性的姿態等撮影罪(撮影罪)とは?盗撮罪との違いと刑罰を解説

撮影罪とは、正当な理由がないのに相手の同意なく性的姿態等を撮影・盗撮する犯罪です。令和5年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法により新設されました。罰則は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。

撮影罪ができるまで、盗撮を処罰する根拠は都道府県ごとの迷惑防止条例に限られていました。撮影罪の新設により、全国一律の処罰が可能になっています。さらに、撮影した画像や動画を他人に渡したり、ネット上に公開したりする行為のほか、その目的で手元に保管する行為なども処罰の対象とされています。

「自分がしてしまった行為は撮影罪にあたるのだろうか」「保存しているだけでも罪に問われるのか」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。撮影罪は処罰の範囲が広く、どこからが犯罪になるのか分かりにくい罪でもあります。

この記事では、盗撮事件の解決実績が豊富な弁護士が、

  • 撮影罪とはどのような犯罪か
  • 撮影罪と迷惑防止条例違反の違い
  • 撮影罪にあたる行為・あたらない行為
  • 撮影以外に罪に問われる行為

などについてわかりやすく解説していきます。

なお、撮影罪や盗撮についてお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。

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撮影罪とは

定義

撮影罪とは、正当な理由がないのに相手の同意なく性的姿態等を撮影・盗撮する犯罪です。

「性的姿態等」とは、以下のようなものをさします。

  • 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)
  • 人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるもの)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
  • わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態

撮影罪が定められている法律と正式名称

今回新設された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(「性的姿態撮影等処罰法」と略称されます)」という新しい法律に、撮影罪が規定されています。

「性的姿態撮影等処罰法」が新設されたことによって、性的な姿態を撮影する行為やこれによって生成された記録を提供する行為等を処罰し、さらに性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収が可能となりました。

撮影罪の正式名称は「性的姿態等撮影罪」で、読み方は「せいてきしたいとうさつえいざい」です(以下、「撮影罪」)。

いつから施行された?

令和5年(2023年)6月16日に「性的姿態撮影等処罰法」が成立し、同月23日に公布され、「令和5年(2023年)7月13日」から施行されています。

これにより、令和5年7月13日以降の盗撮事件については、原則として各都道府県の迷惑防止条例ではなく、撮影罪を定める性的姿態撮影等処罰法が適用されることになります。

罰則

撮影罪が成立した場合には、「3年以下の拘禁刑」または「300万円以下の罰金」が科されることになります。

※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。

このような撮影罪が新設されたことによって、盗撮行為が厳罰化されることになりました。

これまでの刑法には、盗撮などの撮影行為そのものを規定する条文は存在しておらず、盗撮などは各都道府県が定める迷惑防止条例で取り締まられてきました。

迷惑防止条例では「住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような」場所や乗物において、「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」が禁止されています。

例えば東京都の条例では、実際に撮影した場合は「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」(同条例8条2項1号)、撮影機器を差し向け・設置したにとどまる場合は「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」(同条例8条1項2号)とされています。さらに、常習として撮影を行った場合は「2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」に加重されます(同条例8条7項)。罰則の内容は都道府県ごとに異なります。

撮影罪は従来の盗撮罪(迷惑防止条例違反)と何が違う?

「盗撮罪」は法律上の正式な罪名ではなく、撮影罪と迷惑防止条例違反のどちらも指して使われる言葉です。ここでは、撮影罪ができる前から盗撮を取り締まってきた迷惑防止条例違反を「従来の盗撮罪」と呼び、撮影罪と比較します。両者には、適用範囲や処罰される行為、刑罰などの点でさまざまな違いがあります。

