
「不注意で人にけがを負わせてしまった。過失傷害罪で罰せられるのだろうか」と不安を抱えていませんか。過失傷害罪は、不注意(過失)で人にけがを負わせたときに成立する罪です。刑罰は30万円以下の罰金か科料(1,000円以上1万円未満の金銭の納付)に限られ、刑務所に入る刑は定められていません。
また、被害者の告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がなければ起訴されない親告罪でもあります。被害者と示談が成立して告訴されずに済めば、刑事裁判にかけられることはありません。
この記事では、過失傷害事件の示談交渉に強い弁護士が、次の点について解説します。
- 過失傷害罪が成立する要件と事例
- わざとの傷害罪とは何が違うのか
- 過失傷害罪で逮捕・起訴される可能性
- 示談で起訴を避けられる理由と時効
お読みいただくことで、自分のケースで何が問題になり、いま何をすべきかを判断できます。
なお、過失で人にけがを負わせてしまいお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期の対応が結果を左右します。地域を問わずご相談を承っています。
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過失傷害罪とは
過失傷害罪とは、過失により人を傷害する犯罪で、罰則は30万円以下の罰金または科料です(刑法209条1項)。拘禁刑はありません。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
また、過失傷害罪は親告罪です(刑法209条2項)。親告罪とは、被害者などの告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪のことです。
過失傷害罪の成立要件
過失傷害罪が成立するには、次の3つの要件(構成要件)をすべて満たす必要があります。
過失があること
過失とは、注意義務に違反することです。注意義務の内容はケースによって異なります。
たとえば、歩きスマホをしながらお年寄りにぶつかってその場に転倒させ、骨折させた、というケースで考えてみましょう。この場合、前をよく見ながら歩きましょう、ということが注意義務の内容となり、スマホを操作し、前をよく見て歩いていなかったことが注意義務違反、すなわち過失に該当します。
傷害の結果を発生させたこと
次に、過失によって傷害の結果を発生させたことが必要です。傷害の意味について判例は、人の生理的機能に障害を与えること(生理的機能障害説)という立場をとっています。
そのため、頚椎捻挫や打撲傷などの肉体的に生じるいわゆるけがはもちろん、不眠症や心的外傷後ストレス障害のように、精神面の機能に障害が生じた場合も傷害にあたることがあります。
過失と傷害との間に因果関係があること
最後に、過失行為がなければ傷害が発生しなかった、という過失と傷害との間に因果関係があることが必要です。
過失傷害罪になる事例と判例
過失傷害罪になりうる身近な事例としては、歩きスマホで人にぶつかって転ばせた場合のほか、散歩させていた飼い犬が通りがかりの人にかみついた場合や、スポーツ中にルールから大きく外れた不注意な動きをして相手にけがをさせた場合などが考えられます。
飼い犬(秋田犬)が人にけがを負わせた場合に、飼い主が過失傷害罪に問われた判例(名古屋高裁昭和36年7月20日)があります。
万が一死亡させてしまった場合は過失致死罪、不注意の程度が著しい場合は重過失致死傷罪が成立する可能性もあります(いずれも後述)。
過失傷害罪と傷害罪の違い
両者の大きな違いは、過失傷害罪が「過失(誤って・不注意で)」によって傷害を惹き起こす罪(過失犯)であるのに対し、傷害罪は「故意(わざと)」によって傷害を惹き起こす罪(故意犯)である点です。主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 過失傷害罪(刑法209条) | 傷害罪(刑法204条) |
| 故意・過失 | 過失(不注意)で傷害を負わせた | 故意で傷害を負わせた(暴行を加える認識があれば足りる) |
|---|---|---|
| 法定刑 | 30万円以下の罰金または科料 | 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 告訴の要否 | 親告罪(起訴には被害者の告訴が必要) | 告訴がなくても起訴されうる |
| 逮捕の制限 | 住居不定などの場合に限られる | 軽微な罪としての制限はない |
傷害罪は人に暴行を加える認識があれば成立するのに対し、過失傷害罪は、そうした認識がないまま、不注意で傷害を負わせた場合に成立します。暴行罪と傷害罪の成立要件や罰則の違いについては「暴行罪と傷害罪の違いは?成立要件とどちらが重いかを解説」で詳しく解説しています。
過失傷害で適用される罪
過失で人にけがをさせたり死なせたりした場合に問われる犯罪は、過失傷害罪に限りません。結果の重さや不注意の程度、どのような場面で起きたかに応じて、次の罪が適用されることがあります。
過失致死罪
過失致死罪は、過失によって人を死亡させた際に成立する罪です。刑法210条に規定されています。罰則は50万円以下の罰金です。過失傷害罪と異なり、起訴されるにあたって被害者などの告訴が不要な非親告罪です。
