
盗撮動画の販売は、性的姿態撮影等処罰法に基づく提供罪に該当する違法行為であり、逮捕される可能性があります。特定・少数の者に販売した場合は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、不特定・多数の者に販売した場合や、公然と陳列したりした場合には、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
この記事では、盗撮事件に強い弁護士が、
- 盗撮動画の販売で問われる罪
- 盗撮動画の販売が逮捕に至る経緯
- 盗撮動画の販売で逮捕された後の流れ
- 逮捕・起訴を回避する方法
などにつき詳しく解説していきます。
もし心当たりのある行為をしてしまい、逮捕を回避するために早急に対応したいとお考えの方は、この記事を最後までご覧いただき、全国無料相談の弁護士にご相談ください。
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目次
盗撮動画の販売で問われる罪は「提供罪」
盗撮した動画を販売する行為は、性的姿態撮影等処罰法の「提供罪」 に該当します。この「提供」には、有償(販売)・無償(譲渡)を問わず、盗撮動画を他人に渡す行為全般 が含まれます。
この法律は2023年7月13日に施行され、それ以前は各都道府県の迷惑防止条例 により取り締まられていました。しかし、盗撮行為の悪質性が高まり、全国一律で厳しく処罰する必要があることから、新たに性的姿態撮影等処罰法 が導入されました。
提供罪が成立する典型的なケースとして、次のような行為が挙げられます。
- 盗撮した動画を他人に販売する。
- 盗撮動画をウェブサイトにアップロードし、不特定多数に販売する。
提供罪の刑罰 は、提供先の範囲によって異なります。
- 特定または少数の者に提供(販売) した場合
→3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(第3条1項)。 - 不特定または多数の者に提供(販売)・公然と陳列 した場合
→5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、またはその併科(第3条2項)。
なお、法改正前は「わいせつ物頒布等罪(刑法175条)」で処罰されており、刑罰は2年以下の懲役または250万円以下の罰金でした。しかし、新法の施行により、盗撮動画の提供・販売に対する処罰が厳格化されました。
盗撮動画の販売に関連して問われる可能性のある犯罪
上記の通り、盗撮動画の販売は「提供罪」に問われますが、状況によっては、以下のような他の犯罪に問われる可能性もあります。
- ①撮影罪|盗撮行為自体の罪
- ②保管罪|提供目的で盗撮動画を保管
- ③児童ポルノ禁止法違反|児童が被写体
①撮影罪|盗撮行為自体の罪
盗撮行為自体が違法であり、提供目的の有無に関わらず「撮影罪」が成立します。この罪は、正当な理由なく「性的姿態等」を撮影する行為を処罰するものです。
「性的姿態等」には、以下のものが含まれます。
- 性器、肛門、臀部、胸部(またはその周辺部)
- 通常衣服で覆われている下着のうち、性的部位を直接または間接的に覆っている部分
- わいせつな行為または性交等がされている間における人の姿態
このため、駅や電車内でスカートの中を盗撮する行為や、隠しカメラを設置して他人の性的姿態等を撮影する行為は、撮影罪に該当する可能性があります。
撮影罪の刑罰は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(第2条)。
【合わせて読みたい】撮影罪とは?該当する行為や条例違反との違いをわかりやすく解説
②保管罪|提供目的で盗撮動画を保管
盗撮された動画を提供する目的で保管していた場合、「保管罪」が成立します(第4条)。
この罪は、単に個人で鑑賞するために動画を保有している場合には適用されません。しかし、過去に販売歴がある場合や、インターネットへの投稿準備をしていた場合は、提供目的があったとみなされる可能性があります。
