。正式裁判より早く事件は終わりますが、ほぼ確実に有罪となり前科がつきます。
「同意してよいのか判断がつかない」「罰金はいくらになるのか」「前科で仕事や資格に影響が出るのではないか」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。検察官から打診を受けた段階で、その日のうちに同意書にサインを求められるケースも珍しくありません。
この記事では、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、略式起訴について次のポイントを解説します。
- 略式起訴と正式起訴の違いと要件
- 略式起訴で前科はつくのか
- 罰金相場と略式裁判の流れ
- 罰金が払えない場合・通知が来ない場合の対応
なお、略式起訴を打診されている方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。同意するか否かの判断は早期対応が結果を左右します。
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略式起訴とは?
略式起訴と正式起訴の違い
起訴は検察官が裁判所に対して「刑事裁判を開いてください」と申し立てをすることです。この起訴には略式起訴と正式起訴の2つがあります。
略式起訴は公開の法廷での刑事裁判までを求めず、裁判官の書面審理(略式裁判)で手続きを終わらせることを求める起訴のことです。
一方、正式起訴は、ニュースなどでよく目にする傍聴席が設けられた公開の法廷での刑事裁判(正式裁判)を求めるための起訴です。
略式起訴の目的は、比較的軽微な事件について簡易な手続きで迅速に処理することにあります。すべての犯罪を公開法廷で審理すると当事者の負担が大きくなりすぎるため、罰金で済む軽微な事件に限って書面審理で完結させる仕組みが設けられました。
正式起訴と略式起訴の主な違いは、次のとおりです。
| 項目 | 正式起訴(公判請求) | 略式起訴(略式命令請求) |
| 裁判の場所 | 公開の法廷 | 裁判は開かれない(書面審理) |
| 被告人の出廷 | 必要 | 不要 |
| 被疑者の同意 | 不要 | 必要 |
| 主張・立証の機会 | あり(弁論・証人尋問) | なし |
| 科される刑罰 | 拘禁刑・罰金・科料など | 100万円以下の罰金または科料 |
| 前科の有無 | 有罪なら前科あり(無罪なら前科なし) | 前科あり |
略式起訴になる要件
略式命令することができるのは「100万円以下の罰金又は科料」です。そのため、まずは罰則に罰金が規定されている罪(※)でなければいけませんし、事件の内容も「100万円以下の罰金又は科料」の範囲に収まる必要があります。
また、略式裁判は書面審理のみで終わってしまいます。つまり、略式裁判では言い分を主張する機会が与えられません。そのため、罪を認めていて、略式裁判を受けることに同意している場合に略式起訴されることになります。
※窃盗罪「10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」、公然わいせつ罪「6月以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留」、暴行罪「2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」など
略式起訴のメリット
略式起訴されると「罰金又は科料」の刑しか科されない
略式起訴された場合、科される刑罰は罰金または科料に限られます。つまり、略式起訴後の略式裁判では、裁判官は、死刑はもちろん、拘禁刑・拘留の刑の命令(略式命令)を出すことができません。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
死刑は人の命を奪う生命刑、拘禁刑、拘留は人の自由を奪う自由刑で、死刑の場合はもちろん、拘禁刑、拘留で実刑の場合は刑務所に収容されてしまいます。
一方、罰金、科料は財産刑といい、お金さえ納付すれば刑は終了します(納付しない場合は刑事施設の労役場で強制労働をさせられる「労役場留置」に処されることがあります)。
刑事裁判を受ける必要がない