過失による点は過失傷害罪と同じですが、結果が人の死亡にまで及んでいる点が異なり、その分、罰金の上限も高くなっています。けがをさせた時点では過失傷害罪にとどまっていても、そのけがが原因で被害者が亡くなった場合は、過失致死罪に問われることがあります。
判例(大審院昭和2年10月6日)では、乳児に授乳しながら添い寝していた母親が、乳房を引き離さないまま眠り込んだため、熟睡中に乳房で乳児の鼻孔部を圧迫して窒息死させた事案で過失致死罪の成立を認めています。
業務上過失致死傷罪
業務上過失致死傷罪は、業務上必要な注意を怠って人を死傷させたときに成立する罪です。刑法211条前段に規定されています。罰則は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、過失傷害罪よりも重くなっています。また、過失傷害罪と異なり、告訴がなくても起訴できる非親告罪です。
業務とは、社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行う行為で、人の生命や身体に危害を加えるおそれのあるものをいいます(判例)。たとえば、交通機関の運行、医師・看護師の医療行為などがこれにあたります。また、2007年に刑法へ自動車運転過失致死傷罪が設けられるまでは、自動車事故もこの罪で処罰されていました(現在は後述の過失運転致死傷罪で処罰されます)。
判例(最高裁平成22年5月31日)では、花火大会の群衆なだれによる死傷事案で、最高裁判所は、警察署の地域官(現地警備本部の指揮官)と警備会社の支社長には、雑踏事故を容易に予見でき、機動隊の出動を要請して歩道橋への流入を規制するなどして事故の発生を未然に防ぐ注意義務があったとして、業務上過失致死傷罪の成立を認めています。
重過失致死傷罪
重過失致死傷罪は、過失傷害罪などで問われる通常の過失よりも重大な過失で人を死傷させたときに成立する罪で、刑法211条後段に規定されています。罰則は業務上過失致死傷罪と同様で、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。同じ不注意による死傷でも、過失傷害罪とは違って親告罪ではありません。
重大な過失(重過失)とは、注意義務違反の程度が著しいことをいいます。すなわち、少しの注意を払えば死傷の結果を回避できたにもかかわらず、その注意すら払わなかったことを指します。
自転車に乗りながらスマートフォンを操作する「ながら運転」などが典型例です。詳しくは「重過失致死傷罪とは?過失致死傷罪との違いや判例、時効を解説」をご参照ください。
判例(横浜地裁川崎支部平成30年8月27日)では、商店街の歩行者専用道路を電動自転車で走行中、イヤホンで音楽を聴きつつ、飲み物を持つ右手でハンドルを持ち、左手でスマートフォンを操作しながら走行し、メールのやり取りを終えてスマートフォンをポケットにしまうことに気を取られたことにより前方注視が疎かになったことで、前方の被害者女性(77歳)に自転車を衝突させ、路上に転倒させて死亡させた重過失致死罪に問われた事案で、自転車を運転していた女性に禁錮2年執行猶予4年の有罪判決が言い渡されました。
過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪
交通事故など自動車の運転中に不注意で人を死傷させたときは、過失傷害罪ではなく、自動車運転処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)5条の過失運転致死傷罪に問われます。罰則は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
判例(福岡高裁令和2年2月14日)の事案は、ニュースでよく見聞きするアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故です。この踏み間違いによって自動車を病院のラウンジに突入させ、死者3名、負傷者7名の結果を発生させました。
裁判所は、アクセルとブレーキの踏み間違いという、自動車を運転する上で最も基本的な操作を怠ったことにより人々の死傷を発生させた被告人の過失は重大であって、発生させた結果も重大であることから、被告人は初犯であったものの執行猶予を付すべき事案ではないとし、被告人に禁錮5年6月の実刑判決が言い渡されました。
一方、飲酒や薬物のために正常な運転が難しい状態での走行、制御が難しいほどの高速度での走行、通行を妨害する目的での割り込みや接近、赤信号の殊更な無視など、同法2条が定める危険な運転によって人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪が成立します。罰則は過失傷害罪よりはるかに重く、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑、死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑です。
判例(最高裁判所平成23年10月31日)の事案は、2006年(平成18年)8月25日の深夜、福岡市内の道路をアルコールの影響による正常な運転が困難な状態で走行したことにより、自車を前方の車に追突させ、その衝撃により前方の車を博多湾に転落させ、幼児3名を水死させるなどしたものです。
業務上過失致死傷罪(現在の過失運転致死傷罪)か危険運転致死傷罪かのいずれが適用されるかが争われましたが、最高裁判所は危険運転致死傷罪を適用した福岡高裁の判決に対する被告人の上告を棄却し、懲役20年の刑が確定しています。
過失傷害罪で逮捕・起訴されることはある?
