暴行罪の刑事の時効は3年、民事の時効は5年です

刑事上の時効である「公訴時効(こうそじこう)」とは、犯罪行為が終わってから一定期間が経過すると、検察官が公訴の提起(起訴)ができなくなるという制度のことです。起訴ができなくなるということは、犯人を刑事裁判にかけて処罰することが出来なくなるということです。時間の経過とともに犯罪の証拠が散逸してしまい立証が困難になること、社会や国民の処罰感情の低下などが、公訴時効がある理由と考えられています。

そして、暴行罪の刑事上の時効(公訴時効)は、暴行行為の終了時から3年です。

暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料(刑法208条)」であるところ、刑事訴訟法250条2項6号で「長期5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金に当たる罪については3年」で時効が完成すると書かれているからです。

例えば、令和3年3月3日15時に甲さんが乙さんを暴行した場合、暴行罪の公訴時効が完成するのは、令和6年3月2日24時(つまりは、3月3日の0時)となります。15時と24時(0時)で時間がずれているのは、時効期間の初日は時間を論じないで1日として計算するためです(刑事訴訟法55条1項)。

また、暴行罪の民事の時効(損害賠償請求権の消滅時効)は、被害者が損害及び加害者を知った時から5年で時効消滅します(民法724条、724条の2)。

この記事では、暴行事件に強い弁護士が、上記内容につき詳しく解説していきます。

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そもそも暴行罪とは?

どのような行為をすれば暴行罪が成立する?

暴行罪とは、人に暴行をくわえたが傷害を負わせるに至らなかった場合に成立する犯罪です(刑法第208条)。罰則は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。

「暴行」とは、人の身体に対する不法な有形力の行使をいいます。例えば、殴る・蹴る・突き飛ばす・押し倒すなどの行為が典型です。その他にも、直接人に触れない行為、具体的には、狭い室内で刃物を振り回したり、人の数歩手前に物を投げるなどの間接暴行も「暴行」に該当します。さらに、太鼓を室内で連打したり、人の耳元で拡声器で大声を出すなどの音による暴行も認められています。

なお、暴行の結果、相手が傷害を負った場合には傷害罪(刑法第204条)が成立します。罰則は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

傷害罪の「傷害」とは、打撲や挫傷、内出血などのほか、頭痛や耳鳴り、嘔吐、PTSDなど、人の生理的機能に障害を与えることも含みます。また、傷害を負わせる故意がなくとも、暴行により結果的に相手が傷害を負った場合にも傷害罪が成立します。

暴行罪で逮捕・起訴される確率は?

令和5年度版犯罪白書によると、検察庁既遂事件の暴行事件の総数が14900人、逮捕されなかった者が8451人ですので、暴行罪で逮捕される確率は約43%となります。

同じく令和5年度版犯罪白書によると、暴行罪で起訴される確率は約30%です。

暴行罪で逮捕されると、検察官が刑事処分(起訴または不起訴)を決定するまで最大で23日間も身柄拘束されます。さらに、起訴されて有罪判決となれば、仮に罰金刑や執行猶予付き判決であった場合でも、有罪であることに変わりはありませんので、前科がついてしまいます。

そのため、逮捕や起訴を回避するためには、被害者と示談を成立させたり、場合によっては自首することも検討する必要があります(後述します)。

暴行罪の公訴時効の起算点

暴行罪の公訴時効が進行を開始する起算点は、「暴行行為の終了時」です。

例えば、令和3年7月1日深夜23時55分にAさんがBさんに暴行を加え始め、7月2日の0時を過ぎて暴行行為を終了させた場合は、7月2日が、暴行罪の公訴時効の起算点となります。

暴行を用いた他の犯罪の公訴時効

暴行を用いた他の犯罪の時効についても確認しましょう。

暴行を手段とした犯罪公訴時効
傷害罪10年
傷害致死罪20年
強盗罪10年
強制性交等罪10年
恐喝罪7年
公務執行妨害罪3年

ご覧のように、暴行罪の公訴時効が3年であるのに対し、傷害罪の公訴時効は10年とかなりの長期間です。加害者の立場で見れば、その差7年間、起訴されて刑事裁判にかけられる不安を抱えて生活していくことになりますので、どちらの犯罪が成立しているのかを、以下の記事を読んで今一度確認しておいた方が良いでしょう。

暴行罪と傷害罪の違いは?どこから成立する?構成要件や罰則を弁護士が徹底解説

暴行罪の公訴時効が停止するケース

暴行罪の公訴時効の停止・進行再開の流れ

暴行罪の公訴時効は、

  • ①犯人が起訴された場合
  • ②犯人が国外にいる(海外旅行などの一時渡航も含む)場合
  • ③逃げ隠れしているため有効に起訴状の謄本の送達等ができない場合

