
痴漢とは、電車や駅、路上などで、相手の意思に反して体に触れたり、卑わいな言動をしたりする行為を指す言葉です。痴漢は、服の上から触れた場合でも迷惑防止条例違反として処罰の対象になりえ、内容によっては不同意わいせつ罪として、最長で10年、刑務所などに収容される刑が科されることもあります。
ただ、どこからが痴漢にあたるのかは、条文を読んだだけではなかなか判断できません。「服の上からなら罪にならないのでは」「通勤・通学の満員電車で手が当たっただけで疑われたらどうなるのか」と不安を抱えている方や、被害に遭い、どこに相談すればよいか迷っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、痴漢事件の弁護に力を入れている弁護士が、次の点を解説します。
- 痴漢はどんな法律でどう罰せられるのか
- どこからが痴漢にあたるのかの境界線
- 痴漢をした・疑われたときにまずすべきこと
- 痴漢の被害に遭ったときの相談先
お読みいただくことで、ご自身のケースが処罰の対象になりうるのかを見極め、いま何をすべきかを判断できます。
なお、痴漢事件でお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。
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痴漢とは?定義・罰則と該当する行為
「痴漢」は日常的に使われる言葉ですが、法律上の用語ではなく、法律に「痴漢罪」という罪名はありません。実際に痴漢をした人が処罰されるときは、行為の内容に応じて、主に次のどちらかの法律が適用されます。
- 各都道府県が定める迷惑防止条例(公共の場所での迷惑行為を禁止する条例。正式名称は自治体ごとに異なります)
- 刑法176条の不同意わいせつ罪(同意のない性的な行為を処罰する罪)
どちらも、相手が望んでいない性的な行為を処罰するための規定です。大きく違うのは刑の重さで、迷惑防止条例違反には、東京都をはじめ多くの都道府県で罰金で終わる余地がある一方、不同意わいせつ罪には罰金刑がなく、拘禁刑(刑務所などに収容する刑罰で、以前の懲役と禁錮を一本化したもの)だけが定められています。
つまり、同じ「痴漢」と呼ばれる行為でも、どの法律が適用されるかで処分の見通しは大きく変わります。まずは、それぞれの法律が何を禁止し、どの程度の刑を定めているのかを確認しておきましょう。
処罰の根拠となる法律と罰則
迷惑防止条例は都道府県ごとに定められており、禁止する行為の書き方や罰則の重さは自治体によって異なります。ここでは、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」を例に見ていきます。同条例は、痴漢の典型である体に触れる行為について、次のように定めています。
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
出典:東京都例規集(同条例5条1項柱書・1号)
読み落としやすいのは、各号の前に置かれた共通の部分(柱書)による限定です。体が触れたという事実だけで痴漢として処罰されるのではなく、正当な理由がなく、相手に強い羞恥心や不安を与えるような触れ方であることが前提になっています。
東京都でこの規定に違反した場合の法定刑(法律で定められた刑の範囲)は、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(同条例8条1項2号)。同じ痴漢行為をくり返す習癖(常習性)があるとされた場合は、拘禁刑は1年以下、罰金は100万円以下まで上限が引き上げられます(同条8項)。多くの道府県でも痴漢について同じような規定が置かれていますが、法定刑の上限は自治体によって異なるため、事件が起きた場所の条例を確認する必要があります。
一方、痴漢行為の態様が悪質な場合には、刑法176条の不同意わいせつ罪に問われることがあります。同罪は、暴行や脅迫、相手が拒む間もないほど不意を突くことなどによって、同意しない意思を持つことや示すこと、貫くことが難しい状態にさせたり、そうした状態に乗じたりして、わいせつな行為(性的な意味を持つ接触など)をした場合に成立します。法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑で、行為を遂げなかった未遂の段階でも処罰されます(刑法180条)。
この罪は、2023年7月13日に施行された刑法改正で、それまでの強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪を見直して設けられたものです。改正前の解説などで見かける「強制わいせつ罪」にあたる行為は、施行日以後に行われたものであれば、不同意わいせつ罪として扱われます。
では、ある痴漢行為が条例違反と不同意わいせつ罪のどちらにあたるのか。両者を分ける線は、法律で明確に決められているわけではありません。下着の中に手を入れる行為は不同意わいせつ罪にあたりやすいとされますが、服の上からの行為でも、触った部位や時間の長さ、相手を逃げられない状況に追い込んでいたかといった事情によっては、不同意わいせつ罪で捜査される場合があります。区別の考え方は、痴漢は不同意わいせつ?迷惑防止条例違反?両罪の違いを解説で詳しく取り上げています。
どこからが該当する?行為の例と境界線
東京都の条例でいえば、公共の場所や乗物で、相手を著しく羞恥させたり不安にさせたりするような形で体に触れれば、服の上からでも直接でも処罰の対象になりえます。触る部位は限定されておらず、典型的には次のような痴漢行為が該当します。
- 胸やお尻、太もも、股間などを服の上から触ったり撫でたりする
- 体を密着させ、自分の下半身を相手に押し付ける