2つの犯罪の違いを分かりやすくまとめると、以下の一覧表のようになります。

撮影罪 迷惑防止条例違反
法令の適用範囲 法律は全国一律に適用される 条例は行為があった場所を管轄する都道府県のものが適用される
処罰対象となる行為
  • 性的姿態等を撮影する行為
  • 性的影像記録を提供する行為
  • 性的影像記録を保管する行為
  • 性的姿態等の影像を送信する行為
  • 性的姿態等の影像を記録する行為
下着や身体の盗撮、撮影目的での機器の差し向け・設置のほか、「卑わいな言動」に該当する行為(規定内容は都道府県により異なる)
罰則 撮影罪は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
(不特定多数への提供・公然陳列・送信は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金)
6月~1年以下の拘禁刑または50万円~100万円以下の罰金
(常習の場合は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。都道府県・行為態様により異なる)
公訴時効
  • 不特定多数への提供・送信:5年
  • 上記以外:3年
3年

撮影罪は全国一律に適用され、罰則も迷惑防止条例より大幅に重くなっています。なお、盗撮行為には迷惑防止条例のほか軽犯罪法が適用されることもあります。それぞれの違いについては「盗撮は軽犯罪法違反?迷惑防止条例違反との違いを解説」で整理しています。

撮影罪の構成要件

正当な理由なく、人の性的姿態等をひそかに撮影する行為

正当な理由がないのに、ひそかに、「性的姿態等」のうち「対象性的姿態等」を撮影した場合には撮影罪が成立します。

「対象性的姿態等」とは、性的姿態等のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたものを指します。

以下のような撮影行為は、新法施行後は、撮影罪により処罰される可能性が高いです。

  • 電車内やエスカレーターで、スマートフォンを使ってスカートの中の下着を盗撮する行為
  • 駅やショッピングモールのトイレに小型カメラを設置し、臀部や性器などを盗撮する行為
  • 更衣室に隠しカメラを設置し、脱衣姿や下着姿を盗撮する行為
  • ホテルなどにカメラを設置し、他人の性行為などを撮影する行為 など

また、ひそかに撮影する行為については、「正当な理由」がある場合には処罰されません(なお、「正当な理由」が要件とされているのは、この類型と後述の16歳未満の者に対する撮影の類型です)。

この「正当な理由」に該当するものとして法務省は、救急搬送されて意識のない患者について、医師が医療上の必要からその上半身の状態を撮影するケースなどを挙げています。また16歳未満の者に対する撮影であっても、親が我が子の成長を記録するために撮影する場合には、正当な理由があるといえるでしょう。

このように、撮影罪で「正当な理由」が認められる場面は、かなり限られると考えられます。

根拠条文は以下となります。

(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(略)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(略)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(略)がされている間における人の姿態

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 | e-Gov法令検索

被害者が同意できない状態で性的姿態等を撮影する行為

ひそかに撮影した場合でなくても、撮影罪が成立することがあります。以下のような行為や事由により、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影」した場合にも撮影罪が成立することになります。

  • 暴行若しくは脅迫を用いること
  • 心身の障害を生じさせること
  • アルコール若しくは薬物を摂取させること
  • 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること
  • 同意しない意思を形成、表明または全うするいとまの不存在
    →被害者の気をそらしたり、別のことに集中していたりする際に不意打ちを利用した場合を想定しています。
  • 予想と異なる事態への直面に起因する恐怖または驚愕
    →予想外の出来事にフリーズしてしまっている被害者を利用した場合などを想定しています。
  • 虐待に起因する心理的反応
    →被害者に対する虐待によって無力感や恐怖感を利用した場合を想定しています。
  • 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
    →祖父母・孫、上司・部下、教師・生徒などの立場ゆえの影響によって不利益が生じるという不安を利用した場合を想定しています。

以下、根拠条文となります。

二 (略)、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 | e-Gov法令検索

被害者を誤信させて性的姿態等を撮影する行為

行為の性質が性的なものでないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影した場合にも撮影罪が成立します。

根拠条文は以下となります。

三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 | e-Gov法令検索

正当な理由なく、16歳未満の者の性的姿態等を撮影する行為

正当な理由がないのに、16歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影した場合にも撮影罪が成立します。撮影につき相手の同意があった場合でも成立する点に注意が必要です。

