痴漢を疑われた時に免許証等の身分証明を出せば現行犯逮捕されない?
痴漢を疑われた時に免許証などの身分証明書を見せれば現行犯逮捕されないって情報をネットで見かけたんだけど本当?

このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、痴漢事件に強い弁護士が、

  • 痴漢を疑われた時に身分証明書を出せば現行犯逮捕されないのか
  • 痴漢冤罪で現行犯逮捕した相手は法的な責任を負うのか

についてわかりやすく解説していきます。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。

痴漢容疑で身分証明書を出せば現行犯逮捕されない?

それでは、痴漢を疑われて現行犯逮捕されそうになった際、身分証明書を出せば逮捕されないのか解説していきます。

現行犯逮捕とは?

現行犯逮捕とは、罪を犯したこととその犯人が逮捕者にとって明らかである場合に、裁判官が発する令状なしに逮捕できる逮捕手段の一種です。

逮捕には、現行犯逮捕のほか通常逮捕、緊急逮捕がありますが、現行犯逮捕は令状が不要で、かつ、一般人でも逮捕できる点が通常逮捕、緊急逮捕と大きく異なる点です。

身分証明書を出せば現行犯逮捕されない?

そもそもこうした疑問がわく原因は、現行犯逮捕の要件と深く関係しているものと考えられます。

現行犯逮捕の要件は、犯罪と犯人が逮捕者にとって明らかであることに加え、逮捕の必要性も必要とされています。ここで、逮捕の必要性とは、犯人に逃亡と罪証隠滅のおそれが認められるということです

しかし、犯人が自分の身分証明書を見せるということは自分の住所を明らかにするということであり、「犯人に逃亡のおそれがない=逮捕の必要性がない=現行犯逮捕の要件を満たさない=現行犯逮捕できない」のではないかということです。

たしかに、痴漢で逮捕されるのを回避するために、身分や連絡先を明らかにして逃亡のおそれがないことを示すことは重要です。

もっとも、定まった住所がありそれを明らかにしたからといって逃亡しないことの証明にはなりません。定まった住所がある人でも逃亡する人は逃亡します。

また、犯人が身分証明書に載せている住所に住んでいるとは限りません。うがった見方をすれば、犯人が実際に住んでいる住所をカモフラージュする意図で、あえて身分証明書に載せている住所を明らかにしていると考えることもできます。

このように、痴漢で現行犯逮捕される際、免許証や保険証などの身分証明書を見せれば逮捕されないという情報は間違いです

よくある誤解

「法律の条文で、犯人の住所もしくは氏名が明らかでない場合に限って現行犯逮捕できると書いてあったので、身分証明書を見せれば逮捕されないのでは?」と主張される方がいますが、これは誤解です。

この条文は刑事訴訟法第217条を指していますが、この条文を確認してみましょう。

(軽微事件と現行犯逮捕)
30万円(省略)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第213条(現行犯逮捕の規定)~(省略)~の規定を適用する。

 

この規定が適用されるのは、「30万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪」の現行犯逮捕についてです。痴漢行為は、迷惑防止条例違反(6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金)や強制わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役)に問われる犯罪ですので、この規定は適用されません。つまり、身分証を示して住所や氏名を明らかにしたとしても現行犯逮捕される可能性はあるのです。

痴漢冤罪で逮捕した相手は法的な責任を負う?

次に、痴漢したと思った人を現行犯逮捕したものの、結果として冤罪だったことが判明した場合、逮捕した人に法定責任を負わせることができるのかどうかです。

この点、刑事責任としては逮捕罪が考えられます。

(逮捕及び監禁)
第二百二十条 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

刑法 | e-Gov法令検索

逮捕とは、両手で人の身体をつかむなどのように、人の身体の自由に直接拘束を加えることをいいます。ある程度継続した拘束時間が必要で、一時的な拘束に過ぎなかった場合は暴行罪(刑法208条:2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)が提要される可能性があります。

もっとも、通常、逮捕者は目の前にいる人が痴漢したからこそ現行犯逮捕しよう、つまり、自分の行いは正当な行為だと思って現行犯逮捕しているものと思われ、逮捕罪を犯す意思(故意)を欠くと考えることができます。

逮捕罪は犯人に故意を欠く場合は成立しませんから、痴漢の事実がないことを認識しながらあえて逮捕したというごく例外的な場合を除き、逮捕者に逮捕罪を問うことは難しいと考えられます

一方、民事上の損害賠償責任は、たとえば、逮捕者が自分の行いが正当な行為だと誤認したことにつき過失があった場合など、故意はないけれども過失があったという場合には問うことは可能です。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。
刑事事件に強い弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による刑事事件の無料相談を受け付けております

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に刑事事件の解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

逮捕の回避・早期釈放・不起訴・示談を希望される方は、刑事事件に強い当法律事務所にメールまたはお電話でご連絡ください。