- 「離婚した相手と子供との面会交流を拒否したい…」
- 「取り決めされた面会交流を拒否するとどんなリスクがあるのだろう…」
- 「面会交流を拒否できる正当な理由にはどのようなものがあるのだろう…」
この記事では、これらの悩みや疑問を、離婚問題に強い弁護士が解消していきます。ぜひ最後までご一読いただき、面会交流を拒否する際の参考としていただければ幸いです。
誰でも気軽に弁護士に相談できます |
|
面会交流とは?拒否することはできる?
面会交流とは、離婚や別居などを契機として一緒に暮らすことができなくなった親(非監護親)が子と実際に会って面会する、連絡などを取り合うことをいいます。
面会交流により、子は一緒に暮らしている親(監護親)から得ることができない経験や利益を得ることができるだけでなく、両方の親からも愛されているのだという充足感、安心感を得ることができます。そして、そのことが子の自己肯定感を育み、子の健全な成長へとつながっていくと考えられています。このように、面会交流は親の権利であると当時に子の利益でもあるのです。
そのため、原則的には面会交流を拒否することはできません。
例えば、以下のような親の都合を理由とした面会交流の拒否は認められません。
- 子の引き渡しで相手と顔をあわせるのが嫌
- 養育費をもらえてないから(あるいは、いらないから)会わせたくない
- 再婚したので今の家庭環境に馴染ませたい
- 相手の不倫が原因で離婚したのでそんな親と子を会わせたくない
- 子が監護親に歩調を合わせて「会わなくていい」と言っている
- 非監護親に恨みがあるので嫌がらせや仕返しのために会わせたくない
「養育費はいらないから子供と会わせない」は通用する?弁護士が解説
取決めされた面会交流を拒否するリスク
離婚協議や離婚調停、面会交流調停などで面会交流について取り決めがなされているのに、正当な理由なく面会交流を拒否するとどのようなリスクがあるのでしょうか。以下で解説します。
家庭裁判所から履行勧告される
履行勧告とは、家庭裁判所から監護親に対して「調停、審判などで決まった面会交流の内容を守ってください」と促す手続きです。非監護親から家庭裁判所に履行勧告の申出がなされると、家庭裁判所から履行勧告に関する連絡書がご自宅に送付されます。
この履行勧告には強制力はありませんが、この履行勧告に従わないと次に説明する間接強制を申し立てられるなどの事態に発展するおそれもあるため心理的プレッシャーとなるでしょう。
間接強制される
間接強制とは、監護親が面会交流を拒否した場合、非監護親への金銭の支払いを家庭裁判所から命じられ、その心理的プレッシャーを背景として、間接的に面会交流を促そうとするものです。
たとえば、家庭裁判所から「1回、面会交流させないごとに、相手に対して〇万円支払え」という命令を受けます。しかし、「〇万円払うのはもったいないので、面会を認めてやろう」という気持ちに強制的にさせるのが間接強制というわけです。〇に入る金額は、通常「5~10万円」が平均とは思いますが、近年は高額化の傾向にあると言われています。
なお、家庭裁判所から間接強制されるのは、「裁判離婚(調停、審判など)で面会交流について取り決めがなされた場合」ですが、その場合でも、調停等で面会交流の内容について、詳細かつ具体的に定めていた場合に限って間接強制される、ということになっています。
面会交流の間接強制とは?認められるケース、認められないケースを紹介
損害賠償請求(慰謝料請求)される
協議や裁判で面会交流について詳細かつ具体的に定めた場合には、非監護親は面会交流する権利を取得し、監護親には面会交流させる義務が生じます。
したがって、監護親が正当な理由なく面会交流を拒否することは非監護親の面会交流する権利を侵害する「不法行為」に該当します。そして、不法行為によって非監護親に対して精神的苦痛を与えたと認められる場合には損害賠償(慰謝料)を請求されるおそれがあります。
もっとも、面会を拒否しただけで直ちに慰謝料請求されるわけではありません。
たとえば、
- 調停や審判などで面会交流の方法が具体的に決まっている
- 虚偽を述べて面会交流を妨害していた
- 面会交流を長年拒否し続けていた
など、不法行為の違法性が強度であると認められる場合に限り慰謝料請求されやすいといえます。
面会交流を拒否されたら慰謝料請求できる?条件、相場、裁判例など
親権者が変更される
正当な理由なく面会交流を頑なに拒否し続けると、相手から親権者変更の調停を申し立てられるおそれがあります。
