前科があっても海外旅行に行ける?パスポートは取得できる?

今や誰しも海外旅行できるのが当たり前の時代となっています。

もっとも、海外旅行をするためには、自国による「パスポートの発給・取得」という第1段階に加え、ビザが必要な国で海外旅行するには「ビザの発給」という第2段階の手続を事前に踏む必要があります。

では、前科を有しているとそれぞれの段階でいかなる支障が生じるのでしょうか。

以下では、それぞれの段階にわけて弁護士が詳しく解説してまいります。

なお、前科の全体像やデメリットをまずは知っておきたい方は、前科とは?前歴との違いと前科が今後の生活に与える6つの影響を先に読むことをお勧めします。

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1.前科があるとパスポートの発給を受けることができない?

まず、第1段階の「パスポートの発給・取得」における支障について解説します。

⑴ パスポートとは?

そもそもパスポートは旅券法という法律で「旅券」と定義され、「公用旅券」と「一般旅券」に分けられています。このうち、海外旅行で使用するのが「一般旅券」です

パスポートは自国民であることを証明する身分証明書です。発行元は自国です。

パスポートは各都道府県窓口に必要書類を提出して申請します。

パスポートがなければそもそも自国から出国することができません

⑵ パスポート発給の要件は旅券法に規定

旅券法13条1項1号から6号ではパスポートを発給しないことができる者を規定しています。前科との関係では特に3号、4号、5号が重要です。

3号 禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
4号 第23条の規定により刑に処せられた者
5号 旅券若しくは渡航書を偽造し、又は旅券若しくは渡航書として偽造された文書を行使し、若しくはその未遂罪を犯し、刑法155条第1項又は第158条の規定により刑に処せられた者

なお、3号から5号に出てくる「刑に処せられた」とは「有罪判決が確定した」ということを意味しています。

つまり、実刑の場合はもちろん執行猶予だった場合も含まれます

したがって、執行猶予の前科でもパスポートの発給を受けることができず海外旅行ができなくなる可能性がある、ということになります。

① 3号について

「禁錮以上」とは禁錮、懲役、死刑のことを指します。

したがって、禁錮以上の前科(実刑、執行猶予の前科)を有する方は「禁錮以上の刑に処せられた」にあたり、パスポートの発給を受けることができず海外旅行ができなくなる可能性があります。反対に、

  • 懲役、禁錮の服役が終わった方(刑の執行が終わった方)
  • 執行猶予期間が経過した方(刑の執行を受けることがなくなった方)
  • 略式起訴され、罰金、科料の命令を受けたに過ぎない方
  • 交通違反で切符を切られ、反則金を納付した方(∵反則金は罰金ではなく、前科とならない)

などは3号にあたらず、パスポートの発給を受けることができます。

② 4号について

「第23条」では旅券法に違反した方に対する罰則が規定しています。

たとえば、一般旅券申請の際、申請書に虚偽事項を記載してパスポートの発給を受けた方は23条1項1号に違反したことになります。

旅券法に違反した前科(実刑、執行猶予の前科)を有する場合は、パスポートの発給を受けることができず海外旅行ができなくなる可能性があります。

③ 5号について

刑法155条は公文書偽造罪、刑法158条は偽造した公文書を行使した場合の偽造公文書行使罪やその未遂罪について規定しています(旅券は「公文書」「にあたります)。

これらの罪の前科(実刑、執行猶予の前科)を有する場合は、パスポートの発給を受けることができず、海外旅行ができなくなる可能性があります。

⑶ パスポートの発給を受けている方は返納を命じられることがある

なお、すでにパスポートの発給を受けている方が前記⑵①から③にあたり前科がついた場合には、パスポートの返納を命じられることがあります。

この場合、パスポートは失効し、そのパスポートを使って海外旅行をすることができなくなります

2.前科があるとビザの発給を受けることができない?

次に、第2段階の「ビザの発給」における支障について解説します。

⑴ ビザとは?

海外旅行に慣れていない方にとってはパスポートとビザとの区別がつかず、パスポートの他になぜビザが必要なのかと疑問に思われている方もおられるかもしれません。

しかし、パスポートとビザは全く別物です。

ビザは査証とも呼ばれます。ビザは海外旅行先で入国許可をもらうための証書です。発行元は海外旅行先の国です。

ビザは日本国内にある海外旅行先の領事館・大使館に申請して取得します。ビザはパスポートの発給を受けていなければ発給を受けることができません

つまり、前科を持つ方で前記1⑵の①から③(旅券法13条1項1号から3号)にあたる人はビザの発給を受けることができません。

⑵ 海外旅行前にビザの要否等の確認を!

なお、ビザの要否、発給の要件は、海外旅行先の国、渡航目的、滞在期間等によって異なります。

また、日本でパスポートの発給を受けることができたとしても、必ずしもビザの発給を受けることができる、とまではいえません

さらに、ビザの要否や発給の要件は事前の通告なしに突然変更されることがあります。

海外旅行前に必ず日本国内にある海外旅行先の領事館・大使館にビザの要否等を確認するようにしましょう。

なお、アメリカの場合、90日以内の海外旅行ではビザ取得は免除されます。しかし航空機等に搭乗する前にオンラインによる渡航認証(ESTA)を受ける必要があります。

3.まとめ

刑事事件で前科がついてしまった、という場合、まずは日本国からパスポートの発給を受けることができるのか、すでに受けている方は返納が命じられることはないのか確認する必要があります

そして、パスポートが問題なく発給される、あるいは継続して携帯することができるという場合は、海外旅行先でビザが必要かどうか確認し、必要であれば領事館や大使館に条件等を確認の上、ビザ発給の申請手続きを行う必要があります。

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