例えば、盗撮動画を後日販売するために自宅のPCに保存していた場合や、DVDに焼いて販売準備をしていた場合などが該当します。
保管罪の刑罰は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。
また、提供罪と保管罪が同時に成立する場合は、刑法第54条により、より重い方の刑罰が適用される可能性があります。
③児童ポルノ禁止法違反|児童が被写体
盗撮された被害者が18歳未満(児童)の場合、「児童ポルノ提供罪」に問われる可能性があります。
児童ポルノとは、以下のようなものを指します。
- 児童の性交やわいせつ行為を撮影したもの
- 児童の性器や性的行為を映した画像・動画
このような児童ポルノを有償・無償で販売・提供すると、以下の刑罰が適用されます。
- 特定または少数の者に提供(販売)した場合
→3年以下の懲役または300万円以下の罰金 - 不特定または多数の者に提供(販売)・公然と陳列した場合
→5年以下の懲役または500万円以下の罰金
成人の盗撮とは異なり、被害者が児童だった場合、刑罰はより厳しくなります。
盗撮動画の販売が逮捕されやすい理由
盗撮動画の販売は、単なる盗撮行為に比べて発覚しやすく、逮捕されるリスクが非常に高い犯罪です。その理由として、主に次の3つの点が挙げられます。
まず、盗撮行為自体は被害者が気づかないこともありますが、動画が販売されることで視聴者が増え、その中には被害者本人や知人が含まれる可能性が高くなります。特に、顔が映っている動画は、被害者の特定が容易であり、警察に通報されるリスクが大幅に上昇します。
次に、販売行為は営利目的とみなされ、警察の捜査対象として優先度が高まる傾向があります。単発の盗撮と異なり、継続的に販売を行っている場合、組織的な関与や資金の流れを調査する必要があるため、より強制的な捜査が行われることが多いです。特に、多額の利益を得ているケースでは、金融機関の取引履歴をもとに販売者を特定しやすくなります。
さらに、盗撮動画を販売するプラットフォーム自体が警察の監視対象となるケースも多く、一度でも違法コンテンツを投稿した場合、サイトのサーバーログや取引履歴が押収され、販売者の特定が容易になります。違法サイトを利用していたとしても、データが完全に消去されるわけではなく、後日逮捕に至ることもあります。
このように、盗撮動画の販売は被害者の通報、警察の積極的な捜査、取引履歴の追跡によって、単なる盗撮行為よりも発覚・逮捕される可能性が格段に高くなります。
盗撮動画の販売はこうして逮捕される
盗撮動画の販売は、被害者の通報や警察の捜査によって発覚しやすく、販売履歴や取引記録をもとに捜査が進み、最終的に逮捕に至るケースが多くあります。特に、金融機関の取引履歴やインターネットの利用履歴が手がかりとなることが多く、単なる盗撮行為よりも迅速に逮捕される可能性が高いのが特徴です。
盗撮動画の販売が警察に発覚し、捜査が進んだ結果、逮捕に至るまでの経緯には、次のようなケースがあります。
- ① 被害者からの被害届の提出
- ② 警察のサイバーパトロール
- ③ 別件で逮捕されて余罪が発覚
- ④ 購入者が別件で捜査を受けて購入元を供述
- ⑤ 販売履歴や金融取引を追跡して特定
①被害者からの被害届の提出
盗撮動画がネット上で拡散すると、被害者自身が偶然発見することや、知人・友人から知らされることがあります。特に、被害者の顔がはっきり映っている場合、発覚する確率は高くなります。
被害者が盗撮動画を発見した場合、警察に相談し、被害届や告訴状を提出することが一般的です。警察が被害届を受理すると、本格的な捜査が開始され、動画の出処や販売者の特定が進められます。
②警察のサイバーパトロールによる捜査
警察はサイバーパトロールを通じて、インターネット上の違法コンテンツを監視しています。盗撮動画の販売が確認された場合、警察はサイトの運営者に対し、販売者の情報提供を求めたり、サーバーの押収を行ったりすることがあります。
