私人逮捕とは?逮捕できる要件と事例、取り押さえはどこまで許されるか解説

私人逮捕(しじんたいほ)とは、警察官や検察官などの公的機関に所属しない人、すなわち一般人(民間人・市民)による逮捕のことです。常人逮捕(じょうじんたいほ)とも呼ばれています。

最近では、ユーチューバーがチケットの転売ヤーを私人逮捕して逆に名誉毀損の容疑で逮捕されるなど、私人逮捕系ユーチューバーの逮捕が相次ぎ、”やりすぎ”という声が所々で聞かれます。

たしかに、私人逮捕は一定の条件(要件)を満たせば違法にはなりませんが、私人逮捕が適法となる要件をしっかりと理解せずに行動に移すと、その態様によっては、暴行罪や傷害罪に問われる可能性もあります。また、誤認逮捕をして後に冤罪であることが判明した場合には、刑事責任の他、民事上の賠償責任を負うこともあります

そこでこの記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • 私人逮捕の要件
  • 私人逮捕が違法になる可能性のあるケース
  • 私人逮捕の事例
  • 私人逮捕が誤認で冤罪であった場合の法的責任

など、私人逮捕する側、される側の両者が知っておくべき私人逮捕の基礎知識についてわかりやすく解説していきます。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。

私人逮捕の要件

冒頭で述べた通り、私人逮捕のやり方を一歩間違えると、たとえ社会正義のために行った行為でも、逆に罪に問われてしまうこともあります。

そこでここでは、私人逮捕が適法となる以下の2つの要件につき解説していきます。

  • (1)現行犯逮捕・準現行犯逮捕の要件を充たすこと
  • (2)軽微犯罪の逮捕の要件を充たすこと

(1)現行犯逮捕・準現行犯逮捕の要件を充たすこと

刑事訴訟法第213条では「現行犯人は、何人でも(誰でもという意味)、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と規定されており、現行犯(準現行犯も含む)であれば私人逮捕が法律上認められていることがわかります。そこで以下では、現行犯逮捕・準現行犯逮捕の要件につき解説していきます。

現行犯逮捕の要件

現行犯逮捕の要件は、現場の状況などから、逮捕された者が「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者(現行犯人)」であることが私人である逮捕者にとって明らかであること、すなわち、「犯罪と犯人の明白性」と「犯罪の現行性・時間的接着性の明白性」があることです。

「現に罪を行い」とは、逮捕者の目の前において、犯人が特定の行為を行っている場合をいいます。

「現に罪を行い終わった者」とは、特定の犯罪の行為を終了した直後の者、あるいはそれに極めて近接した段階の者であって、そのことが逮捕者にとって明らかである場合をいいます。

現に罪を行い終わった者であるかどうかは、時間的接着性だけでなく、場所的近接性、犯行発覚の経緯、犯行現場の状況、追跡継続の有無などの事情を総合的に勘案して判断されます。

準現行犯逮捕の要件

準現行犯人とは、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる者であって、次のいずれかにあたる者をいいます。

  • ①犯人として追呼されているとき
  • ②賍物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる凶器その他の物を所持しているとき
  • ③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき
  • ④誰何されて逃走しようとするとき

すなわち、準現行犯逮捕の要件は、「犯罪と犯人の明白性」、「犯罪の時間的接着性の明白性」、「①から④のいずれかの存在」、「逮捕者の①から④のいずれかの認識」があることです。

「罪を終わってから間がない」とは、犯行終了時から時間的に近接した時点をいいます。

「追呼」とは犯人として追跡、又は呼称されていること、「賍物」とは窃盗や強盗などの財産犯によって得られた物のことです。

現行犯人かどうか、準現行犯人かどうかは、逮捕者による犯行の現認に限らず、逮捕者が覚知した諸般の事情から合理的に判断されます。判断材料としては、逮捕者が直接見聞きした犯人や被疑者・目撃者の挙動や犯行状況のほか、被害者の供述や犯人の自白も客観的状況を補充するものとして用いることができます。

(2)軽微犯罪の逮捕の要件を充たすこと

軽微犯罪とは、法定刑が30万円以下の罰金、拘留、科料にあたる罪(過失傷害罪・侮辱罪・軽犯罪法違反など)のことです。軽微犯罪の犯人を現行犯(準現行犯)逮捕するための要件については刑事訴訟法第217条に規定されており、以下の要件を充たす場合に限り逮捕できます。

  • 犯人の住所、氏名が明らかでない場合
  • または犯人が逃走するおそれがある場合

したがって、例えば、歩きスマホをしていて誤って他の歩行者に怪我をさせた人がいた場合、その人の氏名や住所を知っている、あるいは、求めに応じて身分証を見せてきたようなケースでは私人逮捕することができません。逃げ出すおそれがない場合も同様です。