また、13歳以上15歳以下の人の性的姿態等を撮影した場合には、相手と5歳以上年齢が離れている場合に処罰対象となります。この年齢差は、生年月日を基準に「撮影された人が生まれた日より5年以上前に生まれているか」で判断されます。例えば、14歳の彼女の性的姿態を18歳の彼氏が撮影した場合、生年月日の差が5年に届かないため、撮影罪の処罰対象とはなりません。この5歳差の要件は、同世代で交際する当事者同士が合意のうえで撮影した場合を対象から外す趣旨で設けられました。

一方、被写体が13歳未満であれば、加害者との年齢差を問わず処罰の対象となる点に注意してください。

また、撮影罪が成立しない場合でも、被写体が18歳未満であれば、児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造罪)に問われる可能性があります。撮影罪の対象外だからといって、撮影が適法になるわけではない点に注意してください。

根拠条文は以下となります。

四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 | e-Gov法令検索

撮影罪の対象とならない行為

以下のような行為は撮影罪の対象とはならない可能性があります。

  • 子どもの相撲大会で行われる取組を撮影すること
  • スポーツ大会でアスリートのユニフォームを撮影すること
  • 海水浴場やプールで水着を撮影すること

まず、子どもの相撲大会で取組を撮影する行為は、処罰の対象とならないと考えられます。なぜなら相撲はそもそも上半身裸で行うスポーツであり、撮影をしても「正当な理由」があると判断される可能性が高いからです。

また、スポーツ大会でアスリートのユニフォームを撮影する行為はどうでしょうか。

撮影罪が処罰の対象とするのは、性的な部位そのものや、身に着けている下着のうち性的な部位を覆っている部分の撮影です。

したがって、ユニフォームは対象から外れていることになります。ただし、ユニフォームの上から胸や太ももなどを撮影することは性的な盗撮との区別が困難です。そして仮に、撮影罪の要件に該当せず「性的姿態撮影等処罰法」が適用されない場合であっても、各都道府県の迷惑防止条例違反になる可能性はありますので注意が必要でしょう。

そして、水着姿を撮影する行為にも、原則として撮影罪は成立しません。

なぜなら撮影罪でいう「下着」は、通常は衣服で覆われていて性的な部位を覆うのに用いられるものに限られており、外から見られることを前提に着用する水着はこれにあたらないからです。水着で覆われている限り、性的な部位そのものが写るわけでもないため、そもそも「性的姿態等」の撮影とはいえません。

アスリートを盗撮した場合に問われる罪や、逮捕された場合の対処法については「アスリート盗撮は何罪?適用される法律と逮捕された場合の対処法」で詳しく解説しています。

撮影以外の罪に問われる行為

「性的姿態撮影等処罰法」は、撮影罪として撮影する行為を処罰するだけでなく、その結果撮影された画像を第三者に提供したり公然と陳列したりする行為や、その目的で保管する行為なども刑罰の対象としています。

提供罪

「性的影像記録」を特定・少数の者に提供する行為には、「性的影像記録提供罪」が成立します。

例えば、盗撮映像を親しい友人だけに渡したケースがそれに該当します。

「性的影像記録」とは、撮影罪や記録罪によって生成された電磁的記録その他の記録、およびその全部または一部を複写したものをいいます。具体的には、盗撮された画像・動画のデータやそのコピーがこれにあたります。

罰則は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。

従来、盗撮画像を第三者に渡す行為は、刑法の「わいせつ物頒布等罪」(2年以下の拘禁刑又は250万円以下の罰金等)にあたる場合など、限られた場面でしか処罰できませんでした。同罪の「頒布」は不特定又は多数の者への交付を指すため、親しい友人など特定・少数の者に渡す行為は処罰の対象外でした。

今回の提供罪の新設により、こうした特定・少数の者への提供も新たに処罰の対象となりました。また、不特定・多数の者への提供や公然陳列についても、わいせつ物頒布等罪より重い法定刑が定められています。

