遺留分減殺請求が変更に!相続法改正のポイントについて解説

相続に関する法律が改正され、相続のルールが変更されることになりました。この改正によって、遺留分に関するこれまでの扱いも変更となります。

今回の改正では遺留分を計算する場合の算定方法や遺留分を侵害された場合における請求方法などが変更されています

今回は改正された遺留分に関する制度について、ご紹介させていただきます。

  • 「遺留分とは何か?」
  • 「遺留分を計算するルールがどう変わるのか?」
  • 「遺留分を侵害された場合の扱いはどうなるのか?」

……などの疑問にお答えしますので、最後までお読みいただければ幸いです。

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遺留分制度に関する2つの改正点

今回の改正では、遺留分制度に関する2つの点に関して重要な変更が行われています。

ひとつは、遺留分減殺請求による目的財産の返還方法についての変更です。これまでは遺留分が侵害された場合、遺留分を侵害している範囲において、相手方は目的財産の現物を返還することが原則とされてきました。改正法では、この返還方法が変更され、対象物の経済的価値を金銭で返還することが原則になります。

そしてもうひとつは、遺留分侵害行為の判断基準となる被相続人の生前贈与について時期的制限を設けた点です。

これまでは、被相続人の行った生前贈与が遺留分侵害行為に該当するかどうかの判断基準に関して、法律上不明確でした。このため、この不明確さが原因となり数々のトラブルが発生することとなっていたのです。この問題を解決するため、改正法では被相続人が相続人に対して行った生前贈与に関しては、相続開始前10年以内のものに限定して遺留分侵害行為に該当することとしたのです。

遺留分減殺請求の改善

今回の相続法の改正では、現行の遺留分制度に関して改善策が講じられています。

具体的には、遺留分が侵害された場合の減殺請求によって返還される財産に関して、これまで複雑化しがちだった問題の解決が図られているのです。これまで遺留分減殺請求権の行使によって返還される財産は、上記のとおり「現物」が原則とされていました。今回の改正では、これを現物ではなく、金銭による返還を原則とすることにしたのです。

「遺留分」とは

民法上、第一順位の相続人である被相続人の子供などや第二順位の直系尊属などには、法律上保護される最低限度の相続分が認められています。この法律によって保護されている「最低限度」の相続分のことを、「遺留分」といいます。

そもそも相続財産となるものは、元被相続人の所有物だった物です。そのため、その財産の処分については、基本的に被相続人の意思が最大限に尊重されることになっています。そのため被相続人は遺言によって、相続財産を自由に処分することが認められているのです。このため相続財産すべてを相続人以外の第三者などに譲渡することも法律上可能です。

しかし、たとえ元被相続人の財産だったものとはいえ、相続人にまったく財産が残されないとしたら相続人にとってあまりに酷というものです。そのため、たとえ被相続人の意思に基づく自分の財産の処分行為であったとしても、法律上、最低限度の財産が相続人に残されることになっているのです。

各相続人の遺留分の割合について

民法上、相続権が認められる親族に関しては、その順位が定められています。このうち、第一順位と第二順位の相続人には、つぎのような割合で遺留分が認められています(民法1042条)。

①第一順位の相続人

被相続人の子供:相続財産の4分の1

被相続人の配偶者:相続財産の4分の1

もし、被相続人に配偶者がいない場合には、子供は相続財産の2分の1が遺留分として認められます。

②第二順位の相続人:

被相続人の直系尊属:相続財産の6分の1

被相続人の配偶者:相続財産の6分の2

もし、被相続人に配偶者がいない場合には、直系尊属には相続財産の3分の1が遺留分として認められます。

遺留分が侵害された場合

上記のように、一定の相続人には法律によって遺留分が認められています。

そのため被相続人がこれを侵害する贈与や遺贈などをした場合、遺留分を侵害された相続人は、その相手方に対して遺留分減殺請求権が認められるというのが、これまでの相続法における扱いでした。

遺留分減殺請求権とは

遺留分を侵害されている相続人は、侵害している相手方に対し、その侵害している範囲において財産の返還を求める権利が認められています。この権利のことを「遺留分減殺請求権」といいます。

遺留分を侵害されている相続人は、遺留分減殺請求権を行使することにより、遺留分が侵害されている範囲内において相続財産の取り戻しができるのです。

従来は現物返還が原則だった

従来の相続法の規定では、遺留分減殺請求権の行使があった場合、返還すべきとされたのは相続財産の現物とされていました。

しかし、現物返還がなされた場合には、その対象物の権利関係が共有になるなど目的物の権利関係が複雑化することが多かったのです。権利関係が複雑となる場合、当事者間でトラブルが起こりやすくなるなど問題となることがありました。このため、この点に関して改善を求める声が以前からあったのです。

ちなみに、改正前の相続法においても現物返還の代わりに対象物相当額を金銭で返還することも可能でしたが、この方法はあくまでも例外的な扱いとされていました。

金銭での返還が原則となった!

