
「痴漢をしてしまったが、その場では捕まらなかった。現行犯以外なら、もう捕まらないのだろうか」と、警察からの連絡におびえている方もいるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、痴漢は現行犯でなくても後日逮捕されることがあります。防犯カメラの映像やICカードの履歴から犯人が絞り込まれ、数か月後に自宅へ警察が来ることは実際にあります。
もっとも、警察に特定される前に弁護士に同行してもらって自首し、そこから示談へ動ければ、身柄を拘束されずに在宅のまま手続きが進む余地は十分に残されています。
この記事では、痴漢事件の弁護実績が豊富な弁護士が、次の点を解説します。
- 現行犯以外でも捕まるのはどんなケースか
- 警察が犯人を特定する7つの証拠
- いつ逮捕され、どんな罪に問われるのか
- 自首・示談で後日逮捕を回避する方法
お読みいただくことで、どんな場合に逮捕まで進むのかを把握し、今日から取るべき対処法を判断できます。
なお、痴漢の後日逮捕についてお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。
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痴漢は現行犯以外に後日逮捕されることはある?
【結論】後日逮捕されることもある
痴漢は現行犯でなくても後日逮捕される可能性も十分にあります。
一般的に、痴漢の身柄拘束には、その場で捕まる現行犯逮捕と、日を置いて捕まる後日逮捕の2種類があります。
まず、現行犯逮捕とは、犯行中または犯行直後にその場で身柄を拘束されることをいいます。現行犯逮捕には、警察官だけでなく一般人(被害者や周囲の乗客など)も逮捕状なしで身柄を拘束できる「私人逮捕」が認められているのが特徴です。
これに対して後日逮捕(通常逮捕)とは、事件発生から時間が経過した後に、警察が裁判官の発付した「逮捕状」を持って自宅や勤務先に現れ、被疑者の身柄を確保する手続きです。
現場から逃走した場合でも、防犯カメラの映像やICカードの履歴、目撃証言などの客観的な証拠を積み重ねることで、犯人を特定し逮捕に至るケースは十分にあり得ます。
もっとも、後日逮捕にいきなり踏み切るとは限りません。被疑者が絞り込まれた段階で、まず任意同行や出頭を求められることも少なくありません。
「痴漢は現行犯以外だと逮捕が難しい」といわれるのは、犯行の瞬間を第三者が押さえにくく、犯人の特定に手間と時間がかかるためです。捕まらないという意味ではありません。
後日逮捕されるケース
警察が後日逮捕に踏み切れるのは、法律上の逮捕の要件がそろった場合に限られます。
具体的には、次の「逮捕の理由」と「逮捕の必要」という2つの要件がそろわなければなりません。
- 逮捕の理由:罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
- 逮捕の必要:逃亡または証拠隠滅のおそれがあること
痴漢事件で具体的に後日逮捕へと発展しやすいのは、「痴漢行為を見咎められて現場から逃走したケース」です。
逃走したという事実は、「逃亡のおそれ」が高いと判断される強力な材料になります。また、防犯カメラの映像に犯行の瞬間や逃走する姿が鮮明に映っている場合や、被害者の衣服から犯人のDNAや繊維が検出された場合などは、後日であっても「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が認められ、逮捕状が請求されます。
特に、同一路線で何度も犯行を繰り返している「常習性」が疑われるケースや、悪質な痴漢行為(不同意わいせつ罪に該当する内容など)の場合、警察は本格的な捜査を継続する傾向があります。
