事件や事故、とくに交通事故を起こしたケースで、飲酒運転だった、無免許運転・免許停止中の運転だった、車を使う仕事をしているので免許取り消しや停止は困るなどの理由で、家族や交際相手、友人などに身代わり出頭を頼んでしまう人がいます。
ここで、
- 身代わり出頭をすると頼まれて出頭した側は罪に問われるのだろうか…
- 逆に、身代わり出頭を頼んだ側が罪に問われることはあるのだろうか…
- そもそも、身代わり出頭がバレることはあるのだろうか…
といった疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
結論から言いますと、身代わり出頭した側も頼んだ側も罪に問われる可能性があります。また、実際に逮捕された事例も多数あり、身代わり出頭はバレる可能性は十分にあります。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 身代わり出頭で問われる罪
- 身代わり出頭がバレて逮捕された事例
- 家族が身代わり出頭しても罪に問われるのか
について、わかりやすく解説していきます。
なお、身代わり出頭をして警察から疑いをかけられている方、あるいは、既に逮捕されてしまった方のご家族の方は、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。
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目次
身代わり出頭で問われる罪
身代わり出頭では、身代わり出頭をする人と身代わり出頭を頼む人がいます。それぞれ問われる罪が異なりますから、以下分けて解説します。
身代わり出頭をした側が問われる罪
まず、身代わり出頭した側は、犯人隠避罪に問われる可能性があります。犯人隠避罪は刑法第103条に規定されています。
(犯人蔵匿等)
第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
「罰金以上の刑に当たる罪」とは、たとえば以下で挙げる罪のように、法定刑に死刑、懲役、禁錮、罰金のいずれかの刑が規定されている罪のことです。なお、暴行罪などのように、選択刑として罰金以下の拘留・科料の刑が規定されていても「罰金以上の刑に当たる罪」に含まれます。
- 殺人罪:死刑又は無期若しくは5年以上の懲役
- 強盗罪:5年以上の有期懲役
- 暴行罪:2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
- 過失致死罪:50万円以下の罰金
「罪を犯した者」とは、実行犯(正犯)はもちろん、正犯を教唆した教唆犯、幇助した幇助犯も含まれます。必ずしも真犯人である必要はなく、現段階では真犯人かどうかわからない者、あとで無実と判明した者も「罪を犯した者」に含まれると考えられています。
「拘禁中に逃走した者」とは、法令によって身柄拘束されている者をいいます。逮捕されている被疑者、勾留されている被疑者・被告人、受刑中の受刑者はもちろん、保釈の許可決定が取り消されて収容される者なども含みます。
「蔵匿」とは、犯人に場所を提供しかくまってやることをいいます。
「隠避させる」とは、蔵匿以外の方法によって警察官等による逮捕・発見を免れる一切の行為をいいます。たとえば、
- 犯人に変装用の衣服や旅費を与える
- 潜伏場所を教えて逃がす
- 逃避中の者に捜査の進行状況や留守宅の状況
- 家族の安否を知らせて逃避の便宜を与える
- 真犯人の身代わりとして別人を立てる
- 自己が犯人であるとして捜査機関に虚偽の申告をする
などが「隠避させる」にあたります。
犯人隠避罪が成立するには、犯人が、被蔵匿者又は被隠避者が「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」又は「拘禁中に逃走した者」であることを知っている必要があります。
しかし、判例(最高裁判所昭和29年9月30日)では、犯人が、その罪の刑に罰金以上の刑が定められていることまでを知っていることは必要ではなく、罰金以上の刑が定められている罪を犯したことを認識していれば足りると考えています。
身代わり出頭を頼んだ側が問われる罪
罪を犯した犯人が自らに逃げ隠れしても犯人隠避罪に問われないことは刑法第103条の規定からも明らかです。これは、罪を犯した人間が逃げ隠れするのは人の心情としてある意味当然であって、逃げ隠れしないよう期待することができないからです。
では、犯人が自ら実行したのではなく、他人に頼んで(教唆して)自分を隠避させた場合は犯人隠避の教唆犯は成立しないのでしょうか?上記のように、自ら実行した場合は処罰されないのに、他人を介して実行すると処罰されるのかが問題となります。
