騒乱罪とは?成立要件と刑罰、適用された事例を徹底解説

「騒乱罪ってどんな犯罪?初めて聞いた…」

騒乱罪は滅多に適用されることのない犯罪ですので、このようにお考えの方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • 騒乱罪とは
  • 騒乱罪の成立要件
  • 騒乱罪の刑罰
  • 騒乱罪に関連した犯罪
  • 騒乱罪が適用された事例

などについて徹底解説していきます。

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騒乱罪とは

騒乱罪(そうらんざい)とは、多衆で集合して暴行又は脅迫を行うことで公共の平穏を害する犯罪です。「首謀者」、「他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者」、「付和随行した者」の3者で異なる罰則が設けられており、刑法第106条に規定されています。

(騒乱)
第106条
多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
1. 首謀者は、1年以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。
2. 他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。
3. 付和随行した者は、10万円以下の罰金に処する。

刑法第106条 - Wikibooks

以下でご紹介するように、騒乱罪が適用される典型例は暴動やデモですが、近年は以前に比べ暴動やデモの数自体が減っています。また、仮に行われたとしても暴徒化しないことから、近年は騒乱罪が適用されるケースはほとんどありません。

なお、騒乱罪と混同されがちな罪として「内乱罪」がありますが、騒乱罪は公共の平穏を害する行為に対する罪であるのに対し、内乱罪は国家の存立を破壊・変革しようとする行為に対する罪です。両罪の違いや内乱罪について詳しく知りたい方は、内乱罪とは?構成要件・罰則・過去の事例をわかりやすく解説を参考にしてください。

騒乱罪の成立要件

騒乱罪は刑法106条で「多衆で集合して暴行又は脅迫した者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。」と規定されています。そこで以下ではこの規定をいくつかにわけて騒乱罪の成立要件について解説したいと思います。

多衆で集合したこと

騒乱罪の処罰の対象となるのは「集合した多衆」です。

多衆とは、何人以上という基準は法律で明記されていませんが、一地方における公共の平穏を害するに足りる程度の暴行・脅迫をするのに適当な人数の集団のことをいいます。したがって、個人(一人だけ)はもちろんのこと、「多衆」とはいえない程度の人数であれば同法は適用されません。

また、集合とは、多数人が時と所とを同じくして集団を形成することをいいます。必ずしも組織化されていることは必要ではないと解されています。最初から共同して暴行・脅迫の意思をもって集合することも要件ではなく、平穏に合法的に集合した群衆でも、その後に暴行・脅迫を行えば騒乱罪が成立します。

暴行又は脅迫したこと

騒乱罪の処罰の対象となる行為は「暴行又は脅迫」です。

騒乱罪の暴行は最広義の暴行、すなわち、暴行の対象が「人」のみならず「物」であってもよい最広義の暴行です。また、騒乱罪の脅迫は人を畏怖させるに足りる害悪の告知のすべてを含み、それによって人が恐怖心を抱いたかどうかを問わない広義の脅迫です。

暴行・脅迫は少なくとも一地方における公共の平穏を害する危険性を含むものであることが必要であるものの、それによって群衆の暴動に発展して社会の治安を動揺させる危険の発生や、現実に社会の治安に不安・動揺を生じさせることまでをも必要としないと解されています。

共同意思

騒乱罪の性質上、多衆の間に共同意思が存在することが必要です。すなわち、上記の暴行・脅迫が集合した多衆の共同意思に出たもの、いわば集団そのものの暴行・脅迫と認められるものでなければなりません。

この共同意思は、

  • ①多衆の合同力をあてにして自ら暴行・脅迫をなす意思、ないしは多衆をしてこれをなさしめる意思
  • ②このような暴行・脅迫に同意を表してその合同力に加わる意思

とに分かれ、集合した多衆が①の意思を有する者と②の意思を有する者とで構成にされているときに、多衆の共同意思があるものとされています。

騒乱罪の刑罰

騒乱罪の刑罰は「首謀者」、「他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者」、「付和随行した者」の3者で区別されています。

首謀者

首謀者の罰則は「1年以上10年以下の懲役又は禁錮」です。

首謀者とは、騒乱行為全般の主導者となって騒乱を首唱・画策し、多衆をしてその合同力により暴行・脅迫をさせた者をいいます。必ずしも暴行・脅迫をともにしたり、現場にあって総括指揮をとることを要しません。

他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者

他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者の罰則は「6月以上7年以下の懲役又は禁錮」です。

他人を指揮した者とは、騒乱に際し、多衆の一部又は全部に対し指揮する者をいい、事前に他の場所で指揮しても、暴行・脅迫の現場で指揮してもよいとされています。

他人に率先して勢いを助けた者とは、多衆にぬきんでて騒乱の勢いを助長・増大する行為をした者をいい、多衆の先頭に立って暴行・脅迫をしたり、アジ演説や激励をする者などがこれに当たります。

付和随行した者

付和随行した者の罰則は「10万円以下の罰金」です。

付和随行した者(付和随行者)とは、多衆が集合して暴行・脅迫する際に、そのことを知りながら群衆審理に駆られ雷同的に集団に加入した者をいいます。付和随行者が暴行・脅迫を行った場合に、通常の暴行・脅迫罪よりも刑が軽い(※)のは、群衆心理に駆られた行為であることを考慮されているからです。

※暴行罪の罰則「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」。脅迫罪の罰則「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」。

デマで世間を騒がせたら騒乱罪になる?

