このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、不倫した配偶者に対しても財産分与は必要になります。なぜならば、財産分与は、婚姻期間中に夫婦が形成した共有財産を清算する「清算的財産分与」が原則であり、不倫をした配偶者がもう一方の配偶者と財産を形成した事実に変わりはなく、また、不倫の事実は慰謝料請求で解決されるべき問題であるからです。
この説明を聴いても腑に落ちないお気持ちの方も多いと思われますが、まずは現実を受け入れ、少しでも財産を多くもらうための手立てを考えなくてはなりません。
そこでこの記事では、離婚問題に強い弁護士が、上記内容につき詳しく解説するとともに、「不倫をした配偶者よりもできるだけ多く財産を受け取る方法」などについてわかりやすく解説していきます。
なお、不倫をした配偶者との財産分与を有利に進めたいとお考えの方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
財産分与とは?
不倫した配偶者との財産分与について解説する前に、前提知識として知っておいた方が良い財産分与の基礎知識をここで解説します。
財産分与の種類
財産分与とは、結婚後に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に分配する制度です。
財産分与には、次に挙げる3つの種類(側面)があります。
- 清算的財産分与
- 慰謝料的財産分与
- 扶養的財産分与
①清算的財産分与
清算的財産分与とは、夫婦が離婚する場合、婚姻期間中に夫婦が形成した共有財産を清算することです。
財産分与の割合は財産形成の寄与度に応じることになりますが、夫婦の一方が財産の形成に多大な貢献をしたなどの特段の事情がない限り、寄与度は2分の1とされ(いわゆる「2分の1ルール」)、ほぼすべてのケースで2分の1ルールが採用されています。
なお、以下で解説する慰謝料的財産分与、扶養的財産分与という種類もありますが、離婚に伴う財産分与でメインとなるのがこの清算的財産分与になります。離婚における財産分与は原則として清算的財産分与であると言えます。
②慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与とは、不倫やDVなど婚姻関係を破綻させた主な原因を作った側の配偶者が、相手側に慰謝料の意味を含めて多めに財産分与をすることです。
慰謝料とは、相手が被った精神的苦痛に対して支払われる金銭のことですので、本来であれば不法行為に基づく離婚慰謝料(民法第709条、710条)で議論されるべき問題です。
しかし、条文上、財産分与は、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」とされています(民法第768条3項)。
したがって、財産分与において慰謝料を考慮して分与額を決めることもあります。
慰謝料と財産分与は両方請求できる|但し慰謝料的財産分与の例外あり
③扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、離婚によって夫婦の一方の生活が困窮する場合に、収入の多い方から、収入が少ない方が経済的に自立するまでの一定期間、財産分与の名目で生活の援助をすることです。
例えば、夫婦の一方が婚姻後、家事や育児に専念するために仕事を辞めたという方もいらっしゃるでしょう。そのような夫婦が離婚した場合、仕事を辞めた方の配偶者は、もう一方の配偶者からの扶養(婚姻費用の分担等)を受けられなくなるため、扶養的財産分与が認められることもあります。
もっとも、前述の通り、財産分与は清算的財産分与が原則であるため、裁判実務において扶養的財産分与が認められるケースは極めて稀です。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が互いに協力して形成した財産になります。夫婦のいずれかに属するか明らかでない財産については、夫婦の共有財産と推定されます(民法第762条2項)。
他方で、夫婦の一方が婚姻前から有する財産や婚姻中自己の名で得た財産については、夫婦の一方が単独で有する財産(特有財産)として分与の対象外となります(同条1項)。
まず、具体的に財産分与の対象となるのは、以下のような財産です。
財産分与の対象となる財産 |
現金・預貯金 |
不動産 |
株式 |
投資信託 |
ゴルフ会員権 |
各種積立て |
生命保険、年金保険、学資保険など |
退職金 |
住宅ローン・教育ローンなどの借入金 |
住宅ローン等のマイナス財産(借金、債務のこと)は、プラスの財産から差し引いた上で、プラスの財産が残っていればその2分の1を分与することになります。
次に、財産分与の対象とならない財産は、以下のような財産です。
財産分与の対象とならない財産 |
婚姻前から有している現金・預貯金 |
婚姻前から有している財産から派生した財産 |
婚姻前から加入している保険 |
相続によって取得した財産 |
生前贈与によって親から譲り受けた財産 |
不倫をした配偶者へも財産分与は必要
不倫をした配偶者は、民法上の不法行為(民法第709条)に該当することをしたのであるから、財産分与は認められるべきではないと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、上記でお伝えしたように、財産分与は清算的財産分与が原則です。すなわち、不倫をした配偶者がもう一方の配偶者と財産を形成した事実に変わりはなく、また、不倫の事実は慰謝料請求で解決されるべき問題ですので、不倫をした配偶者からの財産分与請求も2分の1ルールに基づき認められます。
もっとも、協議離婚をする場合には、夫婦の話し合いにより財産分与の割合を自由に決めることができます。
例えば、共有財産が2000万円ある夫婦の一方が不倫をして離婚する場合、2分の1ルールを当てはめると、夫と妻がそれぞれ1000万円の財産分与を受けることになります。しかし、夫婦の協議により、不倫をした側の配偶者は700万円、相手は1300万円といったように、不倫をされた側の配偶者の分与額を多くすることもできます。このケースでは、慰謝料の意味を込めて一方の分与額を2分の1以上にしていますので、先ほど説明した「慰謝料的財産分与」にあたります。
不倫をした配偶者よりもできるだけ多く財産を受け取るには?