電車内や駅構内での痴漢行為の場合には、交通系ICカードの改札通過履歴や利用時間から犯人の身元が特定されることもあるため、「逃げ切れた」と思った数か月後に警察が自宅へやってくるという事態が起こり得ます。
後日逮捕されるタイミング
痴漢の後日逮捕が実施される時期に明確な基準はありません。証拠がそろえば1か月ほどで動くこともあれば、半年や1年を要することもあります。
捜査機関は事件を受理した後、防犯カメラの解析、被害者や目撃者への事情聴取、ICカードの利用履歴の照会など、膨大な捜査を並行して行います。これらの裏付け捜査に時間がかかるほど、逮捕までの期間も延びていきます。
- 1か月程度:証拠が多く、被疑者の特定がスムーズに進んだ場合です。
- 3か月〜6か月:複数のカメラ映像の解析や他の事件との照合が行われると、この程度の期間を要することもあります。
- 1年以上:DNA鑑定の結果待ちや、別件で逮捕された余罪として発覚した場合など、1年が経過してから逮捕されることもあります。
なお、逮捕が執行される時間帯は、被疑者の在宅が見込まれる時間が多いといわれています。
また、痴漢で逮捕される可能性がいつまで続くのかは、公訴時効の期間で決まります。公訴時効は、迷惑防止条例違反なら3年、刑法犯である不同意わいせつ罪なら12年、不同意性交等罪なら15年です(刑事訴訟法第250条)。最も短い迷惑防止条例違反でも3年あるため、半年や1年が過ぎたからといって安心できるものではありません。刑法犯については、被害者が事件当時18歳未満だった場合、時効はさらに延長されます。
逮捕状が出ている場合には、突然の訪問を受け、家族の前で連行されることもあります。社会的にも精神的にも大きな負担です。もし心当たりがあり、不安な日々を過ごされているのであれば、早急に弁護士へ相談し、自首や示談交渉を検討すべきです。
痴漢事件で警察が後日逮捕に踏み切る証拠の種類
痴漢事件で警察が後日逮捕に踏み切る際には、複数の証拠を組み合わせて犯人を特定します。ここでは、実務上よく用いられる7つの証拠について解説します。
- ①被害者本人の供述内容
- ②目撃者の証言
- ③駅・車内の防犯カメラ映像
- ④交通系ICカードの履歴
- ⑤衣服に付着した繊維の鑑定
- ⑥体液・皮膚片のDNA鑑定
- ⑦被疑者が所持する痴漢の動画・画像
①被害者本人の供述内容
被害者による「いつ、どこで、誰から、どのような被害に遭ったか」という供述は、捜査の出発点となる証拠です。痴漢は密室に近い状況や混雑した車内など被害者が声を上げにくい状況で行われることが多いため、被害者の供述証拠が逮捕の有力な根拠となります。
防犯カメラのような物的証拠がそろっていなくても、供述が具体的で一貫していると判断されれば、それを軸に逮捕状が請求されることもあります。
警察は供述の具体性や一貫性を厳しく精査します。犯人の服装や顔の特徴、行為の態様が防犯カメラの映像と合致すれば、供述の信用性は高いと判断されます。
捜査線上に浮かんだ人物を含む複数の顔写真を見せ、犯人を選ばせる「面割り(めんわり)」も行われます。ここでの指摘は犯人性を裏付ける証拠として扱われますが、手続きの進め方によっては信用性が争われることもあります。
②目撃者の証言
痴漢事件を第三者の立場で目撃した人の証言も、警察が逮捕状を請求する際の有力な裏付けになります。被害者と利害関係がないことが多く、証言の客観性が高いと評価されるためです。
「犯人が手を伸ばしているのを見た」「犯行後に駅の階段を駆け上がっていった」といった具体的な証言は、被害者の供述を補強する役割を果たします。
特に、複数の目撃者の証言が一致している場合、犯人を取り違えるリスクが低いと判断され、後日逮捕の可能性が一段と高まります。
③駅・車内の防犯カメラ映像
痴漢捜査では、防犯カメラの映像が決定的な証拠になることが少なくありません。主要な駅構内だけでなく、多くの鉄道車両内や公共施設にも高精細なカメラが設置されています。