この点、学説には、犯人隠避の教唆犯は成立しないという消極説と成立するという積極説がありますが、判例(最高裁判所昭和40年2月26日など)は教唆犯の成立を認めています。その理由は、犯人自身が逃げ隠れするのは「犯人自身が逃げ隠れする行為は不可罰なのは、これを罰することが刑事訴訟における被告人の防御の地位と相容れないからであるのに対して、他人を教唆してまでその目的を遂げようとするのは、もはや法の放任する防御の範囲を逸脱する」からと述べています。
身代わり出頭はバレる!実際の逮捕事例を紹介
それでは、ここでは、過去身代わり出頭が警察にバレて逮捕された事例を3つ紹介したいと思います。
親族に身代わり出頭させて逮捕
2022年9月26日、無免許運転で交通事故を起こした内縁の夫の代わりに、親族の女性を警察に出頭させたとして、大阪府の女性が犯人隠避教唆の疑いで逮捕されています。
内縁の夫は、同年8月7日、無免許運転中に交通事故を起こし、そのまま現場から逃走。その後、警察に無免許運転過失運転罪で逮捕されています。内縁の夫は、「車は運転していない、後部座席に乗っていた。」などと話しているようです。車には犯人も同乗していました。
警察によると、警察に出頭した親族の女性から事故の状況などについて話を聴いたものの、つじつまが合わず、不審に思った警察官が問い詰めたところ、身代わり出頭したことを認めたことから本件が発覚しています。
親族に身代わり出頭させる 内縁の夫が無免許運転、女を逮捕 - 産経ニュース
ひき逃げ運転手の身代わりで逮捕
2022年12月26日、交通事故を起こし現場から逃走した男性の代わりに、警察官に対し、「事故を起こしたのは私です」と嘘の申告をした男性が犯人隠避の疑いで逮捕されています。
運転手の男性はトラックを運転中、車線変更の際、後方から来たバイクと接触。バイクの運転手に重傷の怪我を負わせるものの、その場から逃走しています。
事故後、犯人が事故現場に現れ、上記の申告をしたことなどから本件が発覚しています。
ひき逃げで運転手と”替え玉”逮捕 直前に忘年会「私が身代わりになればひき逃げにならないと思った」(読売テレビ)
追突、ひき逃げ事故の身代わりで逮捕
2018年4月9日、追突事故を起こし現場から逃走した友人の身代わりとなった男性が犯人隠避の疑いで逮捕されています。
事故を起こした友人は、被害者が電話をしている隙に現場から逃走。約1時間後に男性が現れ、現場にいた警察官に「(事故の)当事者です」と虚偽の申告をしています。
その後、友人と犯人がそろって警察署に出頭。犯人の話を不審に思って捜査していた消え冊間が追及したところ、犯人隠避の容疑を認めたため本件が発覚しています。
ひき逃げで身代わり出頭 柏署、容疑の男2人逮捕 | 千葉日報オンライン
家族が身代わり出頭しても罪に問われる?
親族が「罰金以上の刑にあたる罪を犯した者」又は「拘禁中に逃走した者」のために、犯人隠避罪を犯した場合は、刑を免除されることがあります。
罪を犯した本人と同様、その親族が本人を隠避することは人の至情に基づくものであって、本人を隠避しないことを期待することができないからです。
ここでの親族とは、
- 配偶者
- 6親等内の血族(親、兄弟姉妹、子、孫、叔父叔母など)
- 3親等内の姻族(義父母、配偶者の兄弟姉妹など)
のことをいいます。
必ず刑を免除されるわけではなく、最終的には裁判官の判断で免除か否かが決まります。なお、親族が犯人を蔵匿、隠避した事件では、裁判で免除の判決が下される可能性があるため、そうした事態が予測される場合は、検察官が事件を裁判にかけないとの判断にする(不起訴処分とする)可能性が高いです。
まとめ
身代わり出頭をした人は犯人隠避罪に問われます。また、罪を犯した人が逃げ隠れした場合は罪に問われませんが、他人に身代わり出頭を頼んだ場合は犯人隠避の教唆犯に問われます。罪を犯した本人の家族等の親族が身代わり出頭した場合は刑が免除されることがあります。
身代わり出頭で警察から容疑をかけられている場合や、既に犯人隠避やその教唆で逮捕されてしまった方のご家族の方は弁護士に相談し、対策を打つ必要があります。
弊所では、刑事事件の逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、まずは弊所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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