
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
1. 事案の概要(相談前の状況)
状況:勤務先の同僚から騙され、合計で1700万円近く支払ってしまった
Aさんはとある病院で勤務をしておりました。
勤務先の同僚にはBさんがおり、二人は仕事上のみならず、プライベートでも遊びに行く仲でした。
ある時、Aさんの勤務先の病院にCさんという男性が入院します。AさんはCさんに対して好意を抱くようになり、Bさんにそのことを相談すると、Cさんが退院した後、皆で遊びに行くのはどうかと提案してきました。
その後、Cさんが退院し、BさんがCさんやCさんの友人であるDさんと食事に行く場を設定してくれました。Aさんらはグループで遊ぶ関係になりました。
しかしながら、暫くしてCさんやDさんと連絡が取れなくなってしまいます。Bさんに事情を確認すると、AさんがCさんのみならず、Dさんとも仲良くしていたことから、Aさんに対して好意を持っていたCさんがうつ病になってしまったと説明を受けました。
Bさんの話によれば、思いのほかCさんの病状は重たいらしく、入院を繰り返し、生活に困窮をしているとのことでした。
Bさんは、Cさんが今のような状態になったのはAさんに責任があると説明し、Cさんにかかる生活費や医療費などを負担すべきであると迫ってきました。
その後、Bさんによる金銭の請求が始まります。Bさんは、Cさんに対して医療費や生活費を渡さなければならないと説明し、多数回にわたってお金を受け取っていました。
また、Cさんの生活に必要な物品を購入すると説明し、Aさん名義のクレジットカードを2枚持って行きました。Aさんには毎月、カードの利用明細が届きましたが、実際にCさんが物を受け取っているのかどうかは確認ができませんでした。
さらに、Bさんは、Cさんの親族や知人にも、Cさんの入院によって損害が発生していると趣旨不明の説明をし、多額の金銭をAさんから受け取っていました。
結局、AさんがBさんに渡したお金は、7年間で1700万円を超えるまでに膨らんでいました。
ある時、Bさんから、Cさんに弁護士が必要になったこと、その弁護士費用が700万円かかると言われ、お金を持ち合わせていなかったAさんは知人に初めて相談をします。
知人からは、事実を何も確認せず大金を払っているのはおかしい、Aさんに支払義務があるとも思えないと指摘され、すぐに弁護士に相談するよう言われたため、弊所に相談に来られました。
2. 弁護士の対応と解決への流れ
Aさんから時系列で、現在までの事実経過を伺いました。7年間にわたる話であったため、事実関係を把握し、裏付けとなる証拠を確認するのにかなり時間を要しました。
Aさんからの話を踏まえ、証拠を一つずつ確認していくと、Bさんにお金を渡したという事実のうち、約1400万円分は裏付けがあることが分かりました。また、クレジットカードの使用については全て履歴が残っており、また、購入した物品についてもBさんに届けられていることが確認できました。
その他、膨大なLINEやメールのやり取りが残っておりました。細かく確認をしていくと、CさんがAさんのせいでうつ病になったというやり取りに続いて、様々な名目でBさんにお金を支払わせていることも窺えました。
なお、LINEやメールには、Bさん自身もCさんのためにお金を出しているという話や、Aさんを守っているという話があり、単にAさんからお金を受けるのではなく、二人で難局を乗り越えるというストーリーを作り出していることも分かりました。
Aさんは、最初こそ本当に自分がお金を払わなければならないのかと疑問に思うこともあったが、連日Bさんから焦らされるようなメッセージと安心させるようなメッセージが交互に届いたことで、状況を正確に判断することが難しい洗脳状態にあったかもしれないと話していました。
AさんとBさんのメッセージを見ると、Aさんが話してくれたように、洗脳状態にあったとしても不思議ではありませんでした。
Aさんの意向を確認すると、今、落ち着いて振り返ってみると、Bさんの行為を許し難いと考えている、できれば刑事責任を負わせたい、無理ならば渡してしまったお金を取り戻したいとのことでした。
資料を整理し、理屈を組み上げていく必要があったことから、弊所で依頼を受け、対応を引き取ることになりました。
警察への被害相談
Aさんには最寄りの警察署に被害相談に行っていただきました。しかしながら、警察は証拠を十分に精査することなく、Bさんの行為が詐欺に該当するとは言い切れないので、被害届をすぐに受理することはできないと回答してきたようです。