犯行の瞬間そのものが映っていなくても、駅の改札からホーム、車内に至るまで、複数のカメラ映像をつなぎ合わせて足取りを追う「リレー捜査」により、犯人の容姿や移動ルートが特定できるケースが増えました。
たとえ現場から逃げ切ったとしても、映像を解析すればどの出口から出たか、どこへ立ち寄ったかまで判明します。映像内の服装が、後日の家宅捜索で押収された衣服と一致すれば、言い逃れのできない証拠となり、逮捕の決め手となるケースが増えています。
④交通系ICカードの履歴
痴漢事件では、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードの利用履歴が、犯人の身元を特定するための「デジタルな証拠」となります。
警察は、鉄道会社に対して「捜査関係事項照会」(捜査に必要な事項の報告を求める法律上の手続き)を行い、特定の時間に特定の改札を通過したカードの情報を取得できます。記名式カードや定期券であれば、登録されている氏名や電話番号が判明します。
防犯カメラに映った犯人が改札を通過した時刻と、ICカードの入出場記録を照らし合わせることで、匿名性の高い「駅の利用者」が、実名を持つ「被疑者」へと特定されます。
チャージ履歴や普段の利用区間から勤務先や自宅の最寄り駅まで絞り込まれることもあり、現場で氏名を名乗らなかったとしても、逃げ切ることは極めて困難であるのが実情です。
⑤衣服に付着した繊維の鑑定
痴漢事件における繊維鑑定とは、被疑者の指先や衣服に、被害者が着用していた衣服の繊維(微物)が付着しているかを調べる科学捜査のことです。
警察は粘着テープで微物を採取し、顕微鏡などで形状や色、材質が一致するかを鑑定します。これが一致すれば「被疑者が被害者の衣服に接触した」ことを示す客観的な材料になります。
ただし、繊維が一致したからといって、直ちに痴漢行為があったと言えるわけではありません。満員電車内では空気中を漂った繊維が意図せず付着することもあるため、付着していた場所や量、他の証拠との整合性が重視されます。
それでも、防犯カメラの映像や供述と組み合わされれば、犯行を否認していても逮捕・起訴の根拠となり得ます。
⑥体液・皮膚片のDNA鑑定
痴漢で身体を直接触る、あるいは体液が付着するといったケースでは、DNA鑑定が決定的な証拠となります。
被害者の肌や下着から被疑者の皮膚片や唾液などが検出された場合、それは「接触した事実」を科学的に証明する逃れられない証拠です。過去に別の事件で被疑者としてDNA型の採取を受けていれば、警察のデータベースに登録された記録との照合で、早い段階で犯人が特定される可能性があります。
登録がない場合でも、防犯カメラなどから捜査線上に浮かべば、口腔内細胞などの資料の任意提出を求められ、被害者の衣服等に残された資料のDNA型と照合されます。
警察庁が2019年に導入を発表した新しい検査試薬では、DNA型が偶然一致する確率は約565京人に1人とされており、事実上、個人をほぼ特定できる精度です。そのため、後日逮捕の決め手になるだけでなく、その後の裁判でも有罪を裏付ける極めて強力な証拠として機能します。
⑦被疑者が所持する痴漢の動画・画像
被疑者が絞り込まれた段階で行われる捜索(ガサ入れ)やスマホの差し押さえにより、本人が撮影した犯行動画や画像が発見されることがあります。
自らの犯行を記録した動画や、過去の余罪を示すデータが見つかれば、それ自体が犯罪の直接証拠になります。痴漢サイトの閲覧履歴や、犯行を自慢するSNSの書き込みも同様です。
これらのデータは犯行の常習性を立証する材料となり、逮捕の必要性を裏付けるだけでなく、量刑を重くする理由にもなります。
消去したつもりでも、警察のデジタルフォレンジック技術(データ復元)によって証拠化されることが多く、隠蔽工作自体が「証拠隠滅のおそれ」として逮捕を早める要因となります。
痴漢で任意同行・任意出頭を求められたら後日逮捕される?