面会交流は相手の権利であるとともに、子の利益、子の健全な成長のためでもあります。にもかかわらず正当な理由なく面会交流を拒否することで、調停や審判で「子の親権者として不適格」と判断され、親権者を変更されてしまうおそれがあるので注意が必要です。
過去の裁判例(福岡高裁平成27年1月30日)では、
- 親権者の母親が、子どもの育児をないがしろにして職場の男性と遊んでいたこと
- 保育園の行事への参加が消極的で、保育料の未納が続いていたこと
- 父親と比較して育児のサポートを頼れる人がいないなど養育環境に不安があること
などの事情から、母親から父親へ親権が変更されています。
面会交流を拒否できる正当な理由
上で述べたように、面会交流は原則、拒否することはできません。ただし、面会交流について規定している民法766条1項では、面会交流については「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明示しています。つまり、面会交流を実施することで子の福祉や利益を害する恐れがあるといった正当な理由がある場合には、例外的に面会交流を拒否することができると解釈できます。
家庭裁判所の実務においても、「面会交流を制限すべき特段の事情がない場合」には面会交流を認めるという基本方針をとっていますが、これを反対に解釈すると、そうした特段の事情が認められる場合には拒否できるということになります。
では、面会交流を拒否できる正当な理由にはどのようなものがあるのか、以下で解説していきます。
①相手が過去に子に虐待をしていた
虐待とは殴る、蹴るなどの「身体的虐待」、子への性的行為などの「性的虐待」、食事を与えない、風呂に入れないなどの「ネグレクト」、無視や子の前で第三者に暴言・暴力を振るうなどの「心理的虐待」です。これらの虐待の事実があれば、面会交流を実施することで子が再び被害に遭うおそれもあるため、面会交流を拒否することができます。
ただし、面会交流の拒否が認められるには、裁判所に虐待の事実を証明するための証拠を提示する必要があります。具体的には、以下のような証拠の収集と保全をしておきましょう。
- 怪我した部位の写真
- 虐待を記録した動画や音声ファイル
- カルテ、診断書
- 警察、児童相談所等の公的機関に相談した際の相談記録
- メモ、日記
②子供自身が面会を嫌がっている
面会交流を認めるか否かは子の利益を最優先に考えなくてはなりませんので、子本人が面会を拒絶しているのであれば面会交流を拒否できるのは当然です。
ただし、子が監護親の顔色を伺ったり心中を察して、本心ではなく「(非監護親と)会いたくない、会わなくていい」と監護親の歩調に合わせて言っているだけの場合もあります。実際、非監護親と会った途端、自分の言ったことを忘れ相手との面会、交流を楽しむ子もいます。
したがって、調停や審判で面会交流の許否を判断する際に子の意思を考慮するかどうかは、子の年齢により異なります。一般的には10歳程度から子の意思が尊重される傾向があり、子が15歳以上の場合は、理由を問わず、子の意思を尊重しなければなりません。
③子を連れ去る危険性が高い
非監護親から連れ去れられることで今現在の監護親と引き剝がされて生活環境が一変するわけですから、子の精神的負担は計り知れません。そのため、過去に連れ去りがあった、連れ去られそうになったなど、非監護親が子を連れ去る危険性が高い場合には、面会交流を拒否することができます。
④相手が精神的に不安定
相手にアルコール依存、薬物依存の疑いがある、相手が精神的に不安定であるという場合は、子に危険行為が及ぶなど、子との安全な面会交流を期待できないおそれが高いといえるため、面会交流の許否が認められる可能性があります。
⑤約束とは異なる条件を突き付けられている
面会交流の条件、やり方については協議(話し合い)や裁判で決めています。したがって、面会交流はその条件に従って行う必要があります。相手が取り決めた条件に従わずに、取り決めた条件とは異なる条件、無理な条件を突き付けてきた場合には面会交流を拒否することができます。
面会交流を拒否する方法
まずは話し合い
民法第766条1項には、父母が協議上の離婚をするときは、「父又は母と子との面会及びその他の交流」については「その協議で定める」と規定しています。
したがって、相手方の親が子どもとの面会交流をさせないことに納得して合意する場合には面会交流を拒否できる場合があります。
