
暴行罪の初犯なら刑務所に行かずに済むのか、罰金はいくらか、前科はつくのか。最初に抱くのは、この3つでしょう。
結論からお伝えすると、暴行罪の初犯は不起訴か罰金で終わるケースが大半です。刑務所に入る実刑はまれ、罰金なら10万円から30万円。ただし罰金でも前科は残ります。残らないのは、起訴されずに終わったときです。
もっとも暴行の内容や事件後の対応しだいでは、初犯でも正式に起訴され、拘禁刑(旧・懲役刑)を科されることがあります。
暴行事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- 暴行罪の初犯でも逮捕されるのか
- 初犯で科される罰金の相場はいくらか
- 初犯でも拘禁刑になりやすいケース
- 前科をつけずに終わらせる方法
お読みいただくことで、ご自身のケースがどの結末に近いかが分かります。
暴行罪について早急に対応したい方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。
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暴行罪とは?暴行にあたる行為と法定刑
暴行罪は、人に手を出したものの、相手が怪我をするまでには至らなかった場合に成立する犯罪です。刑法208条は次のように定めています。
(暴行)
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
出典:e-Gov法令検索
「拘禁刑」は聞き慣れない言葉かもしれません。2025年6月1日施行の改正刑法により、それまでの懲役と禁錮がひとつにまとめられ、この名称に変わりました。本記事の法定刑の記載は改正後の内容です。
暴行にあたる行為、あたらない行為
ここでいう暴行とは、他人の身体へ不法な力(有形力)を加えることをいいます。殴る・蹴るに限られず、次のように身体へ直接触れる行為が典型例です。
- 殴る、蹴る、叩く
- 突き飛ばす、押し倒す
- 腕をつかんで引っ張る
- 髪の毛を引っ張る
- 胸ぐらをつかむ
相手に触れていなくても暴行と評価されることがあります。裁判例では、人をめがけて物を投げつける行為や、狭い室内で刃物を振り回す行為も暴行にあたるとされてきました。
怒鳴っただけなら大丈夫と思われがちですが、耳元で大音量を浴びせるなど、音や振動が身体に働きかけたといえる場合には成立の余地があります。
- 着ている服を引っ張る
- 物を投げつける(命中しなくても成立する場合があります)
- 水や塩をかける
- 至近距離で耳元に大音量を浴びせる
反対に、満員電車で体が触れ合った程度の接触は暴行罪にあたらないのが通常です。成立には故意も必要で、うっかり手足が当たっただけで処罰されることは基本的にありません。
怪我をさせると傷害罪に切り替わる
暴行罪と傷害罪を分けるのは、相手が怪我をしたかどうかの一点です。同じ行為でも打撲やすり傷を負わせれば傷害罪(刑法204条)となり、法定刑は15年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金へと一気に重くなります。
被害者が診断書を出せば、捜査は傷害罪の前提で進みます。両者の線引きは「暴行罪と傷害罪の違いは?成立要件とどちらが重いかを解説」で整理しています。
暴行罪の初犯でも逮捕される?3つのパターン
暴行罪は、初犯だから逮捕されないという犯罪ではありません。逮捕状が出るかどうかをまず決めるのは、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるかどうかであって、前科の有無そのものが要件になっているわけではないからです。とはいえ初犯という事情がまったく効かないわけでもなく、逮捕の形によって働き方が変わります。
なお、ここでいう初犯とは、有罪の裁判(判決のほか略式命令を含みます)が確定した前科がないことをいいます。過去に捜査を受けた記録(前歴)が残っていても、有罪の裁判が確定していなければ初犯です。
| 比べる点 | 現行犯逮捕 | 通常逮捕 | 在宅事件 |
| 手続きの根拠 | 逮捕状なしで行える | 裁判官の逮捕状が要る | 逮捕しない |
| 起きる場面 | 暴行の最中か直後 | 被害届が出て捜査が進んだ後 | 捜査の全期間 |
| 初犯の効き方 | ほとんど効かない | 有利に働きやすい | 有利に働きやすい |
| 生活への影響 | その場で警察署へ連行される | ある日突然、身柄を押さえられる | 呼び出しに応じつつ普段どおり過ごせる |
