- 初めてなので、告訴・告発の方法がわからない…
- 告訴状や告発状が受理されるとどんな効果があるのか…
- 受理してもらうためになにに気を付けておけばいいのか…
こういったお悩みや疑問を、刑事事件に強い弁護士が解消していきます。
記事を読むことで、告訴・告発の方法のほか、受理してもらうための注意点もわかりますので、最後まで読んでみて下さい。
なお、告訴・告発について理解を深めておきたい方は、告訴・告発とは?被害届や起訴とはどう違う?弁護士が分りやすく解説も合わせて読んでみて下さい。
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目次
告訴の方法
告訴とは、犯罪の被害者や法律で告訴できると規定されている人(以下、告訴権者といいます)が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことをいいます。
以下では、告訴の方法について、
- 告訴の方式
- 告訴状の提出先
- 告訴状の提出方法
にわけて解説します。
告訴の方式
書面又は口頭で行います。
書面で行う場合は、表題を「告訴状」として書面に、
- 日付
- 宛名
- 告訴人の氏名・住所・電話番号
- 被告訴人の氏名・住所・電話番号(判明している場合)
- 告訴の趣旨
- 告訴の事実
- 証拠(方法)
を記載し、証拠を添付して提出先に提出します。
口頭で行った場合は告訴調書という書面が作成されます。
以上、法律上は書面又は口頭による告訴が可能となっています。
ただ、手続きの明確性という観点からは、書面(告訴状)による告訴を求められることが多いです。
告訴状の提出先
告訴状の提出先は「検察官」又は「司法警察員」です。
司法警察員とは、警察官の場合、基本的には巡査部長以上の階級にある警察官のことです。
ただ、巡査部長、警部補、警部宛てに告訴状を提出することはありません。
警視又は警視正の階級にある警察官(警察署長など)宛てに告訴状を提出することが多いです。
告訴状は検察、あるいは警察のいずれに提出しても有効です。
ただ、一定の事件を除いて、検察官が捜査の初期段階から捜査することはありませんから、警察宛てに提出することが多いです。
では、どこの検察、警察に告訴状を提出すべきかですが、必ずしも事件を管轄する検察、警察に告訴状を提出しなければならないわけではありません。
つまり、どの検察、警察に提出してもよいわけですが、告訴状が受理された後の捜査のことを考えると事件を管轄する検察、警察に提出した方がよいです。
告訴状の提出方法
告訴状の提出方法は、
- 検察、警察に告訴状を持参して提出
- 郵送による提出
- 代理人による提出
の3種類です。
このうち「検察、警察に告訴状を持参して提出」する方法が一般的です。
何より捜査機関に対して犯人を処罰して欲しいという明確なメッセージを発することができます。
また、告訴状に形式的な不備がある場合は、係員からその場で指摘してもらうことができます。
郵送や代理人による提出は、やむを得ず持参できない場合の代替手段と考えておきましょう。
なお、代理人によって提出する場合は、告訴権者作成名義の委任状が必要となります。
告発の方式
告発とは、犯人又は告訴権者以外の第三者(以下、告発権者といいます)から捜査機関に対し、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことです。
告発の方式は告訴とほぼ同様です。
すなわち、告発状という書面を検察官又は司法警察員に対して提出します。
提出方法は、検察、警察に告発状を持参して提出する方法が一般的です。
告発については、検察官への告発が義務となっている事件があります。
たとえば、
- 国税犯則取締法の規定する犯則事件
- 独占禁止法違反に関する事件
などです。
その他、政治家が関係する事件(公職選挙法違反、政治資金規正法違反、贈収賄罪など)、大規模な経済事件などは検察官に対して告発します。
告訴・告発の受理
警察官については、警察官が捜査を行うにあたって気を付けるべき心構えについて規定した犯罪捜査規範63条に次の規定が設けられています。
(告訴、告発および自首の受理)
第六十三条 司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。
この規定による限り、告訴、告発した以上、警察官は必ずこれを受理しなければならない、とも解釈できそうです。
もっとも、警察官が告訴、告発を受理するのは、あくまで有効な告訴、告発がなされた場合です。
