このような疑問をお持ちではないでしょうか。
そこでこの記事では、冤罪事件に強い弁護士が、
- 被害者の証言だけで有罪となることはあるのか
- 被害者の証言だけで有罪とすることの問題点
などにつき、痴漢事件を例としてわかりやすく解説していきます。
なお、被害者の証言だけで犯罪の疑いをかけられた方、既に逮捕されてしまった方のご家族の方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。
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被害者の証言だけで有罪になることはある?
痴漢被害者の証言だけで有罪となることはありえます。
痴漢被害者の証言は、被害者が警察官や検察官に話した内容を警察官や検察官が書き写した「供述録取書」と被害者が法廷の証言台に立って裁判官に向かって供述する「証言」にわかれます。
通常、痴漢の犯人として疑われている被告人が痴漢の事実を全面的に否認している場合、被告人の弁護士は供述録取書が裁判の証拠となることに反対する旨の意見を述べ、裁判所は証拠採用しません。
そこで、検察官は痴漢被害者の証人尋問を請求し、法廷において、検察官と弁護士双方が痴漢被害者に対して質問し、そこで述べられた痴漢被害者の供述が証言として証拠になります。
刑事訴訟法第319条第2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない」と規定されています。
この規定からすると、確かに、被告人を有罪としうる証拠が被告人の自白のみの場合は、被告人は有罪とされないことになります。
しかし、この規定は、被告人の自白だけで有罪とできるとなると、捜査官が自白を得るために違法な行為をするおそれがあり、被告人は捜査官の違法行為に負けて虚偽の自白をし、冤罪を生み出してしまうおそれがあることから、そうした事態を防止するために設けられた規定です。
とすれば、被告人の自白(虚偽自白のおそれ)がない全面否認の事件では、痴漢被害者の証言が被告人を有罪にできる唯一の証拠であったとしても、被告人を有罪とすることは、法律上は適法ということになります。
また、痴漢事件において、痴漢被害者の証言は痴漢被害を直接体験した者の証言として特に重要視される証拠です。法律的には直接証拠に分類され、一般に、直接証拠は証明力(裁判官に有罪の心証を抱かせるインパクト)が強い証拠と言われており、痴漢事件において、痴漢被害者の証言しか証拠がなかったとしても有罪とされてしまう可能性は大いにあるといえます。
被害者の証言だけで有罪とすることの問題点
痴漢被害者の証言だけが証拠という場合、痴漢被害者の証言がどれほど信用できるかが争点となります。もっとも、通常、痴漢被害者の証言は信用力が高いと評価されます。
それは、痴漢被害者は痴漢被害を自ら体験した当事者であって、痴漢被害者の証言には痴漢を体験した者でしか証言できないような内容が含まれており、具体的で迫真性に富んでいると考えられるからです。
また、痴漢事件では、痴漢被害者と痴漢加害者は面識がないことがほとんどです。つまり、痴漢被害者が何の利害関係もない痴漢加害者を罪に陥れようとあえて虚偽の証言をするはずがなく、痴漢被害者の証言には嘘は含まれていないだろうという考えも少なからず影響しています。
しかし、そもそも痴漢の態様のほとんどは比較的単純なものばかりです。そのため、痴漢被害者でなくても簡単に話を捏造してしまうことは簡単ですし、仮に痴漢被害者であったとしても自分の体験とは異なる証言をすることも比較的簡単です。つまり、痴漢被害者だからこそ具体的で迫真性に富んだ証言ができるとは直ちには言えない側面があります。
また、痴漢加害者と面識がないから痴漢被害者は嘘の証言をしないだろうと考えも安易な考えです。たとえ、面識がなくても無意識的に事実とは異なる証言をする可能性もありますし、捜査官による誘導に乗せられあえて嘘の証言をすることも考えられます。
痴漢被害者の証言にはこうした危うさがあり、全面的に信用してしまうと痴漢冤罪を生んでしまうおそれがあるにもかかわらず、いまだにはじめから痴漢被害者の証言は信用できるという先入観のもとに事件処理が行われてしまう現実があります。
被害者の証言だけで逮捕されたら弁護士に相談
もし、痴漢した事実がないにもかかわらず、被害者の証言だけで痴漢の疑いをかけられ逮捕されてしまった場合はすぐに弁護士との接見を要請しましょう。
痴漢の否認事件では、痴漢加害者と痴漢被害者のどちらの供述・証言が信用できるかが争点となります。
そのため、はやめに弁護士と接見して、取調べの際にどう対応すればいいのかについてアドバイスを受けるべきです。
ただ、弁護士との接見を要請したからといってすぐに弁護士と接見できるわけではありません。弁護士との接見を要請してから実際に弁護士と接見するまでタイムラグがあり、その間に取調べを受けてしまう可能性もあります。
ここで、痴漢をやってもないのにやったなどと事実を認めてしまうと、あとでその話を覆すことには大変な労力が必要となりますし、冤罪につながってしまう危険もあります。
弁護士から取調べに関するアドバイスを受けたとしても、実際に取調べに対応するのはあなた自身となります。取調べの際は被疑者の権利として認められている黙秘権、供述拒否権、署名・押印拒否権等の権利を駆使しながら、捜査官の誘導や圧力に屈しない態度を示すことが大切です。
当事務所では、冤罪事件の解決を得意としております。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、被害者の証言だけで有罪になることを阻止したい、冤罪を晴らしたい方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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