私人逮捕が違法になる可能性のあるケース

以下のようなケースでは私人逮捕が違法になる可能性があります。

要件を充たさない逮捕をした場合

まず、前述の現行犯、準現行犯、軽微犯罪の要件を満たさない場合です

たとえば、街中で掲載されている指名手配犯を私人逮捕することは違法です。なぜなら、犯罪が一定期間が経過しているため、現行犯逮捕と準現行犯逮捕の要件である「犯罪と犯人の明白性」の要件を満たさないからです。

また、ひき逃げ、当て逃げなどの交通違反も私人逮捕が可能ですが、違反を目撃し、犯人を見失うことなく追跡できた場合を除いて私人逮捕することは違法です。この場合は犯罪と犯人が逮捕者にとって明白とは言い難いからです。さらに、同じ交通違反でも、罰則の上限が罰金30万円以下の違反をした犯人ついても、前述の要件から私人逮捕することは違法です。

行き過ぎた取り押さえ行為をした場合

次に、私人逮捕の際に行き過ぎた取り押さえ行為をした場合です

私人逮捕する際は、犯人が暴れたり、逃走を図ったりすることが想定されますから、逮捕の状況に鑑みて、社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内で実力を行使することは認められています。どこまでの実力行使が認められるかどうかは、逮捕するときの状況によります。

もっとも、犯人が抵抗の姿勢を示していない、素直に逮捕に従う意思表示をしているのにもかかわらず、暴力を振るったり、数人で羽交い絞めにして取り押さえるなどした場合は、社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度を超えた実力行使だと判断され、私人逮捕が違法となってしまう可能性があります

具体的には、私人逮捕の際の行き過ぎた取り押さえ行為により犯人が怪我をしなかった場合には暴行罪(刑法第208条)、怪我をした場合には傷害罪(刑法第204条)に問われる可能性があります。なお、傷害罪の傷害とは、人の生理的機能に障害を与えることと解されています。そのため、私人逮捕の行き過ぎた取り押さえ行為にり犯人が怪我をしなかったとしても、精神的なショックにより心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したり睡眠障害が生じた場合にも傷害罪が成立します。

直ちに身柄を引き渡さない場合

次に、直ちに犯人の身柄を警察官などに引き渡さない場合です

法律(刑事訴訟法第214条)では、私人逮捕した場合は、直ちに犯人の身柄を検察官又は司法警察職員(警察官)に引き渡すことが義務づけられています。私人には一度私人逮捕した犯人を釈放する権限が認められていないため、直ちに犯人の身柄を権限のある人に引き渡して釈放すべきか否かの判断をする必要があるためです。

正当な理由なく、直ちに犯人の身柄を司法警察職員に引き渡さないと、逮捕監禁罪(刑法第220条)に問われる可能性があります。また、逮捕の際に犯人が怪我をした場合は逮捕監禁致傷罪、死亡した場合は逮捕監禁致死罪に問われる可能性があります。

私人逮捕が誤認で冤罪だった場合の刑事責任・賠償責任

私人逮捕したものの、その後に冤罪(無実の罪)であったことが判明した場合、私人逮捕した人に法的な責任は生じるのでしょうか。

痴漢加害者の男性(A)の腕をつかみながら、痴漢被害者の女性(B)から「この男性(A)に痴漢されました」と言われた男性(C)がAを私人逮捕したところ、本当の痴漢の犯人は別の男性(D)で、Aは無実だったというケースで考えてみましょう。

まず、Cは、BAの腕をつかんでいる状況から、Bから「この男性に痴漢されました」という客観的な状況から、Aが犯人だと合理的に考えてAを逮捕しているわけですから、Cの私人逮捕は適法です。したがって、仮に、真犯人がDだったとしても、Cに法的責任を追及することはできません。

このケースで、仮に私人逮捕した人が刑事責任を負うとすれば、逮捕監禁罪の適用が考えられますが、同罪は過失を処罰する規定がありません。そのため、本当に犯人であると信じて私人逮捕をしたのであれば、結果的には誤認逮捕であった場合でも罪に問われる可能性は低いでしょう

一方、民事責任では、過失がある場合も不法行為(民法第709条)による損害賠償責任は負いますので、誤認で私人逮捕した人は慰謝料などの金銭的な負担を負う可能性はあります

誤認逮捕とは|警察を冤罪の賠償金・慰謝料請求で訴えることは可能?

よくある質問

私人逮捕は相手が拒否した場合でも行える?

