刑の一部執行猶予の制度とは?要件は?弁護士がわかりやすく解説

これまでの法律では、裁判官は、全部実刑または全部執行猶予のどちらかしか刑の言い渡しができませんでした。

しかし、犯罪を犯した者の再犯防止と改善更生のためには、刑事施設内での処遇と社会内での処遇を連携させることがより有用であるとの考えから法改正が行われ、平成28年6月1日より「刑の一部執行猶予の制度」が施行されました。

この記事では、

  • 一部執行猶予とは?全部執行猶予とどう違う?
  • 一部執行猶予の要件や内容は?
  • 薬物犯罪の一部執行猶予についても知りたい…

といった疑問を解消すべく、弁護士がわかりやすく解説していきます。

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一部執行猶予とは

一部執行猶予とは、懲役、禁錮の刑期のうち、一部の刑期を実刑とし、残りの刑期を執行猶予とし、その執行猶予期間を無事経過すると、残りの刑期を受刑しなくて済むようになる法制度のことです

判決で一部執行猶予を受ける場合は、裁判官から次のように言われます。

主文。
被告人を懲役2年に処する。
その刑の一部である懲役10月の執行を2年間猶予する。

この判決では、「はじめ1年2月は刑務所で受刑してください」、「ただし、その後は社会復帰できます。そして、2年間何事もなく経過すれば、残りの10月を受刑しなくていいですよ」ということを言われています。

一部執行猶予には刑法上の一部執行猶予と薬物犯罪の一部執行猶予の2種類があり、それぞれ条件が異なります。

全部執行猶予との違い

全部執行猶予とは、懲役、禁錮の刑期のすべてを執行猶予とするものです。

≫執行猶予とは?実刑とどう違う?執行猶予がつく3つの条件とは

すなわち、全部執行猶予の場合、執行猶予が取り消されるまでは、刑務所で受刑する必要はありません。

これに対して、一部執行猶予の場合、まずは刑務所で受刑する必要があります

そして、一部の刑期につき受刑した後、執行猶予がついた残りの刑期分については受刑する必要がなくなるというものです。

以上、受刑の有無の違いから、全部執行猶予は執行猶予、一部執行猶予は執行猶予ではなく実刑と考えられています。

刑法上の一部執行猶予の条件・内容

それでは、刑法上の一部執行猶予の条件・内容について、対象者、期間、要件、保護観察にわけてみていきましょう。

対象者

刑法上の一部執行猶予の対象者は、次の①~③のいずれかの者に該当し、かつ、判決で3年以下の懲役又は禁錮の言い渡しを受ける者です。

  • ①前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
  • ②前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
  • ③前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

「前に」というのは犯行時ではなく、判決時よりも前にという意味です。

また、「禁錮以上の刑」とは、死刑、懲役、禁錮のことを指し、罰金、拘留、科料は含まれません。

まず、①より、判決時に禁錮以上の刑の実刑、執行猶予の前科をもつ人は、基本的には一部執行猶予の対象者ではないことになります。

しかし、②より、判決時に禁錮以上の刑の全部執行猶予の前科をもつ人は、一部執行猶予の対象となります。

また、③より、判決時に禁錮以上の実刑の前科をもつ人であっても、判決時に、その前科の刑期が終了してから5年以上が経過しており、かつ、その間、禁錮以上の刑に処せられたことがない場合は一部執行猶予の対象者となります。

期間

一部執行猶予の期間は「1年以上5年以内」です。

前述のとおり、「懲役2年、うち10月部分につき執行猶予2年」という一部執行猶予判決を受けた場合、まず、1年2月につき刑務所で受刑し、残りの10月について2年間執行猶予となります。

要件

要件は、一部執行猶予の対象者で、かつ、一部執行猶予に付する必要性・相当性があると認められることです。

必要性とは、なぜ、全部実刑ではなく、一部執行猶予とする必要があるのか、ということです。

具体的には、次の2点が必要とされています。

  • ①再犯のおそれがあること
  • ②1年以上の社会内処遇期間を確保して行う有用な処遇方法を想定できること

一部執行猶予も実刑の一部ですから①は認められることが多いです。

問題は②です。②は、社会復帰した後の更生・再犯防止に向けた具体的な対策・措置を練っているか、ということです。

この点、ある特定の犯罪傾向が進んでいる保護観察対象者については、保護観察所が主体となって実施する専門的処遇プログラムが用意されています。

専門的処遇プログラムは犯罪類型ごとに「性犯罪者処遇プログラム」、「薬物再乱用防止プログラム」、「暴力防止プログラム」、「飲酒運転防止プログラム」の4種類が用意されています。

そのため、専門的処遇プログラムを受けることが想定される方については②の要件、すなわち、必要性の要件を満たしやすいといえます。

他方で、特定の犯罪傾向が進んでいない方につては、上記の専門的処遇プログラムが用意されていません。

そのため、特定の犯罪傾向が進んでいる方に比べて、より独自の具体的な対策・措置を検討し、裁判で、社会内での対策・措置を講じる必要性があることを主張・立証していくことが求められます。

次に、相当性とは、仮に必要性の要件を満たす場合でも、本当に実効性があるかどうかということです。

実効性があるかどうかは、本人の更生意欲、社会復帰後の生活環境(適切な身元引受人がいる、住所が定まっている、定職につく予定があるなど)、対策・措置の効果などを勘案して判断されます。

保護観察

刑法上の一部執行猶予の場合、保護観察を付けるかどうかは裁判官の裁量に委ねられています。

薬物犯罪の一部執行猶予の条件

薬物犯罪の一部執行猶予の条件については、刑法ではなく、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」に規定されています。

この規定によると、薬物犯罪の一部執行猶予の条件は以下のとおりです。

  • ①薬物犯罪を犯したこと
  • ②薬物犯罪又は薬物犯罪及び他の罪について3年以下の懲役又禁錮の判決の言い渡しを受けること
  • ③必要性、相当性の要件を満たすこと

刑法上の一部執行猶予と大きく異なる点は前科の条件が不要となっている点です。

すなわち、執行猶予期間中の方、前刑の刑の終了から5年以上が経過している方はもちろん、5年以内の方(累犯前科者といいます)でも、一部執行猶予の対象者です。

その他、必ず保護観察がつく点が刑法上の一部執行猶予と大きく異なります。

一部執行猶予の実情

令和2年度版の犯罪白書によれば、令和元年中に3年以下の懲役、禁錮の有罪判決(実刑、一部執行猶予、執行猶予を含む)を受けた人の数は「42,564人」でした。

そのうち、一部執行猶予の判決を受けた人は「1,363人」で、全体の約3%という状況です。

もっとも、令和元年中に薬物犯罪で3年以下の懲役、禁錮の罪判決(実刑、一部執行猶予、執行猶予を含む)を受けた人の数は「8,346人」で、そのうち、一部執行猶予の判決を受けた人が「1,281人(全体の約15%)」と一定数いることがわかります。

なお、1,281人の内訳は、覚せい剤が「1,230人」で最も多く、次に大麻が「37人」、麻薬が「14人」でした。

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