
不同意性交等罪の公訴時効は15年です。2023年の刑事訴訟法改正により、従来の10年から5年延長されました。
「15年逃げ切れば罪に問われないのか…」と考える方もいるかもしれません。しかし、性犯罪の検挙率は高く、15年間逃げ切ることは現実的ではありません。さらに、被害者がPTSDなどを発症した場合は致傷罪として公訴時効が20年に延びるため、15年が経過しても逮捕される可能性は残ります。
この記事では、性犯罪に強い弁護士が、
- 不同意性交等罪の公訴時効と民事の時効の違い
- 法改正による時効延長の影響と注意点
- 時効完成を待つリスクと、それよりも取るべき対応
などについてわかりやすく解説していきます。
なお、不同意性交等罪について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。
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不同意性交等罪の時効は?
公訴時効は15年
不同意性交等罪は、15年が経過することで公訴時効が完成します。
公訴時効とは、一定の期間が経過することで、公訴を提起しても裁判所は免訴の判決を言い渡さなければならなくなるという制度のことです(刑事訴訟法第337条4号)。このように公訴時効が完成した事件については必ず免訴判決が言い渡されるため、検察官もわざわざ起訴することはしません。
不同意性交等罪またはその未遂罪の公訴時効については、「15年」と規定されています(刑事訴訟法第250条第3項第2号)。
公訴時効は犯罪行為が終了した時点から起算されます。
なお、被害者に怪我を負わせた場合には「不同意性交等致傷罪」が成立し(刑法第181条)、不同意性交等致傷罪の公訴時効は、「20年」となります(刑事訴訟法第250条第3項第1号)。
なお、不同意性交等罪の構成要件や成立要件について詳しくは不同意性交等罪とは?旧強制性交・強姦罪との違いや構成要件で解説しています。
被害者を死亡させた場合には「不同意性交等致死罪」が成立します(刑法第181条)。不同意性交等致死罪は「人を死亡させた罪」であって「無期の拘禁刑に当たる罪」であるため、公訴時効は「30年」です(刑事訴訟法第250条1項1号)。
※2025年6月1日施行の改正刑法により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。
民事の時効
また、不同意性交等罪に該当する行為は、民法上の不法行為に該当します。
そのため、犯罪の被害者は加害者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができます(民法第709条)。
ただし、この民事上の賠償請求権には消滅時効が存在しています(民法第724条、724条の2)。
不法行為に基づく損害賠償請求権は、以下の期間を経過することによって時効となります。
- 被害者が損害及び加害者を知った時から「5年」が経過
- 事件が発生した時から「20年」が経過
上記いずれかの期間が経過することによって民法上の賠償責任から逃れることができます。
なお、通常不法行為責任の時効は「3年」ですが、民法改正(2020年4月1日施行)によって、被害者救済の観点から生命・身体に対する不法行為の時効期間は「5年」に延長されています。
不同意性交等罪の公訴時効についての注意点
刑法改正前の行為にも改正後の時効が適用される
令和5年(2023年)に改正されるよりも前の刑法では、不同意性交等罪に該当する犯罪は、強制性交等罪として処罰の対象でした。そして、強制性交等罪の公訴時効は「10年」とされていました。
しかし、刑法改正と同じタイミングで改正された刑事訴訟法により、性犯罪の公訴時効が延長されることになりました(公訴時効の延長は令和5年6月23日施行)。
そのため、旧強制性交等罪に関する公訴時効は以下のとおり、それぞれ延長されています。
| 罪名 | 改正前 | 改正後 |
| 強制性交等罪 | 10年 | 15年 |
| 強制性交等致傷罪 | 15年 | 20年 |
| 強制性交等致死罪 | 30年 | 30年 |
刑法が改正された令和5年(2023年)7月13日以前に発生した性犯罪については、不同意性交等罪が遡及されて適用されることはなく、改正前の強制性交等罪に問われることになります。ただし、公訴時効に関しては改正後の規定が適用されることになるため、注意が必要です。
例えば、2015年1月1日に強制性交等罪に該当する行為を行った場合、改正前の規定に従えば、「10年後」の2025年1月1日に時効が完成するはずでしたが、改正法の適用により「15年後」の、2030年1月1日を経過しなければ公訴時効が完成しないことになるのです。
