ひととき融資は違法?逮捕される?問われる犯罪と逮捕事例
ひととき融資って、貸したお金が戻ってくるうえに女性とタダで性行為ができるって聞いたけど…これって違法?それとも合法?逮捕されるの?

結論から言いますと、ひととき融資は違法行為として罪に問われることがあります。また、実際に逮捕された事例もあります

この記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • ひととき融資とは
  • ひととき融資で問われる可能性のある犯罪
  • ひととき融資の逮捕事例
  • ひととき融資で逮捕されるとどうなるのか

などについてわかりやすく解説していきます。

なお、この記事を読まれている方の中には、ひととき融資をして警察から出頭を求められている方、在宅事件でいつ起訴されるのか不安な毎日を送っている方、既に逮捕された方のご家族の方もおられると思いますが、記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。

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ひととき融資とは?

ひととき融資の意味は?

ひととき融資についてはなんらかの正確な定義が存在しているわけではありませんが、一般に「ひととき融資」とは、相手と性行為などを行うことを条件としてお金を貸し付ける個人間・男女間の融資のことを指す俗称です。お金を貸し付けた側が、お金を借りた側に「性的関係に応じさせる(ひとときを過ごさせる)」ことを表現するネットスラング・隠語として用いられることが多いです。返済条件は当事者の合意によりますが、無利子で貸し付けることもあれば、高金利で貸し付けるケースもあります。

ひととき融資の実態は?

ひととき融資は、X(旧Twitter)などのSNSや2ch・5chなどの掲示板、出会い系サイトで見られることがあります。女性が「困っています。本日中に〇万円お願いできる方いませんか」と投稿して貸主を探す場合や、男性が「お力になります。DMください」などと借主を募集するケースもあります。

お金を貸しつける男性の多くは一般人ですが、中には闇金業者が一般人を装って紛れ込んでいることもあります。お金を借りる側の女性には、主婦やシングルマザー、学生が多く、生活費やカードローンの支払いに困って、やむを得ず貸主の男性の求めに応じて性的関係を持ってしまうことがあります。

また、ひととき融資を行う際に、貸主の男性は女性に借用書を書かせるだけでなく、勤務先や家族構成、実家の連絡先などの個人情報を聞き出します。さらに、ネットでのやり取りの段階で女性に裸や下着姿の写真を送らせたり、実際に会って体の関係を持った際に写真を撮ることもあります。これらの個人情報や写真は、「借金を返済しないと家族や職場に連絡される」「踏み倒したら画像をネットに拡散される」と女性に思わせ、確実に返済させるための担保として利用されます

ひととき融資は違法?

個人間融資については親族、友人・知人間でも行われるものであり全面的に禁止されているものではありません。

しかし、個人による融資が事業として行われていると評価される場合には、登録を得たうえで行わなければ違法行為として刑罰が科される可能性もあります。この点、反復・継続して個人間融資を行っているか否かという点も事業性を判断する重要な要素となります。

ひととき融資のように、借主に性行為などを貸し付けの条件とした場合には刑事および民事ともに法的責任を問われる可能性が高いという点は理解しておく必要があります。

以下では、ひととき融資で罪に問われる可能性のある犯罪(刑事責任)や民事上の責任について解説していきます。

ひととき融資で問われる可能性のある犯罪

貸金業法違反

貸金業とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介で業として融資を行うものをいいます(貸金業法第2条参照)。このように融資事業を営もうとする者は、内閣総理大臣や当該営業所または事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならず、無登録で貸金業を行うことは禁じられています(同法第3条1項、11条参照)。

ひととき融資を業として(反復継続して)無登録で行うことは貸金業法に違反します。ひととき融資はX(旧Twitter)などのSNSや、2chや5chなどの掲示板で不特定多数を相手に無登録で貸し付けをしているケースが多いでしょうから、貸金業法違反に問われる可能性は十分あります。

無登録で貸金業を営業した場合や不正な手段によって登録を受けた場合には、「10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金」に処せられるかこれらが併科されます(同法第47条2号参照)。