私人逮捕ができる場合、すなわち私人逮捕の要件をいずれも満たしている場合であれば、相手方が拒否しても強制的に身体を拘束できる可能性があります

身体拘束を適法に行える以上、相手方がこれに抵抗したとしても、本来的な処分に付随して行われる妨害排除行為も許容されています。

すなわち、相手方の抵抗に対抗するために、相手の身体を取り押さえたり、羽交い絞めにすることも「社会通念上、必要かつ相当な範囲」といえる限り許されます。

したがって、行き過ぎた有形力を行使したり過剰な苦痛を与えたりする場合には、適法な私人逮捕の範囲を超えた違法な身体拘束と評価されるリスクがあります。

私人逮捕の際に手錠をかける行為は違法?

原則として、一般人が相手方の同意なく手錠をかけることは、逮捕罪として犯罪になります。

しかし、現行犯逮捕の場合には、必要最小限の実力を行使することが認められています。これは一般人による私人逮捕の場合も同様です。

前述のように「社会通念上、必要かつ相当な範囲」であれば、相手方に手錠をかけることも可能です

相手が暴れたり逃走を図ったりしようとしてる場合には、妨害を排除するために手錠を用いることも相当といえるでしょう。一方で相手が素直に犯行を認め自らの処遇を委ねている場合であれば、手錠による拘束をする必要性は低いと評価される可能性があります。

客引きを私人逮捕することはできる?

客引き行為に遭った際に、相手を私人逮捕するのは犯罪に該当するおそれがあります

まず客引き行為は、軽犯罪法などに違反する犯罪となる可能性があります。

しかし、それらは軽微な犯罪であり、前述の通り、軽微犯罪に対する現行犯逮捕には一定の制限があります。

繰り返しとなりますが、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、「犯人の住所若しくは氏名が明らかでない場合」「犯人が逃亡するおそれがる場合」のいずれかに該当しない場合には逮捕することができません(刑事訴訟法第217条)。

したがって、客引きを私人逮捕すると逮捕罪等に問われる可能性があります。。

信号無視や煽り運転などの交通違反も私人逮捕できる?

道路交通法に違反した者を私人逮捕することは許されるのでしょうか。

酒気帯び運転(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)や酒酔い運転(5年以下の懲役または100万円以下の罰金)、煽り運転(妨害運転罪。3年以下の懲役または50万円以下の罰金)を一般人が目撃した場合には、現に犯罪を行った、または罪を行い終わった者と言えます。

したがって、一般人であっても煽り運転等の一定の交通違反について私人逮捕することが認められます

これに対して、軽微なスピード違反や信号無視、警察官の現場における指示違反などの場合には、軽微犯罪として現行犯逮捕に一定の制限が設けられています。

すなわちこれらの軽微犯罪については、住所・氏名が不明か逃亡のおそれがなければ私人逮捕することはできません

私人逮捕されたら弁護士に相談

前述のとおり、私人逮捕されると身柄を警察官に引き渡されます。引き渡された後は、警察官から事情を聴かれ、警察官が引き続き身柄拘束が必要だと判断した場合は、逮捕から24時間以内に検察庁へ事件と身柄が送致されます。その後も、引き続き身柄拘束が必要だと判断された場合は身柄拘束が長期化する可能性があります。

身柄拘束が長期化すると仕事や家族の生活など、様々な方面に影響を与えます。こうした事態を防止するには、私人逮捕された直後に弁護士との接見を要請し、弁護士に刑事弁護活動を依頼することです。弁護士の活動のタイミングがはやければはやいほど、釈放のタイミングもはやまり、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です

また、弁護士に依頼するメリットは早期釈放される可能性があることだけではありません。釈放されても在宅のまま取調べを受け、その後起訴され刑事裁判にかけられる可能性は残されていますが、弁護士に刑事弁護活動を依頼することがで、不当・違法な取調べに異議を唱えてもらったり、被害者と示談交渉するなどして不起訴処分の獲得に努めてくれます。被害者との示談交渉は、弁護士でなければ行うことは不可能といっても過言ではありません。取調べに不安を感じる場合や被害者との示談交渉を希望する場合も、はやめに弁護士に依頼した方が得策です。

弊所では、被害者との示談交渉、早期釈放、不起訴の獲得を得意としており実績があります。新味誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、私人逮捕されてしまった方やそのご家族の方で、お仕事や生活への影響を極力抑えたいとお考えの方は弊所の弁護士までご相談ください。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。
刑事事件に強い弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による刑事事件の無料相談を受け付けております

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に刑事事件の解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

逮捕の回避・早期釈放・不起訴・示談を希望される方は、刑事事件に強い当法律事務所にメールまたはお電話でご連絡ください。