
「被害者が示談に応じてくれない」「請求された示談金が高額すぎて払えない」「そもそも被害者の連絡先も分からない」。暴行・傷害事件を起こしてしまい、このような理由から示談しないという選択を考えている方もいるのではないでしょうか。「示談しなければ必ず前科がつくのだろうか」と不安を感じている方も多いはずです。
結論からいえば、暴行罪・傷害罪で示談しないままでいると起訴・前科のリスクが高まりますが、示談が不可能でも不起訴を目指す余地はあります。供託や贖罪寄付、嘆願書の提出など、示談に代わる誠意の示し方を積み重ねることで、処分の軽減につながる可能性があるためです。
この記事では、暴行罪・傷害罪の示談に強い弁護士が、次の点について解説します。
- 暴行罪・傷害罪で示談しない場合に想定されるリスク
- 示談なしでも不起訴になる可能性と考慮要素
- 示談に応じない被害者へのケース別の対処法
- 供託・贖罪寄付など示談以外で反省を示す方法
なお、暴行・傷害事件の示談についてお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。
| 気軽に弁護士に相談しましょう |
|
暴行罪・傷害罪で示談しないとどうなる?想定されるリスク
暴行罪・傷害罪で示談しないままでいると、主に次の2つのリスクに直面します。
- 起訴されて前科がつく可能性が高まる(刑事責任)
- 被害者から民事訴訟を起こされる可能性が残る(民事責任)
前提として、暴行罪(刑法208条)の法定刑は「2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」、傷害罪(刑法204条)の法定刑は「15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」です。どちらも被害者が存在する犯罪であり、示談の成立は「被害が回復され、処罰感情が和らいだ」ことを示す強力な証拠として、起訴・不起訴や量刑判断で加害者に有利に働きます。逆に示談がないと、これらの有利な事情を欠いたまま処分が決まるため、以下のとおり刑事・民事の両面で不利な結果を招きやすくなります。
※2025年6月1日施行の改正刑法により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。本記事では現行法に基づき「拘禁刑」と表記しています。
起訴されて前科がつく可能性が高まる(刑事責任)
示談の不成立は、検察官が処分を決める過程で不利な事情として評価されます。具体的には以下のようなマイナスが生じ得ます。
- 示談していれば不起訴(起訴猶予)となっていたはずの事件が、起訴される
- 起訴された場合に、示談していれば執行猶予となったはずが実刑判決となる
- 拘禁刑の期間や執行猶予期間の長さが、示談ありのケースより長くなる
- 罰金刑で済む予定が、公判請求(正式裁判)となる
特に注意すべきは、略式起訴による罰金刑であっても前科として記録に残るということです。書面審理で負担が軽く感じられがちですが、罰金刑も刑事罰ですので、資格取得・海外渡航等の場面で不利益を被るおそれがあります。
なお、暴行罪の示談金の目安や示談の進め方については「暴行罪の示談金・慰謝料の相場は?金額の決まり方も解説」で詳しく紹介しています。
被害者から民事訴訟を起こされる可能性がある(民事責任)
刑事責任と民事責任はまったく別個の責任です。仮に罰金刑や執行猶予判決を受けたとしても、それによって加害者が被害者に対して負う損害賠償責任が消滅するわけではありません。
示談が成立し、示談書に「本件に関して今後一切の請求をしない」という清算条項を盛り込んでおけば、後日さらに賠償金を請求されるリスクはなくなります。しかし、示談がないと損害賠償責任が残り続け、被害者から民事調停や民事訴訟を起こされて、改めて治療費・慰謝料・休業損害等を請求される可能性があります。
民事訴訟になると、仕事を休んで出廷する負担、弁護士費用の発生、判決確定後の財産差押えのリスクなど、時間も費用も重くのしかかる状態が長期化するおそれがあります。傷害事件における示談金の相場や示談書の作り方については「傷害事件の示談金相場を全治別に解説|示談書テンプレート付き」をご参照ください。
示談なしでも不起訴になる可能性はある?判断の考慮要素
結論からいえば、示談が成立していなくても、暴行罪・傷害罪で不起訴となるケースは存在します。ただし、示談成立時と比べて不起訴のハードルは高く、他の有利な事情を積み上げる必要があります。
