泥酔中の犯罪は記憶がなくても刑事責任を問われる?逮捕と前科を解説

「泥酔して記憶がないけれど、自分は何か犯罪をしてしまったのではないか」「覚えていないのだから、罪には問われないのでは」。そんな不安を抱えている方へ、結論からお伝えします。泥酔して記憶がなくても、それだけで刑事責任を免れることは実務上ほとんどありません。責任の有無は、翌日の記憶ではなく犯行時の状態で判断されるためです。

もっとも、身柄拘束が長引くか、前科がつくかは、事件の後の動き方で大きく変わります。この記事では、泥酔時の刑事事件の弁護に強い弁護士が、次の点を解説します。

  • 泥酔して記憶がない場合の刑事責任
  • 泥酔での犯罪で逮捕されるケース
  • 泥酔して犯罪をした場合に成立する罪
  • 前科を避けるために今からすべきこと

お読みいただくことで、警察にどう対応し、今日から何をすべきかを自分のケースに当てはめて整理できます。

なお、警察の動きが気になっている方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。地域を問わずご相談を承っています。

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泥酔して記憶がなくても犯罪の刑事責任は問われる?

泥酔中の犯罪について当時の記憶が抜けていても、刑事責任は「酔っていて覚えていない」と述べるだけでは消えません。

刑罰を科すには、責任能力、つまり自分の行為の善悪を判断し、その判断に従って行動を抑える力があったことが必要です。この力があったかどうかは、犯行時点を基準に判断されます。

そして犯行時の判断力は、目撃者の証言、防犯カメラの映像、店員や同席者への聞き取りといった客観的な資料から明らかにされていきます。

翌日になって記憶が抜けていることは、犯行時に自分がどこで何をしているかの認識まで失っていたことの証明にはなりません。

泥酔を理由に無罪の判決や刑の減軽を受けられるのは、酔い方そのものが普通の酔いとは異なる、限られた場合です。どのような酔い方がそれにあたるのかを、次で説明します。

責任能力の有無は酔い方で判断が分かれる

前提として、責任能力は次の2つがそろってはじめて認められます。

  • 事理弁識能力…やってよいことと悪いことを区別できる力
  • 行動制御能力…その区別に従って自分の行動を止められる力

どちらか一方でも欠ければ、刑罰を科す前提が失われます。泥酔状態での犯罪でも、判断の基準はこの2つです。

酔いの状態は大きく単純酩酊と異常酩酊の2種類に分けられ、異常酩酊はさらに複雑酩酊と病的酩酊に分かれます。責任能力の判断では、この分類が手がかりにされます。

単純酩酊なら完全な責任能力が認められる

単純酩酊は普通に酔った状態で、自分が今どこにいて何をしているのかは分かっています(見当識が保たれている状態です)。当時の記憶も残っていることが多いものの、翌日に記憶が抜けていても単純酩酊と評価されることはあり、記憶の有無はあくまで目安にすぎません。

泥酔した状態での犯罪の多くは単純酩酊と評価され、完全な責任能力が認められます。

「自分の酔い方は普通ではなかった」と考える方もいますが、異常酩酊にあたるかどうかは、本人の主張ではなく、当時の客観的な言動や必要に応じて行われる精神鑑定によって判断されます。容易に認定されるものではありません。

複雑酩酊・病的酩酊では責任能力が制限・否定されうる

酔いが異常酩酊にあたると評価されれば、責任能力が制限されたり、否定されたりすることがあります。その扱いを分けるのが、心神喪失と心神耗弱という区別です。

心神喪失とは、精神の障害により、事理弁識能力または行動制御能力を完全に失っている状態です。心神耗弱とは、これらの能力が完全には失われていないものの、著しく低下している状態を指します。刑法39条は、心神喪失者の行為を罰せず、心神耗弱者の刑を減軽すると定めています。

(心神喪失及び心神耗弱)

第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。

2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

出典:e-Gov法令検索

複雑酩酊はいわゆる酒乱で、見当識は保たれるものの、興奮が著しく普段の言動から大きく外れます。記憶が部分的に抜けることがあり、原則として心神耗弱にとどまると評価されます。

