児童福祉法違反とは?弁護士がわかりやすく解説

児童福祉法は、児童の健全な育成のために制定されたすべての児童の福祉を支援するための法律です。

児童福祉法違反の中でも最も罰則が重い行為が「児童に淫行させる行為(児童淫行罪)」です。例えば、学校の教師や塾の講師が児童(18歳未満の者)である生徒と性行為をしたり、性風俗店が児童を雇用して接客させる行為が典型です。

この記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • 児童福祉法違反にあたる行為と罰則
  • 児童福祉法違反の時効、判例
  • 児童福祉法が初犯の場合の量刑
  • 児童福祉法違反で逮捕された場合の対応

などについて、児童淫行罪を中心にわかりやすく解説していきます。

なお、児童福祉法などの児童を相手とした性犯罪を犯してしまった方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合は弁護士までご相談ください

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児童福祉法違反とは?

児童福祉法とは

児童福祉法とは、児童が良好な環境において生まれ、かつ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援するための法律です。

児童福祉法第2条第1項では「全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。」と定め、同条第2項では児童の保護者が児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負うこと、同条第3項では国及び地方公共団体が児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負うことを定めています。

そして、児童福祉法第34条では禁止行為について定めています。その中でも、最も罰則が重い行為が次に説明する「児童に淫行をさせる行為」です

児童福祉法違反の「児童に淫行させる行為」とは

児童に淫行させる行為は児童福祉法第34条第6号で禁止されています。

児童に

児童とは満18歳に満たない者をいいます。男女の区別はありませんから、女児のみならず男児も保護の対象です。

淫行を

淫行とは、児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準じる性交類似行為と解されています(最高裁平成28年6月21日判決)。性交とは陰茎を膣内に挿入する行為、性交に準じる性交類似行為とは口淫、手淫などが典型です。

また、児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準じる性交類似行為も淫行に含まれると解されています。児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているかどうかは客観的状況から判断されます。そのため、いくら「交際中の性交だから淫行にあたらない」などと主張しても、客観的状況から、児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない(つまり、淫行にあたる)と判断されてしまう可能性があります。

させる行為

させる行為とは、直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し、促進する行為をいいます(最高裁平成28年6月21日判決)。暴行、脅迫、その他の不正な手段を用いて強制的に児童に淫行をさせるという意味ではありません。させる行為かどうかは、行為者と児童との関係(※)、助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯、児童の年齢、その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合的に考慮して判断されます。

※たとえば、担任教師と生徒、塾講師と生徒、児童養護施設職員と入所者、経営者・雇用主と労働者 など

「児童に淫行させる行為」以外の児童福祉法違反にあたる行為とは

児童福祉法第34条第1項で定めている「児童に淫行をさせる行為」以外の禁止行為は次のとおりです。

第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
二 児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為
三 公衆の娯楽を目的として、満十五歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
四 満十五歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
四の二 児童に午後十時から午前三時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
四の三 戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満十五歳に満たない児童を、当該業務を行うために、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第四項の接待飲食等営業、同条第六項の店舗型性風俗特殊営業及び同条第九項の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為
五 満十五歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為
(六 児童に淫いん行をさせる行為)
七 前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知つて、児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされるおそれがあるの情を知つて、他人に児童を引き渡す行為
八 成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあつせんする行為
九 児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為

児童福祉法違反の罰則

児童福祉法第34条第1項第6号の「児童に淫行させる行為」の罰則は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科(懲役と罰金を両方科すという意味)です(児童福祉法第60条1項)。6号以外の罰則は「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科」です(児童福祉法第60条2項)。

第六十条 第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
② 第三十四条第一項第一号から第五号まで又は第七号から第九号までの規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

児童福祉法 | e-Gov法令検索

児童福祉法違反の時効

児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)の公訴時効は7年です

公訴時効とは、犯罪行為が終了したときから一定期間が経過することにより犯人を処罰することができなくなる制度のことです。

公訴時効の期間はその犯罪の法定刑の上限を基準に決定されます。

前述の通り、児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)の法定刑は「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科」であるところ、刑事訴訟法第250条2項4号で「長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年」で時効が完成すると規定されています。