「任意同行」とは、警察官が自宅や外出先に現れ、そのまま一緒に警察署へ行くよう求める手続きです。一方、「任意出頭」は、電話などで後日の来署を促され、被疑者自らが指定された日時に警察署へ赴くことを指します。
違いは警察官が付き添うかどうかで、どちらも強制力のない「任意」の捜査である点は共通しています。
応じたからといって、必ずしもその場で逮捕されるわけではありません。むしろ、素直に取調べに応じ、住所や職業が安定しており、身元引受人(家族など)が確保できている場合は、逮捕の要件である「逃亡や証拠隠滅のおそれ」がないと判断され、そのまま帰宅を許され「在宅事件」として扱われるケースもあります。
痴漢事件が在宅事件として扱われれば、身柄を拘束されることなく普段どおりの生活を送りながら、必要に応じて警察署に出向いて取調べを受ける形で手続きが進みます。
しかし、注意が必要なのは、警察がすでに「逮捕状」を準備した上で任意同行を求めているケースです。
これは近所に知られないよう任意同行という形をとって署まで同行させ、到着後に逮捕状を執行する形です。なお、取調べでは自分の意思に反して供述する必要はないと定められています(刑事訴訟法第198条2項)。身に覚えのない余罪まで一緒に認めてしまう必要はありません。どこまでを認め、どう説明するのかは、出頭する前に弁護士と決めておくことが重要です。
任意の手続きを拒否し続けることも法的には可能ですが、正当な理由なく拒否を重ねると「逃亡のおそれがある」と判断され、逮捕状を請求される可能性が高まります。警察から連絡が来た際は、早急に弁護士に相談し、出頭のタイミングや供述内容についてのアドバイスを受けることが、後日逮捕を回避するための最善策です。任意同行や任意出頭への具体的な対応方法については痴漢で任意同行を求められたら逮捕?拒否した場合はどうなる?で詳しく解説しています。
痴漢で後日逮捕される場合の罪
痴漢で後日逮捕された場合、行為の態様や悪質性に応じて以下の罪に問われる可能性があります。
- ①迷惑防止条例違反
- ②不同意わいせつ罪
- ③不同意性交等罪
①迷惑防止条例違反
迷惑防止条例は、住民の平穏な生活を守るために各都道府県が独自に定めているもので、痴漢はその禁止行為の一つとして規定されています。
たとえば、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、「正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」であって「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」が処罰の対象とされています。単に身体が触れただけでは足りず、相手に羞恥や不安を与える行為であることが前提です。この規定に違反した場合には、「6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が科されます。さらに、常習性が認められる場合には、「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」へと刑が重くなります。
後日逮捕されるケースでは、犯行の執拗さや触れ方の程度によっては、より重い罪名への切り替えが検討されることもあります。
②不同意わいせつ罪
下着の中に直接手を入れる、服を無理やりめくるといった悪質な痴漢行為には、刑法の「不同意わいせつ罪」が適用される可能性があります。
不同意わいせつ罪とは、一定の原因のもとで、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした」場合に成立する犯罪です(刑法第176条1項)。
不同意わいせつ罪が成立した場合、「6月以上10年以下の拘禁刑」が科されることになり、迷惑防止条例違反とは異なり罰金刑の規定がありません。つまり、略式手続で罰金を納めて終わらせることができず、起訴されれば公開の法廷で審理されることになります。
罰金で解決できない重い罪であるだけに、逃亡や証拠隠滅のおそれも大きいと見られやすく、身柄拘束が長期化しやすい傾向があります。成立要件や具体的な行為の例については不同意わいせつ罪とは?旧強制わいせつ罪との違いをわかりやすく解説をご参照ください。
③不同意性交等罪
「不同意性交等罪」とは、同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態にさせ、あるいはその状態に乗じて「性交等」をした場合に成立する犯罪です(刑法第177条)。この性交等とは、「性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」を指します。
