
「横領が会社にばれたけれど、示談で済ませるにはいくら必要なのか」と不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。業務上横領の示談金は、横領したお金の全額が土台になり、そこに遅延損害金や迷惑料が加わることもあります。
示談が成立すれば、会社が被害届を出す前なら刑事事件化を回避できる可能性があり、すでに捜査が始まっていても不起訴や執行猶予につながりやすくなります。
この記事では、業務上横領の示談交渉の実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- 業務上横領はどのくらい重い罪なのか
- 示談すると逮捕や起訴を避けられるのか
- 業務上横領の示談金相場と決まり方
- 会社との示談を成功させる5つのポイント
お読みいただくことで、示談金に何が含まれるのか、会社とどう話を進めればよいのかを整理できます。
なお、業務上横領が会社に発覚してお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。
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業務上横領罪とは?罰金刑のない重い罪
業務上横領罪とは、経理などの仕事として預かり管理している会社の金銭や物を、自分のものとして使ったり処分したりする犯罪です(刑法253条)。たとえば、顧客から集金した現金を会社に入れずに生活費へ回す行為があたります。会社のお金をどのように扱うと罪に問われるのかといった詳しい要件や判例は「業務上横領罪とは?刑罰の重さと判例を解説」で解説しています。
法定刑は10年以下の拘禁刑(刑務所などに収容する刑)で、罰金刑の定めがありません(2025年5月31日以前の行為には、改正前の「10年以下の懲役」が適用されます)。罰金で終える略式の手続きは使えないため、起訴されれば公開の法廷で正式な裁判(公判)を受けることになります。
同じ横領でも、友人から借りた物を売ってしまうなど、仕事と関係なく借りたり預かったりしていた他人の物を横領した場合は単純横領罪(刑法252条1項・5年以下の拘禁刑)にあたります。落とし物のように持ち主の手を離れた物を自分のものにした場合は遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪。刑法254条・1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料)です。3つの中では、業務上横領罪が最も刑罰の重い罪です。
横領した金額がいくらなら逮捕されるという基準は、法律にはありません。ただ、被害額が大きく、返済の見込みが乏しいほど、逮捕や起訴、さらには実刑判決のおそれが高まります。
捜査は多くの場合、会社が警察に被害届や告訴状を出したことから始まります。そのため、会社との示談が重要になります。
横領で示談するとどうなる?示談しない場合との違い
会社に謝罪して被害を弁償し(すぐに全額を払えない場合は支払いを約束し)、事件を当事者どうしの話し合いで解決する合意を、横領の示談といいます。示談のメリットは、手続きの段階によって次のように変わります。
捜査機関に知られずに済む可能性がある
会社が警察に被害届や告訴状を出す前に示談が成立すれば、事件が捜査機関に知られずに済む可能性があります。示談書に「被害届や告訴状を出さない」という約束を入れておけるからです。この約束を実際の書面にどう落とし込むのかは、「業務上横領の示談書の書き方【テンプレートのダウンロード可】」をご参照ください。
ただし、会社が被害者となる業務上横領は親告罪(告訴がなければ起訴できない罪)ではないため、示談後も捜査が始まる可能性がまったくなくなるわけではありません。
一方、示談不成立のまま被害届が出されると、警察から呼び出されて取調べを受け、後日逮捕されることもあります。被害届が出た後に示談しても意味はありますが、示談交渉は早いほど有利です。
早期に釈放される可能性が高まる
逮捕された場合、警察での最大48時間と検察での最大24時間をあわせた72時間以内に、検察官が勾留(逮捕に続く身柄拘束)を請求するかどうかを決めます。裁判官が勾留を認めると原則10日、延長されると最大20日となり、逮捕から起訴・不起訴が決まるまで、最長23日間身柄を拘束されるおそれがあります。
勾留されるのは、主に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されるためです。示談が成立していれば、あるいは示談交渉が進んでいれば、横領を認めて被害の回復に努めていることが考慮され、こうしたおそれは小さいと判断されやすくなり、勾留を避けたり早く釈放されたりする可能性が高まります。
不起訴や執行猶予につながりやすくなる
起訴するかどうかは検察官が決めます。検察官は、犯罪の内容だけでなく犯罪後の事情も考えて判断する(刑事訴訟法248条)ため、示談成立や被害者である会社の処罰感情は大切な判断材料になります。
示談書に宥恕条項(加害者を許し、処罰を望まないという会社の意思表示)が入っていれば、前科がつかない不起訴処分の可能性はさらに高まります。示談書は、通常は弁護士を通じて検察官に提出します。
起訴された後も、被害弁償や示談は量刑に影響し、執行猶予付きの判決につながることがあります。反対に、被害金額が大きく弁償もできていなければ、初犯でも実刑となるおそれがあります。
