
ラブホテルの料金がもったいないから、ドライブ中に急にムラムラしてしまったから、という理由でカーセックスをしてしまう男性や女性がいます。しかし、その行為が法的に問題となる可能性があることをご存じでしょうか。
「カーセックスは犯罪になるのではないか?」
「人通りの少ない場所で行えば警察に逮捕されることはないのか?」
こうした疑問を持つ方も多いかもしれません。
結論から言いますと、不特定又は多数の者が認識できる状態でカーセックスをすると公然わいせつ罪に問われることになります。したがって、車や人の通りが少ない道路脇や駐車場に車を停めてカーセックスをした場合でも、他人が見ることができる状態であれば警察に逮捕される可能性があります。
本記事では、刑事事件に精通した弁護士が、カーセックスに関する法的なリスクとその対応方法について、わかりやすく解説いたします。
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カーセックスは違法な犯罪?適用される法律は?
カーセックスを他人に見られ、警察に通報された場合は公然わいせつ罪で検挙される可能性があります。公然わいせつ罪は刑法174条に規定されています。
(公然わいせつ)
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
※「拘禁刑」とは、2025年施行の刑法改正により「懲役刑」と「禁錮刑」を統合した新しい刑罰で、受刑者が刑事施設に拘禁される点は従来と変わりません。
「公然と(公然性)」とは、不特定又は多数の者が認識できる状態をいいます。実際にカーセックスを見られている必要はなく、他人が見ることができる状態であれば公然性があると判断されます。公然性があるかどうかは、わいせつ行為の態様やわいせつ行為を行った場所の状況などを総合的に勘案して判断されます。また、不特定「又は」多数ですので、カーセックスを見た人が1人であっても公然性があると判断されます。
確かに、車内はプライベートな空間で公然性がないように思われますが、車を停めた場所によっては他人がいつでも車内を覗くことができる空間となり得ることから、公然性があると判断される可能性があります。
次に、「わいせつな行為」とは、性欲を刺激、興奮又は満足させる行為であり、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいうとされています。要するに、一般の感覚をもって興奮する、刺激的、恥ずかしいと感じる行為や性的なプレイが「わいせつな行為」ということになり、この定義からすればセックス(性交や口淫などの性交類似行為)はわいせつな行為にあたることになります。
上記の公然わいせつの成立要件からすると、以下のようなシチュエーションのカーセックスでも同罪が成立する可能性があります。
- 車の窓にスモークフィルムやカーテンなどで目隠しをして車内が見えない状態にした場合
→車外からの視認性がまったくシャットアウトされていなければ、公然わいせつ罪は成立する可能性があります。 - 衣服を身につけた(下着だけ脱いだ)状態でカーセックスした場合
→衣服を身につけていたとしてもセックスは「わいせつな行為」にあたりますので、公然わいせつ罪が成立する可能性が高いです。 - 人通りが少ない道路脇や海岸沿いの駐車場、河川敷、パーキングエリアに停めた車内でカーセックスした場合
→人通りが少なく見えても、散歩中の通行人や他の利用者などに目撃され車内を見られる状況であれば、公然わいせつ罪が成立する可能性が高いです。
もっとも、カーセックスが公然わいせつ罪にあたるかどうかは、行為の態様のほか、車の周囲の状況なども勘案して判断されます。例えば、深夜の山道で街灯もなく人通りが滅多にない場所で行為に及んだようなケースでは、「公然と」わいせつな行為をしたとはいえない、または故意がなかったとして、公然わいせつ罪が成立しないと判断される可能性もあります。
カーセックスをすると逮捕される?後日逮捕の可能性は?
カーセックスによって公然わいせつ罪に問われる場合、実際に逮捕されることはあるのでしょうか。
公然わいせつ罪は性犯罪と比べて比較的軽微な性犯罪という位置づけのため、逮捕される可能性は低いでしょう。仮に逮捕されるとしても現行犯で逮捕されることがほとんどで、後日逮捕されるケースは稀です。
ただし、公然わいせつは現行犯でなければ逮捕できないという規定はありませんので、防犯カメラの映像や目撃者の証言、目撃者が撮影した動画等から後日逮捕される可能性がまったくないとは言い切れません。後日逮捕が不安な方は、公然わいせつ罪とは?現行犯ではなく後日逮捕はある?も合わせて読んでみてください。
また、仮に逮捕されなかったとしても、書類送検され在宅起訴(身柄拘束されない状態で起訴されること)されると、公然わいせつの場合は略式罰金を支払うことが多いでしょう。罰金刑も刑罰の一種である以上、「前科」がついてしまいます。
前科がつくとご自身の生活にどのような影響があるかについては、前科とは?前歴との違いや前科がつく5つのデメリットをご覧になってください。
カーセックスの通報者が撮影する行為は犯罪にならない?
それでは、カーセックスの現場を通報者がスマホなどで撮影した場合、その撮影行為自体は犯罪が成立するのでしょうか。
結論から言うと、この通報者を何らかの罪に問うのは困難でしょう。
まず、迷惑防止条例は、「他人が通常衣服を付けない状態でいるような場所」や「不特定・多数の者が利用、出入りする乗り物」での撮影を禁じていますが、公道上に停車された自家用車は、上記いずれにも該当しません。
また、令和5年(2023年)に施行された「性的姿態等処罰法」は、正当な理由なく人の性的姿態等を同意なく撮影する行為を禁じています。
これについても、通報者は犯罪行為(公然わいせつ)の証拠を確保する目的で撮影しているため、「正当な理由」があるとして、犯罪の構成要件に該当しない、または違法性が阻却される(違法とならない)と判断される可能性があります。
したがって、カーセックスを行った側が通報者を逆告訴するのは現実的ではありません。
まとめ
カーセックスは公然わいせつ罪にあたる犯罪行為です。仮に逮捕されなかったとしても、在宅起訴されて罰金刑となれば前科がついてしまいます(罰金額は最大30万円以下)。前科がつくことを回避するには、目撃者との示談交渉などの対応を正しく行い不起訴処分の獲得を狙う必要があります。そのため、前科をつけたくない方は弁護士に相談し、弁護活動を依頼することも検討しましょう。
当事務所では、公然わいせつでの逮捕の回避、不起訴の獲得の実績が多数あります。親身かつ誠実に、弁護士が依頼者を全力で守りますので、カーセックスで罪に問われる可能性のある方や、逮捕、起訴されてしまった方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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