「盗撮動画を販売することは違法なのだろうか…逮捕されるのだろうか…」
このようにお考えではないでしょうか。
結論から申し上げますと、盗撮動画の販売は提供罪に該当する違法行為であり、逮捕される可能性があります。特定・少数の者に販売した場合は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、不特定・多数の者に販売した場合や、公然と陳列したりした場合には、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
この記事では、盗撮事件に強い弁護士が、
- 盗撮動画の販売で問われる罪
- 盗撮動画の販売が警察にバレる経緯
- 盗撮動画の販売で逮捕された後の流れ
- 逮捕・起訴を回避する方法
などにつき詳しく解説していきます。
もし心当たりのある行為をしてしまい、逮捕を回避するために早急に対応したいとお考えの方は、この記事を最後までご覧いただき、全国無料相談の弁護士にご相談ください。
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目次
盗撮動画販売の実態
盗撮動画の販売が横行している原因として、ビジネスとしての市場が大きいという実態があります。インターネット上での盗撮動画は、出品者が自由に価格を設定し、その価格に同意した人が購入できる「フリマ形式」や、定額料金を支払うことでサイト内の動画が見放題になる「サブスク形式」などで販売されています。
例えば、フリマ形式として、動画販売サイトで「20本2000円、40本4000円、60本5000円」などと表記して盗撮動画を犯罪しているものがありました。また、サブスク形式として、ある動画サイトでは、5000円程度の月額料金が設定されており、さらに追加で5000円を支払うとモデルやアイドルの盗撮動画を見られるVIP向けサービスを展開しているものもありました。
わずか2年半で8億円以上を売り上げた盗撮サイトがあり、盗撮動画販売の市場規模については、100億円以上の規模にものぼると見られています。
なお、販売されている動画については、「本人の了承を得ている」や「成人した女性に制服を来てもらって撮影している」など「盗撮風」動画であると言い逃れされ、取り締まりが難しいという実態もあります。
盗撮動画の販売で問われる罪は「提供罪」
盗撮した動画を販売する行為は、性的姿態撮影等処罰法の「提供罪」に問われる可能性があります。
性的姿態撮影等処罰法は、2023年(令和5年)7月13日から新たに施行された法律で、施行日以降の盗撮事件については、各都道府県の迷惑防止条例ではなく、この法律が適用されます。盗撮動画を第三者に販売する行為は、「提供罪」に該当し、その悪質性に応じて刑罰の重さが異なります。
撮影された性的姿態等の画像(「性的影像記録」といいます。)を、「特定または少数の者」に提供した場合、最大で「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」が科されます(同法第3条1項)。
一方で、性的影像記録を「不特定または多数の者」に提供したり、公然と陳列したりした場合は、最大で「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、またはその併科」が科されることになります(同条第2項)。
人の意思に反して性的な姿を撮影し、それを第三者に提供することは、その記録が拡散することで、撮影時以外に他の人に見られる危険を引き起こします。その結果、記録が不特定・多数の者に見られるという重大な問題が生じる可能性があるため、非常に厳しく取り扱われます。
そのため、盗撮動画をストリーミング配信やフリマ形式で販売する行為は、不特定・多数の者に対する性的影像記録の提供罪に該当します。
盗撮動画の販売に関連して問われる可能性のある犯罪
上記の通り、盗撮動画の販売は「提供罪」に問われますが、状況によっては、以下のような他の犯罪に問われる可能性もあります。
- ①撮影罪|盗撮行為自体の罪
- ②保管罪|提供目的で盗撮動画を保管
- ③児童ポルノ禁止法違反|児童が被写体
- ④わいせつ物頒布等罪|購入した盗撮動画の販売
①撮影罪|盗撮行為自体の罪
提供目的の有無に関わらず、盗撮行為自体は、性的姿態撮影等処罰法の「撮影罪」に問われることになります。
撮影罪とは、正当な理由がないのに、ひそかに、「性的姿態等」を撮影する犯罪のことです。「性的姿態等」とは、以下のようなものをさします。
- 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)