出資法・利息制限法違反

問題となるひととき融資の事案では、高金利で個人間融資を行うケースも散見され、場合によっては出資法や利息制限法に違反する可能性があります。

利息制限法は以下のように貸付額の上限金利を定めています(利息制限法第1条各号参照)。

  • 貸付額が10万円未満の融資を行う場合:年率20%まで
  • 貸付額が10万円以上100万円未満の融資を行う場合:年率18%まで
  • 貸付額が100万円以上の融資を行う場合:年率15%まで

利息制限法の上限利率を超える利息で融資をした場合には、その超過部分について契約は無効となります。借主が払いすぎた利息については返還請求することができます。

利息制限法の規制については貸金業者のみならず個人間の融資にも適用されますので、「業として行っていない」という言い分は通用しません

そして出資法により、利息制限法の上限金利を超える融資を行った場合(貸金業者の場合)や、年率109.4%を超える金利で融資を行った場合(個人融資の場合)には刑罰が科されることになります

上記のような融資をした場合には「5年以下の懲役または1000万円以下の罰金」が処せられるか併科されることになります(出資法第5条参照)。

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪

ひととき融資を行ったからといって、直ちに刑法上の性犯罪が成立するわけではありません。

しかし、ひととき融資に伴い、相手の同意を得ずにわいせつ行為や性行為を行った場合、または相手が未成年であった場合には、不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)不同意性交等罪(旧強制性交等罪)に問われる可能性があります。

これらの罪は、以下のような状況で成立します。

  • 暴行や脅迫があった場合
  • 心身の障害、アルコールや薬物の影響、睡眠などにより意思表示が困難な状態を利用した場合
  • 不意打ちや予想外の事態により、同意の意思を示す機会がなかった場合
  • 経済的・社会的地位に基づく影響力で不利益を恐れ、抵抗できなかった場合

不同意性交等罪が成立した場合には、「5年以上の有期懲役」が科されることになります。また、不同意わいせつ罪が成立した場合には、「6月以上10年以下の懲役」が科されます。

そして、ひととき融資で関係を持った相手が未成年の場合にも同罪に問われる可能性があります

刑法には、「相手が13歳未満の子どもである場合」、または、「相手が13歳以上16歳未満の子どもで、行為者が5歳以上年長である場合」にわいせつな行為・性交等を行った場合にも、不同意わいせつ罪・不同意性交等が成立すると規定されています(刑法第176条3項、177条3項)。

脅迫罪・恐喝罪・強要罪

ひととき融資の相手に対し、生命・身体・自由・名誉、または財産に害を加えると脅した場合、脅迫罪が成立します。脅迫罪の法定刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です(刑法第222条1項)。例えば、貸主が借主に対し、返済しなければ担保として送らせた裸や下着姿の写真を「ネットに流出させるぞ」と脅す行為は脅迫罪に該当します。

同様に、害を加えると脅したり暴行を用いて、債務者に義務のないことを行わせたり権利の行使を妨げた場合、強要罪が成立します。強要罪の法定刑は「3年以下の懲役」です(刑法第223条1項)。例えば、「性行為の動画を拡散されたくなければ、関係を続けろ」と要求する行為は強要罪に当たります。

さらに、ひととき融資の相手を脅して財物を交付させた場合には、恐喝罪が成立します。恐喝罪の法定刑は「10年以下の懲役」です(刑法第249条1項)。例えば、ひととき融資の相手に「性行為中の動画をネットに晒して欲しくなければ、口止め料を払え」という要求は、恐喝罪に該当する可能性があります。

名誉毀損罪

公然と事実を適示して債務者の名誉を毀損した場合には、その事実の有無にかかわらず名誉毀損罪が成立することになります。名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁固または50万円以下の罰金」です(刑法第230条1項参照)。

名誉毀損とは人の社会的評価を低下させる行為のことで、ひととき融資の債務者を特定できる形で「ひととき融資をしたのに借りパクした」などとネット掲示板などに書き込む行為が該当します。