なお、性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、または公然と陳列した場合も提供罪が成立し、「5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金」またはこれらの併科が科されることになります。

保管罪

第三者に提供または公然陳列する目的で、性的影像記録を保管する行為には、「性的影像記録保管罪」が成立します。

例えば、撮影罪にあたる盗撮動画を、ネット販売する目的(有償目的)やSNSにアップする目的(無償目的)で保管する行為がそれに該当します。

罰則は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。

わいせつ物頒布等罪では、有償で頒布する目的での所持・保管しか処罰されません(刑法第175条2項)。保管罪の新設により、無償で提供する目的やSNSにアップする目的での保管も処罰されることとなり、処罰範囲が広がりました。

なお、提供や公然陳列目的での保管ではない場合(単純所持の場合)、例えば、ネットのアダルトサイトからダウンロードした性的影像記録を、自分一人で観賞して楽しむためにパソコンのハードディスクに保存しているだけでは同罪は成立しません。ただし、保存した画像・動画の被写体が18歳未満である場合には、自己の性的好奇心を満たす目的で保管していれば、児童ポルノ禁止法の単純所持罪にあたる可能性があります。

送信罪

不特定・多数の者に性的姿態等の影像を送信(ここでいう「送信」とはライブストリーミングのこと)した場合に問われるのが、「性的姿態等影像送信罪」です。

例えば、アダルトのライブ配信サイトで性行為の影像を生配信する行為がそれに該当します。撮影罪と同様に、配信されることを知らない相手の姿を送信した場合のほか、同意できない状態や誤信に乗じた場合、16歳未満の者を対象とした場合も処罰の対象となります。

罰則は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金またはこれらの併科です。

記録罪

情を知って、上記送信罪で送信された影像を、録画やダウンロード等の方法で記録した場合には「性的姿態等影像記録罪」が成立します。

「性的姿態等影像記録罪」に問われた場合には、「3年以下の拘禁刑」または「300万円以下の罰金」が科されることになります。

また、写っている人物が18歳未満であるときは、撮影罪や記録罪とは別に、児童ポルノ禁止法によって処罰される可能性もあります。

撮影罪の新設について

新設された理由は?

過去にはこのような事件がありました。

2012年、乗客の男性が客室乗務員の女性のスカートの中を盗撮したとして逮捕されました。

しかしその後の捜査で、盗撮をした時に飛行機が「どこの都道府県の上空にいたのか」を特定することができず、どの都道府県の条例を適用すべきか判断できませんでした。その結果、男性は処分保留で釈放され、最終的に嫌疑不十分で不起訴処分となっています。

このような問題を受け、航空業界の労働組合は法務大臣に要請書を提出するなどして、盗撮に全国一律で対処できる法律の制定を求めてきました。こうした経緯を経て新設されたのが撮影罪です。

今回、「性的姿態撮影等処罰法」が制定されたことで、迷惑防止条例とは異なり全国一律で盗撮等の行為を処罰できるようになりました。

また、「性的姿態撮影等処罰法」が制定されたことで、迷惑防止条例よりも盗撮などの行為の刑罰が厳罰化されることになりました。

新設された法律により画像等の没収・消去が可能に

さらに今回新設された法律によって、盗撮された画像等の没収・消去が可能になりました。

盗撮事件のなかには、証拠などの関係から起訴までに至らず嫌疑不十分などで不起訴処分となるケースも存在しています。

かつてはこのような場合、複数の盗撮データが存在しているにもかかわらず、被疑者が要請した場合には、基本的には返却しなければなりませんでした。

なぜなら、「没収」ができるのは、あくまで被疑者が有罪となった犯罪事実に関する物のみだったからです。そのため、不起訴になった事件については、明らかに盗撮された画像があるにもかかわらず、被疑者のもとへ返却せざるを得ませんでした。