その場で捕まる現行犯逮捕
現行犯逮捕は、暴行の最中か直後にその場で身柄を押さえる手続きです。犯人であることが目の前で明らかなため逮捕状は要らず、警察官だけでなく居合わせた人でも行えます。
逮捕の根拠になるのは犯行そのものであり、初めての事件かどうかが効く場面はほとんどありません。駆けつけた警察官の目前でまだ興奮が収まっていない状況なら、初犯でも身柄を押さえられる可能性は高いといえます。
現場を離れた後でも、被害者や目撃者に追いかけられて暴行と逮捕との近さが保たれていれば、準現行犯として逮捕されることがあります。
日を置いてからの通常逮捕
通常逮捕(後日逮捕)には、裁判官が発付した逮捕状が要ります。必要なのは、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由です。
もっとも、それがあっても、逃げるおそれも証拠を隠すおそれもなく、逮捕する必要がないことが明らかな場合には、逮捕状は出されません。
暴行事件では、被害者や目撃者の供述、現場付近の防犯カメラ映像が有力な証拠になります。これらに信用性があれば、疑うに足りる理由の部分は認められやすいでしょう。
分かれ目はその先です。初犯の場合、後述のとおり不起訴か罰金で終わることが多く、刑を恐れて逃げる動機が乏しいと見られやすいため有利に働きます。定まった住まい、同居する家族、勤め先への在籍、警察の連絡への対応も同じ方向に効きます。
反対に、被害者と同居している、住所を知っていて接触できる立場にあるといった事情があると、証拠隠滅のおそれが重く見られます。事実を否認している場合も同様で、早い段階で弁護士に相談しておくことが逮捕の回避につながります。
逮捕されずに進む在宅事件
身元がはっきりしていて逃げるおそれがないと判断されると、逮捕されないまま在宅事件として捜査が進みます。呼び出しを受けたときに出向いて取り調べを受け、それ以外は普段どおり過ごせる形です。
勤め先があり家族と暮らしていて、事実関係も素直に認めている初犯の事案では、この形になることが少なくありません。仕事や学校を休まずに済む点は大きな利点です。
ただし在宅でも捜査は進んでおり、起訴されて有罪となれば前科がつく点に違いはありません。逮捕された場合の手続きの進み方は「暴行罪で逮捕されたら?逮捕後の流れや刑罰を解説」にまとめています。
暴行罪の初犯に下される処分は?罰金の相場と拘禁刑
暴行事件を起こした人が全員裁判にかけられるわけではありません。事件が特に軽く被害者も処罰を望んでいなければ、警察限りで終える微罪処分になることもあります。
令和6年に微罪処分となった刑法犯は4万7,974人で、全検挙人員の25.0%にあたります(法務省「令和7年版犯罪白書」第2編第2章第1節・警察庁の統計による)。検察官へ送られないため、この段階で終われば前科は残りません。
検察官に送致された後は、起訴か不起訴かが決まります。令和6年に暴行罪で起訴・不起訴が決まったのは1万6,713人で、内訳は起訴4,614人、不起訴1万2,099人でした(e-Stat「令和6年検察統計」第8表・罪名別被疑事件の既済及び未済の人員)。
起訴率にすると27.6%、裏を返せば72.4%が不起訴です。不起訴のうち1万427人は起訴猶予でした。起訴された4,614人のうち3,935人は略式命令の請求で、法廷が開かれる公判請求は679人、1万6,713人の4.1%にとどまります。ただしこれは暴行罪全体の数字で、初犯だけを取り出したものではありません。
初犯という事情は、逮捕の場面よりも、この起訴・不起訴の判断と刑の重さを決める場面で効きます。更生の余地が大きいと評価されやすいからです。想定される結末は次の3つです。
起訴されずに終わる不起訴処分
不起訴処分とは、検察官が公訴を提起しないと決めて手続きを終えることです。証拠上、犯罪の成立が認められない場合(嫌疑なし・嫌疑不十分)のほか、犯罪は認められるが訴追の必要はないと判断する起訴猶予も含まれます。
有罪の裁判が確定しないため、前科は残りません。身柄を拘束(勾留)されていた場合も、決定が出ればその日に釈放されます。
前科がつくのは、起訴されたうえで有罪が確定したときだけです。逮捕された段階では、まだ前科にはなりません。ここを混同して「もう終わりだ」と思い込む方が多いのですが、起訴前なら弁護士とともに打てる手は残っています。
暴行の事実を争わない初犯の事案で現実に目指すのは、このうちの起訴猶予です。
略式手続で科される罰金刑
