強盗致死罪とは、強盗の機会に強盗犯人が人を死亡させた場合に問われる罪で、罰則は死刑または無期懲役です(刑法第240条後段)。
他方で、強盗犯人が強盗時点で人を殺す意図をもって人を死亡させた場合には強盗殺人罪が成立します。刑法第240条は強盗殺人罪も含むため、罰則は強盗致死罪と同じ死刑または無期懲役です。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 強盗致死罪の構成要件(成立要件)
- 強盗致死罪と強盗殺人罪の違い
- 強盗致死罪・強盗殺人罪の罪が重い理由
- 強盗致死・強盗殺人の未遂の処罰
などについてわかりやすく解説していきます。
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目次
強盗致死とは
強盗致死罪とは、強盗の機会に強盗犯人が人を死亡させた場合に問われる罪で、刑法240条後段に規定されています。
(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。刑法 | e-Gov法令検索
強盗致死罪の罰則は「死刑又は無期懲役」と規定されており、数ある犯罪の中でも刑が重たい罪の一つです。
強盗致死罪は「死亡」という結果を発生させることまでの認識・認容(故意)が不要な罪です。つまり、強盗犯人が強盗の時点で人を殺す意図がなくても成立するのが強盗致死罪で、このような罪を結果的加重犯といいます。一方、強盗犯人が強盗時点で人を殺す意図をもって人を死亡させた場合は強盗殺人罪に問われます。
強盗致死罪の構成要件
強盗致死罪が成立するための要件は次のとおりです。
強盗犯人であること
まず、強盗犯人であることが必要です。
「強盗犯人」には、強盗罪の強盗犯人のほか、準強盗罪と言われる事後強盗罪・昏睡強盗罪の強盗犯人も含まれます。したがって、スーパーで万引きした後、逮捕を免れるため追いかけてきた店員を殴り(この時点で事後強盗の既遂罪が成立)、その場に転倒させて店員を死亡させた、という場合は強盗致死罪が成立します。
強盗は既遂のほか未遂でも強盗致死罪が成立すると考えられています。したがって、強盗の目的で他人の家に立ち入り、家人に暴行を加えて金品を奪い取ろうとしたものの何も奪うことができず、そのまま立ち去ったところ家人を死亡させていた、という場合でも強盗致死罪が成立する可能性があります。
強盗の機会に死亡させたこと
次に、強盗の機会に人を死亡させたことが必要です。
強盗の手段である暴行・強迫によって人を死亡させた場合はもちろん、暴行・脅迫とは別の行為によって人を死亡させた場合でも強盗致死罪に問われる可能性があります。
過去の裁判例をみると、強盗の機会に人を死亡させたかどうかは、強盗から人の死亡という結果発生までの時間の長短、強盗の現場から結果発生までの距離の長短などの諸要素を総合的に勘案して判断しているものと考えられます。
死に至らない場合は強盗致傷が成立
なお、人を殺す意図なく強盗を犯し、人を死亡させなかった場合(負傷させるにとどまった場合)は強盗致傷罪に問われます。一方、人を殺す意図で強盗を犯し、人を死亡させるに至らなかったときは強盗殺人未遂罪に問われます。
強盗致死と強盗殺人について
強盗致死罪に似た罪として強盗殺人罪があります。ここでは強盗致死罪と強盗殺人罪の違いなどについて解説します。
強盗致死と強盗殺人の違い
前述のとおり、強盗致死罪と強盗殺人罪との違いは、強盗犯人が強盗の時点で人を殺す意図があったか否かです。すなわち、人を殺す意図がなかった場合は強盗致死罪、人を殺す意図があった場合は強盗殺人罪に問われます。
強盗致死と強盗殺人の罪が重い理由
殺人罪の罰則は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」と有期懲役が規定されているのに対し、強盗致死罪、強盗殺人罪は有期懲役が規定されておらず、殺人罪よりも刑が重たいといえます。そもそも強盗が悪質な行為である上に、人の死という取り返しのつかない結果まで発生させているため厳罰をもって対処する必要があると考えられているためです。
強盗致死と強盗殺人の量刑傾向
令和4年度版犯罪白書の「裁判員裁判対象事件 第一審における判決人員(罪名別、裁判内容別)」によると、令和3年度中に強盗致死罪で起訴され判決を受けた人(11人)の量刑は次のとおりです。
死刑 | 無期 | 20年超 | 20年以下 | 15年以下 | 10年以下 | 7年以下 | 5年以下 |
- | 8 | 1 | - | 1 | 1 | - | - |
強盗致死と強盗殺人は未遂も処罰される?
強盗致死罪は「人の死」という結果が発生してはじめて成立する罪で、結果が発生しなかった場合は、強盗罪か強盗致傷罪(または強盗傷人罪)が成立するにとどまります。したがって、強盗致死の未遂罪という罪はありません。一方、強盗犯人が人を殺す意図で人を殺そうとしたものの殺すことができなかった場合は強盗殺人の未遂罪が成立します。
強盗致死・強盗殺人で家族が逮捕されたら弁護士に相談
強盗致死罪や強盗殺人罪の疑いをかけられ犯人として特定されるとほぼ間違いなく逮捕されてしまいます。そして、一度逮捕されると長期間にわたり身柄拘束が続くことが予想されます。共犯事件の場合は弁護士以外の人との接見を禁止する接見禁止決定が裁判所から出ることもあります。
可能であれば強盗致死罪や強盗殺人罪を犯してしまった時点、すなわち、警察に逮捕される前に弁護士に相談することが大切ですが、それが難しい場合は逮捕された後、すぐに弁護士との接見を要請しましょう。
自分は犯人ではない、強盗致死罪・強盗殺人罪は成立しないなど、言い分(主張)によって様々な争い方がありますから、まずは弁護士にご自分の言い分を話して今後の方針や見通しについてアドバイスを受けることが大切です。
当事務所では、強盗事件の弁護を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、罪を犯してしまった方、逮捕された方のご家族の方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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