電車内やバスの車内は条文の「公共の乗物」にあたり、「公共の場所」には駅構内のホームや路上など、誰でも出入りできる場所が広く含まれると考えられています。夜道で後ろから抱きつくといった行為も、痴漢として処罰の対象になりえます。
体に触れなくても、痴漢として処罰されることがあります。東京都の条例は、公共の場所や乗物で人に対して卑わいな言動をすることも禁止しています(同条例5条1項3号)。たとえば、見知らぬ相手に性的な言葉をしつこく投げかける、体をじろじろ見ながらいやらしいことを口にするといった行為です。どのような言葉や振る舞いまでが処罰の対象になるのかは、卑猥な言動とは?迷惑防止条例違反になる言葉・行為の例と判例で具体的に紹介しています。
反対に、満員電車の揺れで手が当たってしまったなど、わざと触れたわけではない場合は、罪を犯す意思(故意)がないため処罰されないのが原則です(刑法38条1項)。
触ろうとして手を伸ばしたものの触れなかったという未遂の段階では、扱いが分かれます。東京都の条例には触れる行為の未遂を罰する規定がない一方、不同意わいせつ罪にあたる行為であれば、未遂でも処罰の対象になります。
関連記事:路上痴漢とは?逮捕される?問われる罪と逮捕回避方法を解説
痴漢をしてしまった・疑われた・被害に遭ったときの対処法
痴漢の事件では、その場でどう動いたかによって、その後の手続きの進み方が大きく変わることがあります。立場ごとに、最初に取るべき行動を整理します。
罪を認めるなら早めに弁護士へ依頼する
実際に痴漢をしてしまったのであれば、その場から逃げたり、駆けつけた駅員や警察官に抵抗したりするのは避けてください。逃げようとした事実は、逃亡のおそれがあるとして身柄を拘束する理由にされかねません。
逮捕された場合は、48時間以内に検察官へ事件が送られるかどうかが決まり、さらに勾留(逮捕に続く身柄の拘束)が認められると、拘束はより長く続きます。逮捕から処分が決まるまでの手続きは、痴漢で逮捕されるとどうなる?流れと対応・逮捕されないケースで詳しく説明しています。
罪を認める場合に重要になるのが、被害者との示談(話し合いによる解決)です。示談が成立し、被害者が処罰を望まない意思を示していれば、検察官が起訴(裁判にかけること)するかどうかを判断する際に考慮され、不起訴につながることもあります。
もっとも、痴漢では被害者が見知らぬ相手であることが多く、その連絡先は加害者本人には伝えられないことも少なくありません。弁護士が間に入れば、被害者の了解を得たうえで弁護士にだけ連絡先が伝えられ、示談の申し入れができる場合があります。
身柄を拘束されずに帰宅できた場合も、示談に向けて動くなら早いほど選択肢が広がるため、できるだけ早く弁護士に相談してください。示談で実際にいくらが目安になり、どのような順序で話が進むのかは、痴漢の示談金相場は?示談交渉の流れを弁護士が解説をご覧ください。
身に覚えがなければ認めずに弁護士を呼ぶ
身に覚えがないのに痴漢を疑われたときは、その場を収めようとして謝ったり、「当たったかもしれない」とあいまいに認めたりしないことが大切です。いったん認めた発言は後から覆すのが難しく、不利な証拠として扱われるおそれがあります。
触っていないことをはっきり伝えたうえで、それ以上の説明は弁護士に相談してからでも遅くありません。取調べでは、言いたくないことを無理に話す必要はなく、黙秘権(供述を拒む権利)も保障されています。
逮捕された場合は、弁護士との接見(立会人なしで面会し、助言を受けること)が認められています。警察署へ連れて行かれる前など、まだ家族に連絡できるうちに、弁護士を手配してほしいことと、どの駅で降りたかを伝えておくと、弁護士がどこの警察署へ向かえばよいかの見当がつけやすくなります。
なお、その場を離れたい一心で走って逃げると、かえって痴漢の疑いを深めるおそれがあります。身に覚えのない疑いをかけられたときの具体的な動き方は、痴漢冤罪の4つの対処法と5つのNG行動|逃げるのが厳禁な理由で解説しています。
被害に遭ったら声を上げて警察に相談する
痴漢の被害に遭ったときは、できる範囲で声を上げ、周りの乗客や駅員に助けを求めてください。現行犯(犯行中や犯行の直後)であれば一般の人でも逮捕状なしに取り押さえることが法律上認められていますが(刑事訴訟法213条)、一人で捕まえようとするのは危険も伴うため、無理をする必要はありません。
その場で対応できなかった場合でも、110番通報や最寄りの警察署への相談、被害届の提出ができます。痴漢を通報するか迷うときは、「#8103(ハートさん)」に電話をかけると、発信した地域を管轄する警察の性犯罪被害の相談窓口につながります(警察庁「性犯罪被害相談電話」)。
痴漢で不安なときは弁護士に相談を
法律に痴漢罪はなく、痴漢は行為の内容に応じて、主に迷惑防止条例違反か不同意わいせつ罪として処罰されます。どちらにあたるのか、どのような処分になるのかは、事件ごとの事情によって大きく変わります。
罪を認めるなら被害者との示談交渉のサポートを、身に覚えがないなら不利な供述をしないための助言を、それぞれ早い段階で弁護士から受けることが、処分や今後の生活への影響を抑えることにつながります。
家族や職場に知られないかと不安を抱えたまま過ごすのは、精神的にも大きな負担です。警察から連絡が来ている方や、ご家族が逮捕されてしまった方は、ためらわずにご相談ください。
当事務所は痴漢をはじめとする刑事事件に力を入れており、被害者との示談交渉や、無実を訴える方の弁護に取り組んできました。ご家族や勤務先への影響にも配慮しながら、依頼者の不利益をできる限り小さくするため、弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

