ご家族や恋人、友人が逮捕されたことを知ると、「何をしたの?」「一刻もはやく面会したい」と思いますよね。
しかし、逮捕されたご本人と面会できるのは、基本は勾留後ということをご存知でしたか?
この記事では、
- 勾留された人といつから面会できるのか
- 勾留面会できるのは誰か
- 土日祝日は勾留面会できるか
- 面会、差し入れに関する様々な疑問
などについて、刑事事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
また、「勾留ってそもそもなに?」という疑問をお持ちの方は、勾留とは?要件や身柄拘束される期間、釈放されるための2つの手段を合わせて読むとさらに理解が深まります。
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目次
間違えやすい!「勾留」と「拘留」の違い
勾留中の面会、差し入れについて解説する前に、読み方が同じでよく意味を混合されがちな勾留と拘留の違いから解説いたします。
勾留とは、被疑者(罪の疑いをかけられ起訴される前の人)あるいは被告人(起訴された人)が、一定期間、留置場、拘置所に収容されることをいいます。被疑者・被告人の逃亡、罪証隠滅の防止、裁判出廷への確保を目的として行われるのが勾留です。
他方で、拘留とは、死刑、懲役、禁錮、罰金、科料と同じ刑罰の一種です。拘留の刑罰の内容は1日以上30日未満の間、受刑者を刑事施設(拘置所、刑務所)に収容することです。
本稿では、「勾留」されている方との面会について解説していきますのでご注意ください。
勾留中の人といつから面会できる?
ご家族、あるいは、恋人や友人が逮捕された、勾留されたということを知ると、一刻もはやく面会したい、差し入れしてあげたいと思うのが当然の心境です。では、一体、いつから逮捕・勾留された本人と面会でき、本人に対して差し入れすることができるのでしょうか?
⑴ 逮捕から勾留、勾留から刑事処分までの流れ
まずは、逮捕から勾留、勾留から判決までの流れを確認しましょう。
各流れは以下のとおりとなります。
①逮捕から勾留まで
逮捕→留置場に収容→送致(送検)→勾留請求→勾留決定→勾留
逮捕から送致までは最大48時間です。送致から勾留請求までは最大24時間です。勾留請求から勾留決定までの時間制限はありませんが、通常、半日~1日を要しますから、逮捕から勾留決定(勾留)までは3日程度はかかると考えておいた方がよいでしょう。なお、逮捕から勾留までの間、釈放されることもあります。
②勾留から判決まで
勾留→捜査→(勾留延長)→刑事処分(起訴or不起訴)→刑事裁判→判決
はじめの勾留期間は10日です。勾留期間中から本格的な捜査が始まります。その後、勾留延長することにつきやむを得ない事由がある場合は最大で10日間、勾留期間を延長されることがあります。そして、基本的には勾留期間中の捜査を経て起訴か不起訴かの刑事処分が決まります。起訴された場合は刑事裁判を受け、判決に至ります。起訴から判決までの期間の長短は事件の難易度などにより異なります。比較的軽微な自白事件であっても起訴から判決までは1週間前後~1か月は要します。
⑵ 面会、差し入れは勾留後から
では、本題の「面会、差し入れはいつからか」ということですが、面会、差し入れは基本的には勾留後から、と考えておいたほうがよいでしょう。なぜなら、弁護士以外の人が勾留前から逮捕された人と面会し、逮捕された人に差し入れすることを認める法律上の規定がないからです。このため、逮捕直後に警察官に「本人と面会させてください。」「差し入れしたい。」と申し出ても「今は逮捕中だからダメです。」と断られることが多いでしょう(稀に認めてくれる警察官もいます)。どうしても、勾留前に本人との面会を希望する場合は、弁護士(当番弁護士、各法律事務所の弁護士、国選弁護人は不可)に本人との面会を依頼する必要があるでしょう。
勾留中の面会の特徴
では、ご本人が勾留された、という場合、早速面会へ!と行きたいところですが、弁護士以外の方が行う面会には様々な制約があります。まずはその特徴を抑えておきましょう。なお、⑵から⑹については各留置場、拘置所により異なる場合があります。面会に行く前に必ず各留置場、拘置所の担当者に確認しましょう。
⑴ 特徴その1~面会できるのは勾留後