特に、違法な動画を販売しているプラットフォームは警察の監視対象になりやすく、一度でも違法コンテンツを投稿した販売者のデータが記録されている可能性があります。削除してもサーバーログなどに履歴が残っているため、後日特定されるリスクがあります。
③販売者の特定手続き
警察が盗撮動画の販売を確認した後、販売者の特定に向けた捜査が行われます。
まず、警察は動画販売サイトやアダルトサイトに対して、販売者の収益振込口座の情報を照会します。次に、金融機関に対し、その口座の名義人や住所、電話番号などの個人情報を確認することで、販売者の身元が判明します。
さらに、プロバイダへの照会によって、投稿者のIPアドレスやアクセス履歴が特定され、投稿者の個人情報が明らかになることもあります。こうした段階的な調査によって、匿名を装っていても、盗撮動画の販売者は最終的に特定されるのです。
④別件で逮捕されて余罪が発覚
盗撮動画の販売行為が直接発覚しない場合でも、別件で逮捕された際に余罪として発覚するケースがあります。
例えば、盗撮行為を別件で現行犯逮捕された際に、スマートフォンやパソコンの中に大量の盗撮動画や販売履歴が見つかることがあります。また、警察の職務質問を受けた際に、デバイスのデータを確認され、盗撮動画の販売に関する証拠が発見されることもあります。
家宅捜索が行われると、保存されていた動画や、取引履歴のデータ、売上金の振込記録などが押収され、販売行為が裏付けられるため、逮捕に至る可能性が高まります。
⑤購入者が別件で捜査を受けて購入元を供述
盗撮動画の購入者が捜査の対象となった場合、購入元が判明することもあります。
購入者が性的姿態撮影等処罰法の記録罪や児童ポルノ禁止法違反で捜査を受けた際、盗撮動画の入手経路を警察に供述するケースがあります。警察はその供述をもとに、販売サイトや決済記録を調査し、最終的に販売者を特定することになります。
このように、購入者側からの供述がきっかけで、盗撮動画の販売者が逮捕されるケースも少なくありません。
盗撮動画の販売で逮捕された後の流れ
盗撮動画を販売したとして警察に逮捕された場合、刑事手続きは以下の流れで進むことになります。
- 逮捕
- 検察官送致
- 勾留
- 起訴または不起訴
- 刑事裁判
①逮捕
警察は、被害者の通報やサイバーパトロールを通じて盗撮動画の販売を確認すると、販売者の特定に向けた捜査を開始します。特に、販売履歴や送金記録が残っている場合、証拠が揃いやすく、逮捕に至る可能性が高くなります。
逮捕されると、警察署の留置場に移送され、取り調べを受けます。被疑者には黙秘権があり、弁護士を呼ぶ権利もあります。取り調べへの対応については、弁護士に相談することが重要です。
②検察官送致
逮捕後、警察は48時間以内に検察官に送致するかを判断します。送致された場合、検察官は24時間以内に勾留請求を行うかを決定します。
検察官は、被害者の数や販売の規模、得た利益の額 などを考慮し、逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断すれば、裁判所に勾留を請求します。勾留請求が認められなかった場合、被疑者はその時点で釈放されます。
③勾留
裁判官が勾留を決定した場合、原則として10日間の身体拘束が行われます。さらに、捜査の必要性が認められれば、最大10日間の延長が可能で、逮捕から数えて最長23日間の拘束となる可能性があります。
勾留期間中は、販売履歴や金融取引の解析、盗撮動画の拡散状況の特定、余罪の追及などの捜査が行われます。特に、営利目的で継続的に販売していた場合は、犯罪の組織性が疑われ、より厳格な捜査が行われることがあります。
④起訴または不起訴
勾留期間が満了するまでに、検察官は被疑者を起訴するか、不起訴にするかを決定します。証拠が十分に揃い、悪質性が高いと判断された場合には起訴され、刑事裁判へと進みます。
一方で、証拠が不十分な場合や、被害者との示談が成立した場合 には、不起訴処分となる可能性があります。不起訴となった場合、その時点で釈放され、前科はつきません。
⑤刑事裁判
