未決勾留とは?刑の期間に算入される日数の計算方法を徹底解説
  • 未決勾留とは?
  • 未決勾留日数が算入される刑罰は?
  • 未決勾留日数の計算方法を知りたい

この記事では、刑事事件に強い弁護士が、これらの疑問をわかりやすく解消していきます。

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未決勾留とは?

未決勾留(みけつこうりゅう)とは、勾留されてから起訴されるまでの被疑者勾留と起訴されてから判決が確定した日の前日までの被告人勾留のことです実際に勾留された日のことを未決勾留日数といいます。なお、逮捕から勾留までの72時間や勾留執行停止、保釈で釈放されている間の日数は未決勾留日数に含めることができません。

未決勾留は「刑」ではありませんが、勾留は被疑者・被告人の自由をはく奪し、被疑者・被告人に苦痛を与えるものである点において懲役などの自由刑に似ています。そのため、一定の場合に未決勾留日数を刑に算入あるいは通算できることとし、その算入又は通算された日数については刑を受けたものとみなす、という制度が未決勾留です。

未決勾留の制度には、裁判所の裁量によって、判決の時に、刑の言い渡しと同時に未決勾留日数の全部又は一部を刑に算入する裁定算入(算入)」と、未決勾留日数を刑に算入するかどうかの裁量権が裁判所に与えられておらず、刑が執行される際、法律上当然に刑に算入される法定通算(通算)」があります。

判決で、たとえば、「被告人を懲役1年に処する 未決勾留日数中30日をその刑に算入する」と宣告された場合、懲役1年の刑に、未決勾留日数が30日間裁定算入され、実質、約11か月(=1年-30日)刑務所に服役すればいいことになります。つまり、未決勾留日数分だけはやく社会復帰できるということです。

未決勾留日数が算入される刑罰

我が国の刑罰は、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料の6種類です。このうち、未決勾留日数が算入される刑罰は懲役、禁錮、罰金、科料です。死刑と拘留には算入されません。

懲役

懲役は受刑者の自由を奪う自由刑の一つで、無期と有期があります。有期は1月以上20年以下ですが、加重する場合は30年まで引き上げ、減軽する場合は1月未満に引き下げることができます。懲役受刑者には刑務作業が科されます。

禁錮

禁錮も自由刑の一つで、無期と有期があり、有期は1月以上20年以下ですが、加重する場合は30年まで引き上げ、減軽する場合は1月未満に引き下げることができます。懲役との違いは刑務作業を科されない点ですが、希望すれば刑務作業に就くことができます。

罰金

罰金は1万円以上の金銭を徴収される財産刑の一つです。未決勾留日数を罰金に算入する場合は、裁判官が1日あたりの金額を決め、その金額を未決勾留日数分にかけて出した金額を罰金に算入します。たとえば、判決で「被告人を罰金50万円に処する 未決勾留日数中50日を、その1日を4000円に換算して、罰金刑に算入する」と宣告された場合、実質、納付しなければいけない罰金の額は30万円(=50万円-(4000円×50))となります。

科料

科料も財産刑の一つで、千円以上1万円未満の金銭を徴収される刑罰です。金額が低額なため、実務上、未決勾留日数を算入されることはほとんどありません。

未決勾留日数の計算方法

前述のとおり、未決勾留日数には裁定算入による未決勾留日数と法定通算による未決勾留日数があります。ここでは、それぞれどのように計算するのか解説します。

裁定算入

実務上、裁定算入される未決勾留日数は、起訴された後の勾留期間のうち裁判準備のために通常必要とされる日数を超える日数とされています

裁判準備のために通常必要とされる日数は、自白事件の場合、起訴されてから初公判までが「30日」、2回目以降の公判は、前回の公判から「10日」とされています。

そうすると、判決で言い渡される未決勾留日数は次の計算式で算出することができます。

未決勾留日数=起訴後の勾留日数-(30日+(10日×公判の回数-1))

たとえば、起訴後の勾留日数が120日で、公判が第4回まで開かれたとすると、未決勾留日数は、

60日=120日-(30日+(10日×3))

となります。

法定通算

法定通算は、刑事訴訟法第495条第1項で「上訴(控訴・上告)提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留日数を除き、全部これを本刑に通算する」と定められています。

つまり、上訴提起期間中、検察官も被告人も上訴しなかった場合は、判決言い渡しの日から判決が確定した日の前日までの15日間(15日目が土日祝日の場合は直後の平日まで)が通算されるということです。

では、次の場合はどうなるでしょうか?

被告人が上訴し、検察官は上訴しなかった

被告人が上訴し、検察官は上訴しなかった場合は、判決言い渡しの日から上訴を申し立てた日の前日までの日数が通算されます(刑事訴訟法第495条第1項)。

検察官が上訴し、被告人は上訴しなかった

検察官が上訴し、被告人は上訴しなかった場合は、判決言い渡し日から検察官の上訴申立ての日の前日までと上訴後の未決勾留日数はすべて通算されます(刑事訴訟法第495条第2項)。

被告人が上訴申立て後、上訴提起期間内に上訴を取り下げた

被告人が上訴申立て後、上訴提起期間内に上訴を取り下げた場合は、判決言い渡しの日から上訴申立ての日の前日までの日数と、上訴取り下げの日から上訴提起期間満了の日までの日数を合算した日数を通算します

まとめ

未決勾留日数とは、保釈期間中の日数などを除いた、実際に勾留された日数のことです。勾留は刑罰ではありませんが、事実上は、懲役などの自由刑を受けるのと同様の効果があります。そのため、本来の刑から未決勾留日数を差し引き、刑を受けたことと同様の効果を生じさせようというのが未決勾留の制度です。

未決勾留には、裁判所の裁量がきく裁定算入と裁判所の裁量がきかず法律上当然に算入される法定通算があります。裁定算入は未決勾留日数=起訴後の勾留日数-(30日+(10日×公判の回数-1))の計算式でおおよその日数を予測することができます。裁定算入による未決勾留日数は判決で言い渡されるため、実際の日数は判決で把握することができます。

一方、法定通算は当然に算入されるものであることから判決では言い渡されず、刑の執行の際に裁定算入と併せてカウントされています。

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