あおり運転に暴行罪は適用される?妨害運転罪の新設により厳罰化へ

あおり運転に明確な定義はありませんが、一般的には、他の車、バイク、自転車の通行を妨害する目的で、急ブレーキを踏んだり、幅寄せをするなど、他の車等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある運転を行うことをいいます。

あおり運転については度々マスコミで取り上げられていることから、犯罪として処罰されることは周知の事実です。

しかしながら、

あおり運転にはどんな法律が適用されるの?暴行罪になるって本当?

といった疑問を抱えている方も少なくないのではないでしょうか?

そこでこの記事では、刑事事件に強い弁護士がこの疑問を解消していきます。最後まで記事を読むことで、あおり運転に該当する行為や罰則についての理解が深まります

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あおり運転で暴行罪は適用される?

暴行罪とは?

暴行罪とは、暴行を加えた者が傷害するに至らなかったときに成立する犯罪です(刑法第208条)。刑罰は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。

暴行罪の「暴行」とは、「人の身体に対する不法な有形力の行使」と定義されており、殴る・押し倒す・蹴るといった行為はもちろん、「人の数歩手前に物を落下させる」など人に接触しない行為も含まれます

あおり運転の煽り行為についても、人(が乗っている車)に直接触れる行為ではないものの不法な有形力の行使に該当するため、暴行罪が成立し得ます。実際、判例(東京高裁昭和50年4月15日判決)でも車の幅寄せ行為が不法な有形力の行使として暴行罪にあたると判示しています。

暴行罪と傷害罪の違いは?どこから成立する?構成要件や罰則を弁護士が徹底解説

これまではあおり運転に暴行罪が適用されていた

後述しますが、令和2年にあおり運転を取り締まる法律が新設されました。しかしそれ以前は、あおり運転そのものを取り締まる法律がありませんでした。そのため、車間距離不保持違反や急ブレーキ禁止違反等の個別の道路交通法違反や、刑法犯の「暴行罪」を適用してあおり運転を取り締まってきました

そして、平成29年に発生した東名高速道路夫婦死亡事件を受けて、平成30年1月に警察庁は全国の都道府県警察に対し「あらゆる法令を駆使してあおり運転の取り締まりを強化するように」と通達を出しています。以下の画像を見て頂けたらわかりますが、通達がされた平成30年以降、あおり運転への道路交通法による取り締まり件数や刑法犯(特に暴行罪)の適用が大幅に増加していることがわかります。

妨害運転罪の新設により暴行罪は適用されなくなった

後述しますが、令和2年に道路交通法が改正され、同法に「妨害運転罪」が新設されました(令和2年6月30日以降のあおり運転に適用)。坊害運転罪が新設されるまではあおり運転に暴行罪が適用されていましたが、妨害運転罪が新設されて以降は、あおり運転には暴行罪は適用されません

あおり運転の厳罰化。「妨害運転罪」の新設

前述のとおり、以前はあおり運転に暴行罪が適用されていたところ、あおり運転が社会問題化し、道路交通法にあおり運転を処罰する「妨害運転罪」が新設されました

妨害運転罪は「高速道路及び自動車専用道路以外の道路(以下、一般道路といいます)における妨害運転罪」と、「高速道路及び自動車専用道路(以下、高速道路といいます)における妨害運転罪」とがあります。

以下で妨害運転罪の成立条件、罰則についてみていきましょう。

妨害運転罪の成立条件

妨害運転罪の成立要件は以下のとおりです。

  • ①他の車両等の通行を妨害する目的が認められること
  • ②道路交通法第117条の2の2第11号のイ~ヌに掲げる運転をしたこと
  • ③交通の危険を生じさせたこと

他の車両等の通行を妨害する目的であったこと

他の車両等の「車両等」とは「車両及び路面電車」のことを指します。そして、車両は車のほか、バイク(原付きバイクを含む)、軽車両にあたる自転車も含まれます。そのため、原付きバイクや自転車に対してあおり運転した場合も妨害運転罪に問われる可能性があります。

