卑猥な言動とは?迷惑防止条例違反になる言葉・行為の例と判例

「卑猥な言動とは、どこからが犯罪になるのか」「冗談のつもりで口にした卑猥な言葉でも逮捕されるのか」と不安を抱えていませんか。

卑猥な言動とは、公共の場所などで相手を著しく恥ずかしがらせたり不安にさせたりする、下品でみだらな言葉や動作のことです。体に触れたり撮影したりしなくても、言葉だけで迷惑防止条例違反になることがあります。

もっとも、下品な発言がすべて罪になるわけではありません。どこで、誰に向けて、どの程度の羞恥や不安を与えるものかによって判断されます。

本記事では、迷惑防止条例違反の弁護実績が豊富な弁護士が、次の点を解説します。

  • どんな場合に卑猥な言動にあたるのか
  • 卑猥な言葉をかけるだけでも犯罪になるのか
  • 卑猥な言動で逮捕された事例と判例
  • 迷惑防止条例違反になった場合の罰則

お読みいただくことで、ご自身の言動が罪にあたりうるかを見極め、これからどう動くべきかを整理できます。

なお、迷惑防止条例違反についてお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。

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迷惑防止条例違反の「卑猥な言動」とは?

「卑猥な言動」の意味について、最高裁判所は「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」と示しています(最高裁判所平成20年11月10日決定)。平たくいえば、見知らぬ人に下着の色をしつこく尋ねる、性的な画像を見せつけるといった、世間一般の感覚から見て性的に下品でみだらな言葉や振る舞いのことです。

東京都などの条例の条文では「卑わいな言動」と書かれていますが、意味は同じです。多くの都道府県の迷惑防止条例は、痴漢(体に触れる行為)や盗撮にはあたらない性的な嫌がらせも、この「卑わいな言動」として禁止しています。定義にある「みだら」と混同されやすい言葉との使い分けについては、「わいせつな行為」「みだらな行為」「いかがわしい行為」の違いをご参照ください。

迷惑防止条例違反とは

迷惑防止条例は、刑法などの法律では処罰しにくい公共の場所での迷惑行為を取り締まるために、各都道府県が定めている条例です。「迷惑防止条例」は通称で、正式な名称は自治体ごとに異なります。たとえば東京都の正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」です。大阪府も頭に府の名前があるほかは同じ名称で、神奈川県では「神奈川県迷惑行為防止条例」と呼ばれています。

対象となる行為には、痴漢や盗撮、つきまといのほか、卑猥な言動も含まれます。どの行為を禁止し、違反した場合にどのような刑罰を科すかは都道府県ごとに定められているため、同じ行為でも、行った場所によって適用される条文や刑の重さが変わります。

卑猥な言動が成立する条件

東京都の迷惑防止条例は、卑猥な言動を次のように禁止しています。

第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

二 (略)通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し(略)すること。

三 前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

出典:東京都例規集データベース

1号は痴漢、2号は盗撮を定めた規定で、3号はそれ以外の卑わいな言動を広く対象にしています。痴漢(1号)と3号の卑わいな言動は区別がつきにくい場面もあるため、両者の違いについては「痴漢は不同意わいせつ?迷惑防止条例違反?両罪の違いを解説」もあわせてご確認ください。

東京都迷惑防止条例5条1項の1号(痴漢)・2号(盗撮)・3号(卑わいな言動)の違い

東京都の条例で3号の卑わいな言動にあたるのは、次の条件がそろった場合です。

  • 道路や公園、駅、電車内、誰でも出入りできる店舗やショッピングモールなど、公共の場所や公共の乗物での言動であること
  • 人に対して向けられた言動であること
  • 性的に下品でみだらな(卑わいな)言動であること
  • 人を著しく恥ずかしがらせたり、不安にさせたりするような言動であること
  • 正当な理由がないこと

恥ずかしさや不安を与えるものかどうかは、被害者本人の受け止め方だけでなく、同じ立場に置かれた人がどう感じるかという客観的な観点から判断されます。そのため、被害者が気づいていない場合でも卑猥な言動にあたることがあります(北海道の条例の同じ趣旨の規定について判断した、後述の最高裁判所平成20年11月10日決定)。

卑猥な言動にあたる行為の具体例

卑猥な言動には、相手の前での振る舞いだけでなく、言葉や画像、手紙を使ったものも含まれます。実際に逮捕や有罪の判断に至った例もあります。以下、行動・言葉・逮捕事例・判例の順に確認します。

卑猥な行動の例

体の動きや物を使った行為では、次のようなものが卑猥な言動として迷惑防止条例違反になる可能性があります。

  • スマートフォンの画像共有機能(AirDropなど)で、見知らぬ人に卑わいな画像を送りつける(いわゆるエアドロップ痴漢)
  • スカートをめくったり、衣服を引っ張ったりする
  • 満員電車などで相手のすぐ近くまで寄り、ことさらに体のにおいを嗅ぐ
  • 卑わいな内容の手紙やメモを、相手のポケットやかばんにこっそり入れる
  • 相手の後ろ姿などを、衣服の上から執拗に撮影する
  • 卑わいな動画や画像を、相手に無理やり見せつける