売春防止法違反

売春とは、対償を受けまたは受ける約束で不特定の相手方と性交することを指します。性行為をすることを条件に融資を行うことは、売春防止法で禁じられている「売春(買春)」行為にあたると判断される可能性があります。

もっとも、売り手と買い手の2者間での売春(単純売春)を処罰する規定がないため、ひととき融資をした側・受けた側が性交をしたとしてもどちらも罰せられることはありません。

ただし、ひととき融資をした側が、女性と第三者との間に入って売春の周旋(あっせんと同義)をした場合は「2年以下の懲役または5万円以下の罰金」(同法6条)に処せられます。また、ひととき融資が売春することを条件とした前貸しにあたる場合には「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」(同法9条)に処せられる可能性もあります。

児童買春・児童ポルノ禁止法、青少年保護育成条例違反

ひととき融資の債務者が18歳未満の未成年者であった場合には児童の保護を目的とした法律に違反する可能性があります。

児童買春は児童買春・ポルノ禁止法により禁止させています(同法第3条の2)。児童買春をした者は「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処せられます(同法第4条)。

また各都道府県には青少年保護育成条例が定められており、多くの場合青少年とのみだらな性行為や性交類似行為を禁じています。東京都の場合、この規定に違反した者には「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられます。

ひととき融資で負う民事責任

ひととき融資の際に行われた融資は、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為」であるとして契約が無効とされます(民法第90条参照)。

さらに「不法が原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」ため(同法708条参照)、借主は融資を受けた金額を返す必要もない可能性が高いです

そのうえで、ひととき融資が不法行為にあたり借主の権利・利益が侵害され精神的苦痛などを受けている場合には、加害者はその損害を賠償する責任を負うことになります(同709条参照)。

ひととき融資の逮捕事例

ひととき融資で婚約証明書にサインさせられた事例

50代の男性が貸金業の登録をすることなく、20代の女性2人に対して3回で合計160万円を貸し付けたとして、貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕されました。

この被疑者の男性は、SNSを通じてお金に困っている女性に対して性行為を条件に融資を持ちかけていたとみられています。

この男性は、現金を融資する際に「婚約証明書」と称した書面に署名させていたとして、「婚約者にお金を貸しただけ」であると容疑を否認しています。

性行為を条件に女性に金を融資した疑いの男「婚約者に貸しただけ」

ひととき融資の担保として全裸画像を要求した事例

この事例は、68歳の自営業の男性が性行為を条件に複数の女性に対して現金の貸付けをする「ひととき融資」をしたとして、貸金業法及び出資法に違反する疑いで逮捕された事例です。

被疑者の男性は、無登録で20代~40代の4人のアルバイト女性に対して計30万円を貸し付け、法定金利を上回る利息の支払を要求しました。男性は個人間融資の掲示板で女性らと出会いホテルや女性の自宅での性行為を条件に融資していました。

男性は担保と称して女性の裸体やバスタオル姿の写真を撮影してデータを保有していたとみられています。

神戸新聞NEXT|性行為を条件に複数女性に現金貸し付け 68歳男 “担保”に裸やバスタオル姿の写真撮影も

30代公務員がひととき融資で逮捕された事例

この事例は、36歳の公務員(大阪府の村職員)の男性が、性行為を条件に最大で法定金利の7倍もの利息で複数の女性に現金を貸し付ける「ひととき融資」を行ったとして、貸金業法及び出資法に違反する疑いで逮捕された事例です。

この男性は、ネット掲示板で知り合った20代と40代の女性2人に対してひととき融資を条件に出し了解を得られればそのままホテルへ行き、その直後に現金を融資していたとみられています。

また、この男性は、SNSで「生活費に困っている」と投稿した少女(当時16歳)に対して、体の関係と引き換えにお金を貸すといった内容のメッセージを送り、18歳未満と知りながらホテルでわいせつな行為をしたとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で再逮捕されています。

金を貸す条件は性行為!「ひととき融資」で逮捕された36歳公務員の素顔

「ひととき融資」の村職員、少女買春容疑で再逮捕

ひととき融資で逮捕されるとどうなる?