Aさんには継続して被害相談を行い、警察から要求された資料があれば提出するとともに、必要があれば弊所から担当者に説明をすると伝えました。
その後、警察と何度もやり取りを続けましたが、事件にすることは難しいとの回答は変わらず、民事事件として進める方針に切り替えました。警察が詐欺被害を受理しない理由については「詐欺で警察が動かない4つの理由|民事不介入と動いてもらう方法」で詳しく解説しています。
民事訴訟による解決
弊所からBさんに対して、今まで渡したお金の返還を請求する書面を送ると、早速Bさんから回答がありました。回答は、Aさんから受け取ったお金は全てCさんに渡している、自分も弁護士を立てるとの内容でした。
そのため、Bさんの代理人弁護士から連絡が来るのを待っていたのですが、一向に連絡が来ることはありませんでした。Bさんに連絡をするも、電話は繋がらなくなっていたので、これ以上の話し合いは無駄であると考え早々に訴訟を提起することにしました。
訴訟ではBさんに代理人が就き、交渉での説明と同様、Aさんから受け取ったお金は全てCさんに渡しているという主張のほか、Aさんのクレジットカードで購入した物品もCさんに渡していること、自分はCさんから言われたことをAさんに伝えたまでと主張しておりましたが、何ら裏付けとなる証拠は出してきませんでした。
他方、Aさんからはお金の流れや物の流れを裏付ける証拠を提出し、Bさんとの膨大なLINEやメールのやり取りを抜粋して、BさんがAさんからお金を受け取った経緯を裏付けたことから、裁判所の心証はAさんの請求を認める方向に傾きます。
ただ、Bさんには十分な資力が無いことも分かってきたため、裁判所の仲立ちのもと、Bさんと支払スケジュールを明確にした和解をすることにしました。
和解が成立し、時間はかかりましたがBさんから和解金全額の支払いを受け、本件は終件となりました。
このように、警察が動かないと言われたケースでも、民事訴訟を通じて騙し取られたお金を取り戻せる場合があります。手口は異なりますが、同じく被害金の回収に至った事例については「国際ロマンス詐欺で騙し取られた400万円を全額回収した事例」もあわせてご確認ください。
3. 解決結果と弁護士のコメント
解決方法:民事訴訟(和解)
結果:和解金全額の支払いを受けて解決
本件は勤務先の同僚から騙されてお金を詐取されるという珍しい案件でした。Aさんを信用させるために何らかのエビデンスが出てきたり、第三者が出てきたりすることもなく、欺罔がBさんの説明のみによってなされたという点でも珍しく、印象に残っております。
Aさんも話をしていた通り、Aさんは一種の洗脳状態にあったものと思われます。
弊所では詐欺や脅迫・恐喝の被害を受けた方のご相談やご依頼を多数お受けしてまいりましたが、Aさんと同様に洗脳状態に陥って被害に遭ったというケースは少なくありません。
詐欺でも脅迫・恐喝でも、相手方は当方を孤立・混乱させようと画策します。よくあるのは、当方の行為が違法であると指摘し、警察や弁護士の存在を匂わせ、責任を負いたくなければお金を払わなければならないと思い込ませる手口です。
上記のような誘導に加え、自分だけが味方であると思い込ませ、他に相談させないようにさせることもあります。
さらに、LINEやメール、電話で頻繁に連絡し、行動を監視するとともに、不安にさせる言葉で圧力をかけては、安心をさせる言葉で緩和させるという揺さぶりをかけてきます。心身を削り、判断能力を奪う手口です。
上記のような状況に巻き込まれる前に、どなたかに相談をするようにしてください。できれば警察や弁護士などの専門家にご相談いただくのがベストですが、ご家族や友人でも構いません。自分が置かれている状況を客観的に観察してもらい、把握することが重要です。
早ければ早いほど、被害を抑えることができますし、被害に遭ってしまった場合でも、被害回復が図りやすいと言えます。
大事なお金を払ってしまう前に、少しでも疑問に感じることがあれば、弊所までご相談ください。
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この記事の監修者
詐欺被害の返金交渉に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、詐欺被害の撲滅に向けた研究・啓発活動にも取り組んでいる。投資詐欺、情報商材詐欺、占い詐欺など多様な手口に精通し、被害者の大切なお金を取り戻すために迅速に行動する。警察が動かないケースでも、弁護士による返金交渉や刑事告訴で解決に導いている。

