電子消費者契約法とは?ワンクリック詐欺にも適用される法律です

ワンクリック詐欺の被害などにあっても、わざわざ請求されたお金を支払う必要はありません。

なぜならワンクリック詐欺は「電子消費者契約法」によって、取り消しすることが出来るからです。

しかし、残念ながら「電子消費者契約法」という消費者を守る法律を知っている人は少なく、そのせいで多くの人がワンクリック詐欺などのインターネット詐欺にだまされてしまっています。

今回は、インターネットに蔓延る詐欺から、自分の身を守るために、知っておきたい「電子消費者契約法」についてご紹介したいと思います。

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「電子消費者契約法」とは、どんな法律なのか?

電子消費者契約法とは正確には、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」という名称です。

なんだか長ったらしい名前で嫌気がさした方もいるとは思いますが、難しく考える必要はありません。簡単に言えば、”電子商取引を消費者が行うときに関する法律”という意味です。

電子商取引というとまた難しく感じてしまいますが、要は、インターネットを介して(正確には、その他の専用回線も含みますがここでは飛ばします)商品の売買やサービスの取引をすることです。別名、eコマースともいいます。

具体的には、楽天やAmazonでネットショッピングをしたり、じゃらんで旅行の予約をしたり、Huluで動画配信サービスを受けたりすることは全て電子商取引(eコマース)となります。

では、われわれ消費者が電子商取引をするときに関する法律である電子消費者契約法とは、どんな目的で作られ、どんな役割を果たすのでしょうか。

それをこれからわかりやすく解説しますが、まずはその前に一つ、知っておかなければならない法律があります。民法95条の「錯誤」に関する法律です。

「錯誤」とはなに?

2020年4月に施行された改正民法95条では錯誤について次のように規定しています。

第95条
1.意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2.前項第二号の規定による意思表示の取り消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3.錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取り消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
4.第1項の規定による意思表示の取り消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

民法第95条 - Wikibooks

簡単に言えば、間違って法律行為(売買契約など)をしてしまったらそれを取り消しできるけど、うっかりミスで間違った人は取り消しを主張できませんよという意味です

例えば、ある人が寿司の出前をたのもうと思って、電話で、「寿司を1人前」と言うべきところを間違えて、「寿司を10人前」と注文してしまったような場合です。

この場合、間違って(錯誤)注文したので、出前を頼んだ人からしたら錯誤による取消しをしたいところですが、そんなことをされたら寿司屋は商売あがったりです。

ですので、民法95条3項では、表意者(意思表示をした人)に重大な過失(うっかりミス)があったときは、表意者の方から「錯誤で契約はなかったことに!」と主張できませんよと規定しているのです。

電子商取引に95条3項の「重過失」を適用することの弊害

さて、一般的な取引においては、消費者側の重大な過失(うっかりミス)がある場合は錯誤による取り消しできないとお伝えしましたが、それをそのまま、電子商取引に適用すると問題が発生してしまいます。

パソコンやスマホはそれこそ指一本であちこちのサイトに移動して沢山の情報を得たり、動画サイトで映画やアニメなどをみたりと非常に便利です。しかし便利な反面、クリックやタップは指一本で簡単にできてしまうため、ネットサーフィンをしていると自分が意図していなかったリンクやボタンを押してしまうことがよくありますよね。

そして、その間違って押してしまったボタンが、物の売買契約について申込みをするためのボタンだったとしたらどうでしょうか?

あるいは、物の売買契約の申込みボタンだとは知っていたけど、指が滑って間違えて別の商品の申込みボタンの方を押してしまったらどうでしょうか?(例えば、赤色の帽子を買うためのボタンを押すつもりが、隣にあった青色の帽子を買うためのボタンを押した場合など)

間違ってボタンを押した瞬間に契約成立!うっかりミスで申込みしたのだから錯誤による取り消しができない!

これでは怖くてネットなんかできませんよね

電子消費者契約法ではうっかりミスでも取り消しできる

こういった弊害からネット利用者を守り、安心快適にインターネットを利用できるために施行されたのが、電子消費者契約法です。さっそく条文を見てみましょう。消費者側を守るための規定には赤色のライン、事業者側を守る側には青いラインを引きましたので、まずここでは赤いラインにだけ目を通してみましょう。

第三条 民法第九十五条第三項の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その意思表示が同条第一項第一号に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであり、かつ、次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない
一 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき
二 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき

e-Gov法令検索

赤色のラインを引いた箇所をわかりやすく噛み砕くと、

民法第95条第3項の規定(表意者に重大な過失があった場合には錯誤による取り消しができないというきまり)は、次のようなケースでは適用されない。

  • 「商品の購入やサービスの申し込みをする意思がないのに、誤って購入・サービス申し込みボタンを押してしまった」
  • 「購入する予定であった商品や申し込む予定であったサービスとは別の購入・サービス申し込みボタンを間違って押してしまった」

つまり、電子商取引においては、操作ミスによる契約であっても民法95条3項は適用されずに、取り消しを主張することが出来る、というのが電子消費者契約法の主な内容です

これにより、ネットユーザーは安心してクリックやタップ操作を行うことができ、意図しない契約などで金銭的損害を負わないことになります。

事業者も守らなくてはならない

このように、電子消費者契約法は消費者にとても優しい法律です。しかしこれでは、先ほどのお寿司屋さんのように事業者は計り知れないリスクを抱えながらネットで商売をしなくてはならないことになってしまいますよね。

注文や申込みを受けて、商品の仕入れや発送手続き、サービス開始の準備を開始しているさなか、「うっかりミスで申し込んだのでキャンセルで」と言われたら実害がでることは明白です。それこそ怖くてインターネットで商売なんかできませんよね

そこで、電子消費者契約法では事業者を守るための条文もしっかりと規定されています。それが、条文に青いラインを引いた箇所となります。

「パソコンの画面上に確認画面を表示させたのに、消費者がそれを読み飛ばしたりスキップさせてろくに確認もせず商品・サービスを購入してしまった」

これらの場合は、消費者側の操作ミスによって商品やサービスを購入した場合であっても契約を取り消しすることができません。

例えば、アダルトサイトにおいて「動画を再生するには月額9800円の有料サービスにお申し込みして頂く必要があります」と書かれた利用規約の画面が表示され、「利用規約に同意して申し込みをする」「申し込みをしない」という選択ボタンがある中で「申し込みをする」をクリックした場合には動画閲覧契約を取り消しすることができません。

ただし、明らかな悪質アダルト詐欺サイトの場合は必ずしも取り消しできないわけではありません。例えば、契約に関する項目が通常であれば見落とすほどの小さな表示であった場合は消費者側がその契約内容を確認することが容易ではないため契約を取り消しできます

それでも詐欺サイトから、請求が来たらどうすればいい?

ワンクリック詐欺サイトから高額請求をされたとしても電子消費者契約法により申し込みは取り消しできます。そのため無視しても何の問題もありません。

ただし、詐欺業者から執拗な取り立て電話を受けているケースや、既にお金を振り込んでしまったようなケースでは警察または法律事務所に相談しましょう。

1人で解決しようとすると益々相手のペースに巻き込まれてしまい、最終的に多額のお金をだまし取られることになるので、1人で悩まず警察と法律事務所に頼りましょう。

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