公然わいせつ罪とは、不特定または多数の人が認識できる状態でわいせつな行為をする犯罪です。刑法第174条に規定されています。罰則は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 公然わいせつ罪にあたる行為
- 公然わいせつで現行犯ではなく後日逮捕されることはあるのか
- 公然わいせつで逮捕された後の流れ
- 公然わいせつ事件を弁護士に依頼した場合の弁護活動
などにつきわかりやすく解説していきます。
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目次
公然わいせつ罪とは
公然わいせつ罪とは、路上や公園、電車内などの不特定または多数の者が認識できる場所でわいせつな行為をすることで成立する犯罪で、刑法174条に規定されています。
第174条
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。刑法第174条 - Wikibooks
公然とは、不特定又は多数の者が認識できる状態という意味です。
ただし、現実に認知される必要はなく、認識される可能性があれば公然にあたると解されています(東京高裁判例 昭和32年10月1日)。
したがって、誰もいない公園で全裸になった場合や、路上に停めた自家用車内で性行為をした場合でも、誰かにその姿を見られる可能性がある以上、公然性は認められます。
わいせつな行為とは、行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる行為であって,普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの、と解されています(最高裁判例 昭和32年3月13日)。
具体的には、
- 性器の露出
- 第三者に見せるための性行為、性交類似行為(手淫・口淫)
などが典型です。
公然わいせつにあたる具体的な行為
公然わいせつとに該当する行為としては、路上や公園、公共交通機関、店舗等で自己の陰部を露出させる、人の見える方向に向け陰茎を出して立小便をする、ストリップ劇場で踊り子が性器を観衆に鑑賞させる、ハプニングバーで他の来客者が見られるショースペースで性行為を行う、夫婦やカップルが性行為をネットで生配信する、などがあります。
誰もいない公園で全裸になる行為や、公道に停めた自家用車内で陰部を露出させたり、カーセックスをする行為も、公園や公道という場で誰かにその姿を見られる(認識される)可能性がある以上、公然わいせつに該当します。
なお、性器が映った無修正の画像や性行為を録画した動画をネットにアップロードして、不特定または多数人に対して交付したり観覧し得る状態に置けば、わいせつ物頒布等罪が成立します。性行為をリアルタイムでネット配信した場合は上記の通り公然わいせつ罪に問われます。
また、性器を露出させたストリッパーや人前で性行為をしたハプニングバーの客が公然わいせつに問われることは上記の通りですが、ストリッパーを写真撮影した観客やハプニングバーの経営者は、犯罪を手助けしたとして「公然わいせつ幇助罪」に問われることもあります。
なお、公然わいせつが適用されない行為であっても、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」は、軽犯罪法1条20号の「身体露出の罪」にあたる場合があります。例えば、尻や胸を過度に露出すると同罪に該当する可能性があります。
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公然わいせつ罪の刑罰は?罰金で済むことが多い?
公然わいせつ罪の刑罰は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金刑、または拘留もしくは科料の刑罰が科せられます。
初犯で、公然わいせつ罪が1件のみという場合は不起訴、あるいは略式起訴されて罰金(10万円~20万円)で終わることが多いでしょう。
しかし、公然わいせつ罪の場合、同種余罪が発覚することも多く、立件される数によっては初犯であっても正式起訴され、懲役を科されることもあります。
公然わいせつで現行犯ではなく後日逮捕されることはある?
現行犯逮捕、後日逮捕とは
現行犯逮捕とは、人の見ているところで犯行を行ったため、犯行と犯人が明らかである場合に、裁判官が発布する逮捕状なしに逮捕されることです。現行犯は後日逮捕に比べて誤認逮捕のおそれが低く、緊急に逮捕する必要が高いため、逮捕状なしに逮捕できること、警察官などの公務員以外の一般人でも逮捕できることが特徴です。
一方、後日逮捕とは、犯行から一定期間経過した後に、裁判官が発布する逮捕状に基づいて逮捕されることです。正式には通常逮捕といいますが、後日に逮捕されることから別名後日逮捕といわれることがあります。
逮捕は人の自由を奪う人権侵害行為ですから、日本国憲法では通常逮捕を原則、現行犯を例外という位置づけとしています(憲法第33条)。
公然わいせつは現行犯逮捕が一般的
公然わいせつでは、現行犯で逮捕されるケースが目立ちます。
その理由としては、公然わいせつの犯行の性質によるところが大きいです。すなわち、公然わいせつは「公然と」わいせつな行為をすること、すなわち、誰かにわいせつな行為をしている場面を見られること(※)が犯罪の成立要件とされており、直ちに現行犯逮捕される条件が整っているといえます。
その他にも、現行犯でなければ、犯罪の立証が難しいという捜査機関(警察、検察)側の事情もあります。後日逮捕では、被害者や目撃者の証言も証拠の一つになりえますが、犯行から一定期間経過している場合、記憶の減退などから証言の信用性に疑義が生じることがあります。また、事案の性質上、防犯ビデオ映像などの客観的な証拠を得ることが難しく、公然わいせつの立証が難しいという事情があります。
公然わいせつで後日逮捕されることはある?
