
現場助勢罪とは、けんかの現場で「やれやれ、もっとやれ」などと野次馬的にはやし立てる行為によって成立する犯罪です。罰則は1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料と定められていますが、実際に検挙される可能性は低いとされています。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
「その場にいただけなのに罪に問われるのか」「どこまでが現場助勢にあたるのか」など、不安を感じている方もいるかもしれません。
この記事では、傷害事件に強い弁護士が、
- 現場助勢罪の成立要件
- 現場助勢罪と傷害幇助の関係
- 現場助勢罪で検挙される可能性
などについて、事例や判例を交えてわかりやすく解説します。お読みいただければ、現場助勢罪がどのような場合に成立するのか、今後どのように対応すべきかが分かります。
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現場助勢罪とは
現場助勢罪(げんばじょせいざい)とは、殴る・蹴るなどの暴行が行われ、その結果、傷害、あるいは傷害致死に発展しかねないけんかの現場において、野次馬的助勢行為を行ったことで成立する罪です(刑法206条)。
現場助勢罪は、たとえば、次のようなケースのXに適用されます。
このように、けんかの現場では、いわゆる野次馬が「やれやれ、もっとやれ。」などと声援した場合に、けんかの当事者がそれによってあおられ、元気づけられたため、けんかの規模・程度が拡大して重大な結果が発生することは往々にして起こり得ます。
そこで、現場助勢罪はこうした事態を防止するため、無責任な野次馬助勢行為について独立した処罰規定を設けたものと考える説(独立説)があり、判例(大判昭和2年3月28日)もこの説を採用しているものと思われます。
一方、群衆心理を考慮して、現場における幇助行為(Aの加害行為を容易にする行為)につき、特に軽い刑(※)を規定したものと考える説(減軽類型説)もあります。
※現場助勢罪の法定刑は「1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料」に対し、傷害罪の幇助犯の法定刑は「7年6月以下の拘禁刑又は25万円以下の罰金」と重たいです。
現場助勢罪の成立要件
(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。(傷害致死)
第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期拘禁刑に処する。(現場助勢)
第二百六条 前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
現場助勢罪が成立する要件は次のとおりです。
前二条の罪が行われるに当たり
「前二条の罪」とは傷害罪、傷害致死罪のことです。すなわち、前二条の罪が行われるに当たりとは、傷害罪、傷害致死罪の実行行為が行われている時点で野次馬的助勢行為を行うことが必要という意味です。
傷害罪、傷害致死罪の実行行為には暴行罪の暴行も含まれます。暴行罪の暴行とは、相手を殴る、蹴る、叩く、投げ飛ばす、押し倒すなどが典型です。
前述の例では、Aの暴行によってBが怪我をし、Aに傷害罪が適用されますから、Xに現場助勢罪が成立します。一方、Bが怪我をせず、Aに適用される罪が暴行罪にとどまる場合は、Xには現場助勢罪は成立しません。暴行罪と傷害罪の違いについては「暴行罪と傷害罪の違いは?成立要件とどちらが重いかを解説」をご覧ください。
また、「行われるに当たり」とは、傷害罪、傷害致死罪の実行行為が行われている時点で、という意味です。そのため、暴行が始まる前、終わった後に野次馬的助勢行為を行っても現場助勢罪は成立しません。
現場において勢いを助けたこと
「現場において」とは、暴行が行われているその時・場所で、という意味です。
また、「勢いを助けた」とは野次馬的助勢行為、すなわち、「やれやれ。もっとやれ。」などと言語によって助勢する場合のほか、拳を振り回すように動作によって助勢する場合も含まれます。野次馬的行為によって暴行・傷害行為が容易になったかどうかは関係ありません。
自ら人を傷害しなかったこと
最後に、助勢者(X)が自ら人(B)を傷害しなかったことが要件です。
仮に、助勢者がけんかに加わり人に怪我を負わせたときは、傷害罪の共同正犯または同時犯が成立し、現場助勢罪は成立しません。同時犯の詳細については「同時傷害の特例とは?刑法207条の要件をわかりやすく解説」をご覧ください。
現場助勢罪と傷害罪の幇助との関係
現場助勢罪が適用されるか否かが問題となる事例として一方応援事例があります。一方応援事例とは、たとえば、Bに暴行を加えているAに対し、Xが「Aやれやれ!」と一方に助勢するようなケースです。
この点に関する結論は、先にご紹介した独立説と減軽類型説で異なります。
一方に助勢する行為は幇助行為にあたり得るため、独立説(判例の立場)によれば現場助勢罪ではなく傷害罪の幇助犯が成立すると考えます。他方で、減軽類型説では、一方に助勢する幇助行為も助勢行為の一種と考えるため、傷害罪の幇助犯ではなく現場助勢罪が成立すると考えます。
現場助勢罪で検挙される可能性は低い
現場助勢罪で検挙される可能性は低いです。なぜなら、警察は犯罪の成立要件を裏付ける一定の証拠を確保しなければ検挙に踏み切らないところ、現場助勢罪においては助勢行為を裏付ける証拠を確保することが難しいからです。
助勢行為を裏付ける証拠としては、助勢者の周辺にいた目撃者、あるいはけんかの当事者が考えられます。
しかし、よほど悪質な助勢行為でない限り、目撃者の意識はけんかの当事者の言動に向けられていることが通常です。そのため、仮に警察がその目撃者から事情を聴いたとしても、助勢行為に関する有力な証言を得られる可能性はそれほど高くないものと考えられます。
また、けんかの当事者の意識も助勢行為よりはお互いの言動に意識が向けられていますから、やはり、目撃者と同様のことがいえます。
その他、けんかの現場に野次馬が複数いたような場合は、誰が助勢者なのか特定が難しいという点も理由の一つとして挙げることができます。
もっとも、検挙される可能性が低いからといって、助勢行為が許されるわけではありません。けんかを目撃したら自ら止めに入るか、難しい場合は、周囲に助けを求める、110番通報するなどして事態の収拾に努めましょう。
現場助勢罪の不安は弁護士に相談
本記事では、現場助勢罪の成立要件や傷害罪の幇助犯との違い、検挙される可能性について解説しました。現場助勢罪は、傷害罪や傷害致死罪が行われている現場で野次馬的に勢いを助けた場合に成立しますが、実際に検挙されるケースは多くありません。
とはいえ、けんかの現場に居合わせてしまい「自分の行為が現場助勢罪にあたるのではないか」「警察から連絡が来るのではないか」と不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
現場助勢罪に限らず、刑事事件では早期の対応が重要です。弁護士に相談することで、ご自身の行為が犯罪に該当するかどうかの見通しや、今後取るべき対応について具体的なアドバイスを受けることができます。
万が一、逮捕された場合でも、早い段階で弁護士が接見し、取調べへの対応や被害者との示談交渉を進めることで、不起訴や早期釈放の可能性を高めることができます。なお、被害者の連絡先がわからない場合は、弁護士が警察を通じて連絡先を取得し、示談交渉を行います。被害者と面識がある場合でも、ご自身で連絡を取ると罪証隠滅を疑われるおそれがあるため、弁護士を通じて交渉することが重要です。示談の流れについては「暴行罪で示談しないとどうなる?前科・起訴リスクと対処法を解説」で詳しく解説しています。
弊所では、暴行・傷害などの刑事事件において、被害者との示談交渉や早期釈放に向けた弁護活動に力を入れております。全国どこからでも無料でご相談いただけますので、現場助勢罪についてご不安がある方は、弁護士までご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