病的酩酊は意識障害を伴う点で単純酩酊や複雑酩酊とは質的に異なり、幻覚が生じたり見当識が失われたりすることがあります。記憶はほとんど残らず、責任能力は原則として認められません。

ただし、泥酔して犯罪に及んだときの酔い方が仮に異常酩酊と評価される場合であっても、酔えば人に手を出しかねないと分かったうえで自ら飲んだようなときは、飲み始めた時点の判断力を基準に、責任を免れられないことがあります。これを「原因において自由な行為」といいます。

泥酔での犯罪で逮捕されるケースと逮捕後の流れ

泥酔した状態での犯罪は、比較的軽微に見えるものでも身柄を拘束されやすい傾向があります。酔って受け答えが成り立たない人をその場で帰せば、本人が自覚のないまま現場を離れたり、証拠が失われたりしかねないためです。

もっとも、必ず逮捕されるとは限りません。

公共の場所や乗り物で粗野・乱暴な言動をしている酩酊者は、本人のために応急の救護が必要と認められれば、警察署などで保護されることがあります(酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律3条1項)。

引き取る家族などがいなければ、保護は24時間を超えない範囲とされています(同条3項)。ただし、保護された後に被害者が被害届を出せば、そこから捜査が始まることはあります。

また、身元がはっきりしていて逃亡や証拠隠滅のおそれが低ければ、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むこともあります。

なお、ごく軽微な事件で検察官があらかじめ指定したものは、警察限りで手続きが終わることもあります(微罪処分)。

その場で取り押さえられる現行犯逮捕のケース

その場で通報され、駆けつけた警察官に現行犯逮捕されるのが典型的な形です。飲食店や駅、路上での犯罪は周囲に目撃者が多く通報までの時間も短いため、警察が到着した時点で行為者が特定されていることも少なくありません。

警察官が来る前に、その場にいた人や店員に取り押さえられ、そのまま引き渡されることもあります(私人による現行犯逮捕)。泥酔して受け答えが成り立たない状態では取り調べを始められず、実際の聴取は酔いがさめてから行われるのが通常です。現行犯逮捕の要件や、その場で身柄を拘束された場合の対応方法については「現行犯逮捕とは?軽微犯罪でもできる?要件と逮捕された時の対応」で解説しています。

後日、逮捕状によって逮捕されるケース

泥酔して記憶がないまま帰宅していても、それで終わりとは限りません。防犯カメラの映像や交通系ICカードの利用履歴、目撃者の証言などから犯罪の行為者が特定され、後日、裁判官の発した逮捕状にもとづいて逮捕されることがあります(通常逮捕)。

被害者が病院で診断書を取り、後から被害届を提出して捜査が始まる例もあります。何日も警察から連絡がないからといって、事件になっていないと判断するのは早計です。

暴行事件が後日逮捕に至る条件や、逮捕を避けるためにできることについては「暴行罪は現行犯以外でも後日逮捕される?対処法を解説」で詳しく解説しています。

逮捕された後の刑事手続きの流れ

泥酔での犯罪で逮捕されると、警察で言い分を聴かれ(弁解録取)、身柄拘束を続ける必要があれば、逮捕から48時間以内に、書類・証拠物とともに本人が検察官へ送致されます。

検察官も身柄拘束を続ける場合は、被疑者を受け取った時から24時間以内、かつ身体を拘束された時から通算72時間以内に、裁判官へ勾留を請求しなければなりません。

勾留が認められると、まず10日間の身柄拘束となり、やむを得ない事由があるときはさらに10日を上限として延長されることがあります。

つまり、逮捕から起訴・不起訴の判断までに、通算で最長23日間身柄を拘束される可能性があるということです。

逮捕直後から勾留が決まるまでの間は家族の面会を認める規定がなく、本人と会えるのは原則として弁護士だけです。面会できる時期については「勾留(拘留)中の面会はいつからできる?休日でも可能?面会時間は?」にまとめています。

身柄拘束の間は会社や学校に行けず、長引くほど退職や退学といった影響も現実味を帯びてきます。勾留を避ける、あるいは早く解く働きかけを初期段階で行うことに意味があるのは、このためです。勾留を認める決定に対しては、被疑者側が準抗告を申し立てて釈放を求めることができます。