前述のとおり、正式起訴されると正式裁判を受ける必要があります。正式裁判と一言でいっても準備期間を含めると、判決まで最低でも1か月半~2か月はかかります。事件の内容によっては半年、1年以上かかることもあります。その間、不安な日々を過ごすことになります。
一方、略式起訴されれば書面審理のみで終わりますから、刑事裁判に向けた準備や法廷への出廷などは不要です。また、略式起訴されてから裁判官の略式命令が出るまで2週間~1か月程度と、正式裁判に比べればスピーディーに手続きが進みます。
身柄拘束(勾留)されている場合に早期釈放される
身柄拘束されているまま正式起訴されると自動的に2か月の身柄拘束が決まってしまいます。また、その後、理由がある場合には1か月ごとの期間の更新も認められています。正式起訴された後に釈放されるためには保釈請求をして裁判所の許可を得た上で、保釈保証金を納付する必要があります。
一方、身柄拘束中に略式起訴され、裁判官から略式命令が発せられるとその時点で勾留の効力が失われる、すなわち、釈放されます。正式起訴された場合のように保釈請求などは必要ありません。
略式起訴のデメリット
略式起訴にはメリットがある一方で、次のデメリットもあります。
ほぼ有罪が確定する
まず、略式起訴されるとほぼ有罪が確定してしまうことです。
略式起訴するにあたっては、被疑者の同意が必要です。そして、被疑者が略式起訴に同意するのは、被疑者が被疑事実について全面的に認めている場合がほとんどですし、検察官は被疑者が被疑事実を認めていなければ略式起訴はしません。略式起訴を受けた裁判官も「被疑者が略式起訴に同意しているということは、事実を認めているのだな」という頭がありますので、検察官から略式起訴を受けると、ほとんどのケースで略式命令を出します。
略式命令は、被告人が命令を受けてから14日間の正式裁判申立て期間を経過した段階で確定します。被告人は略式起訴されることに同意しているわけですから、実務上正式裁判の申立てをする人はほとんどいません。略式命令が確定すると前科がつきます。罰金や科料は略式命令が確定してから納めるのが原則ですが、正式裁判申立て期間中から納めることができる場合がほとんどです。
意見・主張を述べる機会がない
次に、意見・主張を述べる機会がないことです。
略式起訴による略式裁判は、裁判官が検察官から送られてきた記録を読んで略式命令を出す書面審理です。正式裁判と異なり、裁判所に出廷する必要がないという点ではメリットの反面、裁判官に対して意見・主張を述べる機会がないという点ではデメリットです。特に、被疑事実を否認しており、裁判で徹底的に争いたい、裁判官に自分の言い分を聞いてもらいたいという場合は略式起訴の手続きをとることに同意してはいけません。
略式起訴の流れ
略式起訴から略式命令が発せられ、前科がつくまでの流れは以下のとおりです。
- 検察官から略式裁判を受けることの同意を求められる
- 被疑者が同意する
- 略式起訴される
- 裁判官が書面を見て罰金額等を決める
- 裁判官が略式命令を発する
- 正式裁判を申し立てるか判断する(仮納付期間の開始)
- 正式裁判の申し立てをしない
- 略式裁判が確定する→前科がつく
①検察官から略式裁判を受けることへの同意を求められる
略式起訴される前に、検察官の取調べで、検察官から略式裁判を受けることへの同意を求められます。同意する場合は、その旨を記載した申述書(同意書)にサインします。同意しない場合は正式起訴され、正式裁判を受ける必要があります。
②略式起訴される
略式裁判を受けることに同意した場合は、検察官が「起訴状+罰金(科料)の求刑金額を書いた用紙+同意書+取捨選択した事件記録」を簡易裁判所に提出します。
③裁判官が事件記録を見て罰金額等を決める
検察官から事件記録等を受け取った裁判官は事件記録を読み込み、今回の事件が略式裁判してもよい事件であることを確認した上で、罰金(科料)額等の命令の内容を考えます。
④裁判官が略式命令を発する
裁判官が罰金額等を決めたら略式命令書という書類を作成します。略式命令書は謄本(写し)という形で被告人(起訴された人)と検察官に届けられます。
⑤仮納付期間内に正式裁判を申し立てるか判断する
略式命令謄本を受け取ると、罰金(あるいは科料)を納付しなければいけません(仮納付期間の開始)。仮納付期間は略式命令謄本を受け取った日の翌日から起算して14日間です。