過失傷害罪で実際に逮捕されるケースは多くありません。法律上、逮捕できる場面が限られているためです。
過失傷害罪のように法定刑の軽い罪(刑事訴訟法の言葉では「30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪」)では、逮捕状による通常逮捕は、被疑者の住居が定まっていない場合か、正当な理由がないのに警察などからの出頭の求めに応じない場合に限られます(刑事訴訟法199条1項ただし書)。その場で取り押さえる現行犯逮捕も、犯人の住居や氏名が明らかでない場合か、逃亡するおそれがある場合に限られます(同法217条)。
そのため多くは、在宅事件(逮捕されずに日常生活を送りながら捜査や裁判が行われる刑事事件)として捜査が進みます。この場合の手続きの流れや期間については「在宅事件の流れと期間|起訴率・不起訴率と身柄事件との違い」で解説しています。ただし、逮捕されなくても、起訴されて罰金を命じる略式命令を受けたり、正式な裁判で有罪となったりすれば、前科がつくことになります。前科がつくことで生じる影響については「前科とは?前歴との違いや前科がつく5つのデメリット」で詳しく解説しています。
起訴される割合(起訴率)は高くありません。検察統計調査によると、令和7年に検察庁が処理した過失傷害罪(刑法209条)の起訴率は約5.9%でした。不起訴になった人の8割以上(83.2%)は、告訴がない、取り消されたなど、告訴に関する理由によります。
もっとも、被害弁償もせず、被害者に告訴され、示談も成立しない場合には起訴される可能性も十分ありますので、以下で解説するように、過失傷害事件で不起訴処分を獲得するには被害者との示談交渉が重要となります。
被害者との示談が重要な理由
過失傷害罪は親告罪です。そのため、示談の結果、告訴されずに済むか、すでにされた告訴が取り消されれば、起訴されることはありません。刑事裁判にかけられないので罰金や科料を科されることもなく、前科もつきません。示談には、治療費や慰謝料などの損害賠償に加え、告訴をしないことや、すでにした告訴の取消しを盛り込むのが一般的です。
ただし、告訴を取り消せるのは起訴される前までで、一度取り消した告訴を同じ事件で再びすることはできません(刑事訴訟法237条)。
このように、親告罪である過失傷害罪では、いかに早急に示談を成立させるかが重要なポイントとなります。親告罪の詳しい仕組みについては「【一覧表つき】親告罪とは?告訴期間と非親告罪との違いを解説」で解説しています。示談のメリットや具体的な流れについては「刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説」もあわせてご確認ください。
過失傷害罪の時効は何年?
過失傷害罪は、犯罪行為が終わった時から3年が過ぎると公訴時効が完成し、起訴されなくなります(刑事訴訟法250条2項6号・253条1項)。公訴時効とは、一定の期間が過ぎると検察官が起訴できなくなる制度です。
また、被害者による告訴にも期限があり、犯人を知った日から6か月を過ぎるとできなくなります(刑事訴訟法235条)。告訴されないままこの期間が過ぎれば、3年の公訴時効が完成する前でも、原則として起訴されることはありません。
過失傷害罪で不安な方は弁護士にご相談ください
過失傷害罪の刑罰は罰金か科料で、逮捕される場面も法律で限られています。それでも起訴されて有罪となり、罰金を科されれば前科がつくため、被害者と示談をまとめ、告訴をしないでもらうか取り消してもらうことが何より大切です。
ただ、けがをさせた本人が被害者に直接連絡をしても、感情的な行き違いから話し合いが進まないことは少なくありません。弁護士が代理人として間に入れば、被害者の気持ちに配慮しながら落ち着いて交渉を進められます。
「被害者から告訴すると言われている」「警察から連絡が来た」という方は、起訴される前に示談をまとめる必要があります。一人で抱え込まず、できるだけ早くご相談ください。
当事務所は刑事事件に注力しており、過失傷害事件における示談交渉の実績も豊富です。依頼者の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