起訴される場合でも、本人が事実を認め、略式手続によることに異議がない旨を書面で明らかにしたときは、法廷を開かず書面審理だけで金額を決める略式手続によるのが一般的です。異議を述べれば通常どおり公判で審判を受けられます。出されるのは判決ではなく略式命令で、指定された金額を納めれば終わります。
暴行罪の罰金の相場は、10万円から30万円です。突き飛ばした、胸ぐらをつかんだといった比較的軽い態様なら10万円台にとどまることが多く、殴る蹴るを繰り返した、道具を用いたといった事情が加われば上限に近づきます。
略式手続について「100万円以下の罰金または科料」と説明されることがあります。この100万円は、簡易裁判所が略式命令で科せる上限(刑事訴訟法461条)にすぎず、個々の犯罪の法定刑を超えることはできません。暴行罪で科される罰金の上限は、あくまで30万円です。
手続きの流れは「略式起訴とは?前科・罰金相場・手続きの流れをわかりやすく解説」をご覧ください。罰金を納めれば刑務所には入りませんが、略式命令も有罪の言渡しである以上、罰金刑は前科として記録に残ります。
正式な裁判で言い渡される拘禁刑
正式に起訴されると、公開の法廷で審理を受けます。有罪となった場合に言い渡されるのは、長くても2年の拘禁刑か、30万円以下の罰金です。条文には拘留と科料も挙がっていますが、実務で選ばれることはほとんどありません。
もっとも、初犯でいきなり刑務所に収容される実刑となる例はまれです。刑法25条1項1号は、拘禁刑以上の刑を受けたことがない人が3年以下の拘禁刑を言い渡された場合、情状により1年以上5年以下の期間、その執行を猶予できると定めています。暴行罪の上限は2年ですから、初犯であればこの条文の対象に入ります。
執行猶予とは、拘禁刑の言渡しは受けるものの、その執行を一定期間待ってもらう制度です。猶予期間中に問題を起こさなければ刑務所に入ることはなく、これまでどおり仕事や生活を続けられます。
取消しを受けることなく猶予期間を経過すれば、刑の言渡しは効力を失います(刑法27条1項)。もっとも、有罪の裁判を受けた事実が消えるわけではないため、前科は残ります。
猶予を取り消されるのは、猶予期間中にさらに罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予がつかなかった場合などです(同26条・26条の2)。
暴行罪の初犯でも拘禁刑になりやすい3つのケース
拘禁刑が言い渡されるのは、正式に起訴された場合だけです。略式手続で科せるのは罰金か科料に限られるため、正式起訴に傾く事情が、そのまま拘禁刑のリスクになります。
暴行罪の初犯が正式起訴されるのは例外的な場面ですが、次の3つのいずれかに当てはまると、その可能性が現実味を帯びます。
事件内容が悪質なケース
事件内容の悪質性が評価されるのは、暴行そのものの危険性が高い場合です。ナイフやバットのような道具を持ち出した、複数人で一人を取り囲んだ、長時間にわたり暴行を繰り返した、といった事情が挙げられます。
計画性や常習性がうかがえる場合も同様です。配偶者やパートナーに対する暴行のように、長年繰り返されてきた事案では、初犯でも常習性が認められ、重い処分へ傾きます。結果の軽さだけで処分が決まるとは限りません。
配偶者やパートナーへの暴行でお悩みの方は「DVで逮捕される基準は?問われる罪と早期釈放の方法を弁護士が解説」もあわせてご確認ください。
暴行を否認しているケース
証拠から見て暴行があったことが明らかなのに、やっていないと主張し続けている場合も正式起訴に傾きます。事実を争っている以上、書面だけで済ませる略式手続は使えず、法廷で証拠調べを行う必要があるからです。
初犯であっても反省が示されていないと評価されれば、同じことを繰り返すのではないかと見られてしまいます。
ただし、身に覚えがないのに認めるべきだという意味ではありません。争うべき事案かどうかは、取り調べを受ける前に弁護士へ相談して見極めるのが安全です。
処罰感情が厳しく、示談が成立していないケース
被害者の処罰感情が厳しく、示談がまとまっていない場合も正式起訴のリスクが上がります。暴行罪に至った経緯や相手との関係によっては、話し合いのテーブルに着いてもらえないこともあるでしょう。
示談の成立は、加害者に有利な事情として量刑にも反映されます。裏を返せば、被害の回復も許しも得られていない状態は、検察官が起訴すべきと考えやすい状態だということです。
| 判断のポイント | 不起訴に近づく事情 | 起訴に近づく事情 |
