前科があっても海外旅行に行ける?パスポートは取得できる?

前科があっても海外旅行に行くことは可能です。ただし、前科の内容や刑の種類によっては旅券法に基づきパスポートの発給が制限されたり、渡航先の国でビザが取得できなかったりする場合があります

「前科がついたらもう海外旅行には行けないのだろうか」「パスポートの申請をしても発給を拒否されるのではないか」と不安を感じている方もいるかもしれません。

この記事では、前科がある場合にパスポートの発給やビザの取得にどのような影響があるのかを、「パスポート」と「ビザ」の2つの段階に分けて弁護士が解説します。

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前科があるとパスポートの発給を受けることができない?

まず、第1段階の「パスポートの発給・取得」における支障について解説します。

パスポートとは?

そもそもパスポートは旅券法という法律で「旅券」と定義され、「公用旅券」と「一般旅券」に分けられています。このうち、海外旅行で使用するのが「一般旅券」です。

その性質は自国民であることを証明する身分証明書であり、発行元は自国です。

取得するには各都道府県窓口に必要書類を提出して申請します。

パスポートがなければ自国から出国することができません。

パスポート発給の要件は旅券法に規定

旅券法13条1項各号ではパスポートを発給しないことができる者を規定しています。前科との関係では特に3号、4号、5号が重要です。

3号 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行が終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
4号 第23条の規定により刑に処せられた者
5号 旅券若しくは渡航書を偽造し、又は旅券若しくは渡航書として偽造された文書を行使し、若しくはその未遂罪を犯し、刑法155条第1項又は第158条の規定により刑に処せられた者
出典:e-Gov法令検索

なお、3号から5号に出てくる「刑に処せられた」とは「有罪判決が確定した」ということを意味しています。

※2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。これに伴い、旅券法の条文も「拘禁刑」に改められています。

つまり、実刑の場合はもちろん執行猶予だった場合も含まれます。

したがって、執行猶予の前科でもパスポートの発給を受けることができず海外旅行ができなくなる可能性がある、ということになります。

3号について

「拘禁刑以上」とは拘禁刑と死刑のことを指します。

したがって、拘禁刑以上の前科(実刑、執行猶予の前科)を有する方は「拘禁刑以上の刑に処せられた」にあたり、パスポートの発給を受けることができず海外旅行ができなくなる可能性があります。反対に、

  • 拘禁刑の服役が終わった方(刑の執行が終わった方)
  • 執行猶予期間が経過した方(刑の執行を受けることがなくなった方)
  • 略式起訴され、罰金、科料の命令を受けたに過ぎない方
  • 交通違反で切符を切られ、反則金を納付した方(∵反則金は罰金ではなく、前科とならない)

などは3号にあたらず、パスポートの発給を受けることができます。前科がいつ消えるのか、刑の言渡しの効力が失われる条件について詳しくは前科は消える?調べることはできる?弁護士が解説しますをご参照ください。

4号について

「第23条」では旅券法に違反した方に対する罰則が規定しています。

たとえば、一般旅券申請の際、申請書に虚偽事項を記載してパスポートの発給を受けた方は23条1項1号に違反したことになります。

旅券法に違反した前科(実刑、執行猶予の前科)を有する場合も、パスポートの発給制限の対象となります。

5号について

刑法155条は公文書偽造罪、刑法158条は偽造した公文書を行使した場合の偽造公文書行使罪やその未遂罪について規定しています(旅券は「公文書」にあたります)。

これらの罪の前科(実刑、執行猶予の前科)がある場合も同様に、パスポートの発給が認められない可能性があります。

パスポートの発給を受けている方は返納を命じられることがある

なお、すでにパスポートの発給を受けている方が上記の3号から5号にあたり前科がついた場合には、パスポートの返納を命じられることがあります。

この場合、パスポートは失効し、そのパスポートを使って海外旅行をすることができなくなります

前科があるとビザの発給を受けることができない?

次に、第2段階の「ビザの発給」における支障について解説します。

ビザとは?

海外旅行に慣れていない方にとってはパスポートとビザとの区別がつかず、パスポートの他になぜビザが必要なのかと疑問に思われている方もおられるかもしれません。

しかし、パスポートとビザは全く別物です。

ビザは査証とも呼ばれ、海外旅行先で入国許可をもらうための証書です。発行元は海外旅行先の国です。

ビザは日本国内にある海外旅行先の領事館・大使館に申請して取得します。ビザはパスポートの発給を受けていなければ発給を受けることができません

つまり、前科を持つ方で旅券法13条1項3号から5号にあたる人はビザの発給を受けることができません。

海外旅行前にビザの要否等の確認を!

なお、ビザの要否、発給の要件は、海外旅行先の国、渡航目的、滞在期間等によって異なります。

また、日本でパスポートの発給を受けることができたとしても、必ずしもビザの発給を受けることができる、とまではいえません

さらに、ビザの要否や発給の要件は事前の通告なしに突然変更されることがあります。

海外旅行前に必ず日本国内にある海外旅行先の領事館・大使館にビザの要否等を確認するようにしましょう。

なお、アメリカの場合、90日以内の海外旅行ではビザ取得は免除されます。しかし航空機等に搭乗する前にオンラインによる渡航認証(ESTA)を受ける必要があります。ただし、前科の内容によってはESTAの審査で認証されないケースもあり、その場合は改めてビザを申請しなければなりません。

まとめ

前科があるからといって、必ずしも海外旅行ができなくなるわけではありません。パスポートについては、旅券法13条1項の制限事由に該当しなければ発給を受けることが可能です。ビザについても、渡航先の国や前科の内容によって対応が異なります。

前科がある方が海外渡航を予定している場合は、まずパスポートの発給に問題がないかを確認し、そのうえで渡航先の領事館・大使館にビザの要否や申請条件を問い合わせることが大切です。とくにアメリカのようにESTAの審査で前科が影響する国もありますので、渡航前に十分な時間的余裕をもって準備を進めましょう。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

逮捕回避・早期釈放 不起訴獲得 示談交渉 痴漢・盗撮 性犯罪 暴行・傷害
メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
講演実績 「不当要求対応の基礎」「犯罪組織によるマネー・ロンダリングと投資詐欺への法的処置」等
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