したがって、痴漢行為の態様として、被害者の陰部に指を挿入するなどの行為に至った場合は不同意性交等罪に問われる可能性が高いです。
不同意性交等罪が成立した場合には、「5年以上の有期拘禁刑」に処されることになります。性犯罪の中でも法定刑は重く、罰金による処分は認められていません。法定刑の下限が5年と高いため、初犯であっても実刑(刑務所行き)になる可能性が十分にある重い犯罪です。ただしこれは法定刑の構造から導かれるもので、事情によっては酌量減軽(刑法第66条)が認められ、執行猶予がつく余地も残されています。
指の挿入が「性交等」に含まれるようになったのは2023年の刑法改正によるものです。被害者の体液や傷跡などの証拠がそろっている場合、警察の捜査は迅速かつ厳格に進みます。自分の行為がどの罪にあたるのかは、被害者の供述や行為の態様によって判断が分かれるところです。
痴漢事件で後日逮捕された後の流れ
痴漢事件で後日逮捕(通常逮捕)が行われると、身柄は強制的に警察署へ連行され、厳格な時間制限の中で以下のステップに従って刑事手続きが進みます。
- 警察による取調べと送致
- 検察官の判断
- 裁判官による勾留質問と決定
- 最大20日間の勾留
- 起訴・不起訴の判断と刑事裁判
警察による取調べと送致
逮捕後、警察署で痴漢の事実関係についての取調べが行われます。警察は身柄拘束の必要があると判断した場合、逮捕から48時間以内に事件の記録と身柄を検察官に送致します(送検)。
検察官の判断
送検を受けた検察官は、痴漢事件の被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に、身柄の拘束を続ける「勾留(こうりゅう)」を裁判官に請求するか、釈放するかを決定します。
裁判官による勾留質問と決定
検察官から請求を受けた裁判官は、痴漢の被疑者本人と面談(勾留質問)を行います。逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると、勾留が認められます。
最大20日間の勾留
痴漢事件でも、裁判官が勾留を認めると、まずは10日間、延長されればさらに10日間、合計で最大20日間にわたり留置場での拘束が続きます。この期間内に検察官は「起訴・不起訴」の最終判断を下します。
起訴・不起訴の判断と刑事裁判
検察官が起訴した場合は刑事裁判へ移行します。迷惑防止条例違反で初犯、かつ事実を認めている場合は「略式起訴」となり罰金刑で済むこともあります。ただし略式手続は、本人が書面で同意した場合にのみ行われます。不同意わいせつ罪など悪質なケースでは「正式起訴」となり、判決まで争うことになります。
一方、証拠不十分や示談成立により不起訴となれば、前科はつかず即日釈放されることになります。痴漢で逮捕された場合の拘束期間や、逮捕されずに済むケースについては痴漢で逮捕されるとどうなる?流れと対応・逮捕されないケースで詳しく解説しています。
痴漢で後日逮捕された場合のリスク
痴漢の後日逮捕による不利益は、刑事罰にとどまりません。社会生活にも深刻な影響が及びます。主なリスクは以下のとおりです。
- ①実名報道される可能性がある
- ②退学・懲戒解雇のおそれがある
- ③有罪となれば前科がつく
①実名報道される可能性がある
痴漢で逮捕されると、実名で報道される可能性があります。
報道するかどうかを決めるのは各報道機関で、事件の悪質性や被疑者の社会的地位、身柄を拘束されているかどうかなどから判断されます。公務員や教員、大企業の社員といった立場であれば、実名や勤務先が報じられる可能性は高くなります。一度ネット上に名前が広がると、いわゆる「デジタルタトゥー」として半永久的に残ります。
②退学・懲戒解雇のおそれがある
逮捕されると、勾留が決まるまでの最大72時間は弁護士以外との面会が認められず、勾留されればさらに最大20日間、通算で最大23日間にわたって身柄を拘束されます。裁判所が接見等禁止の決定を出せば、その間の家族との面会や手紙のやり取りも制限されます。
社会人であれば「無断欠勤」が続くことになり、結果として会社に事件を知られるリスクが極めて高くなります。多くの企業の就業規則には、刑事事件を起こした場合の懲戒規定が設けられており、痴漢という性犯罪の性質上、懲戒解雇を含めた厳しい処分を下されるおそれが多分にあります。
また、学生の場合も同様に、学校の秩序を乱したとして停学や退学処分を受けるリスクがあります。
長期間の身柄拘束は、仕事や学業を休むにとどまらず、キャリアの中断や将来の選択肢の喪失といった、取り返しのつかない不利益に直結します。
③有罪となれば前科がつく
