
「暴行事件を起こしてしまったが、現行犯では逮捕されなかった。このまま後日逮捕されることはあるのだろうか…」
相手に怪我がなければ大したことにはならないと思われがちですが、暴行罪は検挙率83.1%と犯人が特定されやすく、現行犯逮捕されなくても後日逮捕される可能性は十分にあります。居合わせた人の証言や街頭の防犯カメラから犯人が特定され、数日後から数か月後に逮捕へ至った例もあります。
この記事では、暴行事件に強い弁護士が以下のポイントを解説します。
- 現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)は何が違うのか
- 後日逮捕につながる3つのケースと実際の事例
- 後日逮捕はいつまであり得るのか(公訴時効との関係)
- 逮捕された場合、身柄拘束はいつまで続くのか
- 後日逮捕を回避するための自首・示談交渉の進め方
なお、暴行罪の後日逮捕について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。
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暴行罪は現行犯以外でも後日逮捕される
現行犯逮捕を免れても、逮捕状に基づく後日逮捕という手続きが残っています。
暴行後に時間が経過してから被害届が提出された場合や、犯人を特定する捜査に時間がかかった場合には、後日になって暴行容疑で逮捕されてしまう可能性があります。
「令和7年版犯罪白書」によれば、令和6年の暴行の認知件数は29,250件であり、検挙率は83.1%です。
「同白書」によれば刑法犯全体の検挙率は38.9%ですので、暴行事件はそれを大きく上回る水準で犯人が特定されていることになります。検挙には逮捕せずに書類送検するケースも含まれますが、それだけ犯人が特定されているということであり、現行犯以外でも逃げ切れる事件ではないと考えておくべきでしょう。
現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)の違い
暴行罪で身柄を拘束される場面は、大きく現行犯逮捕と後日逮捕の2つに分かれます。両者の最も大きな違いは、裁判官が発付する逮捕状を必要とするかどうかです。
現行犯逮捕は、犯行の最中またはその直後に行われる逮捕で、逮捕状を必要としません。警察官だけでなく、被害者や周囲にいた一般の人でも行うことができます(刑事訴訟法213条)。暴行事件では、被害者や居合わせた人がその場で110番通報し、駆けつけた警察官がそのまま逮捕するケースが典型です。現行犯逮捕そのものの要件や、その場で身柄を拘束された場合の対応方法については「現行犯逮捕とは?軽微犯罪でもできる?要件と逮捕された時の対応」で解説しています。
これに対して後日逮捕は、事件から時間が経ってから、裁判官の発付する逮捕状に基づいて行われます(刑事訴訟法199条)。通常逮捕とも呼ばれ、逮捕状が必要となる分、警察は事前に暴行罪の証拠を集めて裁判官を説得する必要があります。
裁判官が逮捕状を出すのは、その人が罪を犯したと疑うだけの相当な理由が示された場合です。ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは発付されません(刑事訴訟法199条2項)。実務では、逃亡するおそれや証拠を隠すおそれがどの程度あるかが、この「逮捕の必要」の判断材料になります。加害者が「証拠は残っていないはずだ」と考えていても、警察が別の経路から暴行罪の証拠を集めていることは珍しくありません。
| 比較項目 | 現行犯逮捕 | 後日逮捕(通常逮捕) |
| 逮捕状 | 不要 | 必要(裁判官が発付) |
| タイミング | 犯行の最中または直後 | 事件から数日~数か月後 |
| 逮捕できる人 | 警察官のほか一般の人も可 | 警察官などの捜査機関のみ |
暴行罪で後日逮捕につながる3つのケース
後日逮捕に至る事件には、共通する引き金があります。暴行罪では、次の3つのケースが典型です。
1つ目は、後日になって被害届が提出されたケースです。暴行を受けた直後は動揺していて届け出をためらっていた被害者が、数日たって冷静になり、あるいは怒りが収まらずに警察へ足を運ぶことがあります。被害届が受理されれば、警察はそこから捜査を開始します。被害届の提出に法律上の期限はないため、事件当日に何も起きなかったからといって安心はできません。
2つ目は、防犯カメラに犯行の様子が記録されていたケースです。駅・商業施設・コンビニ・路上に加え、通行車両のドライブレコーダーにも映像が残ります。警察は、現場周辺のカメラを1台ずつたどっていくリレー捜査という手法で、加害者の逃走経路や立ち寄り先を追跡します。
3つ目は、目撃者が加害者の特徴を記憶していたケースです。被害者と加害者に面識がなくても、居合わせた人の証言が捜査の端緒になります。「顔を見られていないから大丈夫」という判断は、加害者側の思い込みであることが少なくありません。
暴行の疑いで後日逮捕された事例
