読み方が同じの「拘留」と「勾留」の違いは?弁護士が分りやすく解説

この記事をご覧の方の中にも、刑事事件のニュースで「〇〇が勾留(こうりゅう)されました」などと聞かれたことがあると思います。しかし、ときにマスコミですらこの「勾留」を「拘留(こうりゅう)」と誤表記するほど、勾留と拘留は混同して理解されがちです。両者は読み方は同じでも意味は全く異なります

そこでこの記事では誤解しやすい勾留と拘留との違いなどについて、刑事事件に詳しい弁護士が解説します。

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勾留とは

勾留とは、被疑者あるいは被告人が、裁判官の判断に基づき、一定期間、警察署の留置場や拘置所に拘束されることをいいます。

勾留の目的は被疑者、被告人の罪証隠滅、逃亡を防止すること、刑事裁判のための出廷を確保ことです。被疑者とは起訴される前の人、被告人とは起訴された後の人を指します。したがって、勾留も被疑者勾留被告人勾留があり、それぞれで勾留に至るまでの手続や勾留期間が異なります。

まず、被疑者勾留は必ず逮捕が先行します(いきなり勾留ということはありません)。そして、検察官に勾留請求され裁判官がそれを許可した場合、勾留期間は検察官の勾留請求があった日から数えて10日間となります。その後、期間を延長することにつきやむを得ない事情がある場合は最大10日(一部の事件を除く)まで勾留期間が延長されることがあります。勾留は、原則一事実につき一回のみです。

次に、被告人勾留の場合、勾留前に逮捕はもちろん検察官の勾留請求手続きが先行しません。つまり、被疑者段階で勾留されている場合は起訴されたと同時に被告人勾留に切り替わります。被疑者段階で勾留されていない場合は、裁判官が職権で被疑者を勾留するかどうか決めることができます。いずれの場合の勾留期間も起訴された日から2か月間で、その後は特に勾留の継続の必要があり、具体的な理由がある場合にのみ1か月ごと勾留期間が更新されます。

なお、勾留中は不服申し立てが認められることなどによって勾留期間中に釈放されることがあります。

勾留とは?要件や身柄拘束される期間、釈放されるための2つの手段

拘留とは

拘留は刑罰の一種です(刑法第9条)。刑罰の内容は、裁判官から拘留を言い渡された被告人を、1日以上30日未満の範囲内の期間、刑事施設(刑務所、拘置所、留置場)に収容する(刑法第16条)、というものです。具体的な収容期間は裁判官が決めます。

刑法第9条(刑の種類)
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
刑法第16条(拘留)
拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。

刑罰を、受刑者からはく奪する法益の視点から分類すると、生命刑・自由刑・財産刑に分かれます。

  • 生命刑:絞首の方法で受刑者の生命をはく奪する刑罰(死刑)
  • 自由刑:刑務所に拘置する方法で受刑者の自由をはく奪する刑罰(懲役・禁錮・拘留
  • 財産刑:金銭を国庫に納付させる方法で受刑者の財産をはく奪する刑罰(罰金・科料)

上記の通り、拘留は自由刑に属しますが、懲役刑や禁錮刑と違い、執行猶予がつくことはありません

勾留されている被告人は釈放されずに、保釈されて在宅のまま起訴された場合は法廷で拘留の判決が下った時点で即座に身柄拘束され、刑事施設に収容されます。

また、拘留(および禁錮)は懲役と異なり刑事施設内で刑務作業を強制されることはありませんが、受刑者が指定された作業を行いたい旨の申出を行った場合は許可されることがあります。

勾留と拘留の違い

勾留も拘留も人の身体を拘束するという点では同じです。しかし、勾留はあくまでも、被疑者・被告人の逃亡や証拠隠滅を防いで刑事裁判を実現するための手段にすぎません。他方で、拘留はその刑事裁判が開かれ、刑事裁判の判決で有罪とされた後になってはじめて科される刑罰の一種です。

また、勾留はあくまでも判決前の身体的拘束ですので、有罪判決が下されることを前提とした「前科」はつきません。一方、拘留は、有罪判決を受けたからこそ科される刑罰ですので、前科がつきます。

なお、勾留と拘留はどちらも呼び方が「こうりゅう」であり間違われやすいことから、法律の専門家の間では、「勾留=かぎこうりゅう」「拘留=てこうりゅう」と呼んで区別することもあります。また、マスコミでは、「勾留」のことを「拘置」と置き換えて用いることもあります(「拘置」はマスコミ用語であって法律用語ではありません)。

前科と前歴の違い|5つのデメリットと前科をつけないためにすること

拘留が刑罰として規定されている犯罪

刑法公然わいせつ罪(刑法174条)6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
暴行罪(刑法208条)2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
侮辱罪(刑法231条)拘留又は科料
軽犯罪法第1条第1項1号~34号までの罪拘留又は科料
酩酊者規制法著しく粗野又は乱暴な言動をした罪拘留又は科料

では、一年間にどのくらいの人が拘留の刑が科されているのでしょうか?法務省が公表している「検察統計調査「審級別 確定裁判を受けた者の裁判の結果別人員」」によると次のとおりです。

年度2016年2017年2018年2019年2020年
拘留された人の数6人5人1人3人5人

このように拘留を科される人が少ない一番の理由として、上記の通り、そもそも拘留を規定する罪自体が懲役、禁錮、罰金に比べて少ない、ということが挙げられます。

また、拘留は自由刑ですから、拘留が言い渡された人を刑事施設(刑務所など)に収容しなければなりません。しかし、拘留受刑者が多くなると、受け入れる側の刑事施設が過剰収容となって(2000年代前半は刑事施設の過剰収容が問題となりました)、拘留受刑者よりも重たい罪を犯した懲役、禁錮受刑者を収容できなくなるおそれも出てきます。このことから、たとえ罪に選択刑として拘留が規定されていたとしても、そもそも求刑する検察庁自体が拘留を選択せずに、科料や罰金を選択しているという実情も影響していると考えられます。

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