したがって、児童に淫行させる行為を最後に行った日から起算して7年が経過すれば、刑事処罰を受けることはなくなります。

なお、その他の児童福祉法違反の公訴時効は3年です

児童福祉法と関連した犯罪

児童は児童福祉法以外の罪でも保護の対象となっているため、児童と淫行した場合は児童福祉法以外の法令でも処罰される可能性があります。

青少年保護育成条例違反

青少年に対して性交又は性交類似行為をした場合は、各都道府県の青少年保護育成条例にも問われる可能性があります。青少年とは18歳未満の者をいいますが、婚姻している18歳未満の者を青少年から除外している条例もあります。

青少年保護育成条例では、青少年に対する禁止行為のほかに青少年との淫行を禁止する規定が設けられていることが多いため、「淫行条例」といわれることもあります。

罰則も条例により異なりますが「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とする条例が多いです。児童福祉法違反と青少年保護育成条例違反が同時に成立する場合は、刑の重たい児童福祉法の罰則が適用されます。

児童買春・児童ポルノ禁止法

児童などに対してお金などの対価を与える、あるいは与える約束をして性交などをした場合は児童買春罪に問われる可能性があります。罰則は「5年以下の懲役又は300万円以下の罰金」です。

また、スマートフォンなどで児童の裸や児童との性交場面を撮影した場合は児童ポルノ製造罪、児童の裸などの写真画像をスマホやパソコンなどに保存して所持していた場合は児童ポルノ所持罪に問われる可能性があります。製造罪の罰則は「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」、所持罪の罰則は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

監護者わいせつ罪・監護者性交等罪

18歳未満の者の監護する監護者(親や養親など)が、監護者であることによる影響力に乗じて18歳未満の者に対しわいせつな行為をした場合は監護者わいせつ罪、性交等をした場合は監護者性交等罪に問われる可能性があります。監護者わいせつ罪の罰則は「6月以上10年以下の懲役」、監護者性交等罪の罰則は「5年以上(上限20年)の有期懲役」です。

児童福祉法と青少年保護育成条例の違いは?

上記の通り、児童福祉法と同様の目的で制定されている法令として青少年保護育成条例があります。

いずれも未成年者の心身ともに健やかに育成できるようにすることを目的に制定された法令であるといえます

では、それぞれの違いはどこにあるのでしょうか。

まず、児童福祉「法」は、国会によって立法された法律です。法律は日本全国どこにいようともその適用を受けることになります

これに対して、青少年保護育成「条例」は、18歳未満の青少年の保護、健全育成を目的として各都道府県などの自治体が独自に制定している条例です。条例はその自治体の中で起こった行為に対してのみ適用されることになります

児童福祉法違反で初犯だと執行猶予?実刑もあり得る?

児童福祉法の「児童に淫行させる行為」は重罪であるため、初犯であっても実刑になる可能性があります

特に特定の被害児童に対して反復継続して長期にわたり淫行等を行ってきたような悪質なケースの場合には、初犯であっても、執行猶予が付されず実刑判決が言い渡される事案も少なくありません。

もっとも、裁判官が、懲役実刑にするか執行猶予をつけるかを決めるにあたっては、初犯であるか否かだけではなく、被告人の反省の態度、被害者の処罰感情、被害弁償・示談成立の有無などの事情を考慮して個別に判断します。

そのため、初犯の場合、被害者に謝罪を尽くし、示談を成立させることができれば執行猶予がつく可能性も十分あります。そのため、罪を犯したらできるだけ早い段階に弁護士に相談し、執行猶予付き判決の獲得に向けて被害者(の保護者)との示談交渉を進めてもらうようにしましょう。

児童福祉法違反の判例

児童に有償で性交類似行為をさせた事案

この事案は被告人が、被害児童Aをファッションヘルス店で、不特定多数の男性客を相手に対価を得て卑猥な接客行為をするいわゆるヘルス嬢として稼働させ公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の供給を行ったという職業安定法違反の別件で公訴提起されていた事案です。

この被告人は、当時17歳のAに対し不特定の遊客を相手に売春することを示唆して性交類似行為をさせて、児童に淫行させた、として児童福祉法違反でも起訴されてしまいました。