この場合も、問われる罪名は、強制性交等罪となります。
被害者が18歳未満であれば時効期間が加算される
さらに、今回の法改正により、性犯罪の被害者が18歳未満である場合には、犯罪が終わったときから被害者が18歳になる日までの期間が公訴時効期間に加算されます(刑事訴訟法第250条第4項)。
なぜなら、心身ともに未熟な子どもや若年者は、特に被害を申告することが難しいと考えられるためです。
この改正により、例えば、被害者が12歳のときに不同意性交等罪に該当する被害を受けた場合、公訴時効期間の15年に加えて、被害者が18歳になるまでの6年間が加算されます。そのため、公訴時効は被害者が33歳(6年+15年=21年、12歳+21年=33歳)に達する日まで完成しないことになります。なお、「33歳に達する日」とは、法律上、33歳の誕生日前日のことをいいます。
公訴時効の進行が停止することがある
時効は一定の条件を満たしたときに停止することがあります。これを「公訴時効の停止」といいます。時効が停止すると、その期間分時効の完成が遅れることになります。
公訴時効が停止するのは以下のような事由がある場合です(刑事訴訟法第254条、255条参照)。
- 当該事件について公訴が提起された場合
- 共犯の1人に対してした公訴が提起された場合:他の共犯に対しても時効が停止する
- 犯人が国外にいる場合:国外にいる期間は時効が停止する
- 犯人が逃げ隠れているため有効な起訴状の謄本の送達・略式命令の告知ができなかった場合:逃げ隠れている期間は時効が停止する
刑事事件における公訴時効の停止は、続きから再開されます。
民事事件における時効では、時効の進行が一度停止すると期間がすべてリセットされるものがあります。これを「時効の更新」といいますが、刑事事件にはこのような制度はありません。刑事事件における時効の停止は、すべてそれまでに経過した時効期間は有効に維持されたままになります。
不同意性交等罪の時効完成を待つリスク
逃げきることはほぼ不可能
不同意性交事件を起こしておいて、時効まで逃げ切るというのはほぼ不可能でしょう。
法務省が公表している令和6年版の犯罪白書によれば、令和5年における不同意性交等の認知件数は2,711件で、そのうち検挙された件数は2,073件でした。検挙率は76.5%となっており、刑法犯全体の検挙率と比べると依然として高い水準です。なお、2023年の法改正前は検挙率が90%台で推移しており、認知件数の増加は構成要件の変更の影響も大きいと考えられます。
不同意性交事件については、強盗事件や殺人事件と同じように、捜査機関が総力を挙げて犯人逮捕に動くため、公訴時効が完成する15年間逃げきることは非常に難しいと考えられます。
逮捕された場合の量刑について知りたい方は不同意性交等罪(強姦)は懲役実刑確定?執行猶予はつく?をご参照ください。
15年が経過しても逮捕される可能性もある
事件から15年が経過していたとしても逮捕される可能性があります。
不同意性交罪の公訴時効は15年ですが、不同意性交等により被害者が膣壁裂傷・肛門裂傷などの傷害を負った場合や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患を発症した場合には、不同意性交等致傷罪が成立し、公訴時効は15年ではなく20年となります。その期間内であれば警察に逮捕される可能性があるのです。
裁判例の中には、強姦罪の公訴時効(10年)成立後に、事件が原因で心的外傷後ストレス障害(PTSD)にかかっていると被害者が診断されたため、時効期間がより長い「強姦致傷罪」に問われた被告について同罪の成立を認めた事例があります。
被告は、2005年に通りがかった当時10代の少女を強姦したものの容疑者不詳として立件されず、事件から10年後の2015年に公訴時効が成立しました。しかし、2018年に別件でDNA鑑定を受けた際、2005年の事件の際に採取されたDNA型と一致しました。女性は2019年、2020年に診察を受け、事件が原因でPTSDの状態が続いているとの診断を受けました。
これを受け、被告人は、県警に強姦致傷容疑で逮捕され、強姦致傷罪の時効(15年)成立直前に起訴されました。
この事案で裁判所は、この被告人に懲役8年(求刑懲役10年)の判決を言い渡しています(横浜地方裁判所小田原支部令和3年7月16日判決)。
不同意性交等致傷罪の構成要件や罰則の詳細については強制性交等致傷(旧強姦致傷)とは?構成要件や罰則を解説をあわせてご確認ください。
事件の性質上かなりの年月が経過してから被害申告されることもある
一般的に不同意性交事件では、被害者が警察に被害を申告することで犯罪捜査が開始されます。通常の刑事事件の場合には、事件直後から1〜2年ほどは刑事事件として立件されるリスクが特に高いといえるでしょう。