逮捕後の手続き全体については「暴行罪で逮捕されたら?逮捕後の流れや刑罰を解説」もあわせてご覧ください。

泥酔して犯罪をした場合に成立する罪と刑罰

泥酔した状態で口論やけんかになり、他人に手を出した場合、相手のけがの有無と結果の重さによって、成立する犯罪が変わります。性的な行為や、物の損壊、他人の住居への立ち入りなどが問題になることもあります。

暴行罪・傷害罪

暴行罪は、相手の身体に不法な有形力を加えたものの、けがをさせるまでには至らなかった場合に成立します。

(暴行)

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

出典:e-Gov法令検索

※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。

有形力の行使は、殴る・蹴る・突き飛ばすといった行為に限られず、胸ぐらや髪をつかむ、衣服を強く引っ張るといった行為も含まれます。物を投げつけた場合(当たらなかったときを含む)など、身体に触れていなくても暴行と評価されることがあります。

泥酔した状態でのトラブルでは、本人が「軽く小突いただけ」と思っていても、立派な犯罪である暴行罪にあたることがあるのです。

暴行罪の法定刑は、2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。初犯の場合にどの程度の処分になりやすいかは「暴行罪の初犯はどうなる?罰金の相場と拘禁刑になるケース」で詳しく解説しています。

暴行の結果、相手がけがを負えば、成立する罪は傷害罪に切り替わります。けがの有無と程度は、被害者が警察に提出した医師の診断書をもとに認定されるのが通常です。打撲や擦り傷のように軽く見える負傷でも、傷害罪の対象になります。

傷害罪の法定刑は、拘禁刑であれば15年以下、罰金であれば50万円以下で、暴行罪と比べて上限が大幅に重くなっています。

暴行や傷害によって、殺意がないまま相手を死亡させた場合は傷害致死罪となり、3年以上の有期拘禁刑という、罰金刑のない重い法定刑が定められています。量刑相場や執行猶予の有無については「傷害致死罪の量刑相場は?執行猶予はつく?殺人との違いも解説」をご参照ください。

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪

泥酔した勢いで性的な行為に及び、犯罪に問われることもあります。2023年7月13日施行の改正刑法は、不同意わいせつ罪について、相手が拒むのが難しい状態になる原因として、暴行・脅迫、アルコールや薬物の影響、不意打ちなど8つを例示しています。

たとえば突然キスをする、抱きつくといったわいせつな行為は、相手が不意打ちや酔いによって拒むのが難しい状態であれば、暴行や脅迫がなくても不同意わいせつ罪となりえます。

法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。性交等に至れば不同意性交等罪となり、5年以上の有期拘禁刑とさらに重くなります。

自分の泥酔は、責任能力のほか、相手が拒むのが難しい状態だと認識していたか(故意)にも関わりえます。ただし、どちらも当時の言動などから判断されるため、酔っていたと述べるだけで罪を免れるのは困難です。要件の詳細は「不同意わいせつ(旧強制わいせつ)は未遂も処罰?刑罰と対処法」をご覧ください。

泥酔時に問われうるその他の罪

泥酔時の犯罪行為はここまでに挙げたものに限られず、次のような罪に問われる場合もあります。

  • 器物損壊罪(刑法261条)…店の備品などを壊した場合。3年以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金もしくは科料
  • 住居侵入罪(刑法130条)…正当な理由なく他人の部屋や敷地に入った場合。3年以下の拘禁刑、または10万円以下の罰金
  • 公務執行妨害罪(刑法95条1項)…駆けつけた警察官に暴行・脅迫を加えた場合。3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金
  • 酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律違反(同法4条1項)…駅や路上などで、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野・乱暴な言動をした場合。拘留または科料

前科を避けるために今からすべきこと

泥酔での犯罪で前科がつくかどうかを左右するのは、当時の記憶の有無よりも、事件の後の対応です。ここでは、取るべき行動を3つに分けて説明します。

警察への対応は弁護士に相談してから決める

泥酔した翌朝、まだ警察から連絡がない段階では、確かめたい一心で自分から警察に電話したくなるかもしれません。しかし、把握されていない事柄まで申告することになり、かえって捜査の端緒を作ってしまうおそれがあります。

