
執行猶予を受けている期間中に再び罪を犯した場合、原則として実刑となりますが、一定の要件を満たせば「再度の執行猶予(ダブル執行猶予)」を受けられる可能性があります。ただし、獲得できるのは約4%と非常に狭き門です。
「執行猶予中に逮捕されてしまった」「前の罪と合わせて長期間刑務所に入ることになるのか」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、再度の執行猶予の要件や獲得確率、認められやすいケース、獲得に向けてすべきことを解説します。2025年6月施行の改正刑法で要件が一部緩和されましたので、その点についても触れています。
- 再度の執行猶予(ダブル執行猶予)とは
- 4つの要件と2025年改正のポイント
- 再度の執行猶予が得られる確率
- 認められやすいケースと獲得のポイント
なお、執行猶予中の再犯について早急に弁護士へ相談したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。
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再度の執行猶予とは?
再度の執行猶予とは、判決時に執行猶予中の方が、判決で再び執行猶予を受けることをいいます。1度目の執行猶予に重ねて2度目の執行猶予が付くことから、俗に「ダブル執行猶予」とも呼ばれます。
判決時に執行猶予中ということは、前の罪で言い渡された執行猶予の期間が続いている間に別の罪を犯し、その罪でこれから判決を受けようとしている状態を指します。
そのため、社会内更生は困難であるとして、新たな罪については実刑となる(前の罪の執行猶予については取り消される)のが通常ですが、それでもなお社会内更生の機会を設けたのが再度の執行猶予の制度です。
このように、再度の執行猶予は、本来であれば実刑が相当であるものを執行猶予とするものですから、その要件は通常の執行猶予の要件に比べてかなり厳格となっています。
再度の執行猶予の要件は?
再度の執行猶予について規定されている条文は、刑法第25条第2項です。この条文に、再度の執行猶予の要件が定められています。
刑法第25条(刑の全部の執行猶予)
2 前に拘禁刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が二年以下の拘禁刑の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、この項本文の規定により刑の全部の執行を猶予されて、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
上記条文を紐解くと、再度の執行猶予の要件は次のとおりです。
- ①今回の判決時に執行猶予中であること
- ②今回の罪の判決で2年以下の拘禁刑の言い渡しを受けること
- ③情状に特に酌量すべきものがあること
- ④再度の執行猶予による保護観察期間中の再犯でないこと
①今回の判決時に執行猶予中であること
前述のとおり、再度の執行猶予を受けるには、今回の判決時に執行猶予中であることが必要です。判決時にすでに猶予期間が経過していた場合は、再度の執行猶予ではなく最初の執行猶予の適用を受けます。
②今回の罪の判決で2年以下の拘禁刑の言い渡しを受けること
今回の罪について、判決で2年以下の拘禁刑が言い渡されることが必要です。そのため、殺人罪や強盗罪(※1)のように法定刑が重い罪では、2年以下の拘禁刑が言い渡されることはほとんどなく、再度の執行猶予を受けることは困難です。一方、窃盗罪(※2)のように法定刑の幅が広い罪であっても、判決で2年を超える拘禁刑の言い渡しを受けた場合は対象外です。
※1 殺人罪(死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑)、強盗罪(5年以上の有期拘禁刑)など
※2 窃盗罪(10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)など
③情状に特に酌量すべきものがあること
「情状」は犯罪そのものに関する情状(「犯情」)と犯情以外の「一般情状」にわけられます。
【犯情】
- 犯行態様(犯行の回数、武器使用の有無、単独か共犯か、故意か過失かなど)