そこで今回の新法では、被疑者側の言い分を聞いた上で、有罪になった事件以外の画像についても検察が廃棄・消去できることが明記されました。

これまでも検察は事件化されていない画像が入ったハードディスクを返却せずに済むように努めてきましたが、それはあくまでも任意での交渉にすぎませんでした。

今回、法律に基づいて廃棄・消去をすることが可能になった点は新法の大きな特徴です。盗撮事件で逮捕された場合の流れや対処法については「盗撮で逮捕される?逮捕後の流れと勾留を回避する方法を解説」にまとめています。

撮影罪で処罰を免れるうえで最も重要なのは、被害者との示談です。示談金の相場や示談の進め方については「盗撮の示談とは?相場は10万~50万円|弁護士が解説」をご参照ください。また、逮捕される前に自首を検討している方は「盗撮で自首するメリット・デメリット|逮捕回避を弁護士が解説」もあわせてご確認ください。

よくある質問

撮影罪の時効は?

撮影罪の公訴時効は3年です。

公訴時効とは、一定の期間が経過した事件については公訴提起しても免訴判決が言い渡されるという制度です。刑事訴訟法には、「時効が完成したとき」には判決で免訴の言渡しをしなければならないと規定しています(刑訴法第337条4号参照)。「免訴」とは刑罰権の存否について実体の内容に踏み込まず門前払いする裁判のことです。

公訴時効については、刑罰の重さに応じて刑事訴訟法に規定されており、「長期10年未満の拘禁刑に当たる罪については5年」「長期5年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪については3年」とされています(刑事訴訟法第250条2項)。

そして、前述の通り撮影罪の罰則は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」ですので、公訴時効は3年となります。迷惑防止条例違反の盗撮も含めた時効については「盗撮の時効は何年?多くは3年|民事の時効と逮捕リスクも解説」もあわせてご確認ください。

なお、性的姿態撮影等処罰法において成立する犯罪の公訴時効をまとめると次の通りです。

公訴時効が3年の罪 公訴時効が5年の罪
  • 撮影罪
  • 特定・少数の者への提供罪
  • 保管罪
  • 記録罪
  • 不特定多数の者への提供罪
  • 送信罪

撮影罪は親告罪?

撮影罪は「親告罪」ではありません。

「親告罪」とは、検察官が公訴を提起するのに告訴が必要となる犯罪のことをいいます。犯罪が親告罪にあたるかどうかは個別の法律で定められますが、性的姿態撮影等処罰法にはそうした告訴を必要とする規定が置かれていません。

したがって、撮影罪について捜査機関は被害者からの刑事告訴がなくとも、犯人を起訴することができます。示談が成立した結果、被害者が告訴を取り下げた事案においても、さまざまな要素を考慮して検察官が公訴を提起することもあります。

撮影罪の施行以降は迷惑防止条例が適用されない?

2023年7月13日以降の盗撮事件については、原則として各都道府県の迷惑防止条例ではなく、性的姿態撮影等処罰法が適用されることになります。

しかし、盗撮事件において迷惑防止条例が適用される可能性がなくなったわけではありません。正当な理由なく性的姿態等を撮影した場合には、「撮影罪」として処罰の対象となりますが、この性的姿態等とは、性的な部位や身に着けている下着、わいせつな行為・性交等が行われている人の姿のことを指します。

したがって、街中を歩いているだけの女性や、競技用ユニフォームを着用しているアスリートなどを盗撮する行為は通常他人に見られることを想定している着衣の上から撮影されているため、「撮影罪」から除かれることになります。

しかし、そのような場合であっても、盗撮行為が各都道府県が制定している条例の「卑わいな言動」に該当すると判断される場合には、迷惑防止条例違反の罪に問われることがあります。

以上より、撮影罪の施行以降は迷惑防止条例が適用されないとまでは言えません。

撮影罪は未遂も処罰される?