被告人は、自己の遊興費にあたる金欲しさという犯罪動機で、街で知り合った被害児童に甘言や暴行・脅迫を用いて買春させていることから、

「犯情はきわめて悪質であり、被害児童の心身にも著しい悪影響を及ぼしていること、ファッションヘルスで稼働する妻から小遣いを貰って遊び暮らしながら、他方において、被害児童から得た金銭を遊興費等に費消し、さらには、被害児童の身の上を心配し、被告人との関係を断ち切らせようとした被害児童の母親からも、その心配につけこんで多額の金銭の交付を受けるなどしていることなどの事情に照らすと、被告人の刑責を軽視することは許され」ないと判示されています。

一方でAの母親に60万円を支払って示談を成立させAの母親から寛大な処分を希望する旨の嘆願書が提出されていることや、被告人に前科がなく21歳と若年であり本件を反省している、という被告人に有利な事情を斟酌した結果、懲役10カ月の実刑判決が下されています(名古屋高等裁判所平成10年1月28日判決)。

中学校の教師が児童福祉法の「淫行」で有罪となった事案

この事案は、中学校の教師である被告人が、その立場を利用して、児童である女子生徒に対し電動バイブレーターで自慰行為をするよう勧め、被告人も入っている同じこたつの中に下半身を入れた状態や、被告人も入っている同じベット上の布団の中で、バイブレーターを使用して自慰行為をするに至らせた事案です。

最高裁判所はこのような各行為について児童福祉法第34条1項6号の「児童に淫行させる行為」にあたるとした原判決を支持しています(最高裁判所平成10年11月2日決定)。

被告人が約15年間勤務してきた中学校教諭の職を懲戒免職されていることや、これまでに前科がないことなど被告人のために酌むべき諸般の情状を考慮したうえで、懲役2年、執行猶予3年の判決が言い渡されていました。

児童福祉法違反で逮捕されたときの対応

児童福祉法違反の罪のほとんどは親告罪ではありません。親告罪とは、被害者等の告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪をいいます。そのため、被害者側が被害申告をしない場合でも、捜査機関が事件を認知すると、逮捕・起訴される可能性があります。

児童福祉法違反で逮捕されると、逮捕・勾留と合わせて最大で23日間身柄を拘束され、その後、刑事処分(起訴または不起訴)が決まります。会社勤めの方であれば、それだけ長期間お仕事を休めば事実を隠し通せなくなる可能性が高いでしょう。また、児童に関する性犯罪では実名報道されることもありますので、社会的信用を失うばかりか、ご家族の生活にも影響を与えることになるでしょう。

そのため、本来であれば児童福祉法違反で逮捕される前に弁護士に依頼し、被害児童の保護者と示談交渉をしてもらうべきです。示談成立により被害者側が警察に被害申告をしなければ、事件化せずに逮捕を回避することもできます

もっとも、既に逮捕されてしまった場合には、以下でお伝えするような対策が必要となります。

罪を認める場合は被害者との示談が重要

罪を認める場合は、捜査機関に事実を包み隠さず話し、反省と被害者に対する謝罪の姿勢を示すことが重要です。加えて被害者と示談交渉し、示談を成立させることが早期釈放や起訴猶予による不起訴獲得につながります。もっとも、逮捕されると示談交渉は弁護士に任せる以外ありません。逮捕されたらまずは弁護士と接見し、弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。

罪を認めない場合は?

罪を認めない場合は、まずは取調べでの対応が重要になります。取調べで話した内容で揚げ足をとられ厳しい追及を受けたり、証拠として使われる可能性もあるからです。そのため、罪を認めない場合も逮捕直後から弁護士と接見し、取調べのアドバイスを受けることが必要です

また、児童が18歳未満であると知らなかった場合や、真摯な交際関係にあった場合には、それを裏付ける証拠を弁護士が収集し、検察官や裁判官にそれを提出することで、不起訴処分の獲得や無罪の主張をしていくことになります。

弊所では、児童福祉法違反の被害者(児童の保護者)との示談交渉、早期釈放、不起訴処分の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、いつ逮捕されるかご不安な方、既に逮捕された方のご家族の方は弁護士までご相談ください。相談する勇気が解決へと繋がります。

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