痴漢事件で検察官によって公訴が提起(起訴)され、裁判で有罪判決(罰金刑や執行猶予付き判決を含む)を受けると「前科」がつきます。前科がつくと、その内容によっては一定の国家資格が制限されたり、公務員の欠格事由に当たったりするなどの法的制約が生じます。
こうした国内法上の制約は、罰金を納めてから5年、実刑を終えてから10年が過ぎれば刑の言渡しが効力を失うことで解消されます(刑法第34条の2)。執行猶予がついた場合も、猶予期間を無事に終えた時点で同じ効果が生じます(刑法第27条)。ただし捜査機関の記録そのものは残り続け、一部の国への海外渡航でビザの発給が困難になるといった影響は、これとは別に残ります。
たとえ略式命令による罰金刑であっても、有罪が確定した以上は、法的にはれっきとした前科です。さらに、身近な人に事件が知られれば、本人だけでなく家族の生活環境も一変してしまう可能性があります。
痴漢の後日逮捕を回避する2つの対処法
捜査機関に発覚する前に自首する
痴漢事件が捜査機関に発覚する前、あるいは犯人が誰か特定される前に、自ら警察署へ出向いて罪を認める「自首」は、後日逮捕を避けるための有効な手段です。
自首をすることで「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」がないことを客観的に示すことができ、逮捕の必要性がないと判断されやすくなります。
その結果、逮捕されずに通常の生活を送りながら取調べを受ける「在宅事件」として扱われる可能性が高まります。また、刑法第42条により、裁判において刑が減軽される可能性があるという法的メリットもあります。
ただし、自分一人で出頭しても、取調べの進め方によってはそのまま逮捕されてしまうリスクがゼロではありません。そこで重要になるのが弁護士の存在です。弁護士に依頼して自首に同行してもらうことで、本人が深く反省していることや、身元が安定しており逃亡のおそれがないことを、警察へ上申してもらえます。
これにより、警察も「逮捕の必要なし」と判断しやすくなります。ただし、犯行の態様や悪質性によっては、自首しても逮捕されることはあります。弁護士なしで自首する場合のリスクや費用については自首に弁護士が同行するメリットと費用|弁護士なしでも大丈夫?で解説しています。
被害者と示談を成立させる
後日逮捕を回避するには、被害者との間で「示談」を成立させることが重要です。
示談とは、謝罪と賠償(示談金)を尽くし、被害者から許しを得る手続きです。痴漢で問われる罪はいずれも非親告罪のため、告訴の取消しだけで手続きが終わるわけではありません。ただし被害者が処罰を望んでいない事実は逮捕の必要性や起訴の判断で重視されるため、逮捕の回避や不起訴処分の獲得につながります。
しかし、痴漢事件において加害者本人が被害者と直接連絡を取ることは、実務上ほぼ不可能です。二次被害を防ぐため、捜査機関が加害者本人に被害者の連絡先を伝えることはありません。
ここで弁護士の介入が不可欠となります。
弁護士が窓口になる場合は、被害者が同意すれば「弁護士限り」という条件付きで連絡先を知らせてもらえることがあります。そのうえで、被害者の心情に配慮しながら粘り強く交渉を進めることになります。示談金の目安や具体的な示談の進め方については不同意わいせつ(旧強制わいせつ)の示談金相場や示談の進め方もあわせてご確認ください。
痴漢の後日逮捕が不安な方はすぐに弁護士にご相談ください
痴漢はその場で取り押さえられなくても、駅や車内の記録から犯人が特定され、逮捕状が出されるケースがあります。逮捕されれば最大23日間にわたって身柄を拘束され、実名報道や懲戒解雇、前科といった不利益が現実のものになりかねません。
こうした事態を避けられるかどうかは、警察が動き出す前にどれだけ早く手を打てるかで決まります。弁護士が同行して自首すれば、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを警察に具体的に示せますし、被害者との示談が成立すれば早期釈放や不起訴で終わる道も開けます。逮捕されてから動くのと、逮捕される前に動くのとでは、結果は大きく変わります。
「いつ警察が来るのか」と考えながら過ごす日々は、精神的にも大きな負担です。すでに警察から呼び出しの連絡が来ている方、現場から離れてしまい心当たりのある方は、ためらわずにご相談ください。
当事務所は刑事事件に注力し、痴漢事件の弁護実績も豊富です。ご家族や勤務先への影響を最小限に抑えられるよう配慮しながら、弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、おひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