この14日間は、略式命令に不服がある場合に正式裁判を申し立てるかどうか判断する期間にもなります。詳しい手続きは後述の「略式起訴に不服がある場合(正式裁判の請求)」をご確認ください。
⑥略式裁判が確定する
一方、14日以内に正式裁判を申立てずに期間が経過すると略式裁判が確定します。裁判が確定すると正式に罰金を納付する必要があります。
略式起訴に不服がある場合(正式裁判の請求)
略式命令の内容(罰金額や有罪認定)に納得できない場合は、略式命令謄本を受け取った日の翌日から14日以内に、略式命令を出した簡易裁判所に対して正式裁判を請求できます(刑事訴訟法第465条)。請求は書面で行い、理由を書く必要はありません。
正式裁判が請求されると、通常の刑事裁判が開かれ、公開法廷で判決が言い渡されます。判決が言い渡された時点で略式命令は効力を失います(刑事訴訟法第469条)。
- 請求期限:略式命令謄本の受領日翌日から14日以内
- 請求先:略式命令を出した簡易裁判所
- 請求方法:書面(理由の記載は不要)
- 効果:略式命令の効力が失われ、通常の裁判手続きで審理し直しになる
ただし、正式裁判を請求しても無罪となるとは限りません。略式起訴の前提として被疑事実を認めたうえで一度同意した事件で、後から正式裁判を請求しても、結果として有罪判決と罰金刑が言い渡される可能性が高い点には注意が必要です。
罰金額に納得できない場合や、否認に転じたい場合は、期限内に弁護士へ相談されることを推奨します。
略式起訴の罰金相場
略式起訴された場合の罰金刑の相場はどれくらいなのでしょうか。
そもそも略式起訴は「100万円以下の罰金又は科料」に相当する事件についてなされるものですので、相場としては10万円~60万円程度が多い印象です。
ただし、被害者が多い場合や被害弁償できていない場合、被告人に前科がある場合などには罰金額が高くなる可能性があります。具体的な金額については個別的な事件に応じて変わる可能性がありますので注意しましょう。
以下では略式命令で決まる罰金の相場について、前科の無い方については次の表の金額が参考となるでしょう。
| 犯罪 | 罰金額 |
| 痴漢・盗撮(迷惑防止条例違反) | 30万円前後 |
| 淫行条例違反 | 30万円前後 |
| 児童買春(児童ポルノ禁止法違反) | 50万円前後 |
| 暴行事件 | 10万円~20万円 |
| 傷害事件 | 20万円~30万円 |
| 窃盗事件(万引き) | 20万円~30万円 |
| 酒気帯び運転 | 30万~40万円 |
| 無免許運転 | 20万円~25万円 |
| スピード違反 | 8万円~10万円 |
略式起訴の罰金を払えないとどうなる?
略式起訴された場合に科される罰金刑が確定すると、定められた期間内に検察庁に納付しなければなりません。罰金は現金での一括納付が原則で、検察庁が指定する金融機関または検察庁の窓口で納めます。
期日までに納められない場合、資産が差し押さえられる可能性があります。ただし、検察庁の徴収事務担当に事前に相談すれば、期間の延長や分割納付に応じてもらえる場合もあります。
それでも納付できず、強制執行でも回収できなかった場合は、「罰金を完納できない」として労役場に留置されることになります(刑法第18条)。
労役場留置は、刑事施設に附置された労役場で日々の作業に従事する処分で、罰金を「労働」で支払う仕組みと考えるとイメージしやすいかもしれません。実務上は1日5000円で計算する取り扱いが一般的で、たとえば罰金10万円を払えなければ20日間の労役に従事することになります。
出典:刑法|e-Gov法令検索
略式起訴で前科はつく?
前科とは、過去に有罪判決を受けた履歴のことです。略式起訴は正式起訴のように公開の法廷で裁判がなされないため軽いイメージを持たれている方もおられますが、略式起訴されて罰金刑となった場合でも前科はつきます。罰金刑も立派な刑罰の一種であるからです(刑法第9条)。
前科がつくとどんなデメリットがある?
- 海外渡航ができないことがある
- 一定の資格を取得できない・保有している資格をはく奪される
- 再犯をすると処分が重くなることがある
- 離婚事由に該当する可能性がある
などの不利益を受けることがあります。前科がつくことのデメリットを詳しく知りたい方は、前科とは?前歴との違いや前科がつく5つのデメリットもあわせてご確認ください。
交通違反の罰金でも前科はつく?