- 犯行の計画性(偶発的か計画的か)
- 犯行の動機(私利私欲のためか、被害者にも一定の落ち度があるかなど)
- 犯行の結果(怪我か死亡か、怪我・被害の程度、被害金額、後遺症の有無など)
【一般情状】
- 被告人の年齢、性格
- 被告人の反省の程度(当初から罪を認めているか、不合理な弁解に終始して罪を否認しているかなど)
- 被害弁償、示談成立の有無
- 更生可能性(被告人に更生意欲があるか、適切な監督者・身元引受人がいるか、更生に向けた環境が整っているかなど)
- 再犯可能性(前科・前歴の有無、執行猶予中かどうか、常習性の有無、犯行の原因は消滅しているか、犯行グループから脱却できているかなど)
再度の執行猶予の場合は単に被告人に有利な情状が認められるだけでは足りず、「特に」酌量すべきと認められる情状が必要です。
④再度の執行猶予による保護観察期間中の再犯でないこと
改正前は、保護観察付き執行猶予中に再犯した場合は一律に再度の執行猶予を受けることができませんでした。しかし、2025年6月施行の改正刑法により、最初の保護観察付き執行猶予中の再犯であっても再度の執行猶予を受けられるようになりました。
ただし、再度の執行猶予には必ず保護観察が付されます(刑法第25条の2第1項)。そして、この再度の執行猶予による保護観察期間中にさらに罪を犯した場合は、3度目の執行猶予を受けることはできません。
2025年改正で緩和された要件
2025年6月1日に施行された改正刑法により、再度の執行猶予は以前より認められやすくなりました。改正前と改正後で変わったのは、次の2点です。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2025年6月〜) |
|---|---|---|
| 言い渡せる刑の上限 | 1年以下の懲役・禁錮 | 2年以下の拘禁刑に引き上げ |
| 保護観察付き執行猶予中の再犯 | 一律に対象外 | 一定の要件のもとで対象に |
言い渡せる刑の上限が2年に引き上げられたことで、これまで刑の重さが理由で対象外だった事案も、再度の執行猶予を検討できるようになりました。
再度の執行猶予が得られる確率は?
再度の執行猶予が得られる確率はどの程度なのでしょうか?この点に関する明確な数値がないため、種々の数値から計算してみたいと思います。
まず、「2024年 検察統計(e-Stat)」の表71「罪名別 刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者の人員」によると、令和6年中に再度の執行猶予を受けた人の数は「122人」でした(①)。
次に、同統計の表73「高裁及び地裁管内別 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消された者の人員」によると、令和6年中に執行猶予を取り消された人の数は「3,020人」でした(②)(※)。
そして、「①(122人)」の数を「①(122人)+②(3,020人)」の数で割ると「約4%」(0.0388)となります。つまり、令和6年は、判決時に執行猶予中の人の「約4%」しか再度の執行猶予を受けることができていない、ということがわかります。
実刑判決を受けてから執行猶予が取り消されるまでにはタイムラグがあるため正確な数値とは言い難いですが、おおよそこの程度の人しか再度の執行猶予を受けることができていない、というのが実務上の実感です。
※判決時に執行猶予中の人で再度の執行猶予を受けることができなかった場合、つまり、実刑判決を受けた場合は前の罪の執行猶予は必ず取り消されます(刑法第26条第1号)。そして、実刑となった罪の服役を終えた後、さらに執行猶予を取り消された罪について服役しなければいけません。執行猶予の取消しについて詳しくは執行猶予の取り消しとは?具体例と取り消しを防ぐ3つの対策をご参照ください。
刑法第26条(刑の全部の執行猶予の必要的取消し)
次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。(略)
一 猶予の期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
引用元:e-Gov法令検索
再度の執行猶予が認められやすいケースは?