「妨害する目的」があったか否かは、被害者・加害者の主観的事情に加えて、当該行為に至るまでの経緯、運転の態様などの客観的事情も加味されて判断されます。そのため、「妨害するつもりはなかった」と言っても不合理な弁解をしていると判断され、処分や量刑(罪の重さ)が重くなる可能性もありますので注意が必要です。

道路交通法第117条の2の2第11号のイ~ヌに掲げる運転をしたこと

道路交通法第177条の2の2第11号のイ~ヌとは次のとおりです。

イ 通行区分違反道路の中央から左の部分を通行しなかった
ロ 急ブレーキ禁止違反他の車両等の前に車を割り込み、他の車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかける(ただし、やむを得ない場合を除く)
ハ 車間距離不保持違反いわゆる幅寄せ
二 進路変更禁止違反進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるのに進路を変更した
ホ 追越し違反他の車両の左側から追い越した
へ 減光等義務違反夜間に他の車両等と行き違う場合、又は他の車両等の直後を進行する場合に、ハイビームにしたまま運転したりパッシングを繰り返した
ト 警音器使用制限違反警音器(=クラクション)を鳴らすケースではないのに、不必要に鳴らして運転した
チ 安全運転義務違反ハンドル・ブレーキその他の装置を確実に操作せず、かつ、他人に危害を及ぼすような速度と方法で車を運転した
リ 最低速度違反高速道路において、道路標識で指定されている区間にあってはその最低速度を、その他の区間にあっては時速50キロメートルを下回る速度で運転した(ただし、緊急自動車を優先させるなど法令の規定により速度を減ずる場合、危険を防止するためやむを得ない場合を除く)
ヌ 高速自動車国道等駐停車違反高速道路において停車又は駐車した(ただし、法令の規定若しくは警察官の命令、又は危険を防止する場合、駐車区画に停車又は駐車する場合、故障等の理由により停車し又は駐車することがやむを得ない場合で、停車又は駐車のため十分は幅員がある路肩又は路側帯に停車又は駐車する場合などを除く)

交通の危険を生じさせたこと

一般道路での妨害運転罪では、「②の運転が他の車両等に道路における交通の危険を生じるおそれのある方法であったこと」が成立条件とされています。

「道路における交通の危険」とは、人身事故のみならず物損事故も含みます。もっとも、人身事故、物損事故が起きる(具体的)危険を生じさせることが条件ではなく、こうした危険を生じさせるおそれのある「方法」であったことが必要とされています。そのため、実際に人身事故、物損事故が生じることが不要で、それらの危険が生じたことがなくても一般道路での妨害運転罪に問われる可能性があります。

一方、高速道路での妨害運転罪では、「(②の運転の結果、)高速道路において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせたこと」が成立条件とされています。

高速道路には自動車しか通行できませんから、対象車両が自動車に限定されています。「~他の自動車を停止させ」とあるように、高速道路でのあおり運転では他の自動車を停止させただけで妨害運転罪に問われる可能性があります。また、停止させなくても道路における著しい交通の危険を生じさせた場合も高速道路の妨害運転罪に問われる可能性があります。

妨害運転罪の罰則

一般道路における妨害運転罪の罰則は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」で、高速道路における妨害運転罪の罰則は「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

なお、一般道路における妨害運転罪の行政処分は「違反点数25点で一発免許取消(欠格期間2年)」、高速道路における妨害運転罪の行政処分は「違反点数35点で一発免許取消(欠格期間3年)」です。

あおり運転で人を死傷させると危険運転致死傷罪が適用されることも

危険運転致死傷罪といえば、飲酒運転や赤色信号無視、高速度なスピード違反によって人に怪我を負わせたり、死亡させた場合に適用される罪というイメージをもたれる方も多いと思います。

しかし、危険運転致死傷罪が規定されている自動車運転処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が改正され(令和2年7月2日施行)、危険運転致死傷罪の規定にあおり運転に関する規定が追加されました

すなわち、自動車運転処罰法2条5号、6号は次のように規定されています。

(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
(前略)
五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
(後略)

実は、改正前の自動車運転処罰法でもあおり運転を処罰しうる規定は設けられていたのですが、その規定ではあおり運転をする車が被害車両の「著しく接近」した際に「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転したこと」が条件とされていました。