道路交通法では、軽微な交通違反の場合、一定期日までに反則金を払うことで刑事手続きを免除される制度(交通反則通告制度。いわゆる青キップ)が定められています。この「反則金」は行政罰であり、刑事罰である「罰金」とは異なるため前科はつきません。
ただし、交通違反で略式起訴され罰金刑を受ければ前科がつきます。
前科は消える?
前科は一生消えることはありません。
もっとも、略式命令を受け、罰金の納付が完了した後、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過すると前科の効力は消滅します(刑法第34条の2)。
よくある質問
ここからは、略式起訴に関連してよくある質問にお答えします。
略式命令とは?略式起訴との違いは?
略式命令とは、検察官から略式起訴された事件について、裁判官が検察官から提出された書面に目を通し、略式命令を出せる条件が整っていると判断したときに出す裁判官の命令のことです。略式起訴は簡易裁判所に対してなされますので、略式命令を出す裁判官は簡易裁判所に所属する裁判官です。
略式命令では、100万円以下の罰金又は科料(1万円未満の額)の命令しか出せない決まりになっています。仮に、裁判官が100万円以上の罰金を科すのが相当と判断したときは略式命令を出すことができず、手続きは正式裁判に移行します。
略式命令は略式命令謄本という書面で通知されます。略式命令謄本には、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑、没収の裁判があった場合はその対象物、命令を受けた日から14日以内は正式裁判を申し立てることができることなどが書かれています。
略式起訴で通知が来ない!いつ来るの?
略式命令を受け取るまでには、
- 検察庁での略式裁判を受けることへの同意の手続き
- 略式起訴
- 裁判官による書面審理
- 略式命令謄本発送
- 略式命令謄本の受け取り
という手順を踏みます。
在宅のまま略式起訴された場合は、①~②、②~③、③~④、④~⑤の期間に決まりはありませんので、①~⑤までの期間がどのくらいかかるのかはわかりません。ただ、実務上は①の手続きをとったら速やかに②以降の手続きをとることとされていますので、①から半年、数年かかることはありません。通常、①からはやくて2~3週間、遅くても1か月半前後で略式命令の謄本が送られてくると思います。一方、身柄拘束されたまま略式起訴された場合は、②の当日に⑤まで手続きが進み、略式命令謄本を受け取った段階で釈放されます。
略式起訴と不起訴との違いは?
略式起訴は起訴の一種であるのに対し、不起訴は起訴しないという刑事処分の一種という点で大きく異なります。また、略式起訴され略式裁判が確定すると正式に刑罰(罰金、科料)を科されたり、前科がついたりします。一方、不起訴の場合は刑罰が科されず、前科もつきません(前歴はつきます)。
不起訴処分の種類や、不起訴を獲得するためのポイントについて詳しくは、不起訴とは|無罪との違いと不起訴になる理由・前科前歴の有無で解説しています。
略式起訴でも執行猶予はつく?
法律上は、略式命令でも執行猶予を付けることができるとなっています。なお、科料には執行猶予をつけることはできません。もっとも、実務上、略式命令で出される罰金に執行猶予がつくことはほとんどありません。すなわち、略式命令で出される罰金のほとんどが実刑ということになり、裁判が確定すると正式に罰金を納めなくてはいけなくなります。
略式起訴でお悩みの方は弁護士にご相談ください
略式起訴は正式裁判より早く事件が終わる反面、ほぼ確実に有罪となって前科が残ります。就職・資格・海外渡航・離婚事由など、前科の影響は長期にわたるため、前科を避ける最も確実な方法は、略式起訴される前の段階で不起訴処分を獲得することです。
弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉、検察官への意見書提出、取調べでの受け答えの助言などを通じて、不起訴の可能性を高める弁護活動が受けられます。略式起訴に同意してよいか迷っている段階でも、事件の見通しを踏まえて適切な判断材料を示すことができます。
検察官から呼び出しを受けている方、その場で同意書へのサインを求められている方は、判断を急かされる立場に置かれ精神的な負担も大きいはずです。処分が決まってからでは取り戻せる選択肢が大きく狭まるため、できるだけ早い段階でご相談ください。
当事務所は刑事事件に注力しており、依頼者の前科を回避するために弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