に停止します(刑事訴訟法254条1項、255条1項)。

公訴時効の「停止」とは、あくまでも「一時停止」という意味合いです。例えば、暴行事件を起こしてから半年後に国外に渡った犯人が、その後日本に帰国した場合、国外に滞在していた期間は公訴時効が停止しており、帰国した時点で残りの2年6ヶ月の時効の進行が再開されることになります。

なお、暴行行為の共犯者がいる場合は、共犯者の一人が起訴されると、その者の刑事裁判が確定するまでの間は、他の共犯者の公訴時効も停止します。

暴行罪の民事の時効は5年

暴行の被害者は、加害者の逮捕、刑事処罰を求める他、不法行為による損害賠償や慰謝料の請求といった民事的な責任を追及することもできます(民法709条・710条)。

暴行の慰謝料とは、暴行行為により被った精神的苦痛を金銭に換算したものです。一方、暴行罪の損害賠償(財産的損害)は、暴行の際の衣類や持ち物の破損、怪我の有無を検査する際の病院の診察費用がそれに該当するでしょう。

これら損害賠償請求権は、暴行罪の被害者が、損害及び加害者を知った時から5年間行使しないことで消滅時効にかかります(民法724条、724条の2参照)。

「加害者を知った時から5年間~」ですので、見知らぬ者に暴行を受けた挙句に逃走されたようなケースでは、加害者が誰であるかを被害者が知るまでは時効の進行が開始されません。ただし、不法行為の時(暴行事件のあった時)から20年が経過した場合も時効にかかります。このケースでいえば、加害者が誰か知ることができないまま20年が経ってしまった場合です。

暴行罪の時効完成を待つリスク

前述の通り、暴行罪の公訴時効は3年間です。この間、暴行の加害者は罪を犯したという負い目やいつ逮捕されるかわからないという不安を抱えながら、肩身の狭い生活を送らなければいけません。生きた心地はしないでしょう。

また、警察が暴行事件の被疑者を逮捕するには「被疑者が逃亡・証拠隠滅をするおそれが高い」という要件を満たす必要がありますが、警察に事件の被疑者と特定された場合、逃げ回っていた事実が「逃亡のおそれが高い」と判断され、逮捕される可能性が非常に高くなります。ある日突然、自宅に警察が押しかけてきて、自宅の所有物を差し押さえられたり逮捕される可能性も十分あるのです。

逮捕の事実がマスコミで実名報道されれば社会的信用を失いますし、場合によっては会社を懲戒解雇、学生の方は退学処分もあり得ます。ご家族の方も周囲からの視線に耐えられずに引っ越しを余儀なくされることもあるでしょう。さらに、起訴されて有罪判決となれば前科もついてしまいます。

時効完成を待たずにすべきこと

被害者と示談を成立させる

上記のような事態を招かないためにも、暴行事件につき身に覚えのある方は、被害者に早急に謝罪をするとともに、示談交渉を開始することをお勧めします。

暴行の被害者と示談を成立させることができれば、捜査機関に被害申告をしない旨の約束をしていただけますので、警察に事件が発覚して逮捕されるおそれもなくなります

既に被害者が警察に被害届や告訴状を提出していた場合でも、示談成立によりそれらを取り下げていただけますので、逮捕される可能性は格段に低くなります。

もっとも、暴行の被害者は自分に暴力をはたらいた加害者に対して恐怖感や嫌悪感を抱いていることが多く、加害者と直接示談交渉に応じる可能性は低いです。仮に直接の示談交渉に応じてもらえた場合でも、中には法外な示談金を請求されるケースもあります。

この点、弁護士であれば示談交渉に応じてくれる被害者も多く、暴行事件に精通した弁護士であれば様々な暴行事件における示談金相場を把握していますので、適切な金額で示談を成立させられる可能性も高まります

自首する

また、街中で見知らぬ人に暴行してしまい被害者の連絡先が分からないなど暴行の被害者と連絡が取れない場合には、自首も検討しましょう。自首そのものの効果ではありませんが、自首することで「証拠隠滅・逃亡のおそれがない」と捜査機関が判断して、逮捕を回避できる可能性が高まります

もっとも、自首したからといって必ずしも逮捕を回避できる保証はありませんので、自首するかどうかはやはり弁護士の判断が必要となります。また、弁護士に依頼すれば、逮捕回避のための対策をとったうえで自首に同行してくれますので、一人で不安を抱えながらの自首をせずに済みます。

当事務所では、暴行事件の被害者との示談交渉、自首の同行につき豊富な実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者の盾となって全力で守りますので、暴行罪の時効完成まで怯えて暮らすことに精神的に耐えられない方や逮捕による不利益を回避したい方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。

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