一部執行猶予とは?刑の一部だけ猶予される制度を解説

一部執行猶予とは、刑期の一部を執行猶予とし、残りを実刑とする制度です。執行猶予期間を無事に経過すれば、猶予された刑期を受刑しなくて済みます。

「全部実刑と言われたが、少しでも服役期間を短くできないか」「自分が対象になるのか知りたい」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、刑事事件に注力する弁護士が、この制度について以下の内容を解説します。

  • 一部執行猶予とは?全部執行猶予との違い
  • 対象者・要件・期間
  • 薬物犯罪における特例
  • デメリット・注意点

なお、ご自身やご家族が刑事事件に直面し、一部執行猶予の可能性についてお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。

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一部執行猶予とは

一部執行猶予とは、拘禁刑の刑期のうち、一部の刑期を執行猶予とし、残りの刑期を実刑とし、その執行猶予期間を無事経過すると、猶予された刑期を受刑しなくて済むようになる法制度のことです。

※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。

例えば、判決で一部執行猶予を受ける場合は、裁判官から次のように言われます。
『主文。被告人を拘禁刑2年に処する。その刑の一部である拘禁刑10月の執行を2年間猶予する。』

この判決では、「まずは1年2月は刑務所で受刑してください」、「ただし、その後は社会復帰できます。そして、2年間何事もなく経過すれば、猶予された10月を受刑しなくていいですよ」ということを言われています。

このように、一部執行猶予は全部執行猶予と違い刑が執行されるので実刑の一種と考えられています。

一部執行猶予が導入される前は、判決の内容は「全部実刑」か「全部執行猶予」のいずれかでした。全部執行猶予は判決が確定すれば刑務所に入らず社会で生活できますが、一部執行猶予は実刑部分の服役を終えるまで社会復帰できない点が大きく異なります。全部執行猶予の要件を満たさない場合でも、一部執行猶予であれば社会の中で更生を図る道が開かれた、という位置づけの制度です。

一部執行猶予には、刑法上のものと薬物犯罪に関するものの2種類があり、それぞれ適用を受けるための要件が異なります。

執行猶予そのものの仕組みや実刑との違いについては「執行猶予とは?実刑との違いや認められる条件をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

刑法上の一部執行猶予の要件・内容

それでは、刑法上の一部執行猶予の要件・内容について、対象者、期間、要件、保護観察にわけてみていきましょう。

対象者

刑法上の一部執行猶予の対象者は、次の①~③のいずれかの者に該当し、かつ、判決で3年以下の拘禁刑の言い渡しを受ける者です。

  • ①前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者
  • ②前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
  • ③前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

「前に」というのは犯行時ではなく、判決時よりも前にという意味です。

また、「拘禁刑以上の刑」とは、死刑、拘禁刑のことを指し、罰金、拘留、科料は含まれません。

まず、①より、判決時に拘禁刑以上の刑の実刑、執行猶予の前科をもつ人は、基本的には一部執行猶予の対象者ではないことになります。

しかし、②より、判決時に拘禁刑以上の刑の全部執行猶予の前科をもつ人は、一部執行猶予の対象となります。

また、③より、判決時に拘禁刑以上の実刑の前科をもつ人であっても、その前科の執行を終えてから5年以内に再び拘禁刑以上の刑に処せられていなければ、対象者となります。

期間

一部執行猶予の期間は「1年以上5年以下」です。

前述のとおり、「拘禁刑2年、うち10月部分につき執行猶予2年」という判決を受けた場合、まず、1年2月につき刑務所で受刑し、その10月部分について2年間執行猶予となります。

この執行猶予期間は、判決が確定した時点ではなく、実刑部分の服役を終えた日から起算されます(刑法27条の2第2項)。上記の例であれば、1年2月の服役を終えて出所した日から2年間が執行猶予期間となります。

なお、実刑部分については仮釈放が認められる場合もあります。仮釈放の要件や手続きについては「仮釈放とは?3つの条件と期間、許可のために身元引受人が出来ること」で詳しく解説しています。

要件

要件は、一部執行猶予の対象者で、かつ、一部執行猶予に付する必要性・相当性があると認められることです。

必要性とは、なぜ、全部実刑ではなく、一部執行猶予とする必要があるのか、ということです。

具体的には、次の2点が必要とされています。

  • ①再犯のおそれがあること
  • ②1年以上の社会内処遇期間を確保して行う有用な処遇方法を想定できること

一部執行猶予も実刑の一部ですから①は認められることが多いです。

問題は②です。②は、社会復帰した後の更生・再犯防止に向けた具体的な対策・措置を練っているか、ということです。

この点、ある特定の犯罪傾向が進んでいる保護観察対象者については、保護観察所が主体となって実施する専門的処遇プログラムが用意されています。

専門的処遇プログラムは犯罪類型ごとに「性犯罪再犯防止プログラム」、「薬物再乱用防止プログラム」、「暴力防止プログラム」、「飲酒運転防止プログラム」の4種類が用意されています。