しかし、これでは、走行中の被害車両の前方に進入して停止し、自車に被害車両を追突させるなどして人を死傷させた場合、あおり運転をした車が被害車両に「著しく接近」した際に「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転したこと」にはあたらず、処罰することが難しいのではないかとの声があがっていました

そこで、走行中の車(自動車のほか、自動二輪車、原動付自転車、自転車などの軽車両を含む)の前方で停止すること(5号)、高速道または自動車専用道路で走行中の自動車の前方で停止すること(6号)だけでも危険運転致死傷罪で処罰しうる規定を設けたのです

あおり運転で逮捕されるとどうなる?

近年、ドライブレコーダーの普及率が上がったことであおり運転の被害者がその被害を立証しやすくなったことから、あおり運転での検挙率も増加しています。

では、あおり運転で逮捕された後はどのような流れになるのでしょうか。逮捕から勾留されるまでの流れは以下のとおりです。

  1. 逮捕
  2. 留置場に収容される
  3. 警察官による弁解録取を受ける→釈放→在宅事件
  4. 送致
  5. 検察官による弁解録取→釈放→在宅事件
  6. 勾留請求
  7. 勾留質問→釈放→在宅事件
  8. 勾留許可
  9. 勾留

①逮捕警察官の弁解録取

警察に逮捕されると警察署まで連行され、警察署内の留置場に収容する手続きを取られます。また、それに前後して、警察官による弁解録取を受けます。弁解録取とは、被疑者(逮捕された人)から逮捕事実に関する言い分を聴く手続きのことです。

弁解録取を経た上で警察官が身柄拘束を継続する必要がないと判断した場合は釈放されます。一方、身柄拘束の継続する必要があると判断した場合は、逮捕から48時間以内に事件と身柄を検察庁へ送致する手続きを取られます

送致~勾留請求

送致された後は検察官による弁解録取を受けます。その後、検察官が身柄拘束の必要がないと判断した場合は釈放されます。一方、身柄拘束の必要があると判断した場合は送致から24時間以内に裁判官へ勾留の請求をする手続きを取られます。

勾留質問〜⑨勾留

検察官に勾留請求された後は、裁判官から逮捕事実に関して話を聴かれる勾留質問の手続きを受けます。その後、裁判官が身柄拘束の必要がないと判断した場合は検察官の勾留請求は却下されますが、身柄拘束の必要があると判断した場合は請求が許可されます。検察官の勾留請求が却下され、かつ、検察官から不服申立てがないか、あるいは不服申立てされたものの棄却された場合は釈放されますが、認容された場合は勾留されます。

一方、検察官の勾留請求が許可された場合は最長で20日間の身柄拘束が続きます。ただ、弁護人が許可の判断にして不服申し立てをし、それが認容された場合は釈放され、棄却された場合は勾留が継続します。

あおり運転で逮捕されそう、されたら弁護士に相談

あおり運転で逮捕されそうという場合に弁護士に相談するメリットは、あなたの話の内容(罪を認めるか、認めないかなど)に応じて、逮捕を回避するためにやっておくべきことや万が一逮捕された場合の取調べに対する対処法についてアドバイスを受けることができ、かつ、逮捕後の流れ、刑事処分・量刑の見込みなどを教えてもらえることです。

また、逮捕される前に弁護士に依頼した場合は、逮捕の回避に向けた活動(捜査機関に対する意見書の提出、捜査機関への出頭の付き添いなど)をとってくれますし、万が一逮捕された場合でもすぐに接見に駆け付け、釈放等に向けた活動を始めてくれます。

一方、逮捕された場合に弁護士に相談(接見を依頼する)メリットも上記とほぼ同様です。逮捕直後は、通常弁護士としか接見できません。弁護士以外との接見は勾留が決まった後から可能です(ただし、接見禁止が付いている場合を除く)。逮捕され今後についての不安を抱える中、法律の専門家である弁護士との接見は精神的にも大きな支えとなります。

弊所では、あおり運転による逮捕の回避・早期釈放の実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますのでまずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。

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