前記2でご説明したとおり、ご家族が面会できるのは基本的には勾留後です。逮捕から勾留決定(勾留)までの間は基本的には面会することができません。
⑵ 特徴その2~面会できるのは平日
行政機関の休日は面会できません。行政機関の休日は法律で定められており、土日祝日のほか、12月29日~1月3日も休日です。そのため、大晦日やお正月に面会はできません。
つまり、土日祝日、年末年始を除いた平日しか勾留されている人と面会することはできません。
⑶ 特徴その3~受付時間が限られている
面会の受付時間は「午前8時30分(又は午前9時)から午後4時まで」、あるいはさらに限定して「午前10時から午前11時までと午後2時から午後4時まで」などとしているところもあります。
⑷ 特徴その4~1回の面会時間が短い
1回の面会時間は15分又は20分としているところが多いです。
⑸ 特徴その5~面会できる人数は3人まで
本人と1回に面会できる人数は3人までです。3人の中には赤ちゃん、幼児も含まれるとするところもあります。
⑹ 特徴その6~面会回数は1日1回
本人1人につき面会できるのは1日1回です。つまり、面会する前に他の人が面会していた場合はその日は面会することができず、翌日以降に面会するしかありません。
⑺ 特徴その7~立会人がつく
留置場、拘置所の担当者が面会に立ち会います。面会室の隅の方で聞き耳をたてられているような感じがしますので、思うように言いたいこともいえない雰囲気となります。
⑻ 特徴その8~接見禁止が付いていると面会できない
本人に接見禁止(弁護士以外の人との面会、差し入れ等を禁止する処分)が付いている場合は面会することができません。面会する前に、担当者あるいは弁護人に電話して接見禁止が付いていないかどうか確認するとよいでしょう。
接見禁止とは|禁止の理由、期間、解除の方法をわかりやすく解説
勾留中の面会、差し入れに関する疑問
以下では勾留中の面会、差し入れに関する様々な疑問についてお答えしてまいります。
⑴ 面会について
① いつから面会できる?
前記のとおり、基本は勾留後です。
② 誰が面会できる?
家族、知人・友人、恋人を問わず面会できます。ただし、本人に接見禁止がついている場合は面会できない場合があります。
③ どこで面会する?
本人が収容されている留置場、拘置所です。既に触れたとおり、被疑者として勾留されている間は留置場に収容されることが多いです。もっとも、起訴後は拘置所に、別の警察署に再逮捕された場合は別の警察署の留置場に移送されることもあります。本人が今どこに収容されているかは弁護人が把握していますから、本人の収容場所が気になる方は弁護人に一度尋ねてみるとよいでしょう。
④ 面会で気を付けなければならないことは?
電話での事前の面会受付(予約)は行っていません。面会したいその日に実際に留置場、拘置所の窓口へと足を運び、受付の手続を行う必要があります。もっとも、その際、本人が取調べや実況見分などで不在の場合は、本人が留置場、拘置所に戻ってくるまでは面会できません。そこで、面会したい日に予め担当に電話をかけ、「本日は〇〇と面会できますか。」と尋ねてみましょう。すると、最低限、面会できるかできないかだけも教えてくれるはずです。
また、前記のとおり、先に本人と面会している人がいれば、その日は面会することができません。さらに、他の面会者が多く面会が混雑している場合は面会時間を短縮されることもあります。可能な限りはやめに受付を済ます必要があります。
⑤ 勾留中に面会できない場合があるって本当?
前記のとおり、逮捕から勾留決定が出るまでの間、または勾留後であっても本人に接見禁止がついている場合が面会できない場合があります。もっとも、接見禁止の内容によっては(たとえば、家族のみ面会を許す、というような部分的な接見禁止の場合)面会できることもあります。
⑥ 面会の際に持参しなくてはならないものは?
面会の申し込みの際には、運転免許証やパスポート、住基カード、在留カード等の身分証明書の提示が必須になります。なお、特に顔写真付きである必要はありませんので、健康保険証等でも問題ありません。
また、面会の申込書にはサインで済むことがほとんどですが、稀に印鑑(シャチハタ以外)での押印を求めてくる留置所や拘置所もありますので、事前に問い合わせするか、念のため持参した方が良いでしょう。
⑦ 面会までの流れは?