体に触れずににおいを嗅ぐような行為は、いわゆる「触らない痴漢」と呼ばれることもあります。

なお、リストにある撮影のように、通常の衣服の上から撮影しただけでは撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)にはあたりませんが、下着や性器・お尻・胸などの性的な部位を、正当な理由なくひそかに撮影した場合は撮影罪の対象になります。撮影罪と迷惑防止条例違反の違いについては「性的姿態等撮影罪(撮影罪)とは?施行日や盗撮罪との違いを解説」で詳しく解説しています。

卑猥な言葉・発言の例

体に触れなくても、卑猥な言葉をかけるだけで罪に問われる可能性があります。東京都の条例では、公共の場所や乗物で、人に対して、強い羞恥心や不安を抱かせる卑わいな言葉を向ければ、3号の「卑わいな言動」にあたり、迷惑防止条例違反として処罰の対象になりえます。

言葉では、次のような発言が卑猥な言動にあたる可能性があります。

  • 道を歩いている人に「パンツを売ってほしい」としつこく声をかける
  • 駅のホームなどで「下着の写真を見せて」と求める
  • 公共の場で自分の股間を触りながら、卑わいな言葉を浴びせる
  • 店員や窓口の担当者に、性的な内容の言葉を無理に言わせる
  • スリーサイズや下着の色など、性的な質問を何度も繰り返す

冗談や悪ふざけのつもりだったとしても、それだけで罪にならないとは限りません。言った本人の意図よりも、どこで、誰に向けて、どのような言葉を発したかが問われます。

卑猥な言動で逮捕された事例

卑猥な言動による逮捕は、その場で取り押さえられる現行犯逮捕に限りません。防犯カメラの映像や被害者からの相談をきっかけに捜査が進み、後日に逮捕されることもあります。ここでは、報道された逮捕事例を紹介します。

女児に「パンツを撮らせて」と要求し下半身を露出した事例

広島市内の駐車場等で、10歳未満の女児3名に対し「パンツを撮らせて」と声をかけ、自身の下半身を露出したとして、男が県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)と公然わいせつの容疑で逮捕されたケースです(2024年12月 RCC中国放送等の報道による)。

男は、女児らにタブレット端末でわいせつな動画を見せるなどした疑いも持たれています。

路上に卑わいなアニメキャラの抱き枕カバーを設置した事例

広島県福山市では、路上に卑わいな格好をしたアニメキャラクターが印刷された抱き枕カバーなどを複数回にわたって置いた疑いで、男が逮捕されています。目撃者の通報で発覚し、防犯カメラの映像などから男が特定されました。

言葉をかけたり体に触れたりしていなくても、公共の場所で性的な羞恥心をあおる物を置く行為が、広島県の条例が禁じる卑わいな言動の容疑で逮捕につながった例です。

参考:路上に卑わいな格好のアニメキャラ抱き枕カバー 県迷惑防止条例違反疑いで男を逮捕 広島県警福山西署など | 中国新聞デジタル

女子高校生につきまとい卑わいな言葉をかけたとして逮捕された事例

路上で女子高校生に対し、約500メートルにわたってつきまとい「ハグさせて」、「性欲処理したい」などと卑わいな言葉を投げかけたとして、相模原市職員の男が逮捕された事例もあります(報道では、男は容疑の一部を否認しています)。

被害者の生徒は、2日前にも同じ男から声をかけられ、警察に相談していたと報じられています。

参考:卑わいな言動で相模原市職員逮捕 相模原署 | 社会 | カナロコ by 神奈川新聞

判例で卑猥な言動にあたるとされた行為

卑猥な言動にあたるかどうかは、最終的には裁判所が判断します。ここでは、カメラを使った行為が卑猥な言動にあたるかが争われ、いずれも該当すると判断された裁判例を3つ紹介します。

駅構内で女性の太ももを背後から動画撮影した事例

地下鉄の駅構内で、前を行く女性の背後から、ショートパンツの裾から出ている膝の裏あたりの太ももをスマートフォンで動画撮影した行為が問題になりました。

撮影されたのは衣服から出ている肌の部分で、弁護側は「露出している部位を撮っただけで、卑猥な言動にはあたらない」と主張しました。

東京高等裁判所は、露出した部位の動画撮影であっても、社会の一般的な感覚に照らして性的に下品でみだらな動作にあたり、被害者と同じ立場に置かれた人を著しく恥ずかしがらせ、不安にさせる行為であるとして、東京都の迷惑防止条例違反の成立を認めました(東京高等裁判所令和5年7月11日判決)。

