刑法207条の同時傷害の特例とは?弁護士がわかりやすく解説

同時傷害の特例とは、二人以上で暴行を加えて人に怪我を負わせた場合において、誰がどの程度の怪我を負わせたかわらからない、あるいは、誰の暴行によるものなのかわからないときでも、それぞれを共同して犯罪を実行したとして共犯(共同正犯)で処罰するというものです。刑法207条に規定されています。

(同時傷害の特例)
第207条
2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。

たとえば、XVが口喧嘩し、XVに対して殴る蹴るの暴行を加えたとします。さらに、その状況を目撃したXとまったく面識のないYが、Xから頼まれたわけでもないのにXに加勢しようとVに殴る蹴るの暴行を加え、結果として、Vさんに加療3か月を要する大怪我を負わせてしまいました。しかし、この怪我がXの暴行によるものなのか、Yの暴行によるものなのかわかりません。こうした際にXYに適用されるのが同時傷害の特例です。XとYには傷害罪が成立します。

以下では、同時傷害の特例の存在意義と問題点についてい、刑事事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。

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同時傷害の特例の存在意義

同時傷害の特例が設けられたのは次の理由からです。

行為者間の意思疎通の立証の困難を救済するため

先ほどあげた事例では、XYとの間では「Vを痛めつけよう」という暴行の意思疎通がないため、本来はXYを共犯で処罰することはできません。しかし、特に傷害事件の場合、複数の加害者によって暴行が加えられるケースが多いにもかかわらず、加害者間に上記のような明確な意思疎通がなく、その立証ができないため共犯で処罰できないとなると、通常の共犯と比べて不公平とも考えられます。そこで、加害者間に意思疎通があったことの立証がなくても共犯で処罰するとし、立証の困難の救済を図っているのが同時傷害の特例なのです。

暴行と傷害(怪我)との間の因果関係の立証の困難を救済するため

また、加害者が同時に暴行を加え被害者に怪我を負わせた場合、往々にしてその怪我が誰の暴行によって生じたものなのかわからないことが起こり得ます。この場合、被害者に怪我が生じたにもかかわらず、暴行と怪我との因果関係を立証できないばかりに加害者を傷害未遂罪、すなわち、暴行罪でしか処罰できないことにもなりかねません。そこで、被害者に生じた怪我が誰の暴行によって生じたものかわからない場合でも傷害の共犯として処罰するとし、立証の困難の救済を図っているのが同時傷害の特例なのです。

このように、同時傷害の事案では、暴行と怪我との間に因果関係がなくても因果関係があると推定されてしまうため、罪に問われている側が暴行と怪我との因果関係がないことを証明しなければいけません。これを挙証責任の転換といいます。

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同時傷害の特例の問題点

同時傷害の特例が傷害致死罪(刑法205条)にも適用があるのかが問題となります。なぜなら、同時傷害の特例の規定を見ると、人に怪我を負わせた場合にしか適用されないのではないかと読めるからです。

この点、判例(最判昭和26年9月20日)は、立証の困難の救済を図るという同時傷害の特例の趣旨からすれば、傷害罪の場合とこれの発展系である傷害致死罪で差異はなく、適用されるとしています

これに対し、同時傷害の特例は怪我をさせた場合にしか適用されないと読めるし、挙証責任を転換する例外的な規定なため、傷害致死罪には適用されるべきではないとする反対説もあります。

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まとめ

軽い気持ちで暴行に加わってしまい、同時傷害の特例の適用により重大な傷害事件に発展してしまうこともあります。逮捕・起訴されれば身柄拘束が続き、学校や仕事への影響も考えらえますので、できるだけ早急に被害者と示談を成立させ、早期釈放・不起訴処分を目指すべきでしょう。

弊所では、暴行・傷害事件の被害者との示談交渉、弁護活動を得意としております。お困りの方はお気軽にご相談ください。

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