上記の通り、不倫をした配偶者にも原則として財産の二分の一を分与する必要がありますが、不倫で家庭を壊した配偶者よりも多く財産をもらって離婚したいとお考えの方も多いことでしょう。そこでここでは、不倫した配偶者よりできるだけ多く財産を受け取るための方法について紹介します。
財産分与の放棄または減額を離婚の条件として提示する
上記のとおり、不倫をした配偶者にも2分の1ルールが適用されますが、交渉により財産分与の割合を有利にすることができる場合もあります。
まず、主として婚姻関係を破綻させた責任のある配偶者のことを「有責配偶者」と言います。一般的に不倫をした配偶者は有責配偶者と認定されるケースが多いです。
有責配偶者は、非常に厳しい要件をクリアしない限り、離婚を請求することができなくなります。具体的には、①長期間の別居(約7〜10年)、②未成熟子がいないこと(15歳くらい)、③離婚により不倫された側の配偶者が精神的・社会的・経済的に苛酷な状態にならないことという要件を満たすことが必要になります(最高裁昭和62年9月2日民集第41巻6号1423頁)。
したがって、不倫をした配偶者は相手配偶者の同意がない限り離婚することはかなり困難になります。
もっとも、有責配偶者の中には、不倫相手と再婚したいから早く離婚したい・長期の別居期間中に毎月高額な婚姻費用分担義務が生じているため早く離婚してこれを消滅させたいという方もいます
このように離婚を焦っている有責配偶者に対しては、財産分与を放棄させる又は財産分与の割合を2分の1未満にするという条件であれば離婚に応じても良いという提案をすることで、財産分与の2分の1ルールを覆す内容で離婚を成立させられる場合もあります。
慰謝料請求をする
不倫をした配偶者と離婚するにあたり、財産分与のほかに、不法行為に基づく慰謝料請求をすることができます(民法第709条、710条)。
離婚の主な原因が配偶者の不倫である場合には、100万〜300万円程度の離婚慰謝料が認められることが多いです。慰謝料額は事案によって異なり、婚姻期間の長短、子の有無、不倫期間の長短、不倫の回数・頻度等の事情を総合的に考慮して決まります。
財産分与の金額がある程度決まってきた際には、前述の「慰謝料的財産分与」により最終的な支払金額を調整することもあります。
なお、慰謝料的財産分与によって、不倫された側の配偶者の精神的苦痛に対する賠償が全てなされたと認められる場合には、重ねて慰謝料を請求することはできません。他方で、慰謝料的財産分与だけでは精神的苦痛に対する賠償額に満たないと認められる場合には、別途慰謝料を請求することができます。
例えば、慰謝料的財産分与として、財産分与の額に不倫の慰謝料100万円が上乗せされて支払われた場合でも、本来300万円の慰謝料を受け取れるケースであった場合には、残り200万円の慰謝料を別途請求することができます。
不倫した配偶者と財産分与をする流れ
①離婚時に財産分与をする場合の流れ
離婚を切り出した後は、不倫した配偶者と財産分与について話し合いを進めていきます。
財産分与を含めた離婚の条件について話がまとまったら離婚協議書の案を作成します。作成した離婚協議書は、公証役場に持参して強制執行認諾付き公正証書にしておきましょう。そうすることで、万が一、相手が財産分与を実行してくれない場合は訴訟を経ずとも、相手の財産を差し押さえることが可能となります。
話がまとまらない場合は、家庭裁判所に対して「夫婦関係調整調停(離婚)」の申立てを行います。調停委員という中立的な立場の人が当事者の間に立って話し合いを進めていきますので、協議よりかは話し合いがスムーズに進んでいくことが期待できます。なお、調停手続きでは、財産分与のほか、養育費、親権、不貞行為(不倫)の慰謝料などについても一緒に話し合うことができます。
また、当事者が財産分与を含めた離婚の調停案に合意し、調停が成立した場合は調停調書という書類が作成されます。調停調書は先の強制執行認諾付き公正証書と同様に強制力があります。