そのためには、まずは父と母がしっかりと話し合いを行う必要があります。なぜ、あなたが子どもとの面会交流を拒否しているのかという理由についても相手に適切に認識させることが重要です。
報復や嫌がらせのために拒否しているのではなく、面会交流させることに問題があることを示して、改善に向けて双方が調整する姿勢が重要になります。
面会交流調停
父母同士の任意での話し合いだけでは面会交流についてまとまらない場合には、家庭裁判所に対して「面会交流調停」を申し立てることもできます。
「面会交流調停」とは裁判のように勝ち負けを決めるものではなく、話し合いによりお互いが合意することで紛争を解決する手続きです。
調停手続きでは、家庭裁判所の裁判官と、一般市民から選ばれた2名の調停委員が当事者の間に立って双方から事情を聴き、必要に応じて資料の提出などを求めながら妥当な解決案を探っていく手続きです。
面会交流については、子どもの健全な成長を助けるために必要であると考えられていることから、調停手続きでは、子どもの年齢、性別、性格、就学の有無、生活環境などが考慮されます。子どもに精神的な負担をかけないように十分に配慮して、子どもの意向を尊重した取り決めができるように話し合いが進められます。
面会交流審判
「面会交流調停」手続きは、あくまで当事者間での話し合いになりますので、話し合いがまとまらず調停が不成立となった場合(これを「不調」といいます)には、「審判手続き」が開始されます。
「面会交流審判」とは、面会交流調停が不調の場合、家庭裁判所の裁判官が調停手続きで現れた一切の事情を考慮して面会交流を認めるべきか否か、認める場合にはその具体的な方法について判断するものです。
面会交流については、子どもの利益を最優先に判断されますので、たとえ親権を有する親が面会交流を拒否している場合であっても、あなたが望むような判断が出されるとは限りません。
面会交流の拒否を弁護士に依頼するメリット
冷静に相手と話し合いをすすめることができる
面会交流の話し合いについて弁護士を代理人にして話し合いを進める場合、冷静に話し合いを進めることが期待できます。
夫婦間にトラブルを抱えている場合には、相手方配偶者と顔を合わせるのも嫌で、当事者同士で話し合いをしようとするとお互いの不平・不満からなかなか進まないということもよくあります。
しかし弁護士が当事者の間に入って進める場合には、法律の専門家があなたの代わりを務めますので客観的な視点から感情的にならずに進めることができます。
相手方に適切に反論して不利な面会条件を避けられる
弁護士に依頼することで、相手方の不合理・不当な主張や要求に対しては適切に反論して、時には証拠を示して主張してくれます。
当事者だけで話し合いを続けた場合には、態度が硬直的な方や強引な方が自分の望むとおりの内容で面会交流の条件を決定してしまうことが多々あります。
しかし弁護士があなたの代わりに話し合いを行う場合には、依頼者の利益が最大化するように行動しますので、あなたの不利な内容で合意がまとめられることを回避し、求める条件で話し合いをまとめることが期待できます。
公正証書を利用することで蒸し返しを防止できる
面会交流について当事者間の話し合いがまとまった際には、合意書について弁護士に作成してもらうこともできます。その際には公証人が作成し一般に信用力が高い「公正証書」で合意内容を残しておくべきでしょう。
公正証書で合意していた場合には、記載された内容で合意されたということが高い信用力をもって証明できます。
したがって後々、当事者の他方が約束を破って合意の有無を争ったとしてもそのような蒸し返しを阻止することができるのです。
裁判手続きに移行した場合も引き続き依頼できる
弁護士に依頼した場合には、任意での話し合いのみならず調停手続きやそれに引き続く裁判手続きにおいても、代理人として任せることができます。
手続きの早い段階から弁護士に依頼しておけば、裁判になった場合を見据えて必要な証拠の収集や適宜必要となる主張・反論についても任せておくことができます。
調停や訴訟をひとりで対応しようとすると、不利な内容で決まってしまい取返しがつかなくなる場合がありますので、必ず弁護士に相談するようにしてください。
弊所では、非監護親との交渉はもちろん、調停や審判における代理人としての実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でサポートしますので、まずは弁護士までご相談ください。相談する勇気が解決へと繋がります。
誰でも気軽に弁護士に相談できます |
|