面会までの流れは以下のとおりです。
STEP1 留置場、拘置所の担当者に電話をする
→警察の代表の電話番号(110番ではない)に電話して、「〇〇と面会したいので、係につないでください。」と言います。そして、係とつながったら「〇〇と面会したいのですが可能ですか?」と言いましょう。ここで本人に接見禁止が付いている場合、外出していて不在の場合は「本日は面会できません。」「〇〇時までは面会できません。」などと言われます。
STEP2 留置所、拘置所の窓口に出向く
→面会が可能であれば面会の受付時間を確認の上、留置所、拘置所の窓口に出向きます。電話での面会予約は不可です。留置所、拘置所の窓口で申込書に必要事項を記入し、所持品検査を受け、問題なければ面会室で面会できます。
⑵ 差し入れについて
① いつから差し入れできる?
面会と同様、基本は勾留後です。
② 誰が差し入れできる?
家族、知人・友人、恋人を問わず差し入れできます。ただし、本人に接見禁止とともに物の授受の禁止がついている場合は差し入れできない場合があります。
③ どこで差し入れする?
直接持参する場合は、留置場、拘置所の窓口です。もっとも、④のとおり郵送による差し入れも可能です。
④ 差し入れ方法は?
留置所、拘置所の窓口に直接持参、あるいは直接持参が難しい場合は郵送による差し入れも可能です。
⑤ 差し入れで気を付けなければならないことは?
差し入れできるものと差し入れできないものがあります。差し入れする前に留置場、拘置所の担当者に電話をし、事前に差し入れできるものできないものを確認するとよいでしょう。差し入れできなかったものは、ご自身で引き取りに行く必要があります。また、郵送する場合、差出人不明だと中身のチェックの前に差入物の受け取りを拒否されます。
⑥ 何を差し入れると喜ばれる?
留置場、拘置所内で物を購入したいという場合は、担当者にお金を預けて買ってきてもらうことができます。したがって、現金は喜ばれると思います。食料品は差し入れできませんから、現金があると自分の好きなものを買って食べることができます。その他、手紙や写真などは本人を勇気づけることに繋がり喜ばれるのではないでしょうか。一番よいのは、面会で本人に何が欲しいのか聞いてみることです。
⑦ 差し入れできないものがあるって本当?
食料品は差し入れできません。自傷他害のおそれのあるもの(カミソリ、バスタオル、ネクタイ、ベルト、紐が付いた衣類、たばこなど)も差し入れできません。その他、薬は収容後の医師による診察を経て処方されますから差し入れることはできません。差し入れできないものは各留置場、拘置所によって異なります。不安な場合は事前に必ず確認しましょう。
⑧ 差し入れの際に持参しなくてはならない物は?
身分証(免許証等)に加え、差し入れの際は印鑑(シャチハタ以外)も必要になります。
もっとも、印鑑を持参しなかった場合は指印でも構いません。指印に抵抗がある方は忘れずに印鑑を持参しましょう。
⑧ 差し入れまでの流れは?