他方で、当事者が離婚の調停案の全部又は一部に合意しない場合などは調停不成立となります。調停不成立の場合は離婚訴訟を提起し、離婚の可否や財産分与の内容について裁判で決着をつけることになります。
②離婚後に財産分与をする場合の流れ
親権などと異なり、財産分与については離婚後に話し合いを進めることが可能です。
もっとも、離婚後は離婚前と異なり、相手と直接話し合いをする機会が限られます。また、離婚後はお互いが疎遠となり、離婚前と比べ、より円滑に話し合いを進めることができない可能性が高いといえます。
そのため、話し合いが難しい場合は家庭裁判所に対して「財産分与調停」を申立てます。
離婚前の調停と異なるのは、調停で財産分与についてのみ話し合いが進められていくという点で、その他は異なるところはほとんどありません。
調停が成立した場合は調停調書が作成され、調停不成立となった場合は自動的に審判へ移行します。
財産分与の注意点
別居後に形成した財産は原則として財産分与の対象にならない
前述の通り、財産分与とは、結婚後に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に分配する制度です。夫婦が同居中は経済的協力関係がありますが、別居することでその協力関係が途絶えると考えられています。
したがって、別居後に一方が形成した財産は原則として財産分与の対象とはなりません。
例えば、夫の不倫が原因で夫婦が別居に至った場合、別居後に夫が形成した財産は原則として財産分与の対象とはなりません。
もっとも、単身赴任や出稼ぎといった仕事の事情で別居した場合には、夫婦の経済的協力関係が失われたことにはなりませんので、別居後に形成された財産も財産分与の対象となります。
財産分与の内容を書面に残す
財産分与について合意が成立した場合には、これを離婚協議書などの書面に残すことが重要です。「本件離婚に伴う財産分与として◯円の支払義務があることを認め、これを◯年◯月◯日限り、◯の指定する口座に振り込む方法により支払う」というような内容をきちんと書面に残しておかないと、後から追加で財産分与の請求をされたり、後述する除斥期間を理由に財産分与の請求が認められなくなったりするおそれがあります。
財産分与の請求権は離婚後2年経過で消滅する
財産分与請求権には除斥期間(じょせききかん)、すなわち請求をしないと権利が消滅する期間が定められており、離婚成立から2年を経過すると請求ができなくなりますので、注意が必要です(民法第768条)。
この除斥期間は、時効とは異なり、中断させることができません。そのため、離婚後に財産分与を行う場合には、離婚してから出来るだけ早急に行動に移す必要があります。
なお、不倫(不貞行為)の慰謝料を請求する権利については、被害者(不倫をされた配偶者)が不貞行為があったことと不貞行為をした加害者を知った時から3年(または不貞行為があった時から20年)で時効消滅します。
もっとも、配偶者の不倫が原因で離婚に至った場合には、離婚に至ったことで被った精神的苦痛に対する慰謝料の請求ができます。この場合は、離婚時から3年で慰謝料請求権が時効消滅します。
財産分与には時効がある?離婚前、離婚後にやるべきことなど解説
まとめ
財産分与は、請求額が多額になったり、特有財産の立証・財産の価格(特に不動産や株式)・財産の調査・住宅ローンの問題など専門的な知識や手続が必要になったり、2分の1ルールという大原則を覆す交渉力が必要になったりと、非常に難しい対応を迫られることが多いです。
そのため、離婚に際し財産分与を請求する又は請求される可能性がある場合には、弁護士に無料相談してみることをお勧めします。
当事務所では、財産分与に関する問題の解決実績が豊富な弁護士が在籍しております。親身誠実に弁護士が依頼者に有利な財産分与となるよう全力を尽くしますので、財産分与が争点となる可能性がある場合には、当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。
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