興味本位で、あるいは、パートナーの浮気を確認したり浮気の証拠を確保するなどの目的で、勝手に人のスマホを見てしまう方がいます。しかしここで、
- 「人のスマホを勝手に見ると罪になるのではないだろうか…」
- 「人のスマホを勝手に見ることが違法であれば、違法な手段で入手した証拠は裁判で通用しないのではないだろうか…」
このようにお考えの方もいるかと思われます。
結論から言いますと、人のスマホを勝手に見る行為は、不正アクセス禁止法違反になる可能性があります。赤の他人が勝手に見る場合はもちろん、夫婦間や親子間であっても同様です。また、民事上も損害賠償請求の対象となります。もっとも、不正アクセスにより入手した浮気の証拠であっても、慰謝料請求などの民事裁判で採用される可能性はあります。
この記事では、上記内容につき、不正アクセス事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
なお、不正アクセス行為をしてしまい、警察に出頭を求められているなど刑事事件に発展するおそれのある方(あるいは、既に逮捕されてしまった方のご家族の方)で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
人のスマホを勝手に見ると不正アクセス禁止法違反?
不正アクセスとは、SNSやインターネットサービス等にアクセスする際に、他人が使用するIDやパスワードなどの識別符号を入力したり、何らかの指令を入力するなどして、本来であれば正当な利用権限がないのに利用しえる状態にする行為のことをいいます。
不正アクセスは「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(以下「不正アクセス禁止法」といいます)」で禁止行為の一つに挙げられており、違反した場合の罰則は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
不正アクセス禁止法では「不正アクセス行為」について、
- ①アクセス制御機能を有する特定電子計算機(スマホ、パソコンなど)に電気通信回線(インターネット)を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号(ID・パスワードなど)を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用(アプリ、SNSなどの利用)をし得る状態にさせる行為
- ②アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為
のいずれかに該当する行為をいうと定義されています。
この定義を前提に以下、検討します。
ID・パスワードを入力してアプリやWEBサイト等を開いた場合
他人のID・パスワードを入力して、スマホ内にインストールされているアプリやWEBサイト(ショッピングサイト等)を開く行為は①の行為にあたるため、不正アクセス行為にあたります。
自動ログインされるLINE・メール・SNS・WEBサイト等を開く行為は?
一方、あらかじめID・パスワードの入力が不要な自動ログインされるLINE・メール・SNS等のアプリやWEBサイトを開く行為は「①当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号(ID・パスワードなど)を入力した」、 「②当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く)又は指令を入力した」とはいえず、不正アクセス行為にはあたらないと考えられます。
スマホのロック画面を解除する行為は?
スマホのロックを解除する行為は「①特定電子計算機(スマホ、パソコンなど)に電気通信回線(インターネット)を通じて」識別符号等の情報を入力したとはいえないため、不正アクセス行為にはあたらないと考えられます。
夫婦間や家族間でもスマホを勝手に見ると不正アクセス禁止法違反?
不正アクセス禁止法では第3条に次の規定を設けて不正アクセス行為を禁止しています。
(不正アクセス行為の禁止)
第三条 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。不正アクセス行為の禁止等に関する法律 | e-Gov法令検索
つまり、「何人も~」というのは、性別、年齢、国籍、相手との関係性を問わずどんな人でも不正アクセス行為をしてはいけません、という意味です。
したがって、離婚した後の元パートナーのID・パスワードを入力してアプリを起動させたりサイトにログインする行為はもちろん、離婚前の婚姻中のパートナーのスマホのアプリにID・パスワードを入力してアプリの起動などをする行為も処罰対象となる可能性があります。親子や兄弟といった家族間でも同様です。
不正アクセスで入手した不倫の証拠は民事裁判で使える?
違法な行為によって取得した証拠を違法収集証拠といいます。裁判で、裁判所が違法収集証拠の採用を認めてしまうと、裁判所自身が違法な行為を認めることになり、さらに違法な行為を促してしまうおそれもあることから、裁判の証拠として採用してもらえない可能性もあります。
一方、刑事裁判に比べて民事裁判では、違法収集証拠の取り扱いについて比較的緩やかな側面もあります。刑事裁判は「国家VS個人」であって力関係に圧倒的な開きがあることから、裁判所が個人の側に立って国家が違法な行為をしていないか厳しくチェックする必要があるのに対し、不倫の民事裁判では「個人VS個人」であって力関係に差はないことから、刑事裁判ほど個人の行為を厳しくチェックする必要がないためです。
結局、裁判所が不正アクセスで入手した違法収集証拠を民事裁判で採用するかどうかは、違法行為の態様、人権侵害の程度、証拠の希少性、裁判での証拠の重要性、他の手段での取得の困難度などの諸事情を勘案して判断されるものと考えられます。
人のスマホを勝手に見ると刑事のほかに民事責任を負うリスクも
他人のSNSアカウントに無断でログインし、メッセージのやり取りなどを勝手に見るなどの不正アクセスは、人のプライバシー権を侵害する違法な行為で、民法上の「不法行為(民法709条)」にあたります。したがって、不正アクセスを行うと前述のとおり刑事責任を問われるほか民事責任、すなわち、損害賠償責任を問われる可能性もあります。
もっとも、人のスマホを勝手に盗み見る不正アクセスの場合には、窃盗のように実際に金品を盗られるなどの実害がないことから、裁判で認められる賠償額も数万円~10万円程度に収まることが多いと考えられます。
ただし、人のスマホの中を盗み見ただけでなく、入手した個人情報などをネットなどに漏洩させた場合には上記相場よりも認められる慰謝料は高額になります。また、ショッピングサイトなどに不正にログインして商品を購入したなどの場合は、実損害の賠償をする必要もあります。
まとめ
不正アクセスを疑われるとその先には刑事上、民事上の責任を負わされる可能性があります。もし、被害者と何らかのトラブルになり、警察に被害申告する、訴えると言われている場合には弁護士にはやめに相談しましょう。弁護士にはやめに相談することが、逮捕・検挙などのリスクを回避することにもつながります。
当事務所では、不正アクセスの被害者との示談交渉、逮捕の回避を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、人のスマホを勝手に見るなどの不正アクセス行為をしてしまい逮捕のおそれがある方や、既に逮捕された方のご家族の方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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