暴行罪は、暴行により相手が傷害を負わなかった場合に成立する犯罪です(刑法第208条)。そのため、
- 「暴行は相手に怪我を負わせたわけでもないんだし警察は動かないだろう」
- 「相手に怪我を負わせる傷害罪と違って目に見える証拠もないし逮捕されることもないだろう」
このように高を括っている方もいます。
しかし、結論から言いますと、暴行罪でも警察は動きます。加害者が証拠がないと考えていても実は暴行を裏付ける証拠が残っていることがあるためです。
この記事では、暴行事件に強い弁護士が、
- 暴行罪で警察は動かないのか
- 暴行罪で証拠がないと警察は動かないのか
- 暴行罪の証拠となり得るもの
などについて解説していきます。
なお、暴行事件を起こしてしまった方でこの記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。
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暴行罪で警察は動かない?
警察白書によると、令和3年の暴行罪の検挙率は88%です。刑法犯全体での検挙率は46.6%ですので、暴行罪は高い検挙率と言えます。また、検察統計調査によると令和3年の暴行罪の逮捕率は約43%とこちらも低い数字とは言えません。
これらのデータから暴行罪で警察がしっかりと動いていることがわかります。
暴行罪の証拠がないと警察は動かない?
逮捕は、被疑者の身体を拘束して自由を奪う強制処分です。逮捕された被疑者は多大な精神的苦痛を味わうだけでなく、社会的信用も失いますし、経済的な損害も生じます。
そのため、捜査機関が被疑者を逮捕するには、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が法律上、必要とされています(刑事訴訟法199条2項)。
「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があると言えるためには、警察や検察といった捜査機関の主観ではなく、客観的な証拠に基づかなければなりません。
したがって、暴行行為があったことを裏付ける証拠がまったくないのであれば、警察が後日逮捕(逮捕状を示してする逮捕)に踏み切ることはありません。
もっとも、暴行行為の最中や、暴行行為の終わった直後に逮捕される「現行犯逮捕」のケースでは、被害者や周囲の人が犯行現場を目撃していることから、その他の証拠や逮捕状がなくても逮捕されます。現行犯逮捕は警察官以外の私人(一般人)でも行えますが、その後警察に身柄を引き渡され、警察署に連行されることになります。
暴行罪の証拠となり得るものは?
冒頭でお伝えしたように、暴行罪は、暴行の結果、相手に傷害を負わせないことで成立する犯罪ですので、傷害罪のように物的な証拠が残りにくいといった性質があります。
しかし、前述の通り、暴行罪は高い検挙率と逮捕率ですので、加害者が予想していなかった、あるいは、気付いていなかった何らかの証拠が存在していることになります。具体的には、以下で挙げるようなものが暴行罪の証拠となり得ます。
- 防犯カメラの映像
- 目撃者などが撮影した動画・画像や音声
- 会話の録音データ
- 暴行時の痕跡が残っている被害者の衣服・持ち物
- 被害者の証言
- 目撃者の証言
最近では防犯対策のために店舗内や街中のあちこちにカメラが設置されていますし、スマホが普及したことで他人のトラブルや争いごとを撮影する人も少なくありません。また、被害者がとっさにスマホのアプリで加害者との会話を録音しているケースもあります。さらに、現在の犯罪捜査の技術では、洋服などの布から指紋を採取することも可能なため、たとえば、加害者が被害者の胸倉を掴むなどの暴行行為をしたのであれば指紋が残っていることもあります(ただし、指紋採取をするかどうかは捜査機関の判断となります)。
このように、暴行事件でも客観的な証拠が残ることは十分あり得るのです。
また、唯一の証拠が被害者の証言のみでは証拠能力としては脆弱ですが、目撃者がいてその証言と内容が一致すれば、信用性のある有力な供述証拠となり得ます。
そのため、「暴行の証拠もないだろうし大丈夫だろう」と軽んじていると、ある日突然、警察に後日逮捕されないとも限らないのです。
暴行罪で警察が動く前にすべきこと
暴行罪で警察が動く、すなわち被疑者の逮捕に踏み切る前にそれらを回避するために加害者ができることをここで解説します。
示談交渉をする
暴行の被害者の連絡先が分かっている場合には、真摯に謝罪し、被害弁償を済ませ、示談成立を最優先すべきです。
被害者が警察に被害届を出す前に示談成立すれば、捜査機関に犯罪事実が伝わらず、逮捕を回避できる可能性があります。既に被害届が出されている場合でも、示談交渉を通じて被害届を取り下げることで、同様に逮捕を免れる可能性が高まります。
ただし、暴行事件の被害者は加害者に対して恐怖心や嫌悪感を抱いているため、示談交渉に応じない場合もあります。また、当事者同士では感情的な話し合いになってしまい、示談がまとまらないこともあります。
そのため、暴行事件の被害者との示談交渉は弁護士に一任すべきでしょう。弁護士であれば被害者の感情を最大限に考慮しつつ、経験に基づいて冷静に示談交渉を進めることができます。また、暴行の程度や被害の状況に応じて適切な示談金相場を把握しています。そのため、被害者から過大な示談金を要求された場合でも、適切な金額で示談成立を図ることができます。
自首する
自首は犯罪者が自発的に捜査機関に名乗り出て処分を求める行為です(刑法第42条)。自首によって刑の減軽が可能とされていますが、逮捕回避には直接的な効果はありません。
ただし、自首は自身の罪を認めることになるため、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことを証明できる利点があります。捜査機関がこの点を考慮し、逮捕回避につながることも期待できます。
しかし、自首は自身の犯罪を事件化する行為であり、放置すれば暴行罪で事件化されずに済む可能性もあることから、自首するかどうかを自己判断せずにまずは弁護士に相談する必要があるでしょう。
そして自首する場合には、弁護士に同行してもらうようにしましょう。弁護士に同行を依頼すれば、精神的な負担が軽減されるとともに、自首の前に逮捕回避に向けた対策をとってくれます。また、取り調べ中も取調室の外で待機していますので、逮捕されない限り取調室から退出していつでも弁護士に相談できます。
当事務所では、暴行罪の自首の同行、被害者との示談交渉による逮捕回避の実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、暴行行為をしてしまい、いつ逮捕されるか不安な日々を送られている方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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