事実ではないのに事実であるかのように見せかけるデマを、SNS等を通じて世間に流した結果、自衛隊や警察、消防などを出動させるなどさせた場合は偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。また、企業に損害を与えた場合は損害賠償責任を問われる可能性もあり、結果が甚大であれば、その額は膨大な額となることも想定されます。

また、デマが発端で暴動が起きた場合は騒乱罪が適用され、そのデマを流した者は騒乱罪の首謀者として、実際に暴動に参加した者は「他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者」、あるいは「付和随行した者」として処罰される可能性もあります。

騒乱罪の前段階の行為は「多衆不解散罪」になることも

多衆不解散罪とは、暴行または脅迫をするために多衆が集合した場合に、権限のある公務員(主に警察官)から解散命令を3回以上受けたのになお解散しなかった場合に成立する犯罪です(刑法107条)。つまり、騒乱罪の前段階の行為を処罰する犯罪といえます。不解散の主導的役割を果たした首謀者は3年以下の懲役または禁錮、その他の者は10万円以下の罰金で処されます。

解散せずに暴行・脅迫に及んだ場合は騒乱罪が成立し、多衆不解散罪は騒乱罪に吸収され、騒乱罪のみが成立します。

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騒乱罪と関連した犯罪

暴動やデモでは以下の犯罪も適用される可能性があります。

暴行罪

単純な暴行は騒乱罪に吸収されますから、騒乱罪から独立して暴行罪が成立することはありません。もっとも、騒乱罪が成立しない場合は暴行罪が成立することはありえます。罰則は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。

暴行罪とは?どこから成立する?構成要件・傷害罪との違いも解説

脅迫罪

暴行罪と同じく単純な脅迫は騒乱罪に吸収されますから、騒乱罪から独立して脅迫罪が成立することはありません。もっとも、騒乱罪が成立しない場合は脅迫罪が成立する可能性はあります。罰則は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。

脅迫罪とは?どんな言葉が脅迫罪になる?恐喝罪や強要罪との違い

公務執行妨害罪

暴動、デモが起きれば警察官が現場に出動することになるかと思います。そこで、警察官に暴行を加えたり、脅迫した場合は公務執行妨害罪が成立する可能性があります。

もっとも、騒乱罪と公務執行妨害罪は観念的競合(※)の関係に立つとされていますから、仮に公務執行妨害罪が成立するとしても騒乱罪の刑を基準に処罰されることになります。

公務執行妨害罪の罰則は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。

※一個の行為で複数の罪に触れる行為をした場合に、刑を科す上では、複数の罪のうち最も重たい罪の刑を科すとする法制度のこと。そのため、首謀者、他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者には騒乱罪が、付和随行者には公務執行妨害罪が適用されます。

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住居侵入、建造物侵入罪

暴動、デモの際に他人の住居、敷地、建物等に立ち入った場合に成立する可能性があります。騒乱罪とは観念的競合の関係に立ちます。罰則は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

不法侵入(住居侵入罪・建造物侵入罪)とは?刑事事件に強い弁護士が解説

殺人罪

暴動、デモの際に殺意をもって人を死亡させた場合に成立する可能性があります。騒乱罪とは観念的競合に立ち、成立すれば殺人罪の刑で処罰されます。罰則は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。

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騒乱罪が適用された事例

近年は騒乱罪が適用された事件はほとんど見かけなくなりましたが、過去には適用された事例がいくつかあります。以下ではその一部をご紹介します。

阪神教育事件

1948年(昭和23年)4月、GHQから指令を受け、朝鮮人学校閉鎖令を発令し学校を閉鎖しようとした日本政府に対して反発した在日朝鮮人及び日本共産党によって行われた暴動事件です。GHQの指令によって非常事態宣言が発出され、約1,700人が逮捕されたと言われています。

大須事件

当時、国交がなかった中国及びソビエトへの視察から帰国した代議士を歓迎するためのデモです。1952年(昭和27年)7月6日午後、代議士2名が名古屋駅に到着したのを機に、歓迎のため集結した約1,000人によるデモが行われました。

新宿騒乱

国際反戦デーの1968年(昭和43年)10月21日、ベトナム戦争に反対する学生約2,000人が国鉄新宿駅東口に集結。午後9時前に駅構内に乱入し、警官隊と激しく衝突した事件。駅以外でも反戦デモが起き、都内の逮捕者は750人にものぼりました。

まとめ

先ほど紹介した、騒乱罪が適用された事件はかなり過去のものです。2018年に渋谷のハロウィンで集団で軽トラックを横転させるなどした事件、2022年(令和4年)に沖縄署を取り囲んだ数百名の若者たちが石や生卵を投げつけた事件においても騒乱罪は適用されていません。

もっとも、渋谷ハロウィン事件では暴力行為法違反(集団的器物損壊)の容疑で被疑者が逮捕されていますし、沖縄署で一部の若者が暴徒化した事件では器物損壊や暴行の疑いで捜査が続いています。「集団心理でつい騒いでしまった…」「大勢の人がいたからまさか自分が特定されて後日逮捕されることはないだろう…」という甘い考えは通用しません。警察は防犯カメラの映像等から身元を割り出すことも可能です。

逮捕・勾留されれば最大で23日間身柄拘束され、起訴されれば刑事裁判にかけられてさらに身柄拘束が続いてしまいます。有罪判決が下れば前科もつきます。逮捕・勾留を避けたい、不起訴処分を得たいとお考えの方は早急に弁護士による弁護活動の依頼を検討しましょう

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