- 人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられているもの)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
- わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
人が下着を付けずにいるトイレや更衣室、浴室を盗撮する行為や、電車内や駅構内で女性のスカートの中を盗撮することは、撮影罪に該当することになります。
撮影罪が成立した場合には、「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」が科されることになります。
撮影罪とは?該当する行為や条例違反との違いをわかりやすく解説
②保管罪|提供目的で盗撮動画を保管
盗撮された動画を特定・少数の者に提供する目的や、不特定・多数の者に提供または公然と陳列する目的で、性的映像記録を保管した場合には、「保管罪」が成立します(性的姿態撮影等処罰法第4条)。
一方で、盗撮された動画を、第三者に提供する目的ではなく、個人で鑑賞する目的で保有している場合には、保管罪は成立しないことになります。
とはいえ、提供目的がなかったと主張しても、そのような言い分が通用しない可能性もあります。例えば、盗撮動画を実際には販売していない・インターネットにアップロードしていない場合であっても、過去に販売した経歴や、動画サイトに投稿するための準備をしていれば、提供目的での保管罪に問われる可能性があります。
保管罪が成立した場合には、「2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金」が科されることになります。
③児童ポルノ禁止法違反|児童が被写体
盗撮された被害者が児童の場合には、児童ポルノ禁止法違反の罪に問われることになります。
児童とは、18歳未満の者のことです。児童ポルノとは、「児童の性交している姿態」「児童の性器や児童が他人の性器を触っている姿態」「裸や半裸の児童の姿態」を描写した写真や電子データなどのことです。そして、児童ポルノを所持・保管・提供・陳列・製造すると、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁止法)」違反により処罰されます。
したがって、 未成年者の盗撮動画を特定・少数の者に販売した場合には、児童ポルノ提供罪に該当します。この場合、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」が科されることになります。さらに、 これを不特定・多数の者に販売した場合には、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金」が科されることになります。
④わいせつ物頒布等罪|購入した盗撮動画の販売
児童ポルノに該当しない盗撮動画をインターネット上で販売すると、刑法第175条1項の「わいせつ物頒布等罪」に問われる可能性があります。
盗撮動画を有償・無償を問わず、第三者が閲覧可能な状態に置いた場合、わいせつ物頒布等が成立します。また、売買など有償目的でわいせつ画像や動画を所持・保管した場合には、有償頒布目的所持罪や有償頒布目的保管罪に問われることになります(刑法第175条2項)。
わいせつ物頒布等罪、有償頒布目的所持罪、有償頒布目的保管罪が成立した場合、「2年以下の懲役または250万円以下の罰金、または科料」が科される可能性があります。
ただし、自己の性的目的のためにわいせつ画像等を所持しても、罪には問われません。また、わいせつ画像等を製造する行為も処罰の対象外です。
盗撮動画の販売が警察にバレる経緯
盗撮動画の販売が警察にバレる経緯は次の通りです。
- ①被害者からの被害届の提出
- ②警察のサイバーパトロール
- ③別件で逮捕されて余罪が発覚
- ④購入者が別件で捜査を受けて購入元を供述
①被害者からの被害届の提出
盗撮動画を有料で販売している人の中には、身体の一部や後ろ姿だけではなく、被害者の顔まで撮影している人もいます。
このような盗撮動画がネット上で投稿されていると、被害者自身が自分の盗撮動画を見つけたり、盗撮動画を知った友人や知人が被害者本人に知らせたりする可能性があります。
ネット上に出回っている盗撮動画に気づいた被害者が、警察に相談して被害届や告訴状を提出するケースは少なくありません。被害者から被害届等が提出された場合には、警察も本格的に犯人の捜査を開始するため、投稿者が特定されれば逮捕に至ることがあります。
②警察のサイバーパトロール
警察のサイバーパトロールによって、盗撮動画が販売されているサイトが見つかり、最終的に販売者が特定されることがあります。