店舗内で女性のスカートに向けカメラを構えた事例

営業中の店舗で、膝上丈のスカートをはいた女性客の背後に至近距離まで近づき、前かがみになった女性の下半身に向けて小型カメラを構えるなどした事案です。

弁護側は、盗撮目的でカメラを向ける行為(「差し向け」)を処罰する規定があるのに、それに至らない手前の行為を、別の規定である「卑猥な言動」で処罰するのは許されないとして争いました。

最高裁判所は、そのように解釈する根拠はないとしたうえで、この行為は女性と同じ立場にある人を著しく恥ずかしがらせ、不安にさせるもので、社会の一般的な感覚から見て下品でみだらな動作にあたると判断しました。撮影したかどうかにかかわらず、カメラを構えるなどした行為そのものが卑猥な言動にあたると認め、有罪とした東京高等裁判所の判断を維持して上告を棄却しています(最高裁判所令和4年12月5日決定)。

ショッピングセンターでズボン越しに女性の臀部を撮影した事例

旭川市内にあるショッピングセンターで、細身のズボンをはいた女性客の後ろを約5分間、40メートル余りにわたってついて歩き、携帯電話のカメラでお尻のあたりを約11回撮影した事案です(最高裁判所平成20年11月10日決定)。

撮影は衣服の上からで、下着が写っていたわけではありません。この事案では、被害者も撮影に気づいていなかったことから、卑猥な言動にあたるかどうかが問題になりました。

最高裁判所は、被害者が気づいていなかったとしても、撮影されたことを知れば著しく恥ずかしく感じ、不安を覚えるような行為であるとして、「卑わいな言動」にあたると判断しました。この決定は、最高裁判所が「卑わいな言動」の意味を示したもので、令和4年の決定も、この意味を前提に判断しています。

迷惑防止条例違反になった場合の罰則

どの都道府県の条例が適用されるかによって、卑猥な言動の刑罰は異なります。東京都・神奈川県・大阪府の例は次のとおりで、いずれも同じ行為を繰り返す「常習」と判断されると、刑が重くなります。

都道府県 常習でない場合 常習の場合
東京都 6か月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金 1年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金
神奈川県 1年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金 2年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金
大阪府 6か月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金 1年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金

※拘禁刑は、2025年6月1日施行の改正刑法で懲役刑と禁錮刑を一本化した刑罰です。

条例違反でも科されるのは刑事罰のため、略式手続(裁判を開かず書面の審理で罰金を科す手続き)で済んだ場合でも、罰金の略式命令が確定すれば前科がつきます。略式手続の具体的な進み方については「略式起訴とは?前科・罰金相場・手続きの流れをわかりやすく解説」をご参照ください。

卑猥な言動で前科がつくと、職業によっては資格を失ったり、免許の取消しなどの処分を受けたりすることもあります。

卑猥な言動の内容によっては公然わいせつ罪(人前でわいせつな行為をする罪)や不同意わいせつ罪(同意のない状態でわいせつな行為をする罪)に、相手が18歳未満であれば各都道府県の青少年健全育成条例違反に問われることもあります。

東京都・神奈川県・大阪府の迷惑防止条例違反の公訴時効(犯罪が終わってから起訴できなくなるまでの期間)は3年です。また、いずれも被害者の告訴(犯人の処罰を求める申告)がなくても起訴できる「非親告罪」です。被害届(被害を警察に申告する届出)が取り下げられても起訴される可能性は残りますが、被害者との示談(謝罪や賠償をして当事者間で解決すること)が成立すれば処分を決める際に考慮され、不起訴(起訴されず裁判にならない処分)となる可能性があります。非親告罪と示談の関係は「痴漢は親告罪ではない!非親告罪でも示談で不起訴を目指すには?」でも解説しています。

卑猥な言動で逮捕や前科が心配な方は、すぐに弁護士へご相談ください

卑猥な言動は、体に触れていなくても迷惑防止条例違反で処罰されることがあり、罰金で終わった場合でも前科がつきます。

弁護士に依頼すれば、逮捕される前なら取調べへの受け答えや、自首(捜査機関に知られる前に自ら罪を申し出ること)をするかどうかについて助言を受けられ、被害者との示談交渉がまとまれば不起訴となる可能性も出てきます。卑猥な言動で逮捕された後でも、弁護士が早期の釈放に向けて検察官や裁判官に働きかけることができます。

「警察から連絡が来た」「被害届を出すと言われた」など、すでに状況が動き始めている方ほど、一人で抱えている時間が不利に働きかねません。

当事務所は迷惑防止条例違反を含む刑事事件を数多く取り扱っており、家族や職場に知られずに解決したいというお気持ちにも配慮しながら、依頼者の不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

逮捕回避・早期釈放 不起訴獲得 示談交渉 痴漢・盗撮 性犯罪 暴行・傷害
メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
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