| 前科・前歴 | 前科がなく、同種の前歴もない | 前科がある、または同種の前歴が重なっている |
| 被害者との関係 | 示談が成立し、許す意思が示されている | 示談ができず、厳罰を望まれている |
| 暴行の内容 | 1回きりで、道具を使っていない | 道具を用いた、繰り返した、複数人で加わった |
| 本人の姿勢 | 事実を認め、謝罪している | 事実を争い、反省が見られない |
| 生活の基盤 | 定職と同居家族があり、監督が期待できる | 住所が定まらず、連絡が取りにくい |
ただし、3つのいずれかに当てはまったからといって、ただちに刑務所に入るわけではありません。正式に起訴されても、初犯であれば執行猶予がつき、収容されずに済むケースが大半です。実刑まで進むのは、複数の事情が重なり、暴行の危険性が特に高いと判断された場合に限られます。
前科をつけないために不起訴処分を獲得する方法
暴行罪で起訴されてしまうと、その後に有罪を免れるのは難しくなります。前科を避けるには、検察官が処分を決める前に動くことが決定的に重要です。
罪を認め、被害者に謝罪の意を伝える
出発点は、暴行罪の事実を認め、反省の気持ちを相手に届けることです。示談は金銭だけの問題ではなく、被害者が許せるかどうかで決まる部分が大きいためです。
交渉を持ちかける前に、まず謝罪文などの形で反省と謝罪の意思を伝えます。ここを飛ばして金額の話から入ると、誠意がないと受け取られ、話し合いが行き詰まりかねません。
被害者と示談を成立させる
検察官が処分を判断するにあたり、被害者が処罰を望んでいるかどうかは大きな比重を占めます。示談書に、被害者が加害者を許し処罰を求めない旨の条項(宥恕条項)を入れてもらえれば、不起訴の可能性は大きく高まります。
暴行罪の示談金の目安はおおむね10万円から30万円ですが、暴行の程度や被害者の心情によって上下します。示談が成立して不起訴になれば、罰金を納める必要はありません。示談をしても起訴され、罰金刑が科された場合には、示談金とは別に罰金を納めることになります。
金額の決まり方や交渉の進め方は「暴行罪の示談金・慰謝料の相場は?金額の決まり方も解説」にまとめています。
示談交渉は弁護士に任せる
壁になるのが、そもそも被害者と連絡が取れないという問題です。捜査機関が加害者側へ被害者の連絡先を伝えることは、原則としてありません。面識のない事件では謝罪文の送り先すら分からないのが実情です。
弁護士であれば、被害者の同意を得たうえで、弁護士限りという条件で連絡先の開示を受けられる場合があります。本人が直接接触すると、被害者に恐怖を与えたり証拠隠滅を疑われたりして、かえって立場を悪くしかねません。
面識のある相手でも、当事者同士では感情のもつれから話が進まないことがよくあります。
被害者が話し合いに応じない場合でも、打つ手がなくなるわけではありません。反省文を書く、家族が監督を誓約する書面を用意する、被害弁償の申し出を記録に残すといった形で、反省と被害回復の努力を検察官に伝えることはできます。何を積めるかは事案によって変わりますので、早い段階で弁護士にご相談ください。弁護士が間に入ることで、落ち着いた話し合いと早期の解決につながります。
示談がまとまらないまま手続きが進んだ場合の見通しは「暴行罪で示談しないとどうなる?前科・起訴リスクと対処法を解説」をご覧ください。
暴行罪の初犯でお困りの方は弁護士にご相談ください
ここまで見てきたとおり、暴行罪の初犯の多くは不起訴か罰金で決着します。反対に、態様が悪質だったり、示談が整わないまま手続きが進んだりした場合には、正式な裁判にかけられる可能性が高まります。
有罪となれば拘禁刑が言い渡されることもあり、悪質性が高い事案では執行猶予がつかないこともあります。
その分かれ目を左右するのが、検察官が処分を決めるまでに示談を成立させられるかどうかです。弁護士に依頼すれば、被害者の連絡先の確認から交渉の代理まで任せられます。
ご本人では話し合いの入口にすら立てない場面でも、弁護士が間に入ることで示談がまとまり、不起訴につながることは少なくありません。
警察から連絡が来た、被害届が出されたと聞いた。そうした状況に置かれた方の不安は、周囲にはなかなか伝わらないものです。処分が決まるまでの時間は限られていますから、迷っている間に選べる手が減っていきます。
当事務所は、暴行罪をはじめとする刑事事件を数多く取り扱ってきました。ご依頼者の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