しかし、性犯罪の場合には、その性質上、精神的なショックから被害者が回復するために、事件から一定の期間を要する可能性があります。被害者が事件を他人に話せるようになるまでは被害の申告が困難なケースも少なくありません。
そのため、不同意性交事件からかなりの期間が経過して「もう大丈夫だろう」と思っていたころに突然警察に逮捕されるという可能性も十分にあります。社会的な信用や家庭を築いていた人は、突然すべてを失うことになりかねません。
不同意性交等罪の時効完成を待たずにすべきこと
被害者と示談を成立させる
不同意性交事件を起こしてしまった場合には、被害者との示談を成立させることが非常に重要となります。
示談とは、加害者が被害者に事件を謝罪し、一定の示談金を支払うことで、被害者が加害者に対して宥恕(ゆうじょ)を与えることを指します。特に性犯罪の場合には、被害者の精神的な苦痛は大きい可能性があるため、賠償金の金額も高額になる傾向があります。
示談書には、「加害者を宥恕する(許す)」「処罰を望まない」などの宥恕文言が記載されるため、被害者の処罰感情が沈静化したことを確認することができます。
そして、示談交渉については、弁護士に任せるようにしましょう。
被害者の連絡先がわかっている場合には、加害者が直接被害者に示談の申入れをすることも可能です。しかし、性犯罪の場合には、被害者が加害者に恐怖心を持っていたり、事件のトラウマにより一切の接触を拒否したりする可能性もあります。
また、不同意性交事件で警察に逮捕された場合には、示談交渉は弁護士に行ってもらう必要があります。性犯罪の場合、二次被害を防止するため、被害者の個人情報を加害者に教えることはしません。もっとも、弁護士が示談交渉をする目的に限って、被害者の意思を確認して連絡先を教えてもらえる可能性があります。
そのため、被害者の連絡先を知らない場合であっても、弁護士が検察官に依頼することで被害者の連絡先を確認できる可能性があるのです。
不同意性交事件の示談金の相場や示談の具体的な流れについては不同意性交(強制性交・強姦)の示談金相場と流れ・メリットを解説で詳しく紹介しています。
自首をする
不同意性交事件を起こした場合には、自ら警察に自首をすることが、被疑者のメリットとなることもあります。
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首した場合には、その刑を減軽することができると刑法に規定されています(刑法第42条1項)。「捜査機関に発覚する前」とは、「犯罪事実が全く捜査機関に発覚していない場合」や犯罪事実は発覚しているものの、「その犯人が誰であるか全く発覚していない場合」であると考えられています。
自首の同行を弁護士に依頼すると、自分の行為がどのような犯罪に該当し、どのような法益を侵害したのかについて正確な理解を得られます。自首をして反省の態度を示したいという場合であっても、犯罪の内容や法益侵害の重大性を正確に理解していることは、非常に重要なポイントとなります。
ただ漠然と「反省している」「繰り返さない」と主張するよりも、真摯な反省の態度として受け取ってもらえる可能性が高まります。
したがって、自首をする場合にも、弁護士に相談してアドバイス・サポートを受けるべきでしょう。
自首の際に弁護士に同行を依頼するメリットや費用については自首に弁護士が同行するメリットと費用|弁護士なしでも大丈夫?で解説しています。
不同意性交事件でお悩みの方は弁護士にご相談ください
不同意性交等罪の公訴時効は15年ですが、法改正による時効延長や致傷罪の適用により、実際にはそれ以上の期間にわたって刑事責任を問われる可能性があります。時効の完成を待って逃げ切ろうとすることは、現実的な選択肢とはいえません。
早い段階で弁護士に相談し、被害者との示談交渉や自首の検討など、状況に応じた対応を取ることが、結果的に刑事処分の軽減につながります。何もせず時間だけが経過すると、ある日突然逮捕され、築いてきた社会的な生活を失うおそれがあります。
「いつ警察から連絡が来るかわからない」「すでに被害届が出されているかもしれない」といった不安を抱えている方にとって、その精神的な負担は大きいものです。一人で悩み続けるよりも、まずは弁護士に状況を相談することで、今後の見通しや取るべき対応が明確になります。
当事務所では、性犯罪事件における逮捕の回避や不起訴処分の獲得に豊富な実績があります。全国どこからでも無料でご相談いただけますので、不同意性交事件についてお悩みの方は、当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

