遺失物横領罪とは、他人の占有を離れた物を自分のものにした場合に成立する犯罪です。罰則は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料です。占有離脱物横領罪、拾得物横領罪ともいいます。
ここで、
警察も落とし物が無くなったくらいで一々動かないのでは?
遺失物横領って結局のところバレないんじゃないの?」
と思われている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、横領事件に強い弁護士が、
- 遺失物横領はバレないのか
- 遺失物横領がバレる経緯
- 遺失物横領でバレたらどうなるのか
- 遺失物横領がバレる前にすべきこと
についてわかりやすく解説していきます。
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目次
遺失物横領はバレない?
遺失物横領(占有離脱物横領)が警察にバレることはないと安易に考えている方もいるようですが、警察庁の犯罪統計書(令和3年版)によると、令和3年に捜査機関が遺失物横領(占有離脱物横領)を認知した件数は11746件であるところ、検挙件数は9056件、つまり検挙率は77.1%もあります。
このことから、遺失物横領がバレないというのは間違った考えであることがお分かりいただけると思います。
なお、遺失物横領罪の時効は3年ですので、横領してから3年間、いつどのタイミングで検挙されるかわからない不安な日々を送らなくてはなりません。
遺失物横領がバレる経緯
遺失物横領(占有離脱物横領)が被害者や捜査機関に発覚する経緯については、いくつかのパターンが想定できます。
具体的には以下のような経緯があった場合には遺失物横領がバレる可能性が高いです。
防犯カメラの映像
防犯カメラの映像などに、遺失物を横領している様子が写っていたことで遺失物横領がバレることがあります。
落とし物や放置された他人物を着服したり運び出したりしているあなたの姿が動画像で残されている場合には、犯行現場が明らかに抑えられているので逮捕される可能性もあります。
防犯カメラが決定打となってバレる場合には、「被害者の所有物であること」、「写っているのがあなたであること」がカメラ映像やその他の証拠から確認されていることが必要となります。その確認がとれた場合には、複数の防犯カメラの映像をたどるリレー捜査によって身元を割り出されて後日逮捕される可能性があります。
指紋
証拠から指紋が採取されあなたの指紋と一致したことで、遺失物横領がバレることがあります。
例えば財布からお金だけを抜き取って財布を捨てたケースで、捨て置かれた財布からあなたの指紋が採取されたような場合には遺失物横領がバレることになります。
このような経緯で犯行が発覚するのは、過去に警察に指紋採取されたことがあり、捜査機関に照合できるあなたの指紋がある場合です。
ただし、これだけの証拠では「あなたが被害者の財布に触ったこと」が立証されるのみで、現金を抜き取ったことまでが証明できるわけではない点は留意しておく必要があります。
拾得した物の質入れ・売却
着服したものを質入れ・売却をした場合も、遺失物横領がバレる場合があります。
質屋やリサイクルショップなどの不用品買取業者には、警察から盗難の被害品リスト(品触書)が送られてきている場合があります。
盗品であることを知りながら買い取りなどをすることは盗品等有償譲受などの犯罪行為に該当する可能性があります。したがって買取業者から警察に通報がいく可能性があるのです。このような経緯で、あなたの身元が判明すれば後日逮捕されるおそれもあります。
カード類の使用
落とし物・遺失物のクレジットカードを悪用した場合も、遺失物横領がバレることがあります。
すでに被害者がカードの利用停止措置を取っていた場合、その後あなたがそのカードを無断で使用すると、加盟店から警察に通報がいくことで着服の事実が発覚するケースがあります。
職務質問
職務質問にともなう所持品検査によって、遺失物横領がバレる可能性もあります。
具体的には他人の運転免許証やカードなどの拾得物を自分のカバンに入れたままで、警察からの職務質問・所持品検査に応じたような場合です。このような場合、被害届が出されている遺失物が発見され着服がバレることになります。また、他人の自転車を乗り回していた場合には防犯登録から盗難照会をされてバレることもあります。
遺失物横領が警察にバレるとどうなる?
遺失物横領が警察にバレたからといって必ずしも逮捕されるわけではありません。遺失物横領罪は窃盗罪などの財産犯の中でも刑が軽い罪です。そのため、遺失物横領罪は身柄拘束されない在宅事件として刑事手続きが進められる、すなわち、警察の検挙から検察への送致、刑事処分(起訴、不起訴)までが身柄不拘束のまま進められることが多いです。
もっとも、身柄拘束されないからといって起訴されないわけではありません。ケースによっては起訴され、裁判によって罰金や懲役の刑を科される可能性もあります。
また、先ほど紹介した「警察庁の犯罪統計書(令和3年版)」によると、令和3年では計338人が遺失物横領の現行犯逮捕もしくは通常逮捕(令状による逮捕)により身柄拘束されており、必ずしも在宅事件になるとは限りません。
もし逮捕に引き続き勾留されると、起訴または不起訴が決定するまで最大で23日間も身柄拘束されますので、会社や学校に隠し通すのが困難になることも考えられます。また、起訴されて有罪判決となれば、たとえ執行猶予付き判決や罰金刑で済んだとしても前科がついてしまいます。
なお、検挙された後に検察に送致される前に被害者と示談が成立すれば微罪処分(警察官から被疑者に対する厳重注意、訓戒等で事件を終了させる手続きのこと)になる可能性が高まります。そのため、逮捕されて身柄拘束されたり前科がつくことを防ぎたいのであれば、以下で説明するように、被害者との示談が重要なポイントとなります。
遺失物横領がバレる前にすべきこと
弁護士に相談
遺失物横領をした場合、まずは弁護士に相談してください。
あなたが着服した状況によってどのような対処をとるのが適切なのかということを、豊富な経験や過去の事例からアドバイスしてもらうことができるでしょう。
経済的な価値が高いもので被害届が出されている可能性が高い場合や、防犯カメラなどに写っている可能性が高い場合には、捜査機関の捜査がすでに進められている可能性もあります。そのような場合には、状況が悪化する前に弁護士に対応を相談することで、最小限の不利益で事態を収められる可能性も残されています。
被害者との示談交渉
遺失物横領がバレる前に被害者と示談交渉をして和解しておくことも重要です。
示談とは争いごとについて当事者が互いに譲歩して話し合いで解決することです。刑事事件では加害者が被害者に謝罪し、一定額の示談金・解決金などを支払ったうえで許しを得ることを指します。
拾った財布に運転免許証など被害者の身元が判明するものがあれば、被害者に連絡が付く可能性があります。
また当事者同士の話し合いを行う際に相手方の被害感情が大きい場合には、紛争がより悪化するリスクがあります。そのような事態を避けるためにも、示談の交渉を行う場合は弁護士にすべての手続きを依頼しておくのが適切でしょう。
警察に自首する
警察に自ら自首することも、逮捕・起訴されないためには重要となる可能性があります。
捜査機関に発覚する前に自首した場合には、刑法上の自首が成立することで刑が減軽される可能性があります(刑法第42条1項参照)。また刑法上の自首に該当しない場合であっても、自首した経緯から捜査機関が逮捕・起訴しないという判断をする可能性もあります。
自首する場合には、あなたの権利が最大限守られるようにするためにも弁護士同伴のうえで出頭するべきでしょう。
弊所では、遺失物横領での逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、いつ逮捕されるかご不安な日々を過ごされている方、既に逮捕された方のご家族の方はご相談ください。相談する勇気が解決へと繋がります。
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