サイバーパトロールとは、インターネット上の違法コンテンツを監視し、発見する活動で、警察はこうした活動を通じて不正なサイトを摘発することがあります。
サイトが摘発されると、サーバーが押収され、取引履歴やユーザーの情報が調査されます。この過程で、盗撮動画の販売者が特定され、最終的に逮捕されることにつながります。
③別件で逮捕されて余罪が発覚
盗撮動画を販売するために収集・保管していた場合、別件で逮捕されたことをきっかけに、余罪として盗撮動画の提供や保管が発覚することがあります。
例えば、本件とは無関係の盗撮事件で現行犯逮捕された場合や、警戒中の警察官に職務質問されて余罪が発覚することがあります。別件での所持品検査や差押えにより、スマートフォンに大量の盗撮動画が見つかると、有償販売の疑いで立件される可能性があります。その後、家宅捜索を受け、自宅のパソコンから盗撮動画の販売履歴が明らかになれば、逮捕されることもあります。
④購入者が別件で捜査を受けて購入元を供述
購入者が別件で捜査を受けたことで購入元が判明するというケースもあります。
インターネット上で盗撮動画を購入していた人が、性的姿態撮影等処罰法の保管罪や児童ポルノ禁止法違反の疑いで捜査を受けた結果、盗撮動画の販売元が特定されることがあります。盗撮動画の購入者から、販売元や盗撮動画を購入した違法サイトに関する供述が得られた場合には、そこから捜査が進み、サイトの管理者や盗撮動画の販売者が逮捕されることがあります。
盗撮動画販売の逮捕の流れ
ここでは、盗撮動画の販売が警察に発覚し、逮捕されるまでの流れや、逮捕された後の流れについて解説していきます。
逮捕までの流れ
盗撮動画を販売していた人は、どのように特定され、逮捕に至るのでしょうか。
動画販売サイトで盗撮動画を投稿して利益を得ている者は一般的に、ハンドルネームを用いて個人が特定できないようにしています。しかし、警察が犯罪の疑いがあるとして捜査をした場合には、容易に被疑者を特定することができます。
まずは、動画投稿サイトやアダルトサイトに、被疑者の収益を振り込むために登録された金融機関の口座番号や口座名義人の情報などを照会します。そして、判明した金融機関に対して口座開設者の身元情報を照会することで、銀行が保有している預金名義人の氏名、住所、電話番号などの個人情報が分かることがあります。
また、たとえ匿名で盗撮動画を販売していても、プロバイダへの照会を通じて投稿者のIPアドレスや接続履歴が特定され、その情報を元に投稿者の個人情報が明らかになる場合があります。このように、二段階の照会やプロバイダ情報の調査によって、盗撮動画の販売者が最終的に特定され、逮捕に繋がります。
逮捕後の流れ
盗撮動画を販売したとして警察に逮捕された場合には、次のような流れで手続きが進むことになります。
- 逮捕
- 検察官送致
- 勾留
- 起訴または不起訴
- 刑事裁判
①逮捕
盗撮動画の販売を行った疑いがある場合、被疑者のスマホやパソコンの中には盗撮動画のデータや販売記録が残っている可能性があります。デジタルデータについては消去・抹消が容易であるため逮捕の必要性が高いと判断される可能性があります。そして、警察に逮捕された場合には、48時間以内に取り調べを受け、検察官に送致されるかどうかが判断されます。犯人性や証拠不十分の場合には、検察官に送致されずに釈放される可能性があります。
②検察官送致
検察官に送致された場合、被疑者の身柄と事件記録を受け取った検察官は、被疑者が逮捕されてから24時間以内に被疑者を勾留するか否かを判断することになります。
検察官が勾留が必要と判断した場合には、裁判所に勾留を請求することになります。
③勾留
裁判官が勾留を決定すると、その時点から原則として10日間の身体拘束が続くことになります。勾留中は、接見禁止命令が出されない限り、家族と面会することができます。また、捜査のため必要がある場合には、さらに10日を上限として勾留が延長されます。
つまり、逮捕に引き続き勾留されてしまうと、最大で23日間(48時間+24時間+20日間)も身柄を拘束されてしまいます。
④起訴または不起訴
検察官は、勾留期間中に捜査を行い、被疑者を起訴または不起訴にするかを判断します。
事件が起訴された場合には、刑事裁判にかけられ事件の審理が行われます。不起訴になった場合は直ちに釈放されます。また、不起訴になれば前科がつくこともありません。
⑤刑事裁判
刑事裁判で有罪判決が言い渡された場合には、前科が残ることになります。
執行猶予やつけられた場合であっても、有罪判決であることには変わりないため、前科が残ることになります。
盗撮動画の販売で逮捕を回避するには?