今回の法改正によって、民法10461項では「遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる」と定められました。つまり遺留分を侵害する贈与や遺贈があった場合、取戻しの対象となるのは相続財産の現物ではなく、それと同等の金銭とされることとなったのです。これを少し専門的に言うと、遺留分を侵害された相続人に認められる法律上の請求権が、「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」に変わったということができます。

この改正により、以前のような法律関係の複雑化を避けることが容易となったのです。

遺留分侵害額請求の具体例

それではここで、遺留分が侵害された場合の侵害額請求がどのようになるのかについて、具体的な事例で考えてみることにしましょう。

相続財産:不動産(2000万円)

相続人:被相続人の配偶者乙

第三者:被相続人の愛人A

上記の事例において、被相続人が遺言をもって相続財産全部を愛人であるAさんに贈与(遺贈)してしまったとしましょう。

この場合、被相続人には配偶者である乙さん以外に相続人がいないため、乙さんには法律上相続財産の2分の1が遺留分として認められることになります。しかし被相続人は財産の全額をAさんに贈与などしているため、このままでは乙さんはいっさい財産を相続できないことになります。

このような場合、法改正前においては、つぎのような扱いとなりました。

遺留分減殺請求権を行使した場合

改正前の法律では上記の事例において、乙さんは遺留分を侵害しているAさんに対して遺留分減殺請求権を行使することができました。この場合、遺留分を侵害しているAさんは、侵害している限度において相続財産の現物を返還するのが原則でした。

この事例では、乙さんには遺留分として相続財産である不動産の2分の1の権利が認められます。そのためAさんは、贈与などを受けた不動産の2分の1の権利を返還する必要がありました。そのため……

乙さん:不動産の2分の1(共有持分権)(1000万円)

Aさん:不動産の2分の1(共有持分権)(1000万円)

現物の返還が原則であるため、上記のように当該不動産の権利関係は乙さん・Aさんともに2分の1ずつ不動産の権利を持つことになります。つまり、2人で同じ不動産を共有することになってしまうのです。

このような場合、その不動産の使用・収益や売却などにおいて種々の問題が発生するのは当然と言えるでしょう。このような点が、以前から問題として指摘されていたのです。

遺留分侵害額請求権を行使した場合

今回の事例において旧法の扱いでは、当事者が同一物を共有するという不都合な権利関係が発生することとなりました。この点を解決するため、新法では遺留分侵害額請求権を認め、現物の返還ではなく、遺留分を侵害している財産の価値に相当する金銭を支払えばよいということになりました。

このため上記の同一事例において、乙さんがAさんに対して遺留分侵害額請求権を行使した場合には……

乙さん:1000万円(Aさんから支払いを受けた金銭)

Aさん:不動産(2000万円)

このように、乙さんは遺留分を侵害されている不動産の価値2000万円の2分の1である1000万円分について、Aさんに対して金銭の支払いを請求することができることになったのです。その代わり、Aさんは贈与などを受けた不動産に関して単独で所有することができることになります。

このようにすれば、旧法の扱いのように遺留分を侵害して贈与などがなされた相続財産が共有となるような不都合を避けることができるのです。

遺留分算定方法の変更

上記のように遺留分を侵害されている相続人には、今回の法改正によって遺留分侵害額請求権が認められることになりました。

しかし、これまで遺留分を侵害することになる贈与に関して、どこまでの行為が遺留分の侵害行為となるのか法律上不明確であるという指摘がありました。今回の改正では、この点に関しても手当てがなされています。

相続人以外の人への贈与は1年間

遺留分を侵害する贈与となるかどうかの時間的基準に関して、民法はこれまでも「相続開始前1年間」に限定していました。被相続人が相続人以外の第三者に贈与した場合には、それが遺留分を侵害する贈与になるのかどうかについて、このように明確に規定されているためトラブルが発生する余地はありませんでした。

しかし、被相続人が行った贈与の対象者が相続人である場合には話が異なるのです。

相続人への贈与を相続開始前10年以内のものに限定

今回の法改正では、遺留分を侵害する贈与となるかどうかの時間的基準に関して、被相続人が相続人に対して行った贈与について相続開始前10年以内のものに限定することとなりました(民法10443項)。

これまでは遺留分を侵害する贈与となるかどうかの時間的基準に関して、受贈者が相続人である場合について、法律上明確な規定がありませんでした。このため、被相続人が相続人に対して行った生前贈与に関して、つぎのようなトラブルが発生することがよくあったのです。

特別受益との兼ね合いが問題となった

被相続人の生前贈与が相続人に対して行われた場合、その相続においては特別受益が問題となります。相続人の中に、被相続人から財産の贈与などを受けた者がいる場合には、遺産分割する際にその贈与などを受けた財産分を考慮することになるのです。

しかし、この被相続人の贈与行為に関しては期間的な制限がなかったため、その贈与が遺留分を侵害することになるのかどうかの判断基準が不明確だったのです。このことが原因となり、実際の相続において当事者間でトラブルとなる事例がたくさんありました。

つまり、相続開始前に被相続人が行った財産の贈与行為は、たとえそれが相続開始の何十年前であったとしても遺留分を害する行為とみなすことが可能だったのです。しかし、これではきりがありません。

この問題を解決するため改正法では、被相続人が相続人に対して行った贈与に関して、遺留分を侵害する贈与となるかどうかの時間的基準を上記のように新しく定めることにしたのです。

このように遺留分侵害行為の判断基準を明確化したことで、以前のような相続トラブルなどの減少が期待されています。

遺留分制度改正の施行時期とは

今回ご紹介した遺留分制度に関する改正は、201971日からとなっています。

まとめ

今回は、法改正によって変更となった遺留分制度に関してご紹介させていただきました。

一定の相続人には、法律上かならず認められる相続に関する権利があります。これが、遺留分です。従来の法律では、遺留分を侵害する贈与や遺贈があった場合、遺留分を侵害されている相続人は相手方に対して遺留分減殺請求権の行使をすることができました。しかし今回の法改正によって、これが「遺留分侵害額請求権」に変更されることになります。このため、当事者間における権利関係を単純化できるようになるのです。

また、どのような贈与が遺留分を侵害することになるのかについて、従来では不明確であった時間的な基準が、今回明確に規定されることになりました。

このように相続法が改正されたことにより、相続に関するルールがかなり変更されることになっています。このため、これから相続問題を考える場合には、改正後の法律に関する知識を持っている必要があります。相続に関する知識を持っていれば、いざ相続が発生した場合でも有利に手続きを進めることができるからです。

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