暴行罪で後日逮捕された事例を2つ紹介します。いずれも現場周辺に残っていた映像などから身元が割り出され、数日後あるいは数か月後の逮捕につながっています。
暴行から2日~3日後に逮捕された事例
この事件は、加害男性A(当時21歳)と加害男性B(当時23歳)が共謀し、路上を自転車で走っていた20代の女性に対して、軽乗用車で追い抜く際に助手席側から腕を伸ばし、右腕や胸付近を触ったという事例です。
被害を受けた女性が110番通報し、目撃者の証言と現場周辺の防犯カメラ映像から、知人同士だった2人が捜査線上に浮上しました。
Aは暴行から2日後、Bは暴行から3日後に、それぞれ暴行罪の疑いで警察に通常逮捕されました。
出典:「暴行疑いで逮捕 三重・松阪市の男(21)ら」(夕刊三重電子版・2022年12月19日)
暴行から約4か月後に逮捕された事例
この事件では、会社員の男性(当時41歳)が、深夜の歩道橋の階段を上っていた会社員の女性(当時23歳)に背後から近づき、スカートの中を携帯電話のカメラで撮影しました。盗撮に気づいた女性から問い詰められた際、男性は女性の胸を突く暴行を加えています。
女性に怪我はなく、男性は暴行後に逃走しました。防犯カメラなどの映像から捜査線上に男性が浮上し、事件から約4か月後に迷惑防止条例違反及び暴行の疑いで通常逮捕されることになりました。
出典:「歩道橋でスカート内を盗撮、問い詰めた女性を暴行した疑い 千葉中央署、男を逮捕」(千葉日報・2022年12月30日/チバテレ+プラス掲載)
後日逮捕されるとしたらいつまで?
被害届に提出期限はありませんが、被害者に怪我がない暴行罪の公訴時効は3年で、時効が完成すれば逮捕される心配はなくなります。公訴時効とは、一定期間が過ぎると検察官が起訴できなくなる制度のことです。つまり、時効が完成すると起訴されて刑事裁判にかけられることがなくなりますので、その前段階である逮捕をされる心配がなくなります。時効の詳しい考え方や、刑事上の時効と民事上の時効の違いについては「暴行罪の時効は何年?刑事・民事の時効を弁護士が解説」で詳しく紹介しています。
時効の起算点は暴行行為が終了したときですので、現行犯逮捕されないまま3年が経過すれば、後日逮捕されることもなくなります。ただし、犯人が国外にいる期間などは時効の進行が止まります(刑事訴訟法255条1項)。
実際に逮捕されるまでの期間には幅があります。犯人の特定が容易な事件では数日のうちに警察が動きますが、防犯カメラの解析や聞き込みに時間を要する事件では、数か月後、場合によっては半年以上たってから逮捕状が執行されることもあります。
なお、本人は暴行にとどまると考えていても、被害者が捻挫・打撲の怪我を負っていたり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や睡眠障害を発症している場合があります。この場合は傷害罪として扱われ、公訴時効は10年となります。傷害罪の成立要件や暴行罪との違いについては「暴行罪と傷害罪の違いは?成立要件とどちらが重いかを解説」で確認できます。
後日逮捕された後の流れと身柄拘束の期間
ここからは、実際に逮捕された場合の流れを見ていきます。暴行罪で後日逮捕されると、その後の手続きには法律上の時間制限が設けられています。逮捕から起訴・不起訴が決まるまで、身柄拘束は最長で23日間に及ぶ可能性があります。
逮捕された人は、まず警察の留置施設で取り調べを受けます。逮捕から48時間以内に、警察は事件を検察官へ送致するか釈放するかを判断します。事件を受け取った検察官は24時間以内に、勾留(起訴・不起訴が決まるまで身柄の拘束を続ける手続き)を裁判官に請求するか、釈放するかを決めます。
裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長が認められればさらに最長10日間の身柄拘束が続きます。この期間が満了するまでに、検察官が起訴するか不起訴とするかを決定します。不起訴となれば刑事裁判は開かれず、前科もつきません。起訴された場合も、前科がつくのは有罪の判決や略式命令が確定したときです。
職場や学校を3週間以上休むことになれば、事件が周囲に知られる可能性は高まります。逮捕そのものを避けることはもちろん、万一逮捕された場合も、勾留を回避して早期に日常へ戻ることが重要です。逮捕後の手続きについては「暴行罪で逮捕されたら?逮捕後の流れや刑罰を解説」で詳しく解説しています。
暴行罪で有罪になった場合の刑罰
暴行罪の法定刑は、拘禁刑なら2年以下、罰金なら30万円以下と定められています(刑法208条)。ほかに拘留と科料も選択刑に置かれていますが、実務で科されることはほとんどありません。
初犯で被害が軽く、被害者との示談が成立している事案では、起訴猶予として不起訴で終わることも珍しくありません。どの結論になるかは、事件後にどう対応したかで大きく変わります。
暴行罪の現行犯以外での逮捕が不安な場合の対処法
後日逮捕を避けるために取り得る対応は、大きく自首と示談交渉の2つです。
