この記事をご覧の方は、専業主婦でも、離婚後、親権者となることができるのか?という疑問をお持ちの方ではないでしょうか?
そうした疑問を抱く背景には夫との「経済力の差」が一つあると考えますが、実は親権者を決めるにあたって経済力はそれほど重要視される要素ではありません。
本記事では、専業主婦の方が確実に親権を自分のものとするために、他のどんな点に気をつければよいのかという点について解説していきたいと思います。
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目次
親権は身上監護権と財産管理権から成り立っている
親権と聞くと、「親の子供に対して行使する権利」とか「しつけ(懲戒)をする権限」などというふうに漠然とイメージされているかもしれませんが、実は、子供の利益を守るための権利だというのが正しい意味合いです。
そして、この親権は身上監護権と財産管理権から成り立っています。
身上監護権は子供の生活全般を守るための権利です。
進学や就職などの際に子供に代わって法的な手続を行う「身分行為の代理権」、子供をしつけるための「懲戒権」、子供が住む場所を決める「居所指定権利」、子供が職業に就く際に許可を与える「職業許可権」から成ります。
財産管理権は子供の財産を守るための権利です。
子供名義の銀行口座を開設し、お年玉や児童手当などを入金するなどの「包括的な財産管理権」、子供が不用品を中古品買取店で売買する際にあらかじめ同意する「法律行為の同意権」から成ります。
専業主婦であることが親権を獲得する上で有利な理由
離婚する夫婦の約8割の母親が親権を獲得しているのが実情で、専業主婦、つまり、母親であることは親権を獲得する上で有利であることは間違いありません。
以下では、なぜ専業主婦である母親が親権を獲得する上で有利なのか、親権者を決める上でどのような点に留意すべきかについて解説します。
監護実績、監護意欲、子供に対する愛情、監護の継続性
これまでいかに子育てにかかわってきたかということで、親権者を決める上で最も重視すべきポイントです。
専業主婦は子育てに充てることができる時間が多いため、監護実績等を有し、将来も継続して監護していけると考えられます。
子供の年齢・意思
子供が10歳未満(特に幼児、小学校低学年生)の場合は、専業主婦の方が子供と触れ合う機会が多く、子供との信頼関係も構築できていることから、専業主婦の方が有利です。
なお、子供が10歳以上14歳未満の場合は、基本的に一定程度、子供の意向を尊重し、15歳以上の場合は子供の意向を尊重した方がよいでしょう。
専業主婦が親権者となるためにやるべきこと
専業主婦が親権を獲得する上で有利とはいえ、注意すべき点を抑えていなければ夫に親権を奪われてしまう可能性も否定はできません。
また、たとえ親権を獲得できたとしても、離婚後の生活に不安を抱く専業主婦の方は多いと考えます。
そこで、以下では専業主婦が親権者となるためにやるべきことについて解説してまいります。
監護実績に関する証拠を確保しておく
監護実績に関する証拠とは、たとえば、母子手帳、育児日記、連絡帳、写真、SNS,ブログなどです。
前述のとおり、監護実績は親権を得る上で重要な要素ですが、夫婦がどれだけに監護実績を有しているのかは、夫婦以外の第三者からは見えにくく分かりづらいものです。
したがって、万が一、交渉を依頼した弁護士、調停・裁判に移行した際の調停委員、裁判官などの第三者の目に見える形で監護実績を証拠化しておくことが大切です。
親・親族などの理解を得ておく
専業主婦ということは、多くの方が現時点では無収入ということでしょうから、離婚後は親・親族などの家に同居しながら生活することが必要不可欠といっても過言ではなく、あらかじめ事情を話して理解を得ておくことが必要です。
もっとも、親・親族と同居することによって、現在の生活環境を一辺させることは子供に強いストレスを与え子供の成長にとってはマイナスとなる可能性もあります。
まずは子供にとって一番よい方法を選択すべきでしょう。
親権者として不適任と疑われるような行動を避ける
虐待、育児放棄、不貞行為(不倫、浮気)、お金の浪費などの経歴があると、夫から親権者として不適任と指摘されてしまう可能性があります。
反対に、こうした経歴さえなければ、多くの専業主婦の方は親権を獲得できるのが実情です。
なぜなら、専業主婦ということは子育てを中心に担当しているということであり、そのため監護実績があり、監護実績があるということは監護意欲、子供に対する愛情、将来の監護の継続性もあると考えられるからです。
収入、お金を得るための準備をする
専業主婦の方が最も不安になるのが、離婚後の収入、お金や生活費をどう賄っていくか、ということではないでしょうか?
子育てしながら生活していく上で、収入やお金の問題は避けて通れない問題です。
離婚後に住む場所を決めたら、そこで生活していくにはいくらかかるのか試算してみましょう。
その上で、離婚後に得られる見込みの養育費、慰謝料、財産分与、婚姻費用などによって得られるお金や児童手当、児童扶養手当等の各種給付金を合計し、生活費を賄えるのか賄えないのか試算してみます。
賄いきれない場合や不安が残る場合は、早い段階から就職、転職、スキルアップを検討しなければなりません。
また、子供が小さくて仕事ができない場合は、親の家に同居させてもらうなどして住居費、水道光熱費などの固定費を抑える対策を取っておく必要があります。
別居?
夫から虐待を受けているなどのやむを得ない場合を除いて、極力、別居はしないことです。
特に、子供と離れて暮らすことは親権獲得のためには不利に働きますから、離婚するまでは決して子供と離れて暮らしてはいけません。
どうしても別居したいというのであれば、夫の同意を得た上で、子供を連れて別居することです。
夫に無断で子供を連れて別居することは、たとえ実の親であっても最悪の場合、未成年者略取誘拐罪という罪に問われる可能性がありますし、何より離婚に向けた話し合いがこじれてしまい離婚するまでに時間がかかってしまうことは目に見えています。
また、同居している間にやるべきこと(夫の不貞行為、財産分与の証拠を集める、別居後の生活費を工面するなど)も多くありますので、準備不足のまま別居することだけは避けなければなりません。
専業主婦でも親権を取れないケース
前述のとおり、専業主婦であれば親権を獲得できる場合が多いです。
もっとも、虐待、育児放棄などの事実があり、親権者として不適任と疑われるような場合は稀に親権を獲得できないこともあります。
まとめ
離婚する夫婦のうち約8割の母親が親権を獲得しているのが実情です。
しかし、その実情に安心しきっていると、親権獲得を切望する夫から調停や訴訟を提起され、親権を奪われてしまう可能性も否定はできません。
現に、残る約2割の父親は親権を獲得しているわけですし、父親に親権を認めた判例も存在します。
専業主婦の場合、離婚後の生活や親権を考えると、まずは収入やお金の面を解決することが先決事項といえます。
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