司法統計(令和7年)では、全国の地方裁判所の通常第一審で、横領の罪により懲役・拘禁刑・禁錮の有罪判決を受けた526人のうち、実刑は209人で約4割でした(業務上横領罪のほか単純横領罪・遺失物等横領罪を含む刑法252〜254条の合計)。実刑を避けられるかどうかを分ける事情は「業務上横領は初犯でも実刑?刑罰と執行猶予の条件を弁護士が解説」で説明しています。
業務上横領の示談金相場
業務上横領の示談金の相場は、横領した金額の全額返還を土台に決まります。そのうえで、横領から時間が経っていれば遅延損害金(2020年4月1日以降の横領であれば法定利率は年3%)が加わり、会社によっては迷惑料や慰謝料の上乗せを求めてきます。
迷惑料などの上乗せは、横領した額のように返すのが当然のものではなく、会社との示談交渉で決まる部分です。示談金の総額は、横領の額や期間、会社が受けた損害の程度によって大きく変わり、「横領額の何割を上乗せすれば足りる」といった一律の基準はありません。
横領が長い期間にわたると、返すべき元の金額が大きくなるうえ、古い分ほど遅延損害金も積み上がるため、示談金の総額はふくらみやすくなります。会社の請求額に納得できないときの対応は、後述の「請求額に納得できないときは根拠資料を確かめる」で説明します。
会社との示談を成功させる5つのポイント
会社には、横領の示談に応じる義務がありません。話し合いに応じてもらい、示談の内容を最後まで守るために、次の5つを押さえておきましょう。
誠意をもって謝罪し、事実を正直に話す
示談の出発点は、言い訳をせずに謝罪することです。そのうえで、いつから、どのような方法で、いくら横領したのかを、覚えているとおりに説明します。記憶があいまいな点は推測で答えず、通帳や手元の記録で確かめてから伝えると、後から説明が食い違うのを防げます。
説明に嘘やごまかしがあり、後から会社の調査で食い違いが見つかると、反省していないと受け取られます。会社の態度が硬くなれば、示談の話し合いそのものを打ち切られかねません。
会社が交渉に応じないときは謝罪文で誠意を残す
会社が示談を拒む理由には、本人と顔を合わせたくない、処罰感情が強い、最初から警察に届け出るつもりでいる、などがあります。
会ってもらえない場合でも、謝罪の気持ちを形に残すことはできます。配達証明(郵便局が配達した事実を証明するサービス)を付けて謝罪文を郵送すれば、いつ会社に届いたかが記録として残ります。謝罪文の控えと、郵便局から届く証明のはがきは、手元に保管しておきます。
会社が本人との連絡自体を拒むときは、弁護士を介して示談交渉を申し入れる方法もあります。なお、会社がすでに告訴状を出している場合、捜査がどう進むのかは「横領で刑事告訴されたらどうなる?流れと取り下げのための対応」で解説しています。
請求額に納得できないときは根拠資料を確かめる
会社が示す示談金の額が自分の認識より大きいときは、どの取引でいくら横領したとされているのか、根拠となる帳簿や記録を示してもらいます。自分が横領した分と、身に覚えのない分や横領とは関係のない損害を分けて説明します。
実際に横領していない分や横領とは関係のない損害まで、賠償する義務はありません。いったん示談書に署名すると、後から金額を争うのは難しくなるため、納得できない点は署名する前に確かめておきましょう。会社が示した金額に根拠があるのかを見極めて交渉した実際の事例は、「業務上横領疑いの賠償請求を800万円から150万円に減額できた事例」をご覧ください。
ただし、金額の溝が埋まらないまま示談交渉が長引けば、その間に被害届が出されるおそれもあります。早く示談をまとめることを優先し、会社の示す額で合意するのも一つの判断です。
一括で払えないときは実現できる返済計画を示す
示談金は一括払いが原則で、分割払いは会社の配慮で認めてもらうものです。会社が心配する「最後まで払ってもらえるのか」という点に、具体的な計画で答えます。
まず、手元の資金をできるだけ頭金に回し、残りについては、払い続けられる月々の額と完済の時期を、収入の見通しとあわせて示します。そのうえで、会社から次のような条件を求められたら応じましょう。
- 支払う力のある人に保証人になってもらう
- 決めた期日に支払わなかったときは、残りを一度に払う約束(期限の利益喪失条項)を示談書に入れる
- 示談書の内容を公正証書(公証役場で作る公文書)にする
示談で取り決めた期日に遅れず支払い続けることも欠かせません。返済の見通しが立たない場合は「横領で返済できないとどうなる?2つの対処法を弁護士が解説」もあわせてご確認ください。
弁護士に示談交渉を任せる
本人からの連絡には応じない会社でも、弁護士が窓口になれば示談に応じることがあります。弁護士が間に入ることで感情的な対立を避けながら、会社の請求の根拠を確かめ、事案に見合った条件で合意を目指せます。
逮捕・勾留されて自分では動けないときも、弁護士が本人に代わって会社と示談交渉ができます。
弁護士に依頼した場合は、会社への連絡、金額や支払い方法などの示談条件の調整、合意した内容の書面化という順に進みます。依頼するといくらかかるのかについては「横領事件に強い弁護士とは?依頼するメリットと費用を解説」で紹介しています。
業務上横領の示談でお悩みの方は弁護士にご相談ください
業務上横領事件では、会社との示談がまとまるかどうかで、事件化するか、起訴されるか、刑の重さがどうなるかまで変わります。
会社との連絡から示談書の取り交わしまでは、弁護士に任せることができます。すでに会社から返済を求められている場合や、警察から連絡が来ている場合は、できるだけ早くご相談ください。
当事務所は業務上横領の示談交渉を数多く扱ってきました。弁護士が迅速に動き、依頼者の不利益を最小限に抑えるよう全力を尽くします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