時間の経過で防犯カメラの映像が上書きされ、暴行罪を裏づける証拠映像がなくなることもあります。しかし、映像以外にも、被害者や目撃者の供述、傷害を負っていた場合の診断書などが犯罪の証拠となり得ます。もう大丈夫だろうと高を括っていると、ある日突然自宅に捜査官が押しかけてきて身柄を拘束されることもあります。
いつ後日逮捕されるのかわからないまま不安な日々を送ることに、精神的に耐えられないという方も多いはずです。暴行罪で被害届を出された場合の対応については「被害届を出されたらどうなる?流れと取り下げ・対処法」もあわせてご確認ください。
自首する
自首とは、犯罪を犯した者が、事件が発覚していない又は事件は発覚しているが犯人が特定されていない段階で自発的に捜査機関に名乗り出てその処分を求める行為をいいます。まだ警察が自分にたどり着いていない段階で、自ら出向いて申告する行為です。すでに警察から呼び出しを受けているなど、犯人として特定された後に出頭しても、法律上の自首にはあたりません。
自首に関する規定(刑法42条)には「その刑を減軽することができる」と書かれており、逮捕の回避は直接的な効果ではありません。
しかし自ら警察に出向いて事実を認めれば、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを自ら示すことができ、逮捕の回避に繋がることも期待できます。
なお、自首すれば必ず逮捕を免れるというわけではありません。事案によっては、出頭したその場で逮捕されるケースもあります。自首は暴行罪を犯したことを自ら捜査機関に認める行為ですので、タイミングや伝え方を誤れば不利にはたらく場面もあります。
そのため、自首すべきかどうかは自己判断せずに事前に弁護士に相談する必要があるでしょう。弁護士に同行してもらうメリットや費用の相場については「自首に弁護士が同行するメリットと費用|弁護士なしでも大丈夫?」をご参照ください。
示談交渉をする
暴行罪の被害者の連絡先を知っているのであれば、真摯に謝罪したうえで被害弁償を済ませ、示談(当事者どうしで話し合い、賠償の内容に合意すること)を成立させることが重要です。相手の連絡先を知らない場合、すでに事件化していれば、弁護士が代理人として捜査機関に照会し、被害者の了解が得られれば開示を受けられることがあります。
被害者が警察に被害届を出す前に示談が成立すれば、被害届が出されないまま事件が終わる可能性が高まります。また、被害者が既に被害届を出していても、示談の成立は逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいことを示す事情となり、逮捕を回避できる可能性が高まります。
一方で、暴行罪は被害者の告訴がなくても起訴できる犯罪です。被害届が取り下げられても捜査機関の捜査義務がなくなるわけではありません(刑事訴訟法189条2項)。第三者の通報や防犯カメラの映像からすでに捜査が始まっている場合もありますので、示談が成立しても、逮捕を完全に防げるとは限りません。
さらに、万一逮捕された場合でも、示談成立は被疑者にとって有利な事情として働きますので不起訴処分となることも期待できます。前科を避けるうえで、示談は有力な手段の一つといえます。
暴行事件の被害者は加害者に強い警戒心を抱いていることが多く、示談交渉に応じてもらえないケースは少なくありません。応じてもらえても、感情的な対立から交渉が決裂するおそれがあります。
この点、弁護士であれば被害者の感情に最大限配慮しつつ、これまでの経験に基づいて冷静に示談の話し合いを進められます。また、暴行の程度や被害の状況に応じた示談金相場を把握していますので、被害者から多額の示談金を要求されている場合にも、適正な金額で示談をまとめることが可能です。暴行罪の示談金の目安については「暴行罪の示談金・慰謝料の相場は?金額の決まり方も解説」で具体的な金額を紹介しています。
暴行罪の後日逮捕が不安な方は弁護士にご相談ください
暴行罪は、その場で捕まらなかったとしても後日に逮捕される可能性が十分にあり、公訴時効が完成するまで(暴行罪は原則3年、傷害罪に該当する場合は10年)は逮捕のリスクが続きます。
逮捕を回避するためには、自首や被害者との示談交渉といった適切な対応を早期に進める必要があります。ただし、自首すべきかどうかの判断は事案ごとに異なりますし、被害者との示談交渉は加害者本人が行うと感情的な対立から難航するケースが少なくありません。弁護士に依頼すれば、状況に応じた最善の方針を立てたうえで対応を進めることができます。
すでに被害届が出されている方、警察から連絡が来ている方はもちろん、まだ事件化されていない段階であっても、早めに弁護士へ相談することで取れる選択肢は大きく広がります。ご家族や職場への影響にも配慮しながら対応を進めます。
当事務所は暴行事件における示談交渉、逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており、豊富な実績があります。全国どこからでも無料相談をご利用いただけますので、暴行罪の後日逮捕でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