盗撮動画の販売で逮捕を回避するためには、自首することが有効です。そもそも自首とは、犯人が警察官や検察官などの捜査機関に対して自発的に自己の犯罪事実を申告し、自らの処遇を委ねることをいいます。
事件の犯人が自首をした場合には逮捕が回避される可能性があります。自らが起こした犯罪を反省し、証拠を持参したうえで犯行を自供する場合には、逮捕の条件である逃亡や罪証隠滅のおそれがないと捜査機関が判断する可能性があるからです。
そして、自首をする際には、弁護士に同行してもらうことが重要です。犯人の生活圏に盗撮の被害者がいる場合であっても、弁護士がついていれば、被害者への接触や再犯のおそれが小さいと判断される可能性もあります。弁護士が自首に同行する場合には、弁護士に警察に意見書や上申書などを提出して、逃亡・罪証隠滅のおそれがないことを説得的に説明してもらえるため、逮捕されない可能性が高まります。また、弁護士が自首に同行して身元引受人になれば、家族や職場の人間に連絡が入らず、犯罪事実が自分の身の回りの人たちに露見せずに済む可能性もあります。
盗撮動画の販売で不起訴を獲得するには?
盗撮動画の販売で不起訴を獲得する方法は次の通りです。
- ①被害者と示談を成立させる
- ②贖罪寄付をする
- ③再犯防止の対応を検察官に示す
①被害者と示談を成立させる
盗撮動画を販売した疑いで検察官に起訴されないようにするためには、事件の被害者と示談を成立させることが重要です。
盗撮動画を販売する目的で盗撮行為や保管行為をしていた場合には、提供目的がないケースに比べて悪質性が高いため、逮捕・起訴される可能性が高いでしょう。また、盗撮動画の販売事件の場合には、盗撮の被害者が多数にのぼるケースが多く、すべての被害者を特定して示談をし賠償金を支払うのは難しい可能性があります。
そのため、少なくとも被害届を提出している被害者との間では示談を成立させるという対応が必要となります。盗撮事件の被害者が警察に被害届や刑事告訴をしている場合、示談が成立することで被害届や告訴を取り下げてくれる可能性があります。示談が成立してことで、当事者間のトラブルは解決したものと評価されるため、逮捕・起訴されるリスクが下がります。
②贖罪寄付をする
被害者が特定できず示談ができないという場合には、贖罪寄付を検討してください。
贖罪寄付とは、被害者がいない刑事事件・被害者に弁償できない刑事事件の場合に、被疑者・被告人が事件への反省の気持ちを表すために、弁護士会や慈善団体などに寄付を行うことを指します。
寄付されたお金は、被害者救済などの公益活動に役立てられます。贖罪寄付をすると、寄付を受けた団体・機関から「贖罪寄付証明書」が交付されます。この証明書を、検察官に提出することで被疑者に有利な事情として考慮されることになります。
盗撮動画の販売事件の場合には、犯罪行為により取得した収益が犯人の手元に残っている場合には、検察官から有利な処分を得ることは期待できません。そのため、違法な利益を放棄するという意思表示で、贖罪寄付をすることは重要となります。
③再犯防止の対応を検察官に示す
盗撮事件などの性犯罪においては、再犯を防止するための対応を検察官に示すことが重要です。検察官は、被疑者の再犯リスクや今後の更生の可能性を考慮して不起訴判断を下す場合があります。そのため、再犯防止に向けた積極的な取り組みを示すことは、不起訴の可能性を高める要因となります。
まず、盗撮事件を繰り返さないためには、盗撮機材の処分や、家族や医療機関のサポートを受けて、再犯を防ぐための環境づくりが必要です。特に、専門の医療機関を受診し、再犯防止プログラムに参加することが効果的です。
再犯防止プログラムの一環として、認知行動療法や薬物治療が行われます。認知行動療法では、問題行動に繋がる衝動や考え方を見直し、適切な対処法を学んで行動や思考の修正を図ります。
こうした積極的な再犯防止の取り組みを検察官に示すことで、被疑者が更生に向けた努力をしていることが証明され、再犯のリスクが減少していると判断される場合には、不起訴処分に繋がる可能性が高くなります。
まとめ
盗撮動画を販売した場合には、性的姿態撮影等処罰法の提供罪や保管罪に問われる可能性があります。被写体が児童である場合には、児童ポルノ禁止法違反に問われます。
盗撮動画の販売事件の場合には、第三者への提供の目的があるため、一般的な盗撮事件と比べて重い処分が行われる可能性があります。初犯であっても起訴されることも少なくありません。
そのため、盗撮動画の販売で逮捕されそうで不安な方は、一刻も早く弁護士に相談したうえで、今後の方針を検討することが大切です。
当事務所では、盗撮事件を含めた刑事事件の解決実績が豊富にあります。親身且つ誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、盗撮動画の販売で不安を抱えている方は、まずは当事務所の弁護士ににご相談ください。
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