検察官は事件に現れた事情(情状)を総合的に勘案して起訴・不起訴を決めます。示談は情状の中でも検察官に与えるインパクトが大きいものの一つですが、絶対的なものではありません。示談以外の情状で不起訴に働きやすい要素としては、以下のようなものがあります。
- 犯行が偶発的で計画性がない
- 暴行の回数が1回で終わっている
- 被害者に怪我がない、または軽微である
- 被害者側にも挑発等の落ち度がある
- 加害者に前科前歴がない(初犯である)
- 加害者が深く反省し、家族等の適切な監督者がいる
- 供託や贖罪寄付など、示談に代わる誠意の形を示している
これらの事情を検察官に正しく伝えるには、弁護人が作成する意見書、加害者本人による反省文、家族等による監督誓約書等の資料を不備なく整える必要があります。
とはいえ、不起訴をより確実なものとするためには、被害者が交渉に応じてくれる場合は示談に越したことはありません。傷害罪のケースで不起訴を目指す方は「傷害罪で不起訴になるには?不起訴になる考慮要素と起訴率を解説」もあわせてご確認ください。
示談ができない・成立しないケース別の対処法
示談が難しいケースは、その原因によって取るべき対応が変わります。ここでは代表的な3つのケースについて、具体的な対処法を解説します。
被害者が感情的に拒否している場合
被害感情が強く、「加害者を赦せない」「直接のやり取りには応じたくない」といった理由で、被害者が示談に応じないケースです。被害者側からの明確な示談拒否の意思表示がある場合には、慎重なアプローチが求められます。
このような場合には、まず冷却期間を置くことが有効です。事件直後は、被害に遭った怒りや恐怖心が最も強く出るタイミングであり、すぐに示談を持ちかけても拒絶されやすくなります。ある程度時間を置いてから、誠心誠意の反省と謝罪の意思を示したうえで示談を打診し直すと、態度を軟化させる被害者もいます。
また、加害者本人との直接交渉は拒否していても、弁護士が間に入ることで交渉に応じてくれるケースは少なくありません。弁護士は、加害者の反省と謝罪の言葉を被害者に伝え、被害者の受けた苦痛や怒りを丁寧に聴き取り、その内容を踏まえた謝罪と誠意を再度伝える、というコミュニケーションを重ねます。こうしたプロセスを通じて被害者の心が徐々に和らぎ、交渉のテーブルに着いてもらえることもあります。
被害者が精神的ショックや恐怖を理由に拒否している場合は、「被害者の通勤・通学経路には立ち入らない」「住居を変更する」など、被害者の恐怖を和らげる条項を示談書に盛り込む提案をすることで、合意に至ることもあります。
ただし、身柄事件では勾留満期までに、在宅事件でも検察官が処分を判断する時期までに交渉をまとめる必要があります。交渉機会をうかがっているうちに起訴に踏み切られることもあるため、送致や処分の時期を見極めながら動くのが望ましいでしょう。
示談金の折り合いがつかない場合
示談の意思はあるものの、被害者が要求する示談金の金額が相場からかけ離れていて合意に至らないケースもあります。特に、示談成立によって不起訴や執行猶予を得たい加害者の足元を見て、示談金を吊り上げてくる被害者もいます。
この場合、「払えない」と一方的に拒否するのではなく、相場の範囲内の適正額であれば応じるという姿勢を明確に示すことが重要です。弁護士が事案に応じた適正な金額を算定し、粘り強く示談交渉を重ねます。仮に被害者が応じなかったとしても、交渉の経過を報告書にまとめて検察官や裁判所に提出することで、「加害者には誠意があったが被害者側の事情で成立しなかった」という評価につながり得ます。
また、被害者が提示する金額が適正であるものの、加害者に一括で支払う資力がない場合には、分割払いによる示談を交渉する方法もあります。示談書調印時に頭金を支払い、残額を分割で支払う約束をすることで、示談自体は成立させることができます。全額支払い済みの示談に比べれば効果は限定的ですが、まったく示談しない場合より有利な情状となります。
分割払いも拒否される場合には、金額の一部だけでも受け取ってもらう交渉を試みます。全額でなくとも被害弁償の一部が実現すれば、何も賠償していないケースより有利な事情として評価されます。
被害者と連絡が取れない場合
そもそも加害者側が相手の連絡先を把握しておらず、連絡のとりようがないケースも少なくありません。特に、駅や路上等での事件で被害者と面識がない場合が典型です。
この場合でも、弁護士を通じてであれば、検察官や警察官に対して被害者の連絡先を照会することが可能です。捜査機関は被害者の同意が得られた場合に限り、弁護人に連絡先を開示してくれます。「加害者本人には教えないが、弁護士になら連絡先を伝えてよい」という被害者は一定数おり、弁護士を選任することで交渉の入口が開くことがあります。