ひととき融資で逮捕された後は、以下の流れで手続きが進んでいきます。

  1. 警察官の弁解録取を受ける
  2. 逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄を送致される(送検)
  3. 検察官の弁解録取を受ける
  4. ②から24時間以内に検察官が裁判官に対し勾留請求する
  5. 裁判官の勾留質問を受ける
    →勾留請求が却下されたら釈放される
  6. 裁判官が検察官の勾留請求を許可する
    10日間の身柄拘束(勾留)が決まる(勾留決定)
    →やむを得ない事由がある場合は、最大10日間延長される
  7. 原則、勾留期間内に起訴、不起訴が決まる
  8. 正式起訴されると2か月間勾留される
    →その後、理由がある場合のみ1か月ごとに更新
    →保釈が許可されれば釈放される
  9. 勾留期間中に刑事裁判を受ける

被疑者は逮捕されてから勾留請求がされるまでの①~⑥までの間(最大72時間)は弁護士以外の者と連絡をすることができません。お仕事をされている方は無断欠勤となってしまいますので、できるだけ早急に弁護士との接見を希望し、弁護士に依頼して家族などから勤務先に休みの連絡を入れてもらう必要があります。

もっとも、⑥で裁判官により勾留請求が許可されると、その後、起訴・不起訴が決まるまで最大20日間は身柄拘束されますので、勤務先に隠し通すことが厳しい状況になってきます。もしマスコミで実名報道されれば逮捕された事実を知られることになるでしょう。起訴されて刑事裁判で有罪判決となれば懲戒解雇(公務員は懲戒免職)もあり得ます。また、前科もついてしまいます。

このような事態を回避するためにも、ひととき融資で逮捕されるおそれがある場合や逮捕されてしまった場合には、弁護士に相談して適切な弁護活動を開始してもらう必要があります。

ひととき融資で逮捕された場合にすべきこと

逮捕される前であれば、弁護士に依頼し、被害者と示談を成立させることで刑事事件化することを回避できる可能性を高めることができます。では、既に逮捕されてしまった場合にはどのような対応をとるべきでしょうか。

まずは弁護士と接見する

逮捕された後は一刻もはやく弁護士との接見を要請しましょう。警察官に申し出れば、警察官が手配してくれます。知っている弁護士や逮捕前から選任している弁護士がいれば、その弁護士を指定して要請します。知っている弁護士がいない場合、逮捕前から選任していない場合は当番弁護士との接見を要請します。

接見では取り調べで不利な供述調書に署名捺印させられないよう法的なアドバイスもしてくれますし、今後の手続きの流れ、見込み等について説明を受けることができます

被害者と示談を成立させる

ひととき融資で逮捕された場合は、被害者に真摯に謝罪の気持ちを伝え、出来るだけ早急に示談を成立させることが重要となります

もっとも、被疑者は外部と自由に連絡を取ることが禁止されますので自分で示談交渉することはできませんので、逮捕・勾留されてしまった場合には、刑事事件の示談交渉に強い弁護士に依頼して、謝罪文等で被害者に反省の気持ちを伝えてもらい、示談成立に向けて動いてもらう方が良いでしょう。

示談をすることはすなわち強要したことを認めたことになりますので、逃亡や証拠隠滅のおそれがなくなったと捜査機関に判断されやすくなりますので、早期釈放に繋がりやすくなります

また、警察から検察に送検された後でも、ひととき融資の被害者と示談が成立することで「被害者の処罰感情が低下した」と検察官が判断し、不起訴処分になる可能性が高まります。不起訴処分を得れば前科もつきませんので実質的に無罪を獲得したのと同様の効果を得ることができます。

さらに、起訴されたとしても、裁判官は示談を有利な情状として勘案しますので、懲役の期間が求刑よりも短くなったり、実刑のところが執行猶予になるなど量刑が軽くなることも期待できます

弊所では、弁護士のこれまでの経験からひととき融資の被害者の心情に配慮した示談交渉を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、ひととき融資で逮捕されるおそれのある方、既に逮捕されてしまった方のご家族の方は弁護士までご相談ください。

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当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に刑事事件の解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

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