撮影罪の未遂は処罰されます。

性的姿態撮影等処罰法には、撮影罪の未遂を処罰する旨の規定が存在しています(同法第2条2項)。

したがって、カメラを差し向けたり、設置したり、また設置が完了してカメラをのぞき込んだけれども撮影するには至らなかったという場合には、撮影未遂罪として処罰の対象となります。

なお、迷惑防止条例には未遂を処罰する規定が置かれていないのが一般的です。もっとも、東京都の条例のように、撮影機器を差し向けたり設置したりする行為自体を処罰の対象としているものが多く、撮影に至らなかったとしても条例違反として立件される可能性があります。盗撮の未遂で問われる罪については「盗撮未遂は処罰される?逮捕される?罪名や刑罰を詳しく解説」で詳しく解説しています。

撮影罪は所持・ダウンロードしているだけでも成立する?

提供や公然陳列を目的としない単純な所持・ダウンロード・保存だけでは、撮影罪や保管罪は原則として成立しません。

前述のとおり、撮影罪はあくまで「撮影する行為」を処罰する犯罪であり、保管罪も他人に渡したりネット上に公開したりする目的での保管を対象とする犯罪だからです。また記録罪は、ライブストリーミングで配信された影像を記録する行為を処罰するものです。掲示板などにすでに投稿済みのファイルを手元に落として保存する行為までは、記録罪の対象に含まれないと解されています。

そのため、盗撮された画像や動画をネット経由で入手し、誰にも渡さず自分の手元に置いているだけの状態であれば、これらの罪は原則として成立しません。

ただし、以下の場合には、単純所持であっても別の罪に問われる可能性があるため注意が必要です。

  • 他人に提供する目的で保管していた場合→「保管罪」が成立します
  • 保存した画像・動画の被写体が18歳未満(児童)の場合→自己の性的好奇心を満たす目的で保管していれば、提供目的がなくても児童ポルノ禁止法の単純所持罪(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)に問われる可能性があります

なお、盗撮画像・動画のダウンロードや購入で問われる罪については「盗撮動画の購入・ダウンロードは犯罪?逮捕の不安は弁護士に相談」をあわせてご覧ください。

勝手に(無断で)撮影したら罪になる?

街中を歩いている人の全身像など、着衣の姿を無断で撮影しただけでは、原則として撮影罪は成立しません。

いわゆる無断撮影がすべて撮影罪にあたるわけではありません。撮影罪が処罰の対象とするのは、性器・臀部・胸部などの性的な部位や下着、わいせつな行為や性交等が行われている間の姿といった「性的姿態等」の撮影に限られるためです。したがって、たとえ無断で撮影したとしても、性的姿態等にあたらない姿であれば撮影罪の要件は満たしません。

もっとも、相手が嫌がっているのに執拗にカメラを向けるなど、その態様によっては迷惑防止条例の「卑わいな言動」に該当し、処罰の対象となる可能性があります。また、スカートの中や下着など性的な部位を無断で撮影した場合には、撮影罪が成立します。

撮影罪・盗撮でお悩みの方は弁護士にご相談ください

撮影罪の新設により、盗撮行為の処罰範囲は広がり、罰則も厳罰化されました。撮影そのものだけでなく、盗撮画像・動画の提供や保管も処罰の対象となります。

自分の行為が撮影罪にあたるのか判断がつかない方や、いつ逮捕されるか不安を抱えている方は、早い段階で弁護士にご相談ください。弁護士に依頼することで、被害者との示談交渉や自首の同行など、逮捕を回避するための弁護活動が可能になります。反対に、何も対処しないまま時間が過ぎると、突然の逮捕によって家族や職場に事件を知られてしまうおそれがあります。

すでに警察から連絡が来ている場合や、逮捕されてしまった場合でも、被害者との示談が成立すれば、早期に釈放され、起訴を免れる道が開けます。起訴されなければ前科もつきません。盗撮事件は精神的な負担も大きく、一人で抱え込むほど判断を誤りやすくなります。

当事務所は、盗撮事件における被害者との示談交渉、逮捕回避、不起訴の獲得を数多く手がけてきた実績があります。ご家族や職場に影響が及ばないよう配慮しながら、弁護士が迅速に動き、全力を尽くしてあなたを守ります。無料相談は全国からご利用いただけますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

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刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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