一方、被害者が弁護人への連絡先開示すら拒否している場合や、検察官の判断時期が迫っていて交渉の時間的余裕がない場合には、後述する供託や贖罪寄付といった、示談に代わる誠意の示し方を検討することになります。
示談以外で反省を示し処分軽減を目指す方法
示談が成立しない場合でも、加害者が反省していることや誠意を尽くしたことを示す方法はいくつかあります。これらを組み合わせて検察官・裁判所に提出することで、不起訴や量刑軽減につながることもあります。
供託:被害弁償相当額を法務局に預ける
供託とは、被害者が受領を拒絶している場合等に、加害者が被害弁償相当額を法務局(供託所)に預ける制度です(民法494条1項)。
供託をすると、民事上は被害者に支払ったのと同等の効果が生じ、損害賠償債務が消滅します。被害者はいつでも供託金を受け取ることができる状態となり、供託以降の遅延損害金の発生も止まります。供託書の控えを弁護人経由で検察官に示すことで、加害者が被害弁償の意思を実行に移したことを客観的な証拠として示せます。
ただし、供託は債務の履行地(被害者の住所地)を管轄する法務局で行うため、実務上、被害者の氏名・住所の開示を受けている必要があります。被害者が連絡先の開示自体を拒んでいるケースや、性犯罪等で被害者保護の観点から住所が開示されないケースでは、供託は利用できません。そのような場合は次に紹介する贖罪寄付を検討します。
贖罪寄付:弁護士会等の公益団体への寄付
贖罪寄付とは、罪を償う気持ちを表明するために、弁護士会や公益団体に寄付を行う制度です。寄付を受けた団体から証明書が発行され、これを検察官や裁判所に提出することで、加害者の反省の姿勢を客観的に示せます。
贖罪寄付は、被害者の住所が開示されず供託もできない場合や、被害者が示談・被害弁償・供託のすべてを拒否している場合の最終手段として用いられます。供託と異なり直接の被害弁償にはならないため、情状としての効果は示談や供託より劣りますが、加害者の反省姿勢を形に残せる点で、何の手も打たないまま処分を待つよりは有利な情状につながります。
寄付先は日本弁護士連合会や各地の弁護士会等から選ぶことになり、事件の性質に応じた寄付先を選ぶこともポイントです。詳しくは「贖罪寄付とは?その効果と寄付を検討すべき2つのケース、手続の流れ」をご参照ください。
謝罪文の作成・送付(受取拒否でも検察官へ提出)
示談に至らない場合でも、謝罪文を作成して被害者に送付することには意味があります。被害者が受領を拒否したとしても、送付を試みたという事実そのものが、加害者の反省の姿勢を示す材料となります。
謝罪文の控えは検察官への提出資料として活用でき、反省の深さを具体的にアピールできます。文面では、自らの行為の重大さを認めたうえで、被害者への謝罪、二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な再発防止策(通院・カウンセリング・飲酒の自粛等)を盛り込むことがポイントです。
嘆願書・監督誓約書:家族や職場の監督者による提出
家族(配偶者・親)や職場の上司に身元引受人となってもらい、「今後は私が責任をもって加害者を指導監督し、再び同種の事件が起きないよう努める」旨の嘆願書(監督誓約書・上申書)を作成・提出してもらう方法もあります。
検察官が起訴・不起訴の判断で迷っている段階において、しっかりした監督者の存在は再犯防止の観点から有利な要素として考慮されます。特に初犯で、家族等との同居環境が整っている場合には、嘆願書の提出が不起訴処分獲得の後押しとなることがあります。
暴行罪・傷害罪の示談に関するよくある質問
ここでは、暴行罪・傷害罪で示談しないケースについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q1.暴行罪・傷害罪は初犯でも示談なしだと実刑判決となるケースはありますか?
暴行罪の初犯で、いきなり実刑(刑務所収容)となる可能性は低いといえます。怪我のない暴行罪で初犯の事案では、示談不成立であっても、略式起訴による罰金刑、あるいは公判請求となっても執行猶予付き判決に収まる傾向が見られます。
一方、傷害罪で被害者の怪我が重い場合(骨折や入院を要する怪我、後遺症が残るようなケース等)や、粗暴犯としての前科前歴がある場合、暴行の態様が悪質な場合(凶器の使用・複数回の継続的な暴行等)には、初犯であっても実刑判決が言い渡されるおそれもあります。
初犯でも重い処分に傾きやすい具体的なケースについては「暴行罪の初犯はどうなる?罰金の相場と拘禁刑になるケース」で詳しく解説しています。
Q2.略式起訴による罰金刑でも前科として扱われますか?