そのため、専門的処遇プログラムを受けることが想定される方については②の要件、すなわち、必要性の要件を満たしやすいといえます。

他方で、特定の犯罪傾向が進んでいない方については、上記の専門的処遇プログラムが用意されていません。

したがって、特定の犯罪傾向が進んでいる方に比べて、より独自の具体的な対策・措置を検討し、裁判で、社会内での対策・措置を講じる必要性があることを主張・立証していくことが求められます。

次に、相当性とは、仮に必要性の要件を満たす場合でも、本当に実効性があるかどうかということです。

実効性があるかどうかは、本人の更生意欲、社会復帰後の生活環境(適切な身元引受人がいる、住所が定まっている、定職につく予定があるなど)、対策・措置の効果などを勘案して判断されます。

保護観察

刑法上の一部執行猶予の場合、保護観察を付けるかどうかは裁判官の裁量に委ねられています。

薬物犯罪の一部執行猶予の要件

薬物犯罪で一部執行猶予の適用を受ける要件については、刑法ではなく、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」に規定されています。

この規定によると、要件は以下のとおりです。

  • ①薬物の使用や単純所持などの罪(薬物使用等の罪)を犯したこと
  • ②その罪、又はその罪及び他の罪について3年以下の拘禁刑の判決の言い渡しを受けること
  • ③必要性、相当性の要件を満たすこと

刑法上の一部執行猶予と大きく異なる点は前科の要件が不要となっている点です。すなわち、執行猶予期間中の方、前刑の執行を終えてから5年以上が経過している方はもちろん、5年以内の方(累犯前科者といいます)でも、一部執行猶予の対象者です。累犯前科者の定義や累犯加重については「累犯・累犯加重とは?再犯との違いや執行猶予との関係を解説」をご参照ください。

その他、必ず保護観察が付く点が刑法上の一部執行猶予と大きく異なります。

一部執行猶予の実情

令和7年版犯罪白書によれば、令和6年中に地方裁判所で3年以下の懲役・禁錮の有罪判決(実刑、一部執行猶予、全部執行猶予を含む)を受けた人の数は「40,794人」でした。

そのうち、一部執行猶予の判決を受けた人は「597人」で、全体の約1.5%という状況です。

もっとも、令和6年中に覚醒剤取締法違反で3年以下の懲役・禁錮の判決を受けた人の数は「4,271人」で、そのうち一部執行猶予の判決を受けた人が「511人(全体の約12.0%)」と一定数いることがわかります。

その他の薬物犯罪では、大麻取締法違反で32人、麻薬取締法違反で20人が一部執行猶予の判決を受けています。

一部執行猶予のデメリット・注意点

一部執行猶予は服役期間を短くできる可能性がある一方で、利用するうえで注意すべき点もあります。

まず注意したいのは、社会内で見守りを受ける期間が全体として長くなりやすいことです。一部執行猶予では、まず実刑部分を刑務所で服役し、出所した後も猶予期間が続きます。この猶予期間中は保護観察が付くなどして事実上の監視下に置かれることが多く、実刑部分の服役期間と猶予期間を合わせると、全部実刑の場合よりも長い期間にわたって刑の影響下に置かれることになります。

もう一つの注意点は、執行猶予が取り消されるリスクです。猶予期間中に遵守事項に違反したり再び罪を犯したりすると、執行猶予が取り消され、猶予されていた刑期について改めて服役しなければならない可能性があります。

こうしたことから、実刑期間が多少延びても早く刑の影響下から抜け出したいと考える方にとっては、一部執行猶予が必ずしも有利とは限りません。ご自身やご家族にとってどちらが望ましいかは、見込まれる実刑期間や猶予期間を踏まえて慎重に判断する必要があります。

一部執行猶予でお悩みの方は弁護士にご相談ください

一部執行猶予は、全部実刑よりも早く社会へ戻れる可能性がある一方で、実刑を前提とする制度であり、出所後も一定期間は制約が残る点に注意が必要です。自分の状況で一部執行猶予を目指すべきかどうかは、見込まれる刑期や出所後の生活環境によって変わってきます。

一部執行猶予の獲得を目指す場合、対象者の要件を満たすだけでなく、社会内での更生計画や再犯防止の取り組みを裁判で具体的に主張・立証しなければなりません。こうした準備は簡単ではなく、そもそもそれが本人にとって有利かどうかの見極めも含めて、刑事弁護の経験が結果を大きく左右します。

刑事事件は判決までの時間が限られています。判決を控えて不安を抱えている方や、すでに起訴されて今後の見通しを知りたいという方も少なくありません。一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。

当事務所では、刑事事件に注力する弁護士が、一部執行猶予を含めた最善の弁護方針をご提案します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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