再度の執行猶予(ダブル執行猶予)は狭き門ですが、認められやすい一定の傾向はあります。実務上、次のようなケースで認められた例が見られます。
罪名でいうと、最も多いのは窃盗(万引き)です。前述の検察統計でも、令和6年に再度の執行猶予を受けた122人のうち63人が窃盗でした。万引きは法定刑の幅が広く、2年以下の拘禁刑におさまりやすいことが理由の一つと考えられます。
また、万引きや窃盗の背景に摂食障害やクレプトマニア(窃盗症)といった病気があり、本人がその治療に真剣に取り組んでいるケースもあります。再犯の原因が病気にあり、治療によって改善が見込めると評価されれば、社会内で治療を続けさせる意味があると判断されることがあります。
このほか、前の罪が故意による犯罪だったのに対し、今回が過失による犯罪(過失運転致傷など)であるなど、前回と今回で犯罪の性質が大きく異なる場合も、再び社会内で更生させる余地があると判断されやすくなります。また、被害者との示談が成立していれば、有利な事情として考慮されやすくなります。
反対に、前回と同じ種類の犯罪を繰り返している場合や、計画性・常習性が認められる場合は、「特に酌量すべき情状」が認められにくく、再度の執行猶予のハードルは高くなります。
執行猶予の満了後や満了間近に再犯した場合はどうなる?
再犯したタイミングが執行猶予期間の満了後か満了の直前かによって、前の罪の執行猶予の扱いは変わります。
満了後に再犯した場合
前の罪の執行猶予期間が満了した後に再び罪を犯した場合は、前の罪の執行猶予はすでに効力を失っているため、取り消されることはありません(刑法第27条第1項)。前科は残りますが、法律上は「執行猶予中」ではなくなっています。
そのため、満了後に犯した罪については、再度の執行猶予ではなく、通常の(初度の)執行猶予を検討することになります。前の罪について服役することにはなりません。
満了間近に再犯した場合
問題となるのは、満了の直前に再犯し、その罪の判決の確定が猶予期間の経過後にずれ込むケースです。改正前は、判決の確定を意図的に引き延ばして前の罪の執行猶予の取消しを免れる、いわゆる「弁当切り」が行われることがありました。
しかし、2025年6月施行の改正刑法により、猶予期間内に犯した罪について猶予期間内に起訴されているときは、猶予期間が経過しても一定の期間は執行猶予が続いているものとみなされます(効力継続期間。刑法第27条第2項)。そして、その罪について拘禁刑以上の実刑が確定すれば、前の罪の執行猶予は原則として取り消されます(刑法第27条第4項)。判決を引き延ばして前の罪の取消しを免れる「弁当切り」は、改正後はもはや通用しません。
再度の執行猶予を獲得するためにすべきことは?
再度の執行猶予を獲得するうえで重要なのは、被告人に有利な「情状」をいかに裁判でアピールできるかです。やるべきことの具体的な内容は、被告人が罪を犯した動機や経緯、罪の内容や重さなどによって異なります。
被害者がいる事案では、被害弁償や被害者との示談の成立が大きな意味を持ちます。窃盗症などの病気が背景にある場合は、早い段階から専門の治療機関に継続して通院することが効果的です。また、本人が家族と同居し、家族が指導・監督するなどして更生可能性があること、再犯可能性がないこと、刑務所よりも社会内での更生が本人にとって有益であることをアピールしていくことが求められます。示談の具体的な進め方やメリットについては刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説で詳しく解説しています。
執行猶予中の再犯でお悩みの方は弁護士にご相談ください
再度の執行猶予(ダブル執行猶予)は要件が厳しく、認められるのは約4%という狭き門です。しかし可能性はゼロではなく、被害弁償や示談の成立、治療への取り組み、家族による監督体制の構築といった「特に酌量すべき情状」をどれだけ積み上げられるかが結果を左右します。
こうした準備は早く着手するほど効果が高まります。弁護士が早い段階から方針を立てて動くことで、再度の執行猶予の可能性を少しでも引き上げることが期待できます。
執行猶予中に再び逮捕され、「このまま実刑になるのか」「前の罪と合わせて長く服役することになるのか」と強い不安を抱えている方や、ご家族が逮捕されて何から手をつければよいか分からないという方もいらっしゃるでしょう。
当事務所は、刑事事件に精通した弁護士が、再度の執行猶予を得られるよう迅速に動き、全力でサポートいたします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