もっとも、捜査機関に発覚する前に自首したときは刑を減軽できるとされており(刑法42条1項)、自分から動くほうが有利に働く事案もあります。

心当たりがある犯罪について、警察へ接触すべきかどうかも含め、まず弁護士に状況を伝えてください。

警察や弁護士に話す前には、どの店で誰と飲み、どのくらい飲酒したか、何時ごろ店を出たかなど、思い出せる範囲を整理しておきましょう。同席者に聞く、レシートや交通系ICカードの履歴をたどるといった方法で、当時の状況を組み立てられることがあります。

記憶がないことを理由に、防犯カメラの映像など客観的な資料で確認できる事実まで「やっていない」と否認すると、何かを隠していると受け取られ、身柄を拘束されやすくなります。

ただし、確認できる事実を否定しないとしても、思い出せないことを無理に補って話すのは避けてください。記憶がないまま捜査官の示す筋書きに沿って認めてしまうと、あとから覆すのは簡単ではないからです。

言いたくないことは言わなくてよい権利(黙秘権)が保障されていますので、供述の内容は弁護士の助言を受けてから固めるほうが安全です。

反対に、実際には覚えているのに「記憶がない」と述べるのは避けてください。周囲の証言や客観的な資料と供述が食い違えば、反省していないと受け取られ、身柄拘束が長引く、不起訴で済むはずが起訴される、量刑が重くなるといった不利益につながるおそれがあります。

被害者の処罰感情も強まり、示談交渉の入り口にも立てなくなりかねません。示談に応じてもらえない場合の不利益については「暴行罪で示談しないとどうなる?前科・起訴リスクと対処法を解説」をご確認ください。

被害者との示談交渉を早期に始める

泥酔での犯罪でも、被害者がいる事件では、示談が成立しているかどうかで処分が大きく変わります。とくに暴行罪や比較的軽い傷害罪では、示談の成否が不起訴かどうかの分かれ目になることが少なくありません。

もっとも、加害者本人やその家族が直接連絡を取ろうとしても、捜査機関は被害者の連絡先を加害者側に伝えることに慎重です。身柄を拘束されていれば、そもそも交渉に動くこと自体ができません。

弁護士が入れば、被害者の同意を得たうえで連絡先の開示を受けられる場合があり、謝罪の意思を伝えて条件を詰めていくことが可能になります。示談金の水準や進め方は「暴行罪の示談金・慰謝料の相場は?金額の決まり方も解説」をご覧ください。

不起訴処分の獲得を目指す

前科は、逮捕や起訴の段階ではつかず、有罪が確定した時点でつきます。

公開の法廷での裁判(公判)を経ず、略式命令で100万円以下の罰金が科される場合もあります(刑事訴訟法461条)。これも有罪が確定した扱いとなり、前科として残ります。

したがって、泥酔での犯罪で前科を避けるうえで最も重要なのは、不起訴処分を得ることです。

行為そのものは認めざるを得ない事案でも、被害者との示談が成立し、反省が具体的な形で示されていれば、起訴猶予(犯罪の嫌疑は認められるものの、あえて起訴しないという判断)による不起訴となる余地があります。

起訴・不起訴の判断は、身柄事件では勾留期間中という限られた時間の中で行われます。時間が残っているほど、示談交渉、意見書の提出、身柄解放に向けた申立てといった選択肢が広がります。

泥酔中の犯罪でお悩みの方は弁護士にご相談ください

泥酔中の犯罪も、多くは単純酩酊として責任能力が認められます。記憶がないという説明だけで処罰を避けるのは難しく、伝え方を誤れば、かえって不利に働くこともあります。

一方で、身柄拘束の長さや前科がつくかどうかは、事件後の対応で大きく変わります。

暴行罪や比較的軽い傷害罪であれば、捜査機関への説明と示談の進め方次第で、不起訴に終わる余地は十分にあります。弁護士が入れば、取り調べへの助言、被害者との示談交渉、身柄解放に向けた申立てを同時に進めることができます。

ご自身やご家族が泥酔での事件で身柄を拘束された場合はもちろん、まだ警察から連絡はないものの心当たりがあるという段階でも、弁護士への相談が早いほど、選べる手段は多く残ります。

当事務所は刑事事件を取り扱ってきました。不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動き、全力を尽くしてご依頼者を守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
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