とはいえ、公然わいせつで後日逮捕される可能性がまったくないとはいえません。
その場では逮捕を免れて在宅捜査になった場合でも、
- 証拠隠滅・逃亡のおそれが高い事案
- 常習性が顕著な事案
- 性犯罪の前科・前歴をもち、実刑が見込まれる事案
では、捜査機関が本腰を入れて捜査し、後日逮捕する可能性もあります。
また、公然わいせつと一言でいっても単純な事案から社会の耳目を集める事案まで様々です。特に、後者のケースでは社会に警笛を鳴らし、同種事案が起きないよう抑止力をかける意味でも後日逮捕してまで捜査する可能性があります。
後日逮捕が不安な場合にすべきこと
公然わいせつの罪を犯し、運よく現行犯逮捕されなかったとしても、前述のとおり、後日逮捕される可能性は残されています。そして、当然のことながら、捜査機関があなたに逮捕するかしないか教えてくれることはないため、公然わいせつの時効が完成するまでは、後日逮捕されないか不安を抱えながら生活していかなければいけません。こうした不安を少しでも軽くするには、次の行動をとることをおすすめします。
弁護士に相談する
まず、弁護士に相談することです。
弁護士に相談すれば、後日逮捕される可能性がどこまであるのか個別の状況に応じて判断してくれます。仮に、後日逮捕される可能性が高い場合は、逮捕を避けるためにやるべきことや逮捕されたときにやるべきことについてアドバイスを受けることができます。
自首を検討する
次に、自首を検討することです。
自首することがで、逃亡の捜査機関に逃亡のおそれがないと判断され、逮捕を免れることができる可能性があります。もっとも、単に自首しただけでは不十分です。また、自首したからといって逮捕を回避できる補償はありません。
自首するにあたっては弁護士のアドバイスを受けながら事前に対策をとり、できれば弁護士に同伴してもらって自首した方が安心です。
公然わいせつで逮捕されるとその後どうなる?
公然わいせつで逮捕された後は、以下の流れで手続きが進んでいきます。
- 警察官の弁解録取を受ける
- 逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄を送致される(送検)
- 検察官の弁解録取を受ける
- ②から24時間以内に検察官が裁判官に対し勾留請求する
- 裁判官の勾留質問を受ける
→勾留請求が却下されたら釈放される - 裁判官が検察官の勾留請求を許可する
→10日間の身柄拘束(勾留)が決まる(勾留決定)
→やむを得ない事由がある場合は、最大10日間延長される - 原則、勾留期間内に起訴、不起訴が決まる
- 正式起訴されると2か月間勾留される
→その後、理由がある場合のみ1か月ごとに更新
→保釈が許可されれば釈放される - 勾留期間中に刑事裁判を受ける
公然わいせつで逮捕されると、逮捕による留置期間最大3日(48時間+24時間)は弁護士以外の者との連絡は禁止されます。そのため、何もしないでいると、会社勤めされている方は無断欠勤することになるため、逮捕されたらできるだけ早く弁護士との接見を希望し、弁護士経由で家族に現状を伝えてもらいましょう。家族から勤務先に病欠という連絡を入れてもらうこともできます。
もっとも、逮捕に引き続き勾留されてしまうと、起訴・不起訴が決定するまで最大20日間身柄拘束されますので、勤務先(学生の方は学校)に隠し通すことが困難となってきます。
また、社会的地位のある方や有名人の方が公然わいせつを犯した場合や、社会的な注目を浴びる事件内容や犯行の態様が重大である場合には、マスコミ報道されるリスクもあります。事案によっては実名報道されてしまい、職場や学校の知り合いに事件を知られてしまう可能性もあります。さらに有罪判決となれば懲戒解雇や退学の可能性もありますし、前科もつきます。
そのため、以下で説明するように、逮捕されたら早急に弁護士に相談し、適切な弁護活動をしてもらうことが今後のご自身やご家族の生活を守るためにも重要となってきます。
公然わいせつの逮捕で困ったら弁護士に相談
公然わいせつの疑いをかけられると、その場では逮捕されなかったとしても、防犯カメラの映像などから後日逮捕もあり得ます。
そのため、事件が起きた段階で早急に弁護士に相談し、事案に応じて弁護活動を依頼し、逮捕回避を目指した動きをとるべきでしょう。もし逮捕された場合であっても、弁護士による適切な弁護活動により、早期釈放や不起訴獲得の可能性も高まります。また、弁護士に依頼すれば、逮捕後の勤務先への連絡等の対応も一任することができます。
弊所では、公然わいせつ事件での逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、後日逮捕に怯えて不安な毎日をお過ごしの方や既に逮捕されてしまった方のご家族の方は弊所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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