罰金刑は略式起訴で言い渡されたものであっても、有罪判決に基づく正式な前科として扱われます。略式手続は書面審理で進む簡易な制度ですが、通常の有罪判決と同等の効力を持ち、検察庁の前科記録に登録されます。なお、罰金を納付してから5年間、罰金以上の刑に処せられずに経過すれば、刑法34条の2により刑の言渡しの効力は失われます(ただし前科の事実自体が検察庁の記録から消えるわけではありません)。
前科を回避する最も確実な方法は、起訴される前に不起訴処分を獲得することです。示談成立がその最有力の手段ですが、示談がなくても供託・贖罪寄付・嘆願書等を積み重ねることで不起訴となる余地はあります。
Q3.被害者から相場を超える示談金を請求されたとき、どう対応すればよいですか?
被害者の提示額が必ずしも法的に妥当とは限らず、相場を大きく超える請求に対して無条件に応じる必要はありません。示談金は被害の程度や暴行の態様、被害者の処罰感情など事案ごとの事情で大きく変動するため、提示額の合理性を精査することから対応が始まります。
対応の基本は、「適正な金額であれば合意する用意がある」という姿勢を明確に示したうえで、弁護人に交渉を委ねることです。弁護人が類似事案の示談金相場を根拠に適正額を提示し、粘り強く折衝を重ねることで、合意に至るケースは少なくありません。
また、資力が不足している場合には、分割払いや金額の一部弁償といった選択肢も検討できます。交渉を一方的に打ち切らず、誠実に対応を続ける姿勢が、最終的な処分判断で加害者に有利に働きます。
支払い能力がない場合の具体的な対応については「傷害事件の慰謝料相場|払わないとどうなる?支払い能力がない場合は?」もあわせてご確認ください。
Q4.示談が成立しないまま捜査が進むと、後日逮捕される可能性はありますか?
在宅捜査で進んでいた事件でも、示談が成立せず捜査機関の評価が厳しくなれば、身柄事件へと切り替わり逮捕に至る可能性があります。具体的には、被害者の新たな被害届提出、被疑者による罪証隠滅・逃亡のおそれが認められた場合などが、逮捕の引き金となります。
特に、被害者への無断での接触、示談を迫る度重なる連絡、SNS等での事件関連の発信は、逮捕リスクを一気に高める行為として避けるべきです。在宅捜査中の振る舞い次第で、本来なら避けられたはずの逮捕を自ら招く結果にもなりかねません。
逮捕された場合の具体的な流れや対応方法については「暴行罪で逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れや傾向、対応方法」をご参照ください。
暴行罪・傷害罪の示談・不起訴でお悩みの方は弁護士にご相談ください
ここまで見てきたように、暴行・傷害事件で示談を成立させないまま進むと、起訴・前科のリスクに加え、民事訴訟を起こされる可能性も残ります。一方で、示談が難しい場合でも、供託・贖罪寄付・嘆願書の提出など、処分軽減のために打てる手は複数あります。
大切なのは、どの手段が効果的かを見極め、検察官の判断時期に間に合うよう計画的に動くことです。弁護士が間に入ることで、直接交渉に応じてもらえなかった被害者が態度を軟化させるケース、不当に高額な示談金要求に対して適正額での合意に至るケースは、実務上少なくありません。仮に示談が成立しなかった場合でも、供託や贖罪寄付など反省と誠意を形にする手段を尽くすことで、不起訴や量刑軽減の可能性を最大限に高めることができます。
「被害者が示談に応じてくれない」「示談金が用意できない」「すでに検察から呼出しを受けている」。どの段階であっても、弁護士が取れる行動はあります。おひとりで抱え込まず、まずは一度ご相談ください。
当事務所では、暴行・傷害事件の弁護経験豊富な弁護士が、依頼者の不利益を最小限に抑えるため全国対応の無料相談で迅速に動きます。ご状況に応じた最善の方針をご提案いたしますので、お早めにお問い合わせください。
| 気軽に弁護士に相談しましょう |
|
この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