基本的には面会と同じです。
持参の場合は差し入れの受付時間内に留置所、拘置所の窓口に出向き、申込書に記入・押印、身分証明書を提示の上、差入物を担当者に引き渡します。その後、担当者による差入物のチェックが行われ、問題なければ差し入れ完了です。ここで差し入れできないものがあれば、持ち帰る必要があります。
郵送する場合は事前に担当者に電話し、郵送する旨を伝えていた方が唐突に郵送する場合よりも受け取りがスムーズにいくでしょう。郵送後、持参する場合と同様、差入物のチェックが行われ、差し入れできないものがある場合は引き取り、あるは処分される可能性がありますので注意が必要です。
5.勾留中の面会でお困りの場合は弁護士に依頼
前記「3」のとおり、ご家族が面会するといっても様々な制約があります。そんなご家族面会に不便を感じたときに頼れるのが弁護士による弁護士面会です。
⑴ 弁護士による面会の特徴
弁護士による面会には以下の特徴があります。
① 逮捕直後から面会できる(国選弁護人以外)
弁護士以外の方(ご家族など)は、基本的に勾留後でなければ面会できません。他方で、弁護士(国選弁護人以外)は逮捕直後、つまり、逮捕から勾留決定(勾留)までの間からでも面会することが可能です。
② ご家族面会のような制約がない
弁護士面会にはご家族などが行う際の制約がありません。つまり、時間、曜日、回数に関係なく面会できます。また、1回の接見時間は無制限(ただし、施設運営上の制限はあります)で、立会人はつきません。ご本人に接見禁止がついた場合でも面会することができます。
⑵ 面会を依頼できる弁護士の種類、特徴、弁護士費用
では、以下ではご本人と面会できる弁護士の種類、特徴、弁護士費用をご紹介します。弁護士に面会を依頼する際の参考としてください。
① 当番弁護士
当番弁護士は、逮捕・勾留された方やそのご家族等からの要請に基づき弁護士会から派遣される弁護士です。弁護士を選ぶことはできません。ただし、費用は無料です。
活動内容は1回の面会のみです。面会後の具体的な弁護活動は行ってくれません。面会後に面会した当番弁護士に弁護活動を依頼したい場合は、当番弁護士にその旨伝え当該弁護士あるいは当該弁護士が所属する法律事務所と委任契約を結ぶ必要があります。
② 委任契約前の弁護士
委任契約前の弁護士は、逮捕・勾留の通知を受けたご家族等からの依頼に基づき、特定の法律事務所から派遣される当該事務所に所属する弁護士です。ご家族等が弁護士あるいは法律事務所を選んで依頼することができます。
ただし、費用は有料です。費用や内訳は弁護士や法律事務所により異なりますが、通常、日当費と交通費に分けられます。日当費は「1万円~3万円(税別)」で、交通費は実費で負担することとなり、法律事務所から面会場所までの距離が遠ければ遠いほど交通費は高額となります。
活動内容は当番弁護士と同様1回の面会のみです。面会後の弁護活動を希望する場合は、あらためて当該弁護士あるは当該弁護士が所属する法律事務所と委任契約を結ぶ必要があります。
③ 委任契約後の私選弁護人
逮捕・勾留された方本人、あるいはそのご家族等が独自に弁護活度を依頼し、委任契約をした弁護士を私選弁護人といいます。私選弁護人は面会のみならずあらゆる弁護活動をしてくれます。面会もそのうちの一つです。
もっとも、弁護士費用を負担する必要があります。法律事務所によって予め面会費用が弁護士費用に組み込まれている場合と組み込まれていない場合があります。後者の場合は弁護士が面会にいく都度、面会費用(接見日当+交通費)が発生します。そして、弁護士が面会に行けばいくほど全体の弁護士費用は高額となります。
④ 国選弁護人
国選弁護人は、一定の条件(資力が50万円以下など)を満たす場合に、勾留決定後に裁判所によって選任される弁護人です。私選弁護人と同様、あらゆる弁護活動を行ってくれます。面会ももちろん回数に関係なく行ってくれます。
さらに、基本的に面会費用を含めて弁護士費用を負担する必要がないという点も大きな魅力です。また、弁護士が必要と認めれば回数に関係なく接見してくれます。もっとも、国選弁護人は、
- 本人、ご家族などが弁護士を選ぶことができない
- 逮捕から勾留決定が出るまでの間は面会してくれない
などのデメリットもあります。
⑶ 弁護士による差し入れ代行
弁護士による差し入れ代行とは、差し入れが困難、できないご家族等に代わって弁護士がご本人に対して差し入れするものです。弁護士が面会に行く際に、合わせて行ってくれますから、ご希望があれば予め一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
6.まとめ
勾留とは刑事事件における身柄処分の一種です。ご家族が逮捕されても、面会、差し入れできるのは基本的には勾留(決定)後となります。もっとも、ご家族による面会、差し入れには様々な制約があります。制約により不便を感じることがあれば、弁護士に面会、差し入れを依頼することもひとつの方法です。弁護士に面会、差入れを依頼する場合は、依頼の目的を明確にし、各種弁護士のメリット、デメリット、費用のことなども考慮した上で、いずれの弁護士に依頼するのか速やかに決めることが必要です。
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