起訴された場合、刑事裁判で有罪・無罪の判断が下されます。販売規模が大きい場合や、組織的な関与が認められた場合は、より重い刑罰が科される可能性が高くなります。
執行猶予がついた場合でも、有罪判決であるため前科がつく点に注意が必要です。
盗撮動画の販売で逮捕・起訴を回避する方法
盗撮動画の販売に関与した場合でも、適切な対応を取ることで逮捕や起訴を回避できる可能性があります。事態が悪化する前に、速やかに対応することが重要です。
逮捕・起訴を回避するために取るべき対応は、次の通りです。
- ① 自首する
- ② 被害者との示談
- ③ 贖罪寄付の実施
- ④ 再犯防止策の実施
①自首する
盗撮動画の販売に関与した場合、自首することが逮捕を回避する有効な手段となります。自首とは、自ら警察や検察に犯罪事実を申告し、処遇を委ねる行為を指します。
自首をすれば、逮捕の要件である逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断され、逮捕を免れる可能性があります。ただし、適切な手続きを踏まずに自首をすると、不利な状況に陥る可能性もあるため、弁護士に相談した上で進めることが重要です。弁護士が同行すれば、警察に意見書や上申書を提出し、身柄拘束を回避できる可能性が高まります。また、弁護士が身元引受人となることで、家族や職場に知られずに手続きを進めることも可能です。
②被害者との示談
不起訴を獲得するためには、被害者との示談成立が極めて重要です。盗撮動画の販売は、単なる盗撮よりも悪質性が高く、示談が成立しなければ、初犯でも起訴される可能性があります。
特に、被害者は「盗撮動画が再びネット上に流出するのではないか」という強い不安を抱えています。そのため、示談によって精神的苦痛を和らげることが大切です。示談が成立すれば、被害届や告訴が取り下げられる可能性があり、検察官が「当事者間で解決済み」と判断することで不起訴となる可能性が高まります。示談交渉は弁護士が代理人として行うことで、円滑に進めることができます。
③贖罪寄付の実施
被害者が特定できず示談が難しい場合、贖罪寄付を行うことも有効な手段です。贖罪寄付とは、反省の意思を示すために弁護士会や慈善団体に寄付を行う制度です。
寄付を行うと、「贖罪寄付証明書」が発行され、検察官に提出することで、有利な事情として考慮される可能性があります。ただし、贖罪寄付をしたからといって必ず不起訴になるわけではなく、検察官が総合的に判断します。また、盗撮動画の販売で得た収益をそのままにしていると、不利な評価を受けることがあるため、違法な利益を放棄する意思を示す目的でも有効です。
④再犯防止策の実施
盗撮動画の販売事件では、再犯防止策を講じることで不起訴の可能性を高めることができます。
まず、盗撮機材を処分し、再び同様の行為を行わない環境を整えることが重要です。さらに、家族の監督を受けたり、専門のクリニックに通院して依存症治療を受けたりすることで、再犯リスクの低減につながります。特に、専門の医療機関で再犯防止プログラムを受講し、認知行動療法を通じて問題行動の要因を特定し、適切な対処法を学ぶことは、検察官に「再犯リスクが低い」と判断される重要な要素となります。
まとめ
盗撮動画を販売した場合には、性的姿態撮影等処罰法の提供罪や保管罪に問われる可能性があります。被写体が児童である場合には、児童ポルノ禁止法違反に問われます。
盗撮動画の販売事件の場合には、第三者への提供の目的があるため、一般的な盗撮事件と比べて重い処分が行われる可能性があります。初犯であっても起訴されることも少なくありません。
そのため、盗撮動画の販売で逮捕されそうで不安な方は、一刻も早く弁護士に相談したうえで、今後の方針を検討することが大切です。
当事務所では、盗撮事件を含めた刑事事件の解決実績が豊富にあります。親身且つ誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、盗撮動画の販売で不安を抱えている方は、まずは当事務所の弁護士ににご相談ください。
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