犯罪事実が不明確なもの、犯罪事実が特定されないもの、犯罪事実の内容から犯罪が成立しないことが明白なもの、公訴時効が成立しているものにかかる告訴、告発は有効な告訴、告発とはいえず受理されません。
また、そもそも犯罪捜査規範は警察官に対して捜査の規範(心構え)を示しているにすぎません。
つまり、上の規定は警察官が告訴、告発を受理すべき法的な義務を定めた規定ではないということです。
法律上も、検察官、警察官の告訴、告発の受理義務を定めた規定は存在しません。
そのため、仮に検察官、警察官が告訴、告発を受理しなかったとしても、直ちに違法とまではいえないのです。
告訴・告発が受理されにくい理由
よく「捜査機関(検察官、警察官)が告訴、告発を受理してくれない」という声を耳にします。
ただ、捜査機関が一度、告訴、告発を受理すると、捜査のためそれなりの人員と時間を割かなければなりません。
一方で、検察官、警察官は日頃から数多くの事件を抱えており、特定の事件に充てることができる人員と時間は限られています。
そして、その限られた資源を有効に活用して、犯人に刑罰を科すという結果を出さなければなりません。
そのため、捜査機関が告訴、告発を受理するかどうかどうかは、そもそも刑事訴追する価値があるのか、刑事訴追しても有罪を勝ち取れる見込みがあるのかという観点から判断されます。
告訴、告発は個人の報復目的や経済的利益の回復になされることも珍しくはありません。
しかし、捜査の途中で示談が成立するなどして処罰感情が薄れ告訴、告発が取り消されてしまうと、それまでの捜査で積み上げてきたものが無駄となってしまう可能性があります。
そうすると、はじめから貴重な人員と時間を他の事件の捜査に割けばよかった、という話にもなりかねないのです。
確かに、告訴、告発をするか否か、受理された告訴、告発を取り消すか否かは個人の自由です。
しかし、以上のような捜査機関の思惑から、捜査機関が告訴、告発を受理するかにあたって慎重にならざるを得ない、というのが実情なのです。
告訴、告発が受理された場合の効果
先の犯罪捜査規範67条本文には、「警察官は告訴、告発を受理したときは、特にすみやかに捜査を行うように努める」としか記載されていません。
つまり、捜査機関が告訴、告発を受理したとしても、捜査は捜査機関の努力義務にすぎない、ということになります。
努力義務ということは、捜査機関に捜査を行うよう強制することはできず、捜査を行うか否か、いつ・どのような捜査を行うかは捜査機関の判断に委ねられているのです。
もっとも、刑事訴訟法242条には「警察官が告訴、告発を受理したときは、速やかに事件書類や証拠物を検察官に送付しなければならない」と規定されています。
そのため、警察官が告訴、告発を受理した以上、まったく捜査を行わないということは考えられず、一定の捜査を行った上で検察官に送付することとなるでしょう。
告訴、告発を受理してもらうためには?
捜査機関に告訴、告発を受理してもらうためには以下の点に気を付けるとよいです。
可能な限り証拠を集めておく
告訴状、告発状を提出する際は一定の証拠資料を添付する必要があります。
また、捜査機関は告訴、告発の事実に事件性があると判断しなければ、告訴、告発を受理してくれません。
事件性があることを証明するためにも証拠が必要です。
警察、検察に事前相談する
都道府県の警察本部、警察署内には「告訴・告発センター」が設けられているところもあります。
また、検察庁内にも告訴、告発を受け付ける専門の係がいますので、事前に相談することができます。
示談については曖昧な返答にとどめる
最初から示談意向があることを示すと「どうせ後で告訴、告発が取り消されるのだろう」と思われ、受理に対して消極的な態度をとられてしまう可能性があります。
とはいえ、示談するかどうかはあなたの自由です。示談のことを聴かれても「検討中です」と曖昧な返答にとどめておくようにしましょう。
弁護士、行政書士に相談する
ご自分で対応することが難しい場合は、告訴状、告発状の作成や相談、提出への同行などにも対応してくれる専門の弁護士、行政書士に相談するのも一つの方法です。
会話を録音しておく
告訴、告発を受理してくれず、後日、苦情を申し立てる(※)ときのために相談時、受付時の会話をボイスレコーダーなどで録音しておきましょう。苦情を申し立てたからといって必ず受理されるとは限りませんが、一定の効果は見込めます。
※申立先としては、警察であれば「都道府県公安委員会」、「警察本部の監査室」などがあります。検察であれば各検察庁の長である「検事正(地方・支部の場合)」、「検事長(高検の場